夜の闇 ◆VYxLrFLZyg
篠岡が意識を取り戻した時、
あたりは暗く、かろうじて部屋の中にいるということしかわからなかった。
のろのろと身体を起こし、あたりを伺う。
「起きたか?篠岡。」
後ろから聞こえた声にびくっと振り向くと、暗闇の中に人影が見え。
その声には、聞き覚えがあって。
「阿部くん・・・?」
篠岡の声を合図にしたように、パチンと音がした。
「んっ・・・。」
急に明るくなった部屋に、目を少し焼かれて目を閉じる。
光に目が慣れておずおずと周りを見渡すと。
少し広いどこかの部屋で。
野球部のみんなが、篠岡を取り囲むように、思い思いに座っていた。
「え・・・?みんな・・・どうしたの?」
皆、にこりともせず、どこか暗い表情で、篠岡をじっと見つめている。
いつもと違う様子に、篠岡の背筋に悪寒が走った。
「篠岡ってさ。一体誰が好きなんだ?」
唐突な阿部の質問に、意図がわからず混乱する。
「ま、かわいそうだからさ。最初は好きな奴とがいいだろ?」
優しい目で微笑みながら、そう続ける阿部の質問にさらに篠岡は混乱して。
意味は解らないのに、本能で何かを察し恐怖が沸き起こってくる。
手が震えだし、歯の根もかみ合わなくなってきて。
篠岡はカタカタと震えだした。
「阿部、篠岡ビビってんじゃねーか。そのウソ臭い笑顔、やめろよ。」
泉の冷たい突っ込みに、阿部は微動だにせず反論する。
「緊張ほぐそうと思ってやってんだけどな。」
そういって、阿部は表情を消した。
助けを求めて皆を見渡すが、誰も笑っていない。冷たい目で篠岡をじっと見ている。
泉も、西広も、巣山も、三橋も、田島も。
阿部も、沖も、水谷も。
誰も、何も言わない。
花井と、栄口がいない。
そのことに、篠岡が気づいた時。
「いるぜ。花井も、栄口も。」
篠岡の思考を読んだかのようなタイミングで、泉が発言した。
さっと数人が動いた後ろに
手と脚を縛られ、猿くつわをかまされた花井と栄口が、寝転ばされていた。
二人の両目は、恐怖と不安に見開かれて、視線を篠岡と、周りに交差させる。
「二人はさ、最後まで反対してたんだよ。でもこういうのって、連帯責任だよな~?」
実に爽やかな笑顔で水谷が発言した。
「篠岡が・・・悪いんだよ。」
ポツリと、西広がつぶやいて。
「お前が、俺たちを裏切るから、悪いんだ。」
はっきりと、そう田島が断言した。
一体、何をしたというのだろう。
篠岡は必死で自分がしたこと思い返す。
全員揃ってて、本命は誰かと聞かれていて。
本命なんて、いない。誰のことも、好きではない。
みんな、仲間だから。
そう、それぞれに伝えたことを思い出す。
部活を引退してしばらく経った頃。
全員から告白された。
かわるがわる篠岡を呼び出しては告白してきたそれぞれに、
篠岡は一度も頷かなかった。
部内の誰かに、恋心なんて抱かない。
みんな、仲間で、甲子園を目指す、同士で。
一心不乱に野球に打ち込むみんなを見て、高校野球を肌で感じることが出来て。
甲子園に行けて。
そんなチームの、仲間の中に特別扱いなんてしてはいけない。
特別なんて作ってはいけない。
何かの拍子に湧き上がりそうになる淡い特別な気持ちをその都度心の中で潰して。
そうやって、やっと。
何も感じなくなって。
ただ、純粋に野球してるみんなのサポートに打ち込めて。
一つのチームになれたとそう思っていた。
告白された時、自分はそんな目で見られていた事がショックだった。
性別を超えた仲間になれたと思っていたのは、自分ひとりということが悲しくて。
しかし、もう、誰にも恋心など抱けない。
3年かけて、すべて潰したから。
断る選択肢しか、篠岡にはなかった。
「何で、他のガッコの奴と付き合ってんだよ?」
篠岡はビックリして田島に顔を向ける。
「な・・・なに?そんなこと・・してない。」
「隠す必要はねえよ。篠岡。」
泉がゾっとするような冷たい声で篠岡をさえぎって。
「桐青のリオウと・・だろ?アイツオレにメール送ってきたもんね。」
田島が放ったその名を聞いて、篠岡は目を見開いて叫んだ。
「ご、誤解よ!あ、あれはそんなんじゃ・・・・。」
「あ・れ・は・そ・ん・な・ん・じゃ・・・ねえ。
どんなんだって言うんだろうな。」
一字一句、区切るように、阿部が呟く声が、篠岡の反応を遮る。
本当に付き合ってなどいないのだが、もう話を聞く気すらないようだ。
確かに、桐青の仲沢とデートらしきものをした。
最後の夏大で、告白されて断ったのだが
思い出に一度だけデートして欲しいと頼まれたからだったのだが。
まさか、その件で篠岡と仲沢が付き合ってると思われるなんて。
「ほ、本当に、付き合ってなんか・・・いない。」
「オレらはあっさりフッたくせに。リオウとはデートしたんだろ?」
田島がまっすぐ篠岡を見つめて、責める口調で話す。
「裏切りじゃなくてなんなんだよ?」
その言葉に、心をぎゅっと掴まれたような痛みが走る。
その行動が、みんなを傷つけたのだろうか?
