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朝五時。フライゴンの少女が目を開ける。少女の部屋は屋根裏部屋のため、梯子を使い下に降りる。少女はまず、全体的にピンクをイメージしているパジャマを脱いで、上下共に赤いジャージを着る。そして、朝食のためのご飯を六合炊く。少女は一合半しか食べないが、成り行きで一緒に住んでいる奴が大飯喰らいのために、朝から六合も炊く。その後は、外に出てジョギングを始める。

ジョギングをするとよく友達とすれ違う。格闘少女、警官の息子、軍人。それぞれポケモンだったり、人間だったりする。

そして、帰ってくる。家は一階建ての家だが、二人で住むには十分な大きさだ。玄関の上には『便利屋』と書いてある。だが、住んでる村の人達は便利屋が何なのか知らない、てかわからないため、利用客は友達との間だけと言う悲しい現状。だが、今日だけは違った。

「・・・!」

少女はポストに、一枚の手紙が入っている事に気づいた。少女はポストを開け、手紙を手に取り、内容を見始める。



手紙の一番上の字を読む。そこには、依頼状の文字があった。

「や、やったーーー!」

少女は嬉しさあまりにその場でジャンプして、家の中に入る。そして、真っ先に同居している人の方に行く、そこには全体的に白と紫のポケモン、一般的には極悪、最凶、冷徹の三拍子が揃うポケモンのミュウツーが寝ている。

「アッシュ!起きて!」

少女は寝ているミュウツーのアッシュの体を揺する。しかし、アッシュは「もう少し寝かせて」と言って寝返りをうつ、少女はアッシュをベッドから引きずり出して、後ろから腰を抱き抱えながら、持ち上げて、後ろに反り返りながら、倒れる。

「グフッ!」

少女のジャーマンスープレックスを喰らって、後頭部を抑えながら転がる。

「痛いだろ!」

アッシュが怒って、叫ぶが少女が渡した手紙を見て顔を変える。そして、立ち上がり、寝間着を脱いでタキシードに着替える。少女も自分の部屋に戻り、私服に着替えて、武器の木刀を持ってアッシュの方に戻る。

「行くぞライフ」

アッシュの生気に満ちた顔を見て、ライフは笑顔でついていった。



依頼状には、『待ち合わせ場所、村の入り口の前、馬車で迎えに行きます』と書いてあり、アッシュ達は村の入り口に向かう。村は、そんなに工業が発展していない、正直言えばド田舎であり、辺りは池、田んぼ、畑等に包まれている。そんな環境のせいかこの辺りの野生のポケモンは凶暴なため、誰も外に出ようとしない。

ちなみに、ライフ達は野生とは違う知能が発達したポケモン達で、一般的に「ポケディアン」と呼ばれて、人間と同じような扱いになっている。

「初仕事だね」

今まで便利屋は、友達との間だけしか活動していないため、わざわざ村の外を出るのは今回が初めてである。

「ああ、気を引き閉めろよ」

とアッシュはライフの頭にぽんっと手を置く。その時、馬車が到着する。

「アッシュさんとライフさんですね」

アッシュのタキシードよりも、はるかに高級なタキシードを着た男が降りてきた。アッシュは届いた手紙を相手に見せて、男に確認してもらってから、馬車に乗り込む。



馬車の中で、ライフは依頼状の内容を確認している。依頼状の内容は

『依頼状
9月の18日そちらに伺います。
依頼を受けてくださる場合は村の入り口の前でお待ちください。馬車でお迎えにあがります』

と書かれている。依頼の内容には一切何も書かれていないので、少し心配になりながら、手紙をアッシュに渡す。

「アッシュ、この馬車、かなりの物だよ。レンタルじゃ、ここまでいい馬車はない」

馬車は高級品のため、普通の一般人では買うことは出来ない。だから、レンタル用の馬車があるのだが、そんな馬車とは、椅子とか細工とかに格が違いすぎた。明らかに、馬車の値段をはるかに凌ぐ馬車である。

「ああ、間違えない。この依頼人は…」

そんなアッシュ達を乗せた馬車の目の前には、村では考えられない程の豪邸が広がっていた。



馬車は門をくぐり、屋敷の入り口前まで進む。入り口前でこの屋敷の使用人らしき男性が馬車の扉を開ける。ライフとアッシュが降りると、田舎者の二人には目を疑うような光景ばかりである。屋敷の噴水、形作られた木、そして、屋敷のステンドグラス。

「どこの童話だ?」

アッシュがライフに尋ねるが、ライフは「さあ…」としか答えられなかった。

屋敷に入り、アッシュ達を出迎えたのは、屋敷の主である男の人である。その人の顔は今まで恐怖に顔を歪ませていた顔から、安堵に満ちた顔に変わっていた。

「ようこそ来ました。さあこちらへ」

男の人は、自分の書斎にアッシュ達を招き入れて、ソファーに座らせる。そして、座ったアッシュ達に一枚の紙を見せる。

「私は、相沢進(あいざわすすむ)と申します。あなた方は武術に優れていると伺いました。どうか、暗殺者から私を護っていただきたい」

その紙には、いきなり赤い字で「殺人予告」と書いてあった。ライフはそれを手に取り、折り曲がった部分を広げる。



『殺人予告
9月の19日にあなたの命を奪います。言っておきますが、警備など無駄です。あなたを確実に裁きを下します』

これが殺人予告の文である。その文の下には、赤い手形が付けられている。ライフはホラーやグロ系統が苦手なので、思わず身をすくめてしまった。

「誰かのイタズラって事は?」

アッシュが相沢に尋ねてみる。しかし、相沢は首を振って

「ありえません、実際私の近くで恐ろしい事が起きています。朝起きたら、ベッドに大量の手形がついていたり、タンスが削られていたり、はにわが夜、庭で踊ってたり。他にもいろいろ…」

