6-545-546 ミズチヨ
「だ、だめっ!」
抱き締めて、キスをしようとして…、拒まれる。
正直、ちょっとショック。
「…なんでさ?」
「だって、学校だし…。ぶ、部室なんて、誰が来るか…。」
誰も来ないよ。もう練習始まってるしさ。
それに、いくらなんでもここで最後までなんて言ってるわけじゃない。
全く考えたことないって言ったら嘘だけど、無理だってわかってるし。
もちろんするはずないのに。それなのに、篠岡は許してくれない。
ただ、ほんのちょっとでも篠岡に触れたいだけなのに。
「早く行かないと、阿部くんに怒られるよ。」
阿部の名前を出すなんて卑怯。怒られる場面がリアルに想像できて怖いじゃんか。
「わかったよー。」
バッグからひょいとタオルを取り出し、ドアに向かって歩き出す。
小さく息をついて後ろをついてくる篠岡。
突然、振り返って篠岡の手首を掴んだ。
それから、触れるだけの軽いキスをする。
ビックリするかな?って思っただけ。
ビックリして、それで、「もう!」なんて笑う篠岡が見たかっただけ。
なのに。
篠岡が悲鳴をあげてへたり込んだから、思わずオレが涙目。
「…ごめん、そんなにやだなんて、思わなくて。」
オレを見上げて、同じく涙目の篠岡に背を向ける。
「先に、行くよ。」
本気で泣きそうにヘコんだオレの、右手に握られたタオルが引っ張られた。
「ま、待って、水谷くん!」
あんまりしっかり持ってなかったタオルが、ふわりと床に落ちる。
「やだったからじゃないの。だって、私…。
水谷くんに、キスされると、触られると、ヘンなことばっか考えちゃって…。
何にもわかんなくなって…、困る、から…。」
振り返ると、ぺたんと床に座ったまま、下を向いてる篠岡。
オレはしゃがんで篠岡の顔を覗き込んだ。
「やじゃないの?」
「…うん。」
篠岡の髪をさらりとかき上げると、一瞬身を竦めた篠岡が、おずおずとオレを見る。
オレと目が合うと、真っ赤な顔で視線を逸らした。
「ヘンなことって、やらしいこと?」
「う…。そ、そう…、かも。」
恥ずかしそうに俯く篠岡が、あんまり可愛くて。
胸がきゅっとなると同時に、下半身が熱くなってきて。
抱き締めて、息もできないくらい何度もキスをした。
キスしながら、篠岡のTシャツの裾から手を入れて、手のひらににすっぽり
収まっちゃう可愛い胸を優しく揉んだ。
ブラのレースの上からでも膨らんだ乳首がわかる。
「えっ、やだ、水谷くん…。」
篠岡は焦って後退するけど、ロッカーに背中がぶつかって止まった。
立ち上がってさらに逃げようとするのを捉まえる。
「大丈夫、オレも阿部に怒られんの怖いからね。ちょっとだけ。」
ロッカーに押し付けた篠岡の、ジャージの中に手を突っ込んだ。
「ほんとだぁ。ヘンなこと考えてたんだね。…びちょびちょ。」
「い、や、ダメ、水谷くん…。」
「いいから、集中して。オレのことだけ考えて。」
「や、あ…。」
……。
「篠岡、熱でもあんのか?顔赤いぞ。」
キャッチボールするオレの後ろで、花井の声がする。
「大丈夫だよ、あの、全然、何でもない!」
篠岡の慌てたその声がたまんなく可愛くて、グローブで口を隠して笑った。
「熱あるってゆーよか、なんかエロイ顔してんな!」
花井と篠岡の会話に突然参加した田島の大声に、部員全員が振り返った。
みんなの視線を一身に受けて、篠岡は真っ赤な顔で、口をパクパクさせている。
「え、あ、あう…。」
「田島、お前そういうことをなぁ…。」
花井に怒られる田島をみんなが見て笑った。
みんなの目から解放された篠岡の視線が、オレにバッチリ重なる。
篠岡はオレを睨むと文句ありげに口を開いた。
が、もちろんこんなとこで何も言えるはずもなく。
オレは笑いながら小さく舌を出す。篠岡もつられて笑った。
ホントにエロくて可愛い篠岡の顔は、オレだけが知っている。
最終更新:2008年01月06日 22:24