みんなを追い詰めたのは、自分なのだろうか?
みんなの告白は嬉しさよりも悲しさしかなかったのだが、
心を冷えさせてしまったのは、自分なのだろうか。
こんな・・・行動にでるほどまでに。
みんながなんのつもりで、自分をここに連れてきたのか。
それは・・・。
背筋にゾクリと悪寒が走る。
歯の根は噛み会わなくなり、手先は震えだす。
「察したみたいだな。篠岡。」
いつの間にか後ろにまわっていた阿部の手がするりと篠岡の顎を捉え。
篠岡の耳元にゆっくり口を寄せ、阿部が呟いた。
「オレたちは、狂っちまったんだ。」
「抵抗してもいいぜ。篠岡。」
泉が一歩前に近寄って、篠岡に声をかける。
「痛い思い、したくないなら抵抗するな。篠岡。」
阿部が耳元で篠岡に囁く。
カタカタと震え続ける篠岡の両目は恐怖に彩られて。
抵抗するほどの力すらも抜けてしまった篠岡のシャツのボタンを阿部がはずしていく。
「阿部。」
阿部のその行動を、泉が制した。
「オレが一番だろ。」
その泉の言葉に、阿部は篠岡から手を離して、部屋の隅まで下がり。
震えたまま動かない篠岡を泉は抱き上げ。
「じゃ、先にいかせてもらうぜ。」
そういって部屋を出て行こうとする泉に阿部が声をかける。
「泉、ちゃんと使えよ?」
泉は肩越しにちらりと振り向いてそのまま返答した。
「わあってるよ。」
篠岡は何か柔らかいものの上に放り出されて、正気を取り戻した。
「きゃっ!」
それはベッドだと気がついた時、ベッドサイドでは泉が袋の中の物を確認しているところだった。
「い、泉くん。」
「何だ、正気に戻ったのか?ま、どっちでもいいいけど。」
泉が手に取った箱を、がさがさと開ける。
篠岡は、泉の目が自分に向いてないことに気がつき、そっとベッドの端に移動する。
一気に飛び降りて、逃げようとした時、泉がすばやく篠岡の手首を掴んで、
ベッドにそのまま引きずりこんだ。
「きゃあ!」
「無駄だぜ。篠岡。」
泉はそのまま篠岡にのしかかり、膝で篠岡を挟み固定する。
冷たい目で自分を見下ろす泉に、篠岡は涙を流し、懇願する。
「な、何で・・!?や、ヤダ・・やめてよ。」
目から大粒の涙を流し、訴える篠岡を見ても泉の表情は何一つ変わらず。
泉はそのまま篠岡の首筋に顔を伏せた。
ヒヤリとつめたい唇の感触を首筋に感じ、背中に恐怖が走り、篠岡は泣き叫ぶ。
「いやあああ!!ヤダ!ヤメテ!!」
振り払おうと手を足をばたつかせるが、泉はビクともせずに身体を捩じらせて
抵抗する篠岡の服を器用に脱がせていく。
ボタンをはずし、背をのけぞらせた瞬間に背中に手を回しホックをはずし。
直接乳房を強くもまれ、篠岡は痛みに動きを止めた。
「イ、 痛い!!」
「篠岡。抵抗してもいいけど、無駄だぜ?」
底冷えするような目に射すくめられ、篠岡の目が恐怖に見開かれる。
「ど、どうして・・・?」
「お前、覚えてるか?お前にコクったオレらの順番。」
泉の言葉に、告白してきたみんなの顔が次々と浮かんでくる。
「に、西広くん。三橋くん・・・水谷くん・・沖く・・。」
そこで篠岡ははっとなり、思わず口に出す。
「泉くんは、最後だった。」
「そうだ。オレは最後だ。どんな気持ちだったか、お前、わかる?」
そこで初めて、泉の目に感情らしきものが浮かび、苦悩にゆがんだ。
「お前が、もし、誰かの告白を受け入れてたら?オレはそこであきらめなきゃいけなかった。
ヤキモキしたぜ?やっとオレの番になった時のオレの期待と絶望、わかるか?」
篠岡の胸に激しい罪悪感が沸き起こり、新たな涙が溢れ始めた。
「ずっと、お前を甲子園に連れて行こうと、がんばった・・・。」
泉の表情が、酷く傷ついた子供のような悲しい顔に変わる。
