新しいマネジ 


誰だよドジっ娘が可愛いとか言った奴。

4月になり、野球部にも新入生が入ってきた。
去年の活躍を見て入った者、シニア経験者、素人と、結構な人数だが、
どれくらい残るだろうか?
それと同時にマネジ希望者も数名入った。
ミーハー、野球好き、胸が大きいの小さいの、これも何人残るのだろうか?

ゴールデンウイークの合宿の頃にはマネジは1人しか残らなかった。

見た目は問題無い。
眼鏡をかけているが外すと可愛い。
モモカンには負けるが、胸はDはあるだろう。

が、致命的なドジっ娘だった。

何も無いところで転ぶのは勿論。
スポーツドリンクを作れば真水と濃厚な2種類作る。
洗い立ての洗濯物を地面に落とす。
夕飯のオカズをひっくり返す。
その度に『ごめんなさ~い』と甘えた声で謝るのだ。

新マネジは篠岡の足を引っ張り、部員は我慢の限界を越えようとしていた。

辛い練習を終え1日の苦労を流すため、銭湯ヘ向かう。
男女別れた途端愚痴が零れる。

「あのアマ、合宿終わったら絶対辞めさす。」
「俺のフキが・・・」
「疲れているところにトドメを刺してくれるよね。」
「ゴメンですむなら警察いらねーよ。」

2年生の苛立ちが、1年生を萎縮させる。
1年生が萎縮したのを感じて、2年生が押し黙る。
場の空気は悪くなり、嫌な沈黙が続いた。


空気を読めない、能天気な声が女湯から響いた。

「わぁ、まるで貸し切りですねっ!先輩!」
「声大きいよ!聞こえちゃうから!!」
「大丈夫ですよ、ぜんぜん男子の声聞こえないじゃないですか!」
「本当だ、聞こえないものかな?」

男湯に、より重い沈黙が訪れる。

「うっわぁ、監督おっぱいおっきー!触ってもいいですかぁ?」
「あらあら、触りたいの?でも、駄目よ。」
「監督に、そんな事言っちゃ駄目!」
「えぇ~?先輩は触りたくないんですかぁ?
 だって、浮かんでるんですよ?湯船に!」

男湯に、再び沈黙が訪れる。

(いいかげん、出ねーの?)
(や、クララが立った。)
(はっ、なっさけねー。俺は先に出る。)

阿部が出ようと湯船に手をかけた時、

「やっだぁ、先輩ってば、おっぱいキレー!乳首ピンクじゃん!」
「ちょっ!触っちゃ駄目!!」
「アタシなんか、乳首黒くないですかぁ?」
「2人とも、綺麗よ?張りがあっていいじゃない?」
「やぁんっ!」
「あっ、先輩感じました?何か、硬くなってきたよーな?」
「いいかげんにしなさーい!!」
「先輩待ってくださいよぉ~!」

男湯に、三度沈黙が訪れる。

(出ないのか?阿部。)
(・・・肩まで浸かって、100数えるのを忘れていた。)
(俺、端っこでヌイていい?)
(すんなっ!!)

ここにきて、初めて部員全員の心が一つになった。

ありがとう。
よくぞ、マネージャーになってくれた!


もちろん、男子部員全員がのぼせたのは言うまでも無い。





最終更新:2008年01月06日 19:10