窪美澄「ふがいない僕は空を見た」(2010)
評価
★★★☆
ひとこと
R-18文学賞大賞と山本周五郎賞を受賞したという風変わりな小説。
5章立ての連作短編というか、5人の視点から切り取った長編小説というべきだが、
刺激的な前半2章は後半のためにあるように、私には感じられ、
最終章はとても心を揺さぶられた。
全般的には、
湊かなえ「告白」のような人間の嫌な部分が描かれているけれども、
こちらの方はまだ救いがあるように感じる。
分類
- ミクマリ
- 世界ヲ覆フ蜘蛛の糸
- 2035年のオーガズム
- セイタカアワダチソウの空
- 花粉・受粉
自然、自然、自然。ここにやってくるたくさんの産婦さんたちが口にする、自然という言葉を聞くたびに、
私はたくさんの言葉を空気とともにのみこむ。彼女たちが口にする自然、と言う言葉の軽さや弱さに、
どうしようもない違和感を抱きながら、私はその気持を言葉に表すことができない。乱暴に言うなら、
自然に産む覚悟をすることは、自然淘汰されてしまう命の存在をも認めることだ。彼女たちが抱く、
自然という言葉のイメージ。オーガニックコットンのような、ふわふわでやわらかく、はかないもの。
<中略>
どんなに医療技術が発達したって、昔も今もお産が命がけであることは変わらないのだ。(p262)
本当に伝えたいことはいつだってほんの少しで
しかも、大声でなくても、言葉でなくても伝わるのだ、
と気付いたのは、つい最近のことだ。
もっと早く気付いて、それを夫婦関係にも活用できればよかったのだけど。(p264)
メモ
参考
主人公
助産師の母を持つ高校生の男 ほか
最終更新:2013年07月06日 23:38