「・・・たった一瞬だけでも、篠岡に触れれるのなら・・・・
お前をほんの一瞬でも、オレだけのものにできるなら!!。」
見る見るうちに泉の目に涙が溢れ、篠岡の顔にポタポタと落ちていく。
「オレは、後悔なんてしない。」
泉は自らの目から溢れる涙を拭うこともせず、篠岡の身体に身を伏せ、
抵抗を続ける篠岡を蹂躪して行った。
巣山が部屋に入ると、暗い部屋で篠岡の嗚咽だけが静かに響いていて。
ベッドに近づき、腰を下ろすと少し軋み、
篠岡がビクっと肩を震わせ顔を上げ、巣山の存在を認める。
同時に跳ね起きて少しでも離れようとベッドの端に張り付き、背中を壁に預けた。
「篠岡。」
恐怖が浮かぶ篠岡の顔を見て、巣山の良心が少しだけチクリと痛む。
「悪い・・・。」
篠岡から目を逸らして、謝る巣山に、篠岡はほんの少し冷静さを取り戻して。
「巣山くん・・・。な、なんで・・・?なんで・・なの・・?」
「・・・お前は何も悪くないよ。」
歯を食いしばる様に呟く巣山に、篠岡は一縷の希望を持って、
巣山の腕に縋るようにシャツを掴んだ。
「じゃあ・・・もう、ヤメテ・・・帰して・・・。」
篠岡の手を巣山はぎゅっと掴み、ぎりっと歯を食いしばった。
「どっかで摩り替わったんだ。」
篠岡は自分の手を掴む巣山の力に再び恐怖が湧くが、
それよりも巣山の発言に気を取られた。
「な、何?」
巣山は篠岡から完全に顔を背けて、俯きながら言葉を続ける。
「野球やるだけでよかったんだ。夢は甲子園で、
叶っても叶わなくてもどっちでもよかった。
なのに、オレはいつの間にかモチベーションを篠岡に置いて、
篠岡を通して甲子園を見てた。お前を甲子園に連れて行く。
そんな夢に変わっていた。」
篠岡は最後の夏の甲子園での日々を思い出し。
「うん。私、甲子園つれてってもらって嬉しかった。ありがと・・。」
「違うんだ!」
お礼を言う篠岡を遮るように、巣山は声を荒げ、篠岡を振り返る。
「そんなのは、オレのただの自己満足だ。篠岡はオレにお礼をいう必要なんてないんだ。
部員とマネジは対等なんだから。お前を勝手に夢にしたオレに怒るべきなんだ。」
吐き出すように続ける巣山に篠岡はただ圧倒され、聞くことしか出来ない。
「この間・・・。田島が普段からは考えられない暗い顔で、ケータイを見せてきた。
アイツからのメールだ。」
「桐青の仲沢くん・・・。」
「そうだ。すごいノロケた内容でな。絶望するってああいうことを言うんだろうな。
全員お前に振られて、落ち込んでる中であれはきつかったな。」
「まっ待って!!」
篠岡が掴みかかるように巣山の言葉を遮って。
「私、仲沢くんと付き合ってなんかない!!デートはしたけど、
思い出一度だけってお願いされて、ホント。それだけなの!!」
必死で訴えてくる篠岡を巣山は唖然とした表情で見つめた。
「そうか。あのメールウソだったんだな。」
巣山はほんの少し微笑んで。篠岡は巣山のその笑顔に希望を持つが。
「・・・悪いな。篠岡。」
自分に掴みかかっていた篠岡の両手をゆっくり握って、巣山は一気に体重をかけた。
それに耐えれるはずもなく、あっさり篠岡はベッドに仰向けに縫い付けられて。
「きゃっ・・・。」
痛みにと衝撃に思わず目を閉じて、はっと目を開けたら、間近に巣山の顔があり。
「もう、何もかも遅い。」
篠岡の胸に再び恐怖が広がる。
「気持ちよくは他の奴にしてもらえ。」
巣山はそう呟いて、篠岡の唇を塞ぎ反論を封じ込めた。
篠岡の身体に先ほどの泉によって与えられた痛みが蘇る。
必死になって抗うが泉より大きい巣山の身体を跳ね除けれるわけもなく。
胸を強く揉まれ痛みで涙が出てきて、口の中を動き回る巣山の舌にはおぞましさを覚え。
