見城徹「編集者という病」(2007)

分類


目次

序章 悲惨の港を目指して―暗闇のなかでの跳躍
第1章 SOUL OF AUTHOR
第2章 SOUL OF EDITOR
第3章 SOUL OF PUBLISHER
オンリー・イエスタディ あとがきに代えて----

評価

★★★☆☆

ひとこと

幻冬舎社長のカリスマ社長の仕事が書かれた一冊。
彼のことを全く知らない私にはよく理解ができたが、リフレインが多少しつこい気もする。
明らかに、私とは世代の違う人、で、異なる生き物、だなというのが正直な感想。
でも、彼が確かに「激烈」であり、「普通の人(エイリアンでないという意味)」であると思う。彼にとっての〝通常”は私にもよく理解できる。そして、パイオニアには無条件で敬意を表する。
2-3章が面白かった。Authorの横顔より、もっと彼自身に迫ってほしかった気もする。
そして、読書量が足りない人間へ好奇心を起こさせる配慮もなされているところが、さすが編集者だと思う。


なお、尾崎豊にはたいして興味がなかったし、これを読んでも、早逝したから伝説になってしまっただけで「作られた虚像」だったという印象をぬぐい去れない(もちろん才能はあったのだろうけど)。それよりも、石原慎太郎と夏樹静子はちゃんと読んでみようかという気持ちになった。

気になる表現

他のあらゆる争いや戦いと違って、前提条件となるのは、勝者に何ものをも与えぬこと―その者にくつろぎもよろこびも、また栄光の思いをも与えず、さらに、断然たる勝利を収めた場合も勝者の内心にいかなる報償をも存在せしめないこと―である。(p3)(アーネスト・ヘミングウェイ『勝者には何もやるな』)

ヤドカリは、一度宿にした貝には二度と戻らない。また、最後の宿にした貝のなかでも死なない。死の直前に宿を発ち、その消えかけた命は、磯を揺らぎ、水中でたちまち固まり、収縮した死体となって静かに沈殿し、蟹や鯊の餌食になるか、または引潮に流され、海の一部となって消えていく。(p211)

僕は売れたものはすべて正しいと思っている。売れたものはすべて、いい本なんです。『なぜこんなものが売れるのか?』と思っている人は、世の中をよくわかっていない。いい本が必ずしも売れるとも限らない。売れる本には、必ず白と黒の豊かに混じり合ったグレイが存在する。両極を抱きかかえて混交させ、両極を激しく振幅させて初めて、人を無意識に刺激させるものができるんです。読者はバカじゃない。それがフラットか豊であるかは一発で見抜かれる。(p213)

小さいことにくよくよするな!なんてウソだ。小さなことにくよくよせずに、大きなことがプロデュースできるわけがない。小さな約束も守れない奴に大きなことができるわけがない。(p221)



メモ

  • 売れるコンテンツの四つの要素
    1. オリジナリティがあること
    2. 明解であること
    3. 極端であること
    4. 癒着があること

―暗闇の中でのジャンプ:認識者から実践者になること。(柄谷行人)
    • ヴェンダース「ベルリン・天使の詩」
    • 沢木耕太郎「深夜特急」



初出一覧

傘をなくした少年 尾崎豊 『Free&Easy』(2001)
誕生 BIRTH 尾崎豊 『月刊カドカワ』(2001)
エクリチュールとステージ 尾崎豊 『Edge of Street』(1992)
再会 尾崎豊 『キリン・ラガー・クラブ Vol.8』
行為への渇望 石原慎太郎 『ダ・カーポ』(2001)
不眠症を誘う彼らの死 ①安井かずみ、②山際淳司、③鈴木いづみ、④尾崎豊、⑤中上健次 『Free&Easy』(2002)
ミッドサマーの刻印 ①坂本龍一、②松任谷由実、③石原慎太郎、④村上龍、⑤浜田省吾 『Free&Easy』(2002)
『快楽』を武器に共同体に孤独な闘いを挑む作家 村上龍 『Ryu Book』(1990)
謎だらけのヴァンパイア 村上龍 『Free&Easy』(2002)
EXITなき広尾の店で 坂本龍一と過ごした四年 『Free&Easy』(2003)
芥川賞の賞金 中上健次 『ロマーニッシュエス・カフェ物語』(1995)
最後の挨拶 鈴木いづみ 『私小説』(1986)
物語の夜 五木寛之 『五木寛之小説全集月報17』(1980)
スリリングな巨人の綱渡り 五木寛之 『流されゆく日々③ 花はどこへいった』(1983)
夏樹静子の『デュアル・ライフ』 『デュアルライフ』(1998)
会社設立の頃 内田康夫 『浅見光彦 the complete』(2006)
お茶の香り 重松清 『静岡新聞』(2001)
疾走者の恍惚 大江千里 『アポロ・ツアー』(1990)
著者が仕事をしやすい環境づくりにいかに専念するか 銀色夏生 『本の雑誌』(1991)
勝者には何もやるな ヘミングウェイ 『Free&Easy』(2001)
キャンティという店 『キャンティ物語』(1997)
三人の大家ときらめいている新人三人を押さえろ 『編集者の学校』(2001)
自分を変えるものしか興味はない 「Harvester」(1986)
『出版幻想論』序文 (1994)
過去の栄光を封印し、新たなる標的に立ち向かえ! 『Free&Easy』(2002)
見城徹はチキンハートゆえに勝つ 『Free&Easy』(2002)
ベストセラーを生みたければ混沌の海に身投げしろ! 『Free&Easy』(2002)
見城徹は小さなことにくよくよし他者への想像力を磨く 『Free&Easy』(2002)
四〇歳代を闘い終えて…… 『Free&Easy』(2005)
見城徹が選んだ男 マッスル小野里 『Free&Easy』(2002)
濃密な季節 清水南高 『清水南高校創立25周年記念誌』(1998)
人生の一日 五味川純平 『人間の条件』(2005)
懐かしい兄よ 大島幾雄 『東京二期会プログラム』(2006)
アイ・アム・ミスター・エド 『ドッグ・ワールド』(2000)
常識って、僕より無謀です 『New Paradigm』(1999)
見城徹の編集作法 『編集会議』(2003)
幻冬社創立「闘争宣言」

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最終更新:2010年08月15日 14:12