7-358-379 レンルリ(303氏)レンとルリ14 ◆LwDk2dQb92
お茶の片付けをしたあと、尚江おばさんは休日出勤のため会社にいるらしいおじさんに、電話で連絡を
とっていた。電話口での口ぶりなので私の想像の域を出ないことだけど、おばさんの様子から察するに
お互いとも嬉しそうだった。
夫婦仲はやっぱりいいみたいだ。
親たちの反対を押し切ってまで一緒になったのだから、当然なのだろうけど、いつまでも仲がいい
というのは素直に憧れてしまう。
そして、電話を終えると夕飯の支度をすると宣言され、私も及ばずながらお手伝いをすると話して、
ふたりでキッチンに並んで立ち、料理に勤しんでいる。
「…………」
「どうしたの? あっ、私、なにかやっちゃったかな?」
包丁で野菜を切っていたところを、手を止めたおばさんからのじーっと熱い視線を感じて作業を中断し、
尋ねていた。
なにかミスでもしてしまったのだろうか。別に今の作業を含めて適当に手を抜いたりはしていない
つもりだ。
「――ん、ルリちゃんって手際がいいわねと感心していたのよ。おばさんは料理はあまり得意じゃないし、
どちらかといえば不器用なほうだからすごいなって見ていたの」
「たくさん練習したの。レンレンって食べるの好きでしょ? だから料理ができたほうが絶対に
いいだろうなって思って、おばあちゃんに習って頑張ってきたの」
褒められたことが嬉しくて、ちょっと得意げに説明する。
「んっふっふー」
「なっ、なに? どうしたの?」
「廉は幸せ者だわ。これだけ深く思ってくれる子って、なかなかいないからね。さて、こんなところ
かしら」
下準備を済ませると、尚江おばさんは部屋へと戻り着替えを済ませ、あとのことは私に任せると言って
車に乗って出かけてしまった。
それを見送ると家のなかに取って返して、ランニングから帰ってきたレンレンが汗を拭けるようにと
脱衣所にいってタオルを用意してきた。
そして、静かに彼の帰りを待つ。そわそわと落ち着きない素振りの私。やはり、緊張してしまう。
(ふたりっきり……か。どこで、するんだろ? レンレンの部屋? それともリビング?
もっ、もしかして私がお風呂に入っているときに無理やり襲われちゃったりとか……っ!?
ああっ、でもでも、好きだけど初めてはやっぱりベッドの上で優しくがいいよっ!)
ちょっと行き過ぎた妄想をしてしまい、赤く染まったほっぺたをぺちぺちと叩いて反省する。
「……っていうか、レンレンから手を出してくれそうなんてないよね」
告白をするのは、彼が野球部を引退してからとは考えていた。
だけど、もし万が一そういうことになっても仕方がない――というふうに計算高く考えてもいた。
長期休暇とかにうちを訪れる際に、薄着で密着したりとか、あからさまに擦り寄ってべたべたしたりとか。
そういう誘惑みたいなものも実行したりもしていた。少しでも女の子として意識してもらいたいという
思いからの行動だった。
まあ、結局は全て空振りに終わったのだけど。レンレンの根性なしとか思ったりもしちゃったけど、
こうやって絶好の機会を得ることができたのだから、これでよかったんだと納得することにする。
「ただいまー」
「えっ!? あっああおかえりなさいっ」
玄関のドアが開いて、私の待ち人が帰ってきた。
「どうしたの? なんか声が裏返ってたけど」
秋も深まり少しずつ寒くなってきていたとはいえ、一時間以上に渡って走ってきたレンレンは大粒の汗を
滴らせて、手の甲で拭おうとしていた。
「あっ、はい、これ」
「うん、ありがと」
床へと腰を下ろしてシューズの靴紐を解いていく彼に、手にしていたタオルを手渡す。
「そういえばさ。お母さん、どこか出かけたの? ガレージに車なかったんだけど」