両手は巣山の片手にあっさりと押さえられて、足を絡み取られて開かされる。
巣山の荒々しい布擦れの音だけが篠岡の耳に届き、服を脱いでいくのが視界の片隅に見え。
必死に腰を揺らしてなんとか戒めを解こうとするが、それはただ煽る結果にしかならない。
全裸になった巣山が性急に自らのモノを篠岡の中心に押し当てて。
痛みが残るそこに新たな痛みが走り、篠岡はさらに身体を捩ったが、
泉が残したものですっかり潤っていたソコは、やすやすと巣山のモノを受け入れた。
「いっいやああああああ!!」
痛みに思わず声を上げるが、巣山の動きはさらに腰を強く打ち付けてくる。
「いっ!!イやあっ・・・ん・・・っつっ・。っは!っん・・・。」
身体を抉る痛みと巣山の動くリズムが篠岡の声を途切れさせ、
痛みのあまり篠岡の顔から血の気が引いていく。
巣山は目を閉じて篠岡の頭を掻き抱きながらひたすら自らの欲望に身を任せ
動きを早めていく。
「・・・っ・・・・っ!!・・・」
篠岡の口から、声が出なくなり始めた頃、
巣山はひときわ激しく篠岡を揺さぶって、動きを止めた。
「篠岡、大丈夫?」
明るい声と共にベッドに腰かけた水谷の声で、篠岡は意識を取り戻した。
巣山の後、田島と沖に無理やり抱かれ、抵抗する力もなくじっと我慢して
ただ嵐が過ぎるのを待った後、意識を失っていたようだ。
「・・・大丈夫なわけ・・・ないよ。」
「そりゃ~、そうだよな。」
水谷はにこにこ笑いながらおもむろにシャツのボタンを3つ外し、くるっと脱ぎ捨てた。
野球で鍛えられた、しなやかな筋肉のついた上半身が篠岡の目に晒される。
なんの感情も浮かんでいない目で篠岡はただぼんやりと水谷を見上げ。
水谷はそっと手を篠岡の頬に添え、ゆっくり撫でる。
「あいつら、ヘタだったんじゃね~?痛いだけだったろ?」
頬を撫でる水谷の手にも、呼びかけにも反応らしい反応を返さず、
焦点の合わない目で水谷を見つめる篠岡に、水谷は能天気な笑顔で笑いかけると、
ゆっくり顔を近づけて篠岡にキスをした。
「オレは痛くしないよ。せめて気持ちよくなって?篠岡。」
そういって篠岡に覆いかぶさって、手でそっと篠岡の控えめな乳房に触れた。
指先で突起をはさんで下から持ち上げるようにゆっくりと刺激を与えると
篠岡の瞼がピクりと揺れて。
両方の乳房を同じように揉みしだきながら、水谷はゆっくり身体をずらし
篠岡の足の間に身体を滑り込ませる。
「篠岡、かわいい。」
身体を傾け、篠岡の顔の横に肘をついて、篠岡の首筋、耳、頬を唇で撫でて、
篠岡の唇まで到達した。
ついばむようなキスを繰り返し、篠岡の反応を誘う。
「・・んっ・・・。」
舌を差し込んで篠岡の舌と絡ませると、篠岡の喉の奥から吐息が漏れた。
篠岡の腰から内腿にかけてゆっくりと手で撫でていくと、篠岡の腕がピクンと跳ねた。
水谷は乳首全体にかぷっとかぶりついて舌先は突起だけを執拗に転がし、捏ねて、
唾液を塗りつけるように篠岡の乳房に熱を与える。
「・・・はぁ・・っ・・。」
篠岡の背中がわずかに反って、水谷はふっと微笑んだ。
篠岡の脚を大きく開かせ、顔を寄せていく。
突然襲った強い快感に、篠岡は身体を大きくのけぞらせ正気を取り戻す。
「はあっああ・・・あっあっんっ!」
水谷は刺激を与えるのを止めない。
「み、水谷くん!あっ!!やぁっ・・!」
篠岡は思わず腰を引こうとしたが、それを察した水谷が、がっちり腰を抑え離さない。
自分の身体を駆け巡る快感から逃れることも叶わず、ただ翻弄されて
奥から何かがはじけそうな感覚に篠岡はただ戸惑って。
襲ってくる波に飲み込まれ思考のすべてを奪われた。
