平田オリザ「わかりあえないことから」(2012)
評価
★★★☆
ひとこと
わかりあえないことから、どうやって始めるか?という視点で書かれたコミュニケーション論。
分類
目次
- コミュニケーション能力とは何か?
- コミュニケーション教育
- 「コミュニケーション能力」が求められている
- コミュニケーション能力のダブルバインド
- なぜ、引きこもるのか
- 単語で喋る子どもたち
- 伝えたいという気持ち
- 「口べた」というハンディ
- 産業構造の変化
- 慣れのレベルの問題
- 「現場」という幻想から離れる
- 喋らないという表現
- 中学国語の教材
- 教えない勇気
- フィクションの力
- 支えきれない嘘はつかない
- 喋らないという表現
- コミュニケーション教育は国語教育か
- ランダムをプログラミングする
- アンドロイド劇場
- 長期的な記憶はどこから来るのか
- 短期的な記憶を問う試験
- メチャクチャに教えた方がいい
- ランダムをプログラミングする
- 再びアンドロイドについて
- 冗長率を操作する
- その竿を立てろ
- 西洋近代演劇を模倣した不幸
- 現代口語演劇理論
- 新しい日本語教育
- 話し言葉の教育の問題
- 間投詞の多い戯曲
- 「対話」の構造を作る
- わかりあう文化
- 対話と対論の違い
- 冗長率
- 冗長率を操作する
- 「くりかえしの文法」
- 「対話」の言葉を作る
- 言葉は作られる
- 「対話」の言葉だけが作られなかった
- 女性からの指示語
- コピーとってください
- 言語的権力
- 政治家の言葉
- 「対話」のない国家
- 「対話」を意識する
- コンテクストの「ずれ」
- 大阪大学コミュニケーションデザイン・センター
- 演劇を創る授業
- 「言い出しかねて」を考える
- 列車の中で話しかける
- 「相手による」は文化にもよる
- 少数派であるという認識
- コミュニケーション教育は、人格教育ではない
- 話しかけにくい社会
- 「何年生まれですか?」
- 「旅行ですか?」という台詞
- 話し言葉の個性
- コミュニケーションデザインという視点
- 「ずれ」による摩擦
- 銀のサモワール
- バルコニー
- 「ボウリングに行こうよ」
- 「田中先生が大好き」
- 「胸が痛いんです」
- ホスピスでのコミュニケーション
- 弱者のコンテクストを理解する
- コンテクストを理解する能力
- 他人が書いた言葉を話す
- 話しかける要素は何か?
- コミュニケーションをデザインする
- 会議をデザインする
- 「サッカー好きなんですか?」
- シンパシーからエンパシーへ
- コンテクストの摺り合わせ
- 協調性から社交性へ
- 成長型の社会から成熟型の社会へ
- 落書き問題
- フィンランド・メソッド
- 「みんなちがって、たいへんだ」
- いい子を演じる
- 演じるサルとして
- わかりあえないことから
「対話的な精神」とは、異なる価値観を持った人と出会うことで、
自分の意見が変わっていくことを潔しとする態度のことである。
あるいは、できることなら、異なる価値観を持った人と出会って議論を重ねたことで、
自分の考えが変わっていくことに喜びさえも見い出す態度だと言ってもいい。<中略>
とことん話しあい、二人で結論を出すことが、何よりも重要なプロセスなのだ。(p103-104)
日本語には対等な関係で褒める語彙が極端に少ない。
上に向かって尊敬の念を示すか、下に向かって褒めてつかわすような言葉は豊富にあっても
対等な関係の褒め言葉があまり見つからないのだ。<中略>
だが、ここに一つだけ、現代日本語にも、非常に汎用性の高い褒め言葉がある。
「かわいい」<中略>
「対等な関係における褒め言葉」という日本語の欠落を「かわいい」は、一手に引き受けて補っているといってもいい。(p116)
メモ
- 冗長率:どれくらい意味伝達と関係のないムダな言葉が含まれているかを示す
参考文献
最終更新:2013年12月28日 17:02