森博嗣「つぶやきのクリーム」(2012)
評価
★★★☆
ひとこと
ミステリ作家の森博嗣のエッセイ集。
雑誌の連載とかだったら面白く読めたかもしれないけど、
一冊になってしまうとだんだん単調さが際立ってしまったのが残念。
いっぺんに読むものじゃないね。
分類
目次
- 何から手をつけたら良いのかわからない状態とは、なんでも良いから手をつけた方が良い状態のことである。
- 自慢をする年寄りは、悲観する年寄りよりは長生きしてもらいたい。
- 天気予報は当たらないというが、これよりも当たる予報ってあるか?
- 愛国心のような集団性を持つことが、人間の社会の基本だろうか。しかし、その基本が争いを個人から集団へと大きくする。
- 人の弱みにつけ込む最たるものとは、神である。
- 風向きが変わった、と喜ぶくらい、風を頼りにしていたのか。
- 土地に縛られているのは個人ではなく、集団である。
- 住宅の九割の価値を決める要因は、どこに建っているか、である。
- つぶやくだけで良い。多くの普通の人の意見とは、その程度のものか。
- 長いものには巻かれろ、というが、それができるのは長くて柔らかい場合だけである。
- 本のページを捲る動作がどれだけいらいらするものか、電子出版が普及したら、みんな気づくだろう
- 筆も鉛筆も万年筆も筆箱もなくなったのに、まだ筆記?
- ペンキを塗っているとき見ているのは、塗ったあとの表面?塗るまえの表面?
- 宣伝カーで大声を張り上げることがプラスになると信じているとしたら、政治家として鈍感すぎる
- 遠いところへ旅行するより、近い土地へ引っ越す方が、ずっと冒険である
- 遠い人の悪口と近い人の賞賛は簡単。遠い人の賞賛と近い人の悪口は勇気。
- 自分のせいで失敗したときより、他人のせいで失敗したときの方が後悔するのは何故。
- 自分のせいでも他人のせいでも、ほぼ同じくらい失敗は失敗。
- 成功する人は、成功する方法を知っているのではなく、失敗する方法を知っているだけである。
- もし博打が当たって大儲けしたら、金輪際博打はやめるべきである。
- 喧しさは安いが、静けさは高い
- 自由を目指す人は自然に金持ちになる、という理由は、物事を解決する楽しさから自由を感じることが多いためである。
- AならばA’の手を打つ。BならばB’の手を打つ。CならばC’の手を打つ。それがマニュアルである。しかし、一番難しいのは、今がAなのかBなのかCなのかを見極めることだ。
- 僕はだいたいにおいて、早く言いすぎる。今言えば良いことを、五年くらいまえに言ってしまうのだ。
- どうしても欲しいものに大金を払うことは意外と簡単だ。
- 音楽をかけると反射的に仕事がしたくなる、という条件反射が僕を勤勉へ導いた。
- 「自由なんていらないよ」という人にかぎって、金だけは欲しがる。
- 太陽光発電で「貯金をしよう」という宣伝を見たが、たぶん「返済をしよう」の間違いだろう。
- マクドナルドが大好きだけれど、店に入るのは少し恥ずかしい。
- 長くオープンカーに乗っているが、幌を開けてオープンにして走った時間は一パーセントもないだろう。すなわち、ステータスとはそういうものだ。
- 今までこれでやってこれたのだから、これからも大丈夫だろう、という理屈が通るなら誰も死なない。
- もう少し早く言ってこれたら良いのに、と思うことが多いが、それをもう少し早く思うべきだった。
- 僕は反省をしたことがない。そんな暇があったら対策を練る。
- 英語がしゃべれなくて困ったことはないが、日本語が通じなくて困ったことは数知れない。
- 友達がいなくて困ったことはないが、友達の名前が出てこなくて困ったことは数知れない。
- 格言というのは、誰が言ったことかというのが「格」になる。
- 品格というものがあるが、つまりその人間の強さが表れたものだ。
- 汚い言葉を話したり書いたりすれば、自然に汚い人間が出来上がる。
- 電子書籍というものが、既に「防戦」であることを出版界は理解しているのだろうか。
- 飲むヨーグルトって、歩く辞書とは少し違う。
- 大部分の失敗は、やらなければならない失敗だった。
- 上手がうまい人は、一般に人づき合いが下手である。
- 声の大きさをコントロールできない、といえば老人か田舎物か犬か、あるいは、おばさんの団体である。
- 「もう恥ずかしがる歳でもないでしょう」という言葉が、かなり恥ずかしい。
- 天気予報が当たらないと腹が立つが、悪いのは予報士ではなく、明らかに天気の方である。
- いつも遠くを見すぎて、近いものに躓く、という人生だった。
- 基本的に、歳を取るほど人懐っこくなくなる。だから、人懐っこい年寄りは、単なる幼児化だろう。
- 没個性の理由、それは一流よりも二流が多いからである。
- 現代において最も忘れてはいけないものは、パスワードである。
- カロリィゼロならわざわざ食べたり飲んだりしなくても良いのではないか、と思うが、これと同じことが、いろいろな消費行為の最近の傾向らしい。
- TVで紹介されるお店は、どれも「女性に人気がある」とわざわざ強調するくいらい、女性に人気がないのだろう。
- 昔「家族連れ」で賑わっていたところは、今は「老人たち」で賑わっている。
- 「公共交通をご利用ください」と主張しつづけてきたのに、「若者の車離れ」を気にしている。
- 「それは僕が十年もまえから言っている」と話すことが多いが、それはもう三十年くらいまえからのことだ。
- 不言実行なんて大したことではない。普通の人の日常動作はすべて不言実行だ。
- 自分の短所や長所というものを考えたって、意味ないでしょう?