「は、っはあっ・・・・はあっ・・・。」
肩で息をする篠岡を水谷は嬉しそうに覗き込み
「イった?篠岡。」
潤んだ瞳でけだるそうに水谷を見つめ返す篠岡に、満足そうな笑みを返し。
水谷は自分のモノを一気に押し込んだ。
十分湿った篠岡のソコはするりと抵抗なく水谷を受け入れ、再び篠岡の体が跳ねる。
「いやあっ・・!!」
「いや?本当に?」
すべてを収めた後、少し動きを止めて水谷は篠岡の様子を伺う。
「痛い?」
水谷の呼びかけに、篠岡はわずかに首を振った。
そのしぐさに能天気な笑顔で笑いかけると、水谷はゆっくり腰を動かし始めた。
イった後の高揚感もまだ残る篠岡の身体は、水谷の刺激はなんなく受け入れて
淫らな感覚を湧き起こさせる。
「ふっ・・・はっ・・・。」
経験したことのない感覚が体中に広がり、先ほどの痛みを忘れさせ。
自分の中に侵入した水谷に、擦られることによって熱が起き、
麻痺していた指先にまで行き通り体全体が温まる。
そんな反応を返す自分の体に、篠岡は戸惑う隙もなくただ飲み込まれ。
だんだん激しくなる水谷の動きが、
篠岡に更なる快感を湧き起こさせて再び理性を包み込んでいく。
「・・・・っんんんん!!・・。」
歯を食いしばって頭を数回振り、篠岡の腰がビクビクと震え、
その後体から力が抜けたのを見て、水谷はにっこりと笑って、さらに腰を振り、自身も達した。
目を硬く閉じて、肩で息をつく篠岡を、そのままの姿勢で見下ろして。
「気持ち、よかっただろ?篠岡。」
頬が上気し、目尻に涙が浮かべた篠岡が乱れた自分の前髪の間から、
水谷を暗く見上げ、一言も発することはなかった。
その目に射すくめられて、水谷の笑顔が見る見るうちに崩れていく。
ベッドについてた手がぎゅっとシーツを握り締め、わずかに拳が震え出し。
ゆっくりを篠岡から自身を抜き、唇をきつく噛んで顔を背け荒々しく服を着て
ドアを開け放して出て行った。
そのままのドアから廊下が見え、篠岡は今なら逃げれるかもしれないと
身体を必死に起こそうとするが、水谷に快楽を与えられ達した後では、
体がけだるく力が入らない。
視線だけで服を探すと、ベッドの下に乱雑に散らばっているのが見え、
なんとかベッドの端に寄った時、新たな人物が部屋に入ってきてドアを静かに閉じた。
西広が、静かな笑みをたたえたまま、無言で篠岡のいるベッドに近づいていく。
花井が足の束縛だけ外されて、隣の部屋に押し込められると
部屋の異様な雰囲気に息がつまり、知らずのけぞってドアにぶつかった。
何度も入ったことのある阿部の部屋なのに、明らかに違う。
立ち込めるような情事の残り香、熱気の篭る空気。
ふと視線を彷徨わせると、ベッドの上に篠岡が静かに伏せているのが目に入った。
ぐったりと動かない篠岡に、花井は激しい罪悪感に襲われ、そのままずるずると座り込む。
その音に篠岡が気づき、顔をわずかに上げてドアの方を見た。
「・・・花井くん・・・。」
耳に届いた篠岡の声に、花井は弾けた様に声を上げた。
「し、篠岡!!オレっ・・・悪い!!・・・みんなを・・・止めれなくて。悪い・・・。本当・・悪い・・・。」
自らを責める感情に押しつぶされそうなのか、
顔を苦しそうにゆがめて謝罪を繰り返す花井に、
篠岡はゆっくり身体を起こしてベッドから降り、花井に近づいていく。
途中手に取ったシャツで、わずかに身体を隠した篠岡を花井はただ呆然と見つめて。
「花井くんは悪くないよ。私が悪いの・・・多分。」
悲しげな顔でそう口にした篠岡に、花井はさらに胸を締め付けられる感情に襲われて。
「そ、そんなことねえよ!篠岡が、悪いわけない!」
「・・・花井くん、手ほどいてあげるね・・・。」
