イズミ
ベッドに仰向けになりながら携帯を開くと、真っ暗な部屋に浮かび上がる
ディスプレイの明るさに目が眩んだ。
小さな画面に広がる、篠岡の泣き顔と白い肌。
指の動きに合わせて切り替わる画像。
1枚目、2枚目、3枚目、4枚目…。
そしてまた1枚目に。
「あと4枚だぜ、篠岡。」
諦めきった篠岡は、もうオレに逆らわない。
逆らわなければ、優しくしてやれる。
優しく、優しく、大切に。惜しみない愛情と、とびきりの快楽を。
そうして、オレはだんだんと勘違いをしていく。
篠岡は逃げられないんじゃない、逃げたくないんだ、と脳内で勝手に変換して。
変換して、勘違いして、あるときふいに目が覚める。
篠岡がこうして、自分に従わざるを得ない理由。
この数枚の写真の為であるということに。
これが全てなくなったら、オレはどうする?
篠岡はどうなるんだろう。オレ達は?
想像しただけで、背筋が冷たくなる。
あと数度。
片手で数えられるほど、篠岡を抱いたら。
篠岡にはもう二度と触れられないだろう。
篠岡はもう二度とオレを見ないだろう。
そんな結末が見えているのに、きっとまた明日もこの部屋で篠岡を抱く。
潤んだ瞳と、紅潮する頬、汗ばむ肌。小さくオレを呼ぶ声。
その瞬間だけは、まぎれもなく彼女は自分だけのものだから。
最終更新:2008年01月06日 19:11