相沢が恐ろしさに身をすくめる。ライフは、手紙を再び手に取り読んでみる。そして、ふと気になる点を挙げる。

「なんでわざわざ殺人予告を出したんだろう?殺すなら、普通に出さずにこっそりやれば安全なのに…」

ライフの言うことに、アッシュが確かにと顎に手を当てる。わざわざ殺人予告と出して警備を強化させるよりも、普通にこっそりやれば安全で確実に実行出来る。



「まだあるよ、この赤の手形。普通、こんなのを着けたら指紋が付着しちゃうじゃん。なんでわざわざ…」

手形だけで、大抵の犯人は掴める。手形のポケモンか人間、また手形の大きさを合わせると、それだけで犯人がわかってしまう。指紋が一致すれば、尚更である。

「これは脅しではないか?アフリカの呪術師が呪い殺すとか言って、呪われた人間が恐怖で心臓麻痺を起こしたとか…」

確かにそれはそれで、つじつまが合う。しかし、ライフには何かが納得しなかった。他に何かがあるかも知れないからである。

「最後に、この裁きってなに?懲らしめるって意味をどうして使ったんだろう?」

それを言ってからライフは相沢を見る。相沢はしばらく考えたが、なにも思いつかないらしい。

「警察には言いました?」

アッシュが相沢に尋ねる。

「はい、一番近いあなた方の村の刑事さんを」

その頃、門のところで一人の警察官の服装をした少年が立っていた。



「橘キノ、華麗に参上ッス」

その子は刑事にしてはまだ幼く、少年と言うよりは青年って感じの刑事である。ちなみに実年は16歳、髪の毛はボサボサで、目は釣り上がっているがいるが、その目は、熱血と爽やかを両方に当てはまるような瞳であった。

「あれ?キノだ」

来る刑事にとりあえず挨拶しようとした刑事は、朝、ジョギングしている時に出会った友人の一人、キノである。

「あれ?ライフちゃんにアッシュ!」

キノも少し驚いた様子を見せる。ライフは近づいて、えへへと笑いながら、「初仕事」と呟く。

「やっと仕事が来たッスか、そりゃあよかったッスね」

キノは仕事が来ない便利屋を気にしていたので、キノも便利屋の初仕事を自分の事かの様に喜んでいる。アッシュは部屋から持ってきた手紙をキノに見せる。

「うわ…。これまたすごいッスね」

キノは手紙を見て思わず顔を後ろに下げる。



ライフは相沢の書斎に戻りながら、自分の疑問に思った事をすべてキノに教えた。キノは、はあ~、と言いながら殺人予告を眺める。

「てことは、これは相沢さんに対する恨みがそうとうって事ッスね。クワバラ、クワバラ」

そんな事を言いながら、相沢の書斎の中に入る。とりあえず、しばらく打ち合わせをした後、ライフとアッシュは夜、相沢の護衛をするために少し早く休ませてもらう事にして、ライフとアッシュ、それぞれ別の部屋で寝かせてもらった。ライフは自分の荷物を持って、部屋に入る。そこはライフの部屋より広く、明るかった。ライフはあまり疲労の無い体を横にして、目を瞑る。

アッシュも、ライフとは違う部屋でベッドの上に座る。普段こんなにも、柔らかくふかふかなベッドで寝たことの無いため、アッシュは喜びのあまりに、すでにタキシードを来たまま寝てしまった。



夕方になる。辺りはすっかり赤く夕日に染まっている。そんな中、寝ているライフの側に一つの影が出来る。それは、アッシュでもキノでもない、男の手には斧を持っている。男は斧を掲げ、そのまま振り下ろす。斧の刃がライフに当たりそうになった時、ライフは寝返りをうってたまたま避ける。そして、斧は標的を外してベッドに当たる。当たった時、弾みで体が揺れてライフが目を覚ます。

「な!」

驚いているライフに再び斧が斬りかかってくる。ライフは、ベッドを蹴って弾みで体を浮かせて、斧を避ける。そして、避けた後転がり、ベッドの横に立つ。

男はベッドの上に上がり、ベッドから飛び掛かって、斧を振り下ろす。しかし、ライフが狙っていた瞬間である。その間に横に逃げて、ベッドの反対側にある荷物の所に近づく、そして、プラスチック製の鞘から木刀を取り出す。すると、ライフの目は頼りない少女の目から、歴戦の勇者のような凛とした瞳へと変わる。



男にもその雰囲気が伝わったのか、少し動揺する。その隙を突いて、ライフは床を蹴る。広いベッドの幅を飛び越え、空中で男の顔面を蹴り飛ばす。男は怯み、仰け反った時、ライフが木刀を自分の真上に挙げて、床に着地すると同時に、顔面をぶっ叩く。

男は鼻を強打したのか、大量の鼻血を出しながら床に倒れる。ライフは斧を取り上げて、木刀を鞘に納めて男の腕を掴んで、荷物に入っていたロープできつく縛った。

「ふう、これでよしと。しかし、誰なんだろう?この人…」

例の暗殺者か、そう考えた時アッシュが急激に心配になってきて、木刀を持って、アッシュの部屋に向かった。

アッシュは爆睡をしている。そんな中、ライフとは違う影が生まれ、手には剣が握られている。男はアッシュの顔面に剣を刺そうとした時、寝返りをうったアッシュの足がたまたま男のみぞおちに入り、男が怯む。しかし、アッシュは起きる気配が無い。


最終更新:2008年09月18日 18:00