篠岡はそういって、花井の手の戒めを解いていく。
「オレ・・・・。篠岡・・・。」
「花井くん。私ね、怒ってないよ?」
篠岡の口から出た信じられない言葉に、花井は言葉を失う。
「そりゃ、悲しいけど。怖くて痛くて、どうしてこんな目に?って思ったけど。」
そこで篠岡は花井の戒めを解き終わって、花井の手にそのまま自分の手を重ねた。
「・・・みんな、泣いてた。みんなも辛そうだった。みんな最後は泣いてた。
泣きながら私を抱いてったよ?私も辛くてみんなも辛いなら。」
篠岡は花井の目をまっすぐ見上げて、目尻に涙を浮かべながらも澄み切った顔で微笑んで。
「どうして怒れるかな?」
「何で・・・篠岡がそんなに・・。
勝手な行動してお前をこんな目に合わせたのはオレらだ。怒れよ!」
ますます顔を歪ませてそう言った花井を篠岡は不思議そうに見つめ返して。
「変なの、花井くん。怒って欲しいの?」
「・・・なっ・・・。」
篠岡の指摘は、花井の心に突き刺さって、愕然とさせる。
篠岡はそっと手を伸ばして花井のベルトに手を掛け、外そうとして。
花井は慌ててその手を掴んで、篠岡の行動を止めた。
「し、篠岡!!オレは!!やらねーよ!」
「どうして?」
「どうしてって・・・。」
「花井くん、一人だけ安全なところに居たいの?」
篠岡は、花井の正義感を崩壊させる言葉を呟き、花井の体が完全に固まる。
そんな花井を見て、篠岡は手を再び動かし、するっと花井のモノを取り出した。
それは、すでに硬く張り詰めていて。
ゆっくり篠岡はそれに顔を近づけていって、そっと唇で触れた。
途端、弾けた様に花井が篠岡の頭を掴み、遠ざけた。
「し、篠岡!!」
「ダメ?どうして?そんなに罪悪感覚える必要ないよ?だって、欲しいんだもん。」
さっきまでとは打って変わって、しっとり濡れた誘うような目で花井を見つめる篠岡に
花井は再び言葉を失って呆然とする。
篠岡はふっと微笑んで。
「最初は痛かったけど、水谷くんからとっても気持ちよくなって。
花井くんも、一緒に気持ちよくなろう?」
篠岡はそう言って、ゆっくり自分の頭を抑える腕を外して、
改めて花井のモノを口に含んだ。
先端にキスをして、唇でなぞるように喉の奥まで届くように含む。
「っふっ・・・!」
篠岡が与える快感に花井は思わず両腕を顔の前に交差させて、篠岡から顔を隠す。
舌で根元から先端まで一気になぞり上げられ、花井は歯を食いしばる。
心は罪悪感に支配されているのに、自分の身体はダイレクトな反応を返すことに、
花井は心底自己嫌悪に陥ったが、篠岡の行動は止めない自分にさらに腹を立てる。
やがて、篠岡が口を離して、自ら脚を広げて花井を跨ぐように花井に乗りかかり、
腰を落としていく。
花井はそこでやっと、顔を覆っていた両腕を篠岡の身体に回して、
自ら突き上げ始めた。
花井よりはるかに小さい体の篠岡は花井のわずかな腰の動きにも軽々と翻弄され。
小さな肩を必死に掻き抱きながら、花井は背を丸めて篠岡と唇を合わせる。
篠岡の口から漏れる喘ぎをどこか遠くで聞きながら、
花井は果てるまで篠岡を揺らし続けた。
阿部は一人でぼんやりと、すっかり日が暮れた窓の外を見ていいた。
ふと人の気配がして振り向いたら花井が立っていて。
「終わったのか。」
「・・・ああ。」
阿部を睨みつけるように言葉少なに佇む花井に、阿部は無表情な顔を向ける。
「阿部・・・オレはお前を一生軽蔑する。」
花井の辛らつな言葉に、阿部は蔑む様な笑みを返して。
「ふざけんなよ。花井。お前の自己嫌悪、こっちに持ってくんな。
やることやったんだろ?同罪だよ。一人だけ安全な場所にいると思うなよ?