「んー、おじさんから電話が掛かってきてね。外食のお誘いだったらしくて、嬉しそうに出かけたよ」
「外食? ルリも来てるんだから、四人で行けばいいのに……。どうしたんだろ」
私の説明を聞いても腑に落ちない様子だった。
――まあ、ほとんど嘘だしね
「まあ、別にいいじゃない。夫婦水入らずでラブラブしたいんだよ、きっとね。ほらほら、そんなことは
いいから、さっさとお風呂に入っちゃって」
「ちょっ、そんな押さなくても入るよ」
あまり余計なことを考える時間を与えないようにするため、困惑気味なレンレンの背中を押して室内へと
追い立てていった。
彼が入浴している間に、下ごしらえでストップしていた準備を完了させた。そして、風呂上りでリビングにて
テレビを眺めていたレンレンをキッチンへと呼び寄せる。
二人でテーブルに向かい合った席に腰を下ろして、手を合わせる。
「今日のご飯はさ、ルリが作ってくれたの?」
「う、うん。ほとんどはそうだよ。お泊りさせてもらうんだから、その恩義に報いるためにもね。
頑張ってみたんだけど、どうかな?」
「うん、おいしいよ……って、今日は泊まっていくの?」
忙しなく箸を動かしていたレンレンが一旦それを止めて、こちらを見てくる。
「うん。おばさんからそうしなさいって勧められたの。それに、久しぶりにレンレンとゆっくり
話したいから……ね?」
「そ、そうなんだ」
ちょっとしなを作って上目遣いに微笑んで見せた。
おおっ、少し動揺してるっぽいみたいだ。私もちょっと顔を赤くしていると思うけど、彼は私以上に
真っ赤にしてる。
(レンレンが私を好きってホントみたいだ……)
「ほ、ほら、これなんか自信作なんだよっ。食べてみて」
「う、うん」
ほんの少しだけの沈黙。だけど決して気まずいようなことはなくて、それに浸るのも悪くない――そんな
空気だった。でも、やっぱり気恥ずかしいというか……。
結局、恥ずかしさに負けて空気を換えるため、特に自信のある料理を勧めていくのだった。
二人っきりでの夕飯を終えると、片付けをすることになったのだが、嬉しいことにレンレンが自主的に
手伝いを買って出てくれた。そのため早く終えることができた。
リビングへと入って、私は持ってきたお茶を用意していく。
「はい、どうぞ」
「ありがと」
テレビの電源を点けてソファに座り、まったりとくつろいでいく。何気ない雑談をしていき、二人で
笑ってはまた別のことを話して……と繰り返していく。
「あっ、あのさ……」
「ん、なに?」
昔の――中学生のころに意地悪していたことを詫びなければならない。
「そ、そういえば、レンレンって将来はどうするの?」
だけど、私の口から出てきたのはまったく別のことだった。レンレンにはヘタレとか根性なしとか思ってた
こともあるけど、これでは私も人のことはいえない。
「将来……? とりあえず来年からは大学生だけど」
「それはもう知ってるってば。ほら、将来の仕事はなにをしたいのかって話だよ」
これも興味のあったことだから、ひとまずこの話題を続けてみることにした。
「あーっ、わかった。まだなにも考えてないんでしょ?」
「そんなことないよ。なれるかはわからないけど、具体的な希望は持っているから」
「へぇー、なに? あっ、わかった。プロ野球選手とか?」
スポーツをしていた人はその競技のプロになりたいものだと思う。今でこそ野球人気の低迷とかって話も
あるけど、なんだかんだで日本で一番関心を持たれているプロスポーツは野球だし。きっと彼も、
なれるものならなりたいはずだと思っていた。
だが、彼の口から出てきたのはは否定の台詞だった。
「ううん。昔はなれたらいいなって考えてた時期もあったけど、今はないよ。別に夢が出来たから」
「そうなの? それで夢って?」
「高校教師になれればいいなって思ってる」
