郷原信郎 「思考停止社会」(2009)
分類
目次
1章 食の「偽装」「隠蔽」に見る思考停止
- 繰り返される食品企業バッシング/不二家はなぜ存亡の危機に立たされたのか/ローソンの「焼鯖寿司」回収/伊藤ハム問題は食の安全の問題か/伊藤ハムの行為は「違法」なのか/伊藤ハムが大バッシングを受けた原因/食品企業に対する「隠蔽」なのか/一層深刻化する思考停止
2章 「強度偽装」「データ捏造」をめぐる思考停止
- コンプライアンス不況/「耐震偽装問題」の経緯/「法令遵守」で安全性は担保されない/ステンレス鋼管データ捏造問題の背景/建前を前提としたため、問題解決につながらなかった
3章 市場経済の混乱を招く経済司法の思考停止
- 日本の株式市場の下落と経済司法/村上ファンド事件一審判決の影響/ブルドックソース事件最高裁判決と企業買収/ブルドックソース事件判決と村上ファンド事件判決に共通するもの/一層深刻なのは経済検索の迷走/検察にとり薄氷を踏む思いだったライブドア事件/検察官が「公表」の主体となった「推定規定」/経済司法の貧困を象徴した事件/アーバン破綻と「不正の策略」/どうしたら経済司法を強化できるのか
4章 司法への市民参加をめぐる思考停止
- 走り出したら止まらない/何のための制度なのか/国際的に見ても特異な制度/法曹界あげての広報活動/審理期間の短縮は何をもたらすのか/事件報道と裁判員の心証形成/「秋田連続児童殺害事件」のケースで考えてみる/不合理な「部分判決」/死刑判断の心理的重圧/「思考停止」から「迷走」へ/「官」「民」の裁判員制度推進の理由の違い/国民から理解・信頼されるべき「司法」
5章 厚生年金記録の「改ざん」問題をめぐる思考停止
- 年金記録「改ざん」問題に隠されたもの/厚生年金制度と標準報酬月額/「改ざん」が問題にされた経緯/実質的な以外を伴う「改ざん」あどれだけあるのか/中小企業の経営実態/事業主だけの遡及訂正は不正行為なのか/保険料滞納を解消するための「遡及訂正」は悪いのか/制度で解決できないことを「非公式な調整」で解決する/なぜ空中楼閣のような「犯罪者集団伝説」がつくられたのか/社保庁信頼崩壊の経過/国民年金不正免除問題が伏線に/「年金改ざん」が「組織ぐるみ」とされるまで/「法令遵守」とトップの無責任な発言が社保庁を“犯罪者集団”にした/厚生年金制度の難しさ/社保庁の責任追及をしても問題は解決しない
6章 思考停止するマスメディア
- 歪むマスメディア報道/疑問だらけの「朝ズバッ」の顔なし証言/TBSの捏造疑惑/報道の倫理/解明しないほうが得をする/放送の真実性に関する放送法の枠組み/放送法の趣旨は生かされていない/必要とされる報道の真実性等についての自主的検証
7章 「遵守」はなぜ思考停止につながるのか
- 「法令遵守」と「規範遵守」/「文化包丁」と「伝家の宝刀」/「法化社会」と「法令遵守」/「遵守」が法令以外にも広がる
終章 思考停止から脱却して真の法治社会を
- 「思考停止」からどう脱却するか/社会的要請をどう把握するか/「社会的規範」をどう活用するか/「社会的要請に応えること」についての法律家の役割/法曹養成改革の思考停止/「真の法治社会」をめざして
評価
★★★☆☆
ひとこと
若干しつこい感じはするものの、初心者にも「主張」がわかり易い一冊。
「なにかおかしい」と感じる勘は辛うじて残っているものの、法律の知識がないと、「なにが違反で、なにが違反でもないのに不当にバッシングされているのか」がわからなかったなぁと感じました
日本とアメリカの社会での人間と法令の関係の違いを刃物にたとえるならば、
アメリカにおける法令は「文化包丁」のようなものだと言えましょう。
日頃から研いで手入れをして、いざというときにすぐに取り出して使いこなすのです。
一方、日本は神棚の中に祭った「伝家の宝刀」のようなものです。同じ刃物でも
伝家の宝刀は物を切るためには使いません。神棚の中に存在していることに意味があるわけです。(中略)
法令に対する日本人の姿勢は、「何も考えないで、そのまま守る」というものです。
メモ
参考文献
最終更新:2009年03月29日 02:06