- 大量の酒と少量の覚醒剤は、甲乙つけがたい。
- 「今コーヒーを飲んだら眠れなくなる」という人は、平和だ。
- 電話窓口は絶対に一回ではつながらない。
- 老人がブログを始めたら、個人情報について注意した方が良い。
- こんなに借金を抱えているのに税金を上げないなんて、正気の沙汰とは思えない。
- 最近、バードウォッチングをしているが、鳥の名前をまったく知らない。知りたくもない。
- 売れない商品、売れ残り商品を沢山並べている店、それが書店である。
- 昔と変わらない味、というが、なんでもどんどん美味しくなっているのに駄目じゃないか。
- 人生の勝ち負けは、勝率ではなく、勝ち数で決まる。いくら負けても良い。
- 失敗を恐れなくては、成功は望めない。
- 当たっても砕けないように、準備しておくこと。
- 気持ちを切り換えろというが、気持ちなんてものはどうだって良いから、次の手を打ちなさい。
- 友達は財産というが、まあ、その程度のものである。
- 親の死に目にあえないことの何が問題なのだろう?
- 僕は両親の墓を作らなかった。生きているうちにできるかぎりのことをしたので、それ以上にする必要を感じない。
- スパンメールはホワイトノイズと同じで、受信していることを示すバロメータとしての価値が認められる。
- 自由な発想はどうすれば生まれるのか。もちろん、考えないと生まれない。突然思いつくものではない。
- 子供は自由だというが、大人ほどではない。
- 世の中、「こいつ何様のつもりだ?」という奴が多いが、たいてい無害だからよろしい。
- 「何故二番ではいけないのか?」と問われ、冷静に理由を答えられないようなら、やめてしまえば良いだけの話である。
- 正義の味方なんてものはどうでも良いが、正義の見方は重要だと思う。
- 「私にはそれはとてもできません」という言葉を聞くまえから、たいていは無理だと分かる。
- 本当のプライドを持っている人は、プライドを懸けたりしない。
- 僕が森博嗣でなかったら、いったい誰が森博嗣なのですか?
- 「抱け」と言われて抱いた大志など、大したものではない。
- 偉いというのは、偉い場所を探して移動したのではなく、自分のいた場所が隆起して、あるいは周りが陥没して、偉くなったのである。
- 若いときには苦労を買って出ろ、というのは、ちょっとした苦労のことで、結局はそれが効率が良い、という意味である。
- 偉い人の話を聞いて、うん、そうだ、そのとおりだ、と思っても、偉くなったわけではない。
- 正直者が馬鹿を見るのは、その正直者が馬鹿だった場合だけだ。
- 僕がイメージする「平和」とは、たとえば2ちゃんねるのやりとりを、内容はそのまま少しだけ言葉を丁寧にしたものである。
- 勝ち組と負け組というのは、負け組が言っている表現である。勝ち組の人は、やった組とやらなかった組としか見ていない。
- 地面に置いた瓦を空手家が割ったとき、瓦を割ったのは、空手家と地面である。
- 人間の輝きは、一所懸命になって探しているから出る光である。
- 日本人は、「国」という言葉を「政府」とか「官庁」という意味で使う。
- トラブルに対する対処こそが、仕事の本質である。
- 人間なんだから、自分らしくないこともしなければ。
- 一番なりたくない職業は政治家である。
- 死ぬほど辛いことはあると思う。たいていの場合、死ぬ方が辛くないだろう。
- 死んだ人をどう処理するかは生きる者の問題である。
- 良い品物だから売れる、欲しいものだから買う、というメカニズムはむしろマイナ。
- 人生経験という言葉があるが、人生以外の経験はできない。
- 森博嗣の言うことは身も蓋もない、というが、そうかもしれない。
- 最近、ようやく大人になれたかもしれない、と思う。
メモ
参考文献
最終更新:2012年10月07日 00:28