反対してた栄口だってお前だって、結局同じ穴のムジナだ。
ま、そうやって自分を慰めたいならそうすれば?
お前に軽蔑されたってオレは平気だ。」
「・・・・っくそ!!」
そう一言だけ言い捨てた後、花井は身を翻して荒々しく去っていった。
阿部の耳に、玄関が開く音がして、足音が遠ざかっていく音が届き。
阿部はひとつため息をついて、篠岡がいるであろう部屋へ足を向けた。
篠岡は疲れ果てたのかベッドにくったりと倒れみ、眠っているようだった。
枕元に阿部が腰をかけてベッドを軋ませるが、目を覚まさない。
乱雑に投げ出された袋の中身をチェックして、避妊用錠剤が減っていることを確認する。
もう一つの錠剤を確認してから、一旦部屋を出ていき、
やがて水の入ったコップと共に戻ってくる。
「篠岡、起きろ。」
「・・ん・・・。」
わずかに身じろぎした篠岡を無理やり抱き起こして、目を覚まさせる。
うっすら目を開けた篠岡は目の前に居るのが阿部だということを確認して。
「阿部・・・くん。」
「これ。飲め。」
「・・・何?」
篠岡の唇の隙間から、無理やりその錠剤を押し込み、水を軽く口に含んで
篠岡の唇に押し当て、水も流し込む。
こくんと喉を鳴らして飲み込んだ篠岡に、阿部はわずかにほっとした表情を見せる。
「何?なに飲ませたの?」
「なんか、生理を早める薬だって。念のため、な。」
「そう・・・。ありがとう。阿部くん。」
けだるげな表情でお礼を言う篠岡に、阿部は一瞬動揺したが隠すように表情を消した。
動きが緩慢な篠岡を阿部は両腕で抱え上げ、部屋から連れ出す。
「どこ・・・行くの?」
篠岡の質問に答えず、阿部がバスルームに直行し、そっと篠岡を降ろして座らせた後、
素早く自分も服を脱ぎ捨て、再び篠岡を抱え、
すでに湯を張られた湯船にゆっくり身を沈めた。
自分に持たれかけさせるように、篠岡の身体をずらす。
疲れ果てた篠岡の身体に湯の温かさが染み渡って行き、篠岡はほうっとため息をついた。
「ここ、阿部くんの家だよね・・?」
「ああ。」
「家の人は?」
「オレを置いて旅行中。」
すこし場違いな篠岡の質問に、阿部は短い返答を返して。
「阿部くんは・・しないの?」
「する。」
「・・・そう。」
阿部は篠岡の湯から出た部分にお湯をかけてやりながら、今度は篠岡に質問する。
「痛いところあるか?」
「今は、ないよ。」
「そうか。」
阿部はソープを手にとって篠岡の身体を丁寧に洗っていくが、
それ以後、二人の間に会話はなかった。
風呂から出た後、篠岡は阿部の大きなシャツを頭からすっぽり被されて。
阿部の部屋に戻るのだと思っていた篠岡は、
連れて行かれたのがリビングルームだったことを意外に思った。
ソファに座らされた篠岡に阿部が水を差し出す。
無言で渡されたそれを篠岡は無言で飲んで、
そのまま真正面に座る阿部を何気なく見ていた。
阿部がまっすぐ篠岡を見つめながら、二人の間にあるテーブルにそっと包丁を置いた。
「篠岡、恨むなら、オレを恨め。」
篠岡の目が驚きに見開かれる。
「刺したくなったら、オレを刺せ。・・・あいつらは悪くないんだ。全部オレが悪い。」
篠岡はわずかに口を開いて何かを言おうとしたが、そのまままた閉じた。
「おまえは悪くない。あいつらも悪くない。オレだ。」
