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冨山和彦「IGPI流 経営分析のリアル・ノウハウ」(2012)

評価

★★★★

ひとこと

ビジネス会計検定を受けるにあたって購入。
元産業再生機構COOが、これ以上ないくらい平易に書いた経営分析の本。
所謂「経営分析」のテクニックを知らない人でも十分に理解できる良書。


分類

目次

  • 第1章 リアルな経営分析とは何か?
    • 1.リアル経営分析は企業の健康診断(精密検査)
      • 何をもってAさんを健康と言えるのか
      • 潜在的な病理を顕在化している病理
    • 2.リアル経営分析はテーラーメイド
      • 同じミカンでもいろいろ種類がある
      • 平均値を見るだけでは、何もわからない
    • 3.そもそもどんな事業を分析しようとしているのか?
      • 化粧品メーカーの4つの事業モデル
      • PLを見るときは「想像力」がカギになる
      • 高炉はメーカー、電炉は加工流通業
    • 4.インパクトの大きい本質的な部分に焦点を当てる
      • 航空会社とバス会社は同じ経済構造
      • 1%の議論なのか、10%の議論なのか
      • 日本の航空産業、儲け方の違い
      • 根本的な問題が未解決のままになる
    • 5.ジョブズのいないアップルの今後はどうなる?
      • 利益の源泉はスーパーユーザー的な感性にあった
      • 一点突破で攻められなくなると……
  • 第2章 リアル経営分析の進め方
    • 6.仮説と検証を繰り返して真実に迫る
      • 強みは弱みになりうる
      • 中小企業の背後にあるストーリー
    • 7.PL、BS、CSを使いこなす
      • PLはイマジネーションのきっかけ
      • 3つの表は連動させなければ意味がない
    • 8.簿記はすべての基本
      • 不自然さに気づく感性の磨き方
      • 複式簿記をわかっていない人が多い
    • 9.基礎的な訓練の後は、ひたすら現場で経験を積む
      • 計画をつくるのがアダになることも
      • その数字から企業小節を書けるのか
    • 10.分析力は改革力
      • タイミングを見定める
      • スイートスポットに玉を放り込むために
    • 11.真剣勝負をどれだけこなしたかで実力が決まる
      • 何月何日が資金ショートの危機なのか
      • リアルな想像ができるか
    • 12.会計の有用性と限界を知ること
      • 財務三表は最高の発明のひとつ
      • 国際会計基準の落とし穴
      • 道具の奴隷になってはいけない
  • 第3章 生き残る会社と消え猿会社<実例に学ぶ分析枠組み偏>
    • 13.経営分析を始めるとき、まず持つべき目的意識とは?
      • 聞いてみれば当たり前の話
      • 一見良さそうでも実は泥沼の打ち手
    • 14.規模が効くか効かないか
      • 購買を一本化しても不経済に
      • LCCは規模が小さくても儲かる
      • 高炉メーカーの世界フルカバーは正しいのか
      • コラム:とても重要だがよく見落とされるポイント(付加価値率の問題)
    • 15.規模が効く業種と効かない業種
      • 卸は数%の世界で儲けが決まる
      • 素材産業には規模が効く
      • レストランは個々の店の競争力の積み上げ
    • 16.業界構図の変質の陰には、必ず経済構造の変化がある
      • なぜ、食品卸は買収を繰り返すのか
      • 産業材、生産財の世界は別の論理
      • コラム:卸プレーヤ―のひとつの儲け方(範囲の経済)
    • 17.カネボウ化粧品の販売チャネルで他社の化粧品を売れるか?
      • 美容部員の誇りと愛社精神
      • 人間を観察し分析するしかない
      • 最も頻繁に語られる経営的幻想「シナジー効果」
    • 18.規模、範囲、そして「密度」の経済性
      • セブン-イレブンが四国には出店しないわけ
      • 顧客や地域との密着力こそが大切
    • 19.都市型とロードサイド型の家電量販店の違いは?
      • 「ビックカメラ」「ヨドバシカメラ」と「ケーズデンキ」の違い
      • 食品、日用品売り場には人をかけない経済的背景
      • コラム:広域展開する家電量販店はなぜ強いか?(価格交渉力)
    • 20.普及するほど価値が高まる製品・サービスがある
      • 顧客にとっての価値を高めることで勝つパターン
      • 予測を裏切って高い普及率になったケータイ
      • 「0円ケータイ」登場の理由
      • コラム:n(n-1)/2の魔法(ネットワークの外部性)
    • 21.ケータイが普及した後の勝負はどうなっていったのか?
      • 新規獲得よりも既存顧客に注力
      • 生命保険会社にも似たストーリー
    • 22.スイッチングコストが高い事業は高収益を生む
      • 「このブランドバッグだから欲しい」
      • 「シリコンバレー」と「駅ナカ」の共通点
      • コラム;銀座の老舗はなぜ生き残っているのか(立地ビジネス)
    • 23.下請け工場と自前で商売している工場の違いとは?
      • ROSの高低を議論しても意味がない
      • トヨタが経営効率を高められたわけ
      • レイヤーの中で儲かるデンソー
    • 24.インダストリー・バリューチェーンの中でどこに位置しているか
      • 黎明期か、成長途上か、成熟段階か
      • ユニクロは「垂直統合型モデル」
    • 25.日本のエレクトロニクス産業でどこが儲かっているか?
      • 優良企業、3つの条件
      • 脱総合化だけでは復活しない
      • コラム:まだまだあるさまざまな勝ちパターン
    • 26.そもそも勝ちパターンがつくりにくいビジネスもある
      • 商売いろいろ、儲け方もいろいろ(障壁事業と機会事業)
      • 大当たりを続けられるか
    • 27.事業経済性を理解すると見えてくる世界
      • 3C分析をさらにクリアにする
      • 5Forces分析もSWOT分析もさらにクリアにする
  • 第4章 生き残る会社の数字のつくり方<ケーススタディーで分析訓練偏>
    • 28.会社の事業モデルを自分なりに試算してみる
      • 事業計画づくりを疑似体験する
      • トマトの卸販売会社を訪ねてきた
      • 何人の社員で何台のトラックが必要か
      • 皆で想像できる数字で説明する
    • 29.試算をベースに自分でPL/BSをつくってみる
      • いきなり数字から入ってはいけない
      • 活動はPL/、土台はBS
      • BSも事業実態から出発する
    • 30.相場観を身につける
      • スーパーマーケットで「単価」「根付け」を学ぶ
      • 類似企業の決算書をベースに価格交渉
      • 危ない取引先も見分けられる
    • 31.単品管理ができれば経営改革はできたも同然
      • 儲からない商品を売り続ける営業
      • グローバル企業ほど難しい
    • 32.分けるはわかる、管理会計の重要性
      • 管理会計はピンとくるためのツール
      • 精緻にすればよいというものではない
    • 33.さらにどうやるのがいちばん良い勝ち方なのかを考えてみる
      • アイデアや組み合わせを考える
      • 現実の競争相手を見て判断
    • 34.数式の世界から人間ドラマの世界へ
      • 見切り発車で決めた無茶な原価
      • ワンマン社長が招いた無責任体制
    • 35.その会社の事業に最適なスパンで数字を切り取る
      • 海底ケーブルの将来性は?
      • 1年か5年か10年か 物差しを区別して考える
      • 銀閣寺の物差しは何年か?
    • 36.経営分析で同業他社を丸裸にする
      • 「赤字覚悟に違いない」の間違い
      • 相手のからくりをひっくり返す
    • 37.「敵を知り、己を知り」、「百戦しても負けない」戦い方を編み出せ!
      • 会社とは、「ゴーイング・コンサーン」である
      • 答えは、学びと実践の繰り返しの中に


