6-371-381 アベチヨ(ドーパミン2) 天然しのーか
西浦高校の文化祭で、7組はメイド&執事喫茶をやることになった。
多少流行遅れの感はあるが、女子は可愛い格好がしたいのだ。
文化祭当日、クラスの女子を眺めていた阿部が一言、
「猫の耳とか首輪とか、何がやりたいんだか意味判んねー」
と、デカイ声で毒を吐き、女子の怒りを買っていた。そこへ、
「ふだん部活でアルバイト出来ないから、楽しみだねー」
そう言って現れたのは、マネジの篠岡だった。
リボンやギャザーいっぱいの黒のミニドレスに、猫耳カチューシャ。
首に鈴のついたチョーカー、手首にひらひらのカフスという、
たった今阿部の切り捨てた衣装で。
「この前の続き」がひと月近く経とうというのに達成されていない
阿部には眩しすぎた。
(やべ、なにこの犯罪的な可愛さ。惚れ直す!てか、家に連れ帰って
この篠岡飼う!この際人間じゃなくてもいいかって気がしてきた)
内心舞い上がってはいるが、当然のことながら顔には出さない。
「すげー似合ってるじゃん、篠岡可愛いー」
「俺らも気をつけとくけど、知らないヤツの写真は断れよ」
と水谷と花井が声をかける。ありがとう、と篠岡が笑顔で答え、
初めて阿部に顔を向けた。
「貴重品、一箇所にまとめるから出して。阿部くんが最後なの」
阿部はスポーツバッグを隅に持ち出し、座り込んで財布を取り出した。
文化祭はチケットで支払いをするから、小銭を上着のポケットに
突っこめば足りる。そこへ、篠岡が膝をついて顔を寄せてきた。
「どうかな、この格好」
周囲の目を気にして振り返ると、なるほど机の影で死角になっている。
「スカート短けーよ」
「でも、ニーソックスとガーターバンドで結構足は隠れるよ」
と、太ももを指差す。それはそれで、マニアにはたまらないのだが。
いやらしい目で篠岡を見られるのはムカツクが、たとえ他の男が
篠岡に言い寄ったところで、篠岡が自分を選ぶ自信はあった。
(ま、ここは静かに見守って、彼氏の貫禄見せとくけどな!)
ほくそ笑んだ阿部の唇に、柔らかいものが触れた。
篠岡は素早く唇を離すと、貴重品袋の紐を締めて微笑んだ。
「じゃあね、私準備があるから」
「走んなよ、パンツ見えっから。あと、屈む時は胸隠せ」
立ち上がろうとした篠岡を捕まえて、耳元で一気にまくしたてた。
余裕の誓いは5秒で破られた。
阿部の担当は客引だった。
最初に「俺だって接客くらいその気になりゃ出来る」と
言い切ったものの、リハーサルでクラス中から
「そんな偉そうな執事がいるか!」
「インテリマフィア。人殺してそう」
「執事とお嬢様というより、鉄砲玉と極妻な気分」
と総ツッコミが入り断念。次に厨房に入ったものの、隠れ食い
する気満々なのがバレて、追い出されてしまった。
同じ野球部の花井は長身・細身で見栄えがするし、水谷は女子の
接客が苦でなく、十分サマになっているのが複雑だ。
積極的に客を呼び入れる気など毛頭ない阿部の頭の中は
野球か篠岡で、今もこれまでの敗戦を思い返していた。
篠岡に「この前の続き!」と念を押して自宅に呼んだのに母親、弟、
さらには父親との話に夢中で、阿部の部屋に一歩も入らず帰ってしまう。
野球絡みのデートだともっと悲惨だ。現実に引き戻すのと、終電との
戦いで消耗して終わってしまい、翌日の練習が心身ともに辛い。
単純に、優先順位が次々上書きされて、それ以前のことは頭から
抜けるトリアタマなのだと考えることにした。
そうでなければ、もて遊ばれているとしか思えない自分が不憫だ。
さらに頭を悩ませているのが、ほんの僅か、周囲に見られる
心配がない時間帯があると、予告なしでキスされることだ。
したかったとか、阿部の困った顔を見たかったとかではなく、
「今なら出来るなーと思って」
という、よく判らない理由で。その度に阿部は天国と地獄を同時に
味わう。強豪校をも攻略した阿部の頭脳は、天然にして小悪魔な
篠岡には全く歯が立たず、悶々と悩む日々だ。
(篠岡が俺のこと好きなのは確実なんだから、遠慮はいらねー。
この前は、ちんたらやってたからダメだったんだ。この次は速攻でやる。
走者刺す勢いで、やるったらやる。ドーパミンいっぱい出す。
でも次って……。明日か?来月か?卒業後か?)