篠岡の手がわずかに震えながらテーブルの上の包丁を手に取り、じっと刃先を見つめる。
しばらくそうした後、突然篠岡は刃先を自分の手首に当てようとした。
「なっ!! おまっ! 」
阿部がそう叫びながら、篠岡から包丁を弾き飛ばした。
幸い、どこにも傷がつかなかったようだ。
呆然と篠岡は自分の手を見つめ。
阿部は慌てて飛んだ包丁を拾って、キッチンに戻した。
「お前!何考えてんだ!!バカか!?」
そう声を荒げる阿部に、篠岡は視線を手から外さずに口を開く。
「阿部くんだって、自分だけ悪くなろうとして、バカみたいだよ。」
篠岡の背後で、阿部が動きを止めたのが伝わって、さらに続ける。
「私は、誰も恨まない。自分を悪いとも思わないようにする。みんなも悪くない。
阿部くんも悪くない。それで、いいじゃない。」
静かな口調でそう語った篠岡に、阿部はかける言葉が見つからず、黙り込む。
そのまま二人の間は静寂に支配されて。
やがて、ふらふらと阿部は背後から篠岡を抱きしめ、
頭に顔をうずめて嗚咽を漏らし始めた。
「・・・ごめん。・・・・ごめん、篠岡・・・。」
篠岡は、自分を抱きしめる阿部の腕に、そっと触れながら
「阿部くん・・・。私、阿部くんのことが好きだったよ・・・?」
過去形で呟いた篠岡に、阿部の目が見開かれる。
「でも、部活にそんなの邪魔だと思って、必死で閉じ込めて、
忘れようとして、忘れたの。
だから、もう好きじゃないんだけどね。
阿部くんが私を好きなことちっとも気づかなかったよ。
何時の間にか相思相愛だったんだね。私たち。
- 時期はずれちゃったみたいだけど。あの時の自分の気持ち、
大事にせずに捨てちゃったから、こんなこと引き起こしちゃったのかな?」
篠岡がそこまで言った所で阿部は回りこんで、正面から篠岡を見つめて。
「オレは、篠岡が好きだ。」
そう言った阿部のひたむきな言葉と目を、篠岡はまっすぐ受け止めて。
「私は、好きじゃない。」
一片の迷いもなくそう断言した篠岡の言葉に、阿部はわずかに顔を歪ませ、
そっと篠岡の唇を自らの唇で塞いだ。
篠岡は抵抗せずに、そのまま自分から唇を開いて、阿部を誘う。
間髪開けずに差し込まれた舌を積極的に絡め。
阿部の両腕が再び篠岡を抱え上げて、足を阿部の部屋に向けた。
阿部は篠岡をベッドに横たえながら、再び唇を重ねる。
篠岡の両手は阿部の首に回り、シャツに侵入する阿部の手を防ぎもしない。
「ふっ・・・ん・・。」
乳房に阿部の手が触れた瞬間、思わず篠岡は声を漏らし、阿部の行動に力を与える。
すでに幾人もの男の手で拓かれた篠岡の身体は、わずかな愛撫にも素直な反応を返して。
すでに滴らんばかりに反応している篠岡の秘唇にふれた阿部は、
遠慮なく指を差し込んで欲望のままにかき混ぜる。
「はっ・・・ああんっ・・!」
篠岡は背を仰け反らして身をくねらし、扇情的な眼差しで見上げ、阿部の理性を飛ばしていく。
慌しく服を脱ぎ捨てた阿部が一気に篠岡を貫いて、そのまま腰を激しく打ち付ける。
「んっ・・はっ!・・あっ、あん!」
「っふっ・・・くっ・・!!」
ベッドの軋む音と、篠岡の喘ぎと、阿部の射精感を堪える声だけが暗い部屋に響き渡って。
カーテンの隙間から差し込むわずかな月明かりが
二人きりの空間に、唯一の現実感を与えていた。
最終更新:2008年01月06日 19:07