気になる表現

経営分析では、経営メカニズムを分析することが重要。(中略)
その議論が1%の議論なのか、10%の議論なのかということがクリティカルに大事になる。(中略)
現状を改善するためのさまざまな方法がある場合、それぞれの打ち手がそもそも全体の何%の議論で、どれくらいの変化インパクトがあるのかを常に意識しておかないといけない。(p43)



メモ

  • 高炉メーカー:巨大な装置産業。生産ボリュームを拡大していくと利益があがる。
  • 電炉メーカー:集めたくず鉄を溶かして、再製品化。回転率勝負のビジネス。加工流通業に近く、立地が重要。

  • エアライン:外的要因(テロ、経済危機)によって需要が2~3割はすぐに変動するボラティリティ(変動幅)の高いびいネス。コストの大半が固定費。

  • 付加価値率:売上に占める付加価値(売上―外部調達分)の割合。管理可能コスト比率。

  • 規模の経済
    • 2つの要件
      1. 売上増、顧客増、品数増にかかわらずさほどコストが増えない費目(共有コスト)があること。
      2. その共有コストが全体の事業コスト構成比の中で大きな割合を占めていること。
    • 一括購入による社内調整コスト、二次流通のコスト、在庫コスト等を軽視しない
    • 素材産業は規模の経済が働きやすい
    • システムインテグレーターは付加価値率は高いが、個別の案件間での共有コストが薄い。システムプロバイダーやデータセンタは規模効果がそれなりに享受できる。
    • 規模の経済といいつつ、実は稼働率の議論をしている人も少なくない(LCCが成り立つ理由は高稼働率だから)

  • 範囲の経済性
    • 事業/製品等のユニットの複線化(ex.異なった種類の商材)で事業規模を拡大し、共有コストを薄めることで経済性を高めること。
    • 小売業、楽天、ソニーのブランド認知

  • 密度の経済性
    • エリア内の事業所/取引先等のユニットの増加(密度の上昇)により、ユニットあたりの平均コストが低下すること。
    • 小売業、外食、サービス業など

  • ネットワークの外部性:囲い込んでいる顧客の数自体が増えることで、顧客にとっての価値が増す構造。

  • 垂直統合と水平分業
    • どちらがよいかは産業の発展段階による
    • 電機は水平分業に移った
    • 水平分業モデルでは、最終製品を組み立てるメーカーよりも、水平のレイヤーの中で高いマーケットシェアを持つ企業の方が儲かる

  • インダストリーバリューチェーン:主要コンポーネントのR&D、原材料調達~最終製品の組立メーカー、小売、サービスまでの一連の事業の連鎖
  • サプライチェーン:メーカーの原材料・部品調達~顧客への納入までの機能連鎖

  • 機会事業
    • ある瞬間にビジネスチャンスが開き、時が経てば儲けのチャンスがなくなってしまうビジネス
    • ファッション、エンターテイメントなど。電炉、金融ビジネス、不動産にもそういう側面がある
    • 増収増益を当然の前提に事業運営を続けることは極めてキケン

    • 障壁事業
    • ビジネスの構造自体に他社よりも有利になる持続的なメカニズムを組み込める事業

参考文献

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最終更新:2012年08月13日 15:52