塩野七生「ローマ人への20の質問」(1994)

評価

★★★☆

ひとこと

「五賢帝時代」を書いていたころに書かれた、ローマ人の物語の中から
エッセンスを抜き出したもの。
「ローマ人の物語」未読の人にも手軽に読める分量なのですが、
ローマ史の知識が全くないと少し辛いかもしれません。
むしろ、「ローマ人の物語」を一度読んだけれども、中身を忘れてしまった、
しかしもう一度読み直す元気がない、という人に最適かもしれません。


分類

目次

  1. ローマは軍事的にはギリシアを征服したが、文化的には征服されたとは真実か?
  2. ローマ人の諸悪なるものについて
  3. 都市と地方の関係について
  4. 富の格差について
  5. 宿敵カルタゴとの対決について
  6. 古代のローマ人と現代の日本人の共通点
  7. “パクス・ロマーナ”とは何であったのか
  8. ローマの皇帝たちについて
  9. 市民とは、そして市民権とは何か
  10. 多神教と一神教との本質的なちがいについて
  11. ローマ法について
  12. ローマ人の都市計画
  13. 真・善・美について
  14. “パンとサーカス”とは何であったのか
  15. 自由について
  16. 奴隷について
  17. “イフ”の復権は是か非か
  18. 女について
  19. 蛮族について
  20. なぜローマは滅亡したのか


気になる表現

目的は一つであっても、手段ならば複数存在しようと許されるし、
そのほうが自然であると思う(p3)

メモ

  • 「ローマはギリシアを征服したが文化ではギリシアに征服された」(by ホラティウス, パトロンはマエケナス)

  • ローマの都市には緑が少ない。(公共施設を優先。緑が多い地方に構える“ヴィラ”との二本立て生活が一般的)

  • 税制を考える前提
    • 富の分配とは、所詮税制の問題
    • 人は重税か否かに関わらず、税金そのものが嫌い。(相対的に低率でも重税感を抱く9
    • 人は不定期的に課される税金のほうを重税と感じる
    • 税制度は単純明確であるべき(徴税費用を低く抑える、徴税担当者の恣意を排除)

  • ローマ帝国の税率は意外と低い。アウグストゥスによる、富裕層の“名誉欲と虚栄心”を活用した公共事業への私財投入策の効果もあった?

  • ローマ人と日本人の共通点
    1. 入浴好き
    2. 温泉好き
    3. 部屋の内装
    4. 肉より魚好き
    5. 企業化の才能

  • ローマ史上におけるパンとサーカスの歴史
    • ガイウス・グラックスの「小麦法」
    • スッラによる「小麦法」の撤廃
    • 民衆派コッタによる「小麦法」再興
    • 小カトーによる「小麦法」改正案(4万の上限撤廃)
    • 民衆派クロディウスによる「小麦法」改正案(配布の無料化)
    • カエサルによる「小麦法」改正案(受給者の上限を15万に)
    • アウグストゥス、受給者の上限を20万に。以後定着

  • ローマ人の休日
    • 休日は不定期
    • 祝祭日:共和制ローマ末期で65日、五賢帝時代で120日程度

  • アウグストゥス治政での皇帝スポンサーによる大規模見世物(44年間)
    • 剣闘士試合:5回
    • 体育協議会:5回
    • 戦車競走と演劇:6or7回
    • 人間と野獣、または野獣同士の見世物:26回
    • 模擬海戦:1回

  • 奴隷に関する法制度の変化
    • アウグストゥス:奴隷解放規制法(100~500人の奴隷所有者が解放できるのは所有の1/5までとする)
    • ティベリウス:闘技用に奴隷を売り渡すことを禁止。(刑法犯は別)
    • クラウディウス:病気になった奴隷の治療責任は所有者。置き捨てした場合は再所有権は失う。
    • ハドリアヌス:いかなる理由でも所有者は奴隷を殺してはならない。座敷牢の設置禁止
    • アントニウス・ピウス:所有者による常識を超えた暴力は、自由民に対する暴力行為と同等の処罰対象となる。


参考文献

  • 塩野七生「ローマ人の物語」
  • Will Durant「皇帝とキリスト」
  • ユルスナル「ハドリアヌス帝の回想」
  • プルタルコス「英雄伝」
  • スヴェトニウス「皇帝伝」

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最終更新:2011年08月19日 12:15