小ネタ アベチヨ ◆VYxLrFLZyg
今日はあいにくの雨。
でも、雨の日は草むしりしなくていいから私にとってはつかの間の休息。
雨が上がったら一斉に雑草が生えてくるから、後が大変なんだけど、今は喜んでおこう。
だって、雨の日は阿部くんとお昼を食べれるから。
「行くぞ、篠岡。」
授業が終わるチャイムが鳴った途端、阿部くんが私に声をかける。
お弁当袋を抱えて阿部くんの後を追う。
いつも二人で食べるのは屋上に続く階段の踊り場。
教室だと、ちょっと人目がありすぎるし、みんなにばれてるけど
私もちょっと恥ずかしいしね。
座って阿部くんを見ると、いつものおっきい二つの弁当箱を開けるところだった。
一つ目の弁当箱は、白いご飯。二つ目の弁当箱には、おかず。
ほんといっぱい食べるよね。その大きさにびっくりしちゃう。
でもなぜか阿部くんは、二つ目の弁当箱を開けた途端目を見開いて、また閉じた。
どうしたんだろう?
「どうしたの?阿部くん?」
一つ目の弁当も閉じて、阿部くんは片手で顔を覆った。
「いや・・・。篠岡・・・。お前の・・いや、なんでもない。」
歯切れ悪く話す阿部くん。一体どうしたんだろう?
阿部くんは再びゆっくりと一つ目の弁当箱を開けて、二つ目の蓋も開けた時。
「うおっ!阿部の弁当スゲー!!」
いつの間に来てたのか、田島くんが阿部くんの後ろから肩越しに覗き込んでいた。
「うはあああ!!何だコレ!ウける!!」
反対の肩越しに泉くんまで覗き込んできて。
二人揃ってはじけたように大爆笑し始めた。
「お、お前ら!!」
阿部くんが真っ赤になって、二人を振り返って。
そして私は見てしまった。阿部くんの二つの弁当箱。
二つとも、白いご飯だった。
「っふっっプは、っ!あははははは!」
こらえきれず、私も吹き出してしまって。
阿部くんは耳まで真っ赤になって慌てて弁当箱に蓋をした。
田島くんと泉くんの向こうに、三橋くんが一人蒼い顔して
笑い転げる私たちを震えながら見ている。
阿部くんはそんな三橋くんをチラリとだけ見て、
すでに開けてた私のお弁当を勝手に片付け出して、
笑ったままの私の手を引いてその場を離れた。
「いー加減笑うのヤめろ、篠岡。」
私の手をぐいぐい引っ張りながら阿部くんがやっぱり赤い顔で私に文句を言うけれど。
だって、あんなにおっきいお弁当箱が、白いご飯だけなんだよ?
しかも、それぞれ梅干ひとつづつしか乗ってないんだよ?
日の丸弁当がふたつだよ?
笑いがこらえきれないよ~。
「くそっ!笑ったお詫びに、篠岡の弁当のおかず、ちょっと寄越せよな。」
だからなんでそう、えばった言い方するんだろう?そこがツボなんだけど。
「くそ!シュンの弁当はおかずのみかよ!そっちの方がましじゃねえか。」
「あ、弟の弁当と混じっちゃったんだ?」
やっと笑いの波が引いてきて、会話が出来る状態まで回復した。
二人で部室までやってきて、やっとそこでお弁当を食べれた。
おかずほとんど食べられちゃって、代わりにご飯をやたらくれたけど、
私の方が損してるよね。これって。
あ、ダメだ。また思い出しちゃって、笑いが。
「ふ、ふふっ・・・ふふっ。」
必死で口を手で覆って笑いを堪えようとしても、可笑しさはさらにこみあげちゃう。
俯いて誤魔化そうとしても、肩が震えちゃう。
阿部くんがムッとした雰囲気が伝わってきて。
ここらで笑うのやめないと、阿部くん本気で怒っちゃうかも。
あ、でも、だめだ。
「笑うなって言ってんだろ?」
そういって阿部くんが立ち上がって机をまわってくる気配がして、
笑いを誤魔化すために口を押さえてた手を掴まれて、
代わりに阿部くんの唇が、私の唇をおさえてきた。
「もう、笑うなって。」
少し唇を離してそういった後、また私の唇を塞ぐ。
「・・んっ・・・。」
阿部くんの舌が入り込んでくる。
暖かく柔らかい阿部くんの舌が私の舌と絡んで、切ない痺れを私に起こさせる。
阿部くんの手が私のシャツのボタンを外して。
椅子に座ったままの私に、阿部くんが地べたに膝をついた姿勢で
私のはだけたシャツの隙間から胸にキスをしてきた。
抵抗、しなきゃ。ここ、部室だし。
そう思っても、私の手は意思と反して阿部くんの頭を抱きしめてる。
阿部くんの手が、私の太ももをすっと撫でた時。
予鈴が鳴るのが聞こえた。
「阿部くん!戻らなきゃ!」
思わず阿部くんを突き飛ばして、慌ててシャツのボタンを直そうとすると、
阿部くんは頭を抱えて蹲ってるところだった。
あれ?強く突き飛ばしちゃったっけ?
「篠岡、テメっ・・・。」
なにか文句を言おうとしてる阿部くんを私は必死でせかす。
「阿部くん!ここからなら走らないと間に合わないよ!急がなきゃ!」
「そんな、スグに戻るかよ・・・。」
すこし前かがみになった阿部くんがのろのろと弁当箱を片付け出して。
ああ・・・・。戻るまでに、アレ治るのかな?
でも私も、中途半端な状態にされちゃったまま授業受けなきゃいけないんだから
おあいこよね?
最終更新:2008年01月06日 18:58