村上春樹「ねじまき鳥クロニクル」(1994)
評価
★★★☆
ひとこと
夏休みの3日間で読了。
1984-86年に起こったことをベースに、様々な時代記(クロニクル)を行き来する物語。
結婚6年経ったところで、ある日突然主人公の妻が失踪することから始まる。
果たして、10代の頃読んでいたらどんな感想をもったのだろうか?
想像もつかないが、おそらく不完全燃焼だっただろうなと思う。
分類
泥棒かささぎ篇
- 火曜日のねじまき鳥、六本の指と四つの乳房について
- 満月と日蝕、納屋の中で死んでいく馬たちについて
- 加納マルタの帽子、シャーベット・トーンとアレン・ギンズバーグと十字軍
- 高い塔と深い井戸、あるいはノモンハンを遠く離れて
- レモンドロップ中毒、飛べない鳥と涸れた井戸
- 岡田久美子はどのようにして生まれ、綿谷ノボルはどのようにして生まれたか
- 幸福なクリーニング店、そして加納クレタの登場。
- 加納クレタの長い話、苦痛についての考察
- 電気の絶対的な不足と暗渠、かつらについての笠原メイの考察
- マジックタッチ、風呂桶の中の死、形見の配達者
- 間宮中尉の登場、温かい泥の中からやってきたもの、オーデコロン
- 間宮中尉の長い話・1
- 間宮中尉の長い話・2
予言する鳥篇
- できるだけ具体的なこと、文学における貪欲
- この章では良いニュースはなにひとつない
- 綿谷ノボル語る、下品な島の猿の話
- 失われた恩寵、意識の娼婦
- 遠くの町の風景、永遠の半月、固定された梯子
- 遺産相続、クラゲについての考察、乖離の感覚のようなもの
- 妊娠についての回想と対話、苦痛についての実験的考察
- 欲望の根、208号室の中、壁を通り抜ける
- 井戸と星、梯子はどのようにして消滅したか
- 人間の死と進化についての笠原メイの考察、よそで作られたもの
- 痛みとしての空腹感、クミコの長い手紙、予言する鳥
- 髭を剃っているときに発見したもの、目が覚めたときに発見したこと
- 加納クレタの話の続き
- 加納クレタの新しい出発
- 正しい名前、夏の朝にサラダオイルをかけて焼かれたもの、不正確なメタファー
- 笠原メイの家に起こった唯一の悪いこと、笠原メイのぐしゃぐしゃとした熱源についての考察
- いちばん簡単なこと、洗練されたかたちでの復習、ギターケースの中にあったもの
- クレタ島からの便り、世界の縁から落ちてしまったもの、良いニュースは小さな声で語られる
鳥刺し男篇
- 笠原メイの視点
- 首吊り屋敷の謎
- 冬のねじまき鳥
- 冬眠から目覚める、もう一枚の名刺、金の無名性
- 真夜中の出来事
- 新しい靴を買う、家に戻ってきたもの
- よくよく考えればわかるところ
- ナツメグとシナモン
- 井戸の底で
- 動物園襲撃(あるいは要領の悪い虐殺)
- それでは次の問題
- このシャベルは本もののシャベルなのだろうか?
- Mの秘密の治療
- 待っていた男、振り払うことのできないもの、人は島嶼にあらず
- シナモンの不思議な手話、音楽の捧げもの
- ここが行きどまりなのかもしれない
- 世界中の疲労と重荷、魔法のランプ
- 仮縫い部屋、後継者
- とんまな雨蛙の娘
- 地下の迷宮、シナモンの二枚の扉
- ナツメグの話
- 首吊り屋敷の謎2
- 世界中のいろんなクラゲ、変形したもの
- 羊を数える、輪の中心にあるもの
- 信号が赤に変わる、のびてくる長い手
- 損なうもの、熟れた果実
- 三角形の耳、橇の鈴音
- ねじまき鳥クロニクル#8(あるいは二度目の要領の悪い虐殺)
- シナモンのミッシング・リンク
- 家なんて信用できたものではない
- 空き家の誕生、乗り替えられた馬
- 加納マルタの尻尾、皮剥ぎボリス
- 消えたバット、帰ってきた『泥棒かささぎ』
- ほかの人々に想像をさせる仕事
- 危険な場所、テレビの前の人びと、虚ろな男
- 螢の光、魔法のとき方、朝に目覚まし時計の鳴る世界
- ただの現実のナイフ、前もって予言されたこと
- アヒルのヒトたちの話、影と涙
- 二種類の異なったニュース、どこかに消え去ったもの
- ねじまき鳥クロニクル#17
- さよなら
流れというのが出てくるのを待つのは辛いもんだ。
しかし待たねばならんときには、待たねばならん。
そのあいだは死んだつもりでおればいいんだ(Ip99,本田さんのことば)
ねえ、ねじまき鳥さん、あなたが今言ったようなことは誰にもできないんじゃないかな。
『さあこれから新しい世界を作ろう』とか『さあこれから新しい自分を作ろう』
とかいうようなことはね。私はそう思うな。自分ではうまくやれた、別の自分になれた
と思っていても、そのうわべの下にはもとのあなたがちゃんといるし、何かあればそれが
『こんにちは』って顔を出すのよ。(中略)
あなたはよそで作られたものなのよ。そして自分を作り替えようとするあなたのつもりだって、
それもやはりどこかよそで作られたものなの。(ⅡP201, 笠原メイのことば)
自らの状態を知るというのは、それほど簡単なことではありません。
たとえば、人は自分の顔を自分の目で直接見ることはできません。
鏡に映して、その反映を見るしかないのです。
そして我々はその鏡を映し出す像が正しいと経験的に信じているだけなのです。(ⅡP243, 加納マルタのことば)
うまくやるためのコツみたいなのはちゃんとあるんだ。
そのコツを知らないから、世の中の大抵の人間は間違った決断をすることになる。(中略)
コツというのはね、まずあまり重要じゃないところから片づけていくことなんだよ。(中略)
何か大事なことを決めようと思ったときはね、まず最初はどうでもいいようなところから
始めた方がいい。誰が見てもわかる、誰が考えてもわかる本当に馬鹿みたいなところから
始めるんだ。そしてその馬鹿みたいなところにたっぷりと時間をかけるんだ。(ⅡP370 叔父の話)
メモ
参考文献
- 忠霊顕彰「ノモンハン美談録」
- ア・ベ・ボロジェイキン「ノモンハン空戦記」
- 御田重宝「ノモンハン戦」
- 小沢親光「ノモンハン戦記」
- 伊藤桂一「静かなノモンハン」
- 武藤富男「私と満州国」
- 寺田近雄「日本軍隊用語集」
- アルヴィン・D・クックス「ノモンハン」
- 児島嚢「満州帝国」
主人公
最終更新:2011年07月31日 16:48