凹んでいた阿部は、気づくと上級生の女子に囲まれていた。
野球部と知って声をかけてきて、阿部が相手をするなら入ると言う。
そのうちの1人は、高校生とは思えないような色気がある美人だ。
「手持ちのチケット全部使ってくれるなら良いっすよ」
「全部ぅー?」
ブーイングが上がり、客引は失敗したように思われた。
が、きれいな先輩が阿部を挑発的な目で見上げた。
「これだけあれば、1日貸し切り出来るよね」
「あ、冗談っす。俺はナシ」
「彼女いるの?」
「ウゼー旦那なら一人」
もちろん、投手に対して女房役の捕手だからという意味なのだが、
相手には通じずウケられてしまった。
そこへ調度、休憩時間に入り廊下に出てきたクラスメイトが
気づいて阿部をつついた。
「ちょっとー阿部、売り上げに貢献しなさいよ!」
「チンピラだのツンデレだの、俺を全否定したお前らに
貢献する義理はねぇな」
「ホラ、千代も言っちゃえ」
阿部はそこで初めて、篠岡がいたことに気づいてギクリとした。
篠岡は「阿部くん、がんばってね」と笑顔で元気付ける。
周囲に気付かれてはいけないから、まるで他人事のように。
「マネージャーの許可も得たことだし、阿部はお客様お連れして!」
篠岡の友達は、篠岡に向き直ると笑いをこらえながら言った。
「阿部を指名するなんて、悪趣味な先輩もいるんだねー」
女子の友達と校内をひと通り見て、他のクラスの友達と写メの
撮り合いっこをやって解散したところで篠岡の携帯電話が鳴った。
ディスプレイには阿部の名前。
最初は無視していたが、あまりにしつこいのでしぶしぶ出る。
「今どこだ?3組行く約束したよな?」
沖と西広のクラスが和風喫茶だ。花井は来校した家族の案内、水谷は
当番の時間帯で、部員の陣中見舞いを口実に2人で行動する気だった。
「……今日はきれいな先輩に、1日貸切じゃなかったの?」
「怒らせた」
「え?」
「タイプ聞かれて『俺のサイン通りに9分割で投げれる奴』って答えた」
あまりにも阿部らしいので、拗ねていたのに笑ってしまった。
その声で阿部はやっと安心する。
「じゃあ、現地で」
「あ、待って。別の場所に来て欲しいんだけど……」
他に見たいものがあるのか、と阿部は深く考えずに同意した。
篠岡が指定した場所は、数学準備室だった。
鍵の掛かっていない部屋に踏み込むと、篠岡が胸に飛び込んできた。
「うわ、どうした。……怒ってるのか?」
「ううん」
「じゃあ何。こんなとこ見られたら一発でバレるぞ」
そう言いながらも、篠岡を引きはがすことが出来ない。
「まあ、イロイロ質問されただけだから。俺なんかモテねーから、
心配するだけ時間の無駄だって」
年上女なら、モモカンの方がその100倍は迫力があるし手強い。
あの3年生は、むしろ手ごたえがなくて物足りないくらいだった。
「……そうじゃ、なくて」
蚊のなくような小声が返ってきた。
「つ、続き……ずっと出来なかったから……」
「は?」
「……ダメ?」
顔を伏せたまま、さらに強く抱きついてくる。
篠岡からの誘いは初めてだった。嬉しいのだが、唐突すぎて戸惑う。
阿部が篠岡かモモカン以外の女といるのは珍しいから、不安に
なったのだろう。これまでその気にさせるまでが長い道のり
だったことを考えると、まるで別人だ。
まして今の服装で迫られると余計に興奮する。
「阿部くんが全部脱がして。きれいな先輩のお世話、したんでしょ?」
「だからやってねーってば。でも、篠岡なら脱がしたい」
気持ちが変わらないうちに……と床に座らせて、よくよく見ると
