ゲーム 1/4
「しのーかもゲームやんねぇ?大貧民!」
始まりは田島君のこの声だった。
合宿初日の夜。
体力の有り余っているみんなは、カード2組使って大貧民をやっていた。
みんなと言っても、花井君・阿部君・栄口君の主将組は居なかったけど。
マネジの仕事も一段落していたので、参加してみようかな?
なんて思ってのが、運のつきだった。
「罰ゲームあっからね、大富豪が大貧民に1個めーれー出来んの!」
「篠岡もォ!?」
「最下位にならなきゃいいんだって!」
「え、あ、や、やば、いよ!」
「これは、本気出さないとね。」
「あー、篠岡今すぐ部屋に戻った方がいい。」
巣山君の言葉に早まったかな?と思ったときには、
田島君の隣に座らされて、カードが配られた後だった。
「上っがり~!俺、1番!」
田島君が、大富豪。
「ニシシ!んじゃ、大貧民は昨日のオカズを白状!」
え!?夕御飯の話じゃないよね??
向かいの巣山君がすまなそうにしている。
お願い!止めるなら、もっとしっかり止めて!
大貧民になった水谷君が1人では死ぬまいと、
「た、田島から回ってきた西広のDVD!
『家庭訪問~センセイのひ・み・つ~』で!」
田島君・西広君を道連れにしようと足掻く。
「あ、次は沖に回してね。」
「あれ、3が一番いいなっ!」
「俺を、そんな目で見ないでぇっ!」
が、受け流されダメージは富豪になった沖君へ。
一日でオナニーした最大回数!
(ろ、6回!)(え、少なくね?)
明日、朝一でモモカンにスライディング土下座しろ!
(やましい事があるみたいじゃないか!)
部活初日の、花井の真似!
(『か、監督、女って、あ、ありえねーだ、ろ』て、ハズっ!)
甘夏を丸絞りして飲め!
(三橋スゲー!マジ絞った!!)
今まで、どんな練習にも負けなかったみんなが、今にも死にそうだ。
けど、何とか今まで、大貧民にはならずに済んだ。
「もう遅いし、次で最後にしようか?」
西広君の言葉で、最後の戦いが始まった。
西広君が大富豪。巣山君・沖君・三橋君が上がって、残り4人。
今の私の手持ちは、2が1枚・1が2枚。
勝てる!大丈夫!!
おかあさん。私、貞操守ったよ!
「ムフッ!かっくめ~い!」
田島君の一撃で、ワタシハジゴクニオチマシタ。
「篠岡が大貧民か!」
「んじゃ、しのーかが罰ゲームな!」
「そーだな、篠岡には、」
私、どうなっちゃうんだろう?
ドコが、1番感じるとか?
好きな人のカミングアウトとか?
監督のブラのサイズ調べてこいとか?
「じゃあ、篠岡の罰ゲームは、」
西広君による死刑宣告が下った。
合宿2日目、快晴。
「あ、阿部君ちょっと、い、いい?」
「ん?」
朝食後、練習前の阿部君を呼び止める。
姿は見えないけど、きっとみんな私のこと見てるんだ。
「どーかした?」
言わなきゃ。
阿部君に伝えないと!
精一杯の笑顔を浮かべ、勇気を出すのよ、千代!
「たっちゃん、千代を甲子園へ連れて行って!」
しばらくの、部内で阿部君を『たっちゃん』と呼ぶのが流行り、
その度に阿部君は怒っていました。
おかげで阿部君に1週間避けられ続けました。
もう、2度とゲームなんてしないんだから!
最終更新:2008年01月06日 19:04