「……はっ? マジ……?」
あまりにも、その……らしくないっていうか。彼がネクタイ締めて教壇に立って高校生たちに授業をしている
というような姿を想像してみたけど……。悪いけど、似合わないような気が……。
「ルリ、似合わねーとか思ってるだろ」
「……へっ? そ、そんなことないよ、うん」
「別にいいよ。これを話したときは野球部の皆も微妙な顔してたから。本当のことを言うと、目的はまったく
別のことなんだけどね」
レンレンは湯飲みを手に持つと、ゆっくりとお茶を飲んでいく。
「別にってなに?」
「オレ、高校野球の指導者になりたいんだ。昔のオレってウジウジして卑屈で周りの顔色を窺ってばかりで……。
そんな自分が嫌いだったんだ。だけど、しょうがない。オレはずっとこのままなんだって、どこか諦めていた
ところもあったんだよね」
「…………」
「だけど、一年のときに監督から半ば強引に野球部に引き入れてもらって、それでなし崩し的に入部して……。
本当はさ、ただ遠くから見てるだけのつもりだったんだ」
「遠くから……?」
「中学のときは、オレのせいでチームメイトに迷惑を掛けて嫌な気分にさせていたからね……」
辛い記憶なので、それを思い出して苦しいらしく、顔を俯けていく。
「高校でもまた繰り返しちゃうんじゃないかって思ってたんだ。だけど、三星と違ってオレは普通の生徒の
一人だから、特別扱いとかそんなことなくて。楽しく――皆からは普通に野球してるだけだって言われたけど、
オレ、野球が楽しかったんだ。
それで練習頑張って、二回も甲子園に行けて活躍もできた。本当に、楽しかったんだ……」
「……そっか」
確かに高校で野球をしているときの彼は、本当にいい表情(かお)をしていたと思う。好きなんだって自覚した
のは中学のころだけど、そのいい笑顔で投げていく姿を見て惚れ直したっけ。
「中学のころの嫌いだった自分が、これで少しは変われた気がするんだ。高校野球のおかげでもあるんだけど、
この大事なきっかけを作ってくれたのは百枝監督なんだよね。監督みたいになれればっていうか、
自分を変えてくれた高校野球に恩返しみたいなことができればって考えてる」
テレビからはなにも聞こえてこなかった。私かレンレンなのかはわからないけど、いつの間にか電源を切って
いたみたいだ。
「監督に相談してみたら、大学で教員免許を取得して高校の先生になるのが一番だって言われてさ。大学って
普通の講義のほかに――教員課程、だっけ? その講義を受ければいいって聞いたから」
私が思っていた以上にちゃんと考えているみたいで驚いた。驚いたんだけど……。胸の奥がちりちりする
というか、痛みのようなものを感じていた。
――私って、レンレンたちの監督さんに嫉妬してるんだ
そう思ったときには遅くて、言葉にしてしまっていた。
「レンレンはさ、監督さんのこと……好きなの?」
「うん」
「そう……お風呂、借りるね」
「男のオレたち以上に男らしいっていうか、尊敬しているって意味で……って、ルリ?」
レンレンはなにか話を続けていたようだけど、ショックで半ば放心状態である私はリビングから逃げるようにして
お風呂場へと足早に向かっていった。
「どういうことなんだろ……。尚江おばさん、レンレンは私のこと好きって言ってたのに。だけど、レンレン、
監督さんのこと好きだって……。私、勝てないよ……。監督さんみたいに美人じゃないし、スタイルもあんなに
よくないし……」
身体を流して髪も洗い、湯船に浸かる。考えるのは先ほどのことばかり。下を向いてお湯をすくい、顔を
洗ってみる。そして、自然と自分の胸の膨らみへと目がいく。
「結構おっきくなったと思うけど、到底監督さんには及ばないよ……」
両手を胸へとやり、ふにふにと触っていく。平均的なサイズには十分に達しているし