ふだんの篠岡にはありえないデコラティブな衣装だ。
あ。オチ見えた。脱がすのに時間が掛かって、タイムオーバーだ。
「全部は無理。時間ねーから」
「え、でも……初めてだから、汚しちゃうかも。じゃあ……
自分で脱ぐからっ」
篠岡が猫耳カチューシャを外そうとする。
「ま、待て!」
阿部の予想以上に大きな声に、篠岡が飛び上がりそうになる。
「え?」
「それ外しちゃあ意味ねーだろー!」
「阿部くんは、意味判らないって言ったよ?」
「俺が全部やっから、手ぇ出すな」
「……?」
阿部は篠岡を眺めながら、想像を膨らませていた。
ドレスと下着脱がして、黒い猫耳と首輪の篠岡……。
イケる!
なんつーけしからん子猫ちゃんだ。
にゃあにゃあ啼かす。そいで、首の鈴も鳴らす。
楽しいのは俺だけか?あの3年生の方がずっとスタイル良いけど、
俺には野球の話してる篠岡の方がずっとエロい。
まあ、ジャージも否定しない。篠岡なら別腹でイケる。
でも、篠岡にしか興奮しねー俺って、一体どーなんだ……。
(それにしても、このヒラヒラしたの、微妙だよな)
突然、阿部の手が篠岡の太ももに伸びた。バンドをぴんと引っ張る。
「ひゃっ」
「にゃあ、だろ?」
「……にゃあ?」
困惑しつつも、リクエストに応じる篠岡は健気で、気が遠く
なりそうなほどに可愛かった。
今も、阿部の変態的な目線に怯え、お預けに耐えている。
「靴下も捨てがたいけど、篠岡の生足はそそられるんだよな。ドレス
脱がした後にバランス見っか。脱がすの時間かかりそうだし」
不気味な独り言に、篠岡は可愛らしく「にゃ?」と応えた。
その目は期待を含んでいて、阿部は逆に不安になった。
「……なんかこう、上手くことが運びすぎな気がしてきた。
嫌な予感がする。篠岡、このあとの予定は?」
「とくにないよ?」
「携帯、電源切っとけ。あと、ここに誰かくる可能性は?」
「今日は先生たちが必要ないから、私が鍵を預かったの」
「あとはえーと……」
篠岡がくすりと笑った。四つん這いになると、考え込む阿部に
近づき、唇をぺろりと舐める。
「にゃあ」
驚く阿部にそのまま覆いかぶさり、ちゅっと音を立ててキスをした。
そういや、次は速攻と決めてたんだ、とやっと思い出した。
幾重にも重なった衣装を1枚ずつ剥いでいく。篠岡は自分の胸が
控えめなのがコンプレックスなので、押し倒されるのを嫌がった。
「仰向けになると胸が無くなっちゃうから」
俺は気にしないのにと思いつつ、床に膝をつかせる。確かに胸は
小振りだが、ウエストが引き締まってきれいな身体だ。
篠岡の両手が阿部の頭を抱え込んだ。阿部はブラを押し上げると、
突起に舌を這わせていく。
「…ん、…んっ…」
控えめな声が上がる。まだ少し、緊張で身体が固いのが初々しい。
篠岡は恥ずかしさのあまり目に涙を溜め、肩で息をしていた。
時折目が合うと、うっとりと自分を見つめているのが
たまらなく愛おしい。
(がっついてると思われたくねーからな…)
そう言い訳してはいるが、早く触れたいのに、本当に好きな
相手だからこそ気後れしてショーツに手が伸びない。
指を背中に回しただけでもビクリと反応され、ようやく下着の
中に手をすべりこませたと思ったら、反射的に身体を離されて
しまった。へたりこんだ篠岡の息は荒い。
「怖いか?」
「はあ。私……変な気持ち。もっと変になっちゃうのかな?」
「は?」
「ど、どうしよう、阿部くん……」
「どうしようって……」
うるうるの瞳で、上目遣いで訴えてくるのは反則だ。
ここまできて?そんなこと俺に聞く?
つか、おめーどこまで天然なんだよーっ!
「止めるか?」という言葉が出掛かった。
本音を言うと止めたくなんかない。篠岡に飢えて飢えて
やっと掴んだ機会だ。それに今後、お互い部活や教室で
気まずくなるのが目に見えていたから。
「篠岡……」
「で、でも、阿部くんだから、良いんだよね」
「ん?」
「他の人じゃ、ヤなの」
ちり、と鈴が鳴る。
「俺も篠岡だから抱きたいよ」と答えようとしたが、
じゃれついてきた篠岡に妨害されてしまった。
本当に篠岡は猫みたいだ、と思った。幸せそうな猫だ。
阿部がそのことに気づいたのは直後だった。
集中力を切らした阿部はポケットを探った。衣装だった
ことを思い出し、同時に財布のありかに思い当たる。
「……貴重品」
「う…ん?」
今日密室で2人きりになるなんて、予測してなかった。
(ゴム置いてくるなんて、どうしてこうツメが甘ぇんだよ)
焦る阿部を、しばらく篠岡はぼんやり見つめていたが、
「いいよ」
と、優しく微笑んだ。阿部の手を掴んで導こうとする。
「次、いつになるか判らないし、阿部くんのこと好きだから」
一瞬迷ったが、
「そういう訳に行くか!」
強く息を吐き出すと立ち上がり、自分の上着を篠岡に掛けてやった。
乱れた衣服を直すと、心細そうな篠岡に笑いかける。
「すぐ戻るから」
「私が急に…」
「篠岡は悪くねーよ」
廊下に出てため息をつく。さっさとクラス戻って取って来る。
なんか毎回、ケチつくけど、負けねえぞ!
そう決意した矢先に、斧が頭に刺さった田島に捕まってしまった。
「あ、阿部ー!お化け屋敷寄ってかねぇ?」
「急いでっから」
「ふーん。阿部って、意外にビビりかぁ」
あぁ?それ以前に、何が悲しくて1人でお化け屋敷なんだよ!
「ホラ、三橋も勧誘しろって」
「あ、阿部く、ん。お、お」
ちっとも迫力のない吸血鬼の三橋が阿部を見て、目が合うとビクついた。
気が立っていた阿部は、西浦の天然ツートップを殴りたくなる衝動を抑える。
「阿部、メール見たか?」
なんだ泉は普通だ……と思い良く見たら、額にもう1つの目があった。
「なんかあったのか?」
「部員全員、今日は衣装着てるのが判ったから、集まって写真
撮ろうって話になったんだよ」
1組は芝居だ。栄口は貴族で巣山は神父。3組は和風喫茶で和服。
「お、だん、ごっ!」
「そうそう、食いに行こーな三橋!」
「阿部も行くか?西広先生が落語やっから、1時50分には3組に集合な」
「落語やるなんて、西広言ってたか?」
「クラスのヤツの練習聞いてるうちに覚えたから、急遽出ることに
なったって沖から連絡来た。三橋と田島は特に世話になってるし、
面白そうだろ」
さすがは西広と感心し、きっと篠岡は部員の別の顔を見たいだろうな、
と……考えてしまった。
「阿部の衣装って、執事……か?上着は?」
「置いてきた。急いでるから…」
「芝居、行くよな?阿部も午前の部見てないだろ?」
「おう」
「そーいや、しのーかと連絡取れねーんだけど知らねー?」
もし会ったら伝えとく、と答えておいた。
阿部はそのまま数学準備室に戻った。
篠岡は説明を聞いて、迷いながら尋ねた。
「阿部くんは、止めちゃっても良いの?」
「良い。ここで篠岡が俺を取るっていうならそれでも構わないけど」
「けど?」
たぶん、別れる。
そんな篠岡だったら、最初から好きになってないと思う。
俺は、野球部が大好きな篠岡に惚れたんだから。
「そのかわり、明日!文化祭2日目だから、続きやろーな」
期待を込めて顔を覗き込み、首の鈴飾りに触れる。
が、篠岡はきょとんとしている。
「えーとね、猫はもういいかなぁって」
「は?明日もクラスで同じカッコするよな?」
「さっきとかね、初めてなのにコスプレなんて、この後いったい私、
どうなっちゃうのかなぁって凄く変な気持ちになったの。
だから、続きはフツーが良いの」
「はあぁ?」
「あ、阿部くん、服着るからあっち向いててね」
篠岡猫の妄想で頭がいっぱいになっていた阿部は、予想外の言葉に
がっくりと肩を落とした。
猫に目覚めちゃったんだけど俺。変になってる篠岡が見てーんだよ!
いや、違う。あんなことさせといて、服着るのは見るなって何。
元から十分、篠岡は変じゃねーか!……って、彼女になんて
失礼なこと言ってんだ俺は。
どうにも諦め切れなかった阿部は、反撃に出た。
「ふーん、それにしちゃあ、ペロペロにゃあにゃあ、ノリノリ
だったよな?今更フツーで満足出来っか?」
阿部のいじわるな質問に、篠岡はみるみる真っ赤になる。
「すっごく恥ずかしいんだよ!阿部くんのために頑張ったんだもん!
阿部くんの馬鹿!変態!あ、阿部くんの阿って阿呆の阿だ」
「阿部一族敵に回すよーなこと言うなー!俺はいろんな篠岡見てぇよ。
そりゃ、どんな格好してても篠岡は可愛いけどさ…」
「私は、キャッチャーの阿部くんが1番カッコ良いって
知ってるから、良いんですー」
「頼むから野球のユニとコスプレ一緒にすんな。それとも何?
キャッチャーはマスク被るから?俺の顔そこまでヒドイのか?」
やべ。
この人野球の話すると変わるんだ、と気付いた時には手遅れだった。
「阿部くんと違って下心ないもん」とか「桐青のキャッチが可愛い」
とか言われては、とても「続き」の話が出来る空気ではない。
篠岡が苦戦していたので背中のファスナーを上げてやり、ついでに
腰のリボンの傾きも直してやった。
「1組のお芝居は何時からだっけ」
「3時だったと思う」
篠岡はすっかり上機嫌で、次の予定に頭の中を上書きされて
しまったらしい。
まあ、引きずらないところは最大の魅力だよな、と安心して、
いや、忘れられちゃ困ると思い直す。今日は篠岡の隣を狙って
隠れて手を握ってみるかなどと考えていた阿部は、篠岡から
本日何度目になるか判らないキスをされた。不意打ちは卑怯だ。
「……あ、の、さ。何で、素になってる時に、急にやんの?」
「恥ずかしいからー」
「あぁ?」
訳わかんねーよ!
「本当は続き、やりてーのか?」と抱きしめようとしたら、
するりとかわされた。
「私、鍵締めてから行くから、阿部くん先に行っててね!」
「あ、はい……」
「みんなの活躍、楽しみだねー」
無邪気に目を輝かせるマネジを見ながら、阿部は
「俺のドーパミンが活躍する日はいつだろう」
と気が遠くなった。
最終更新:2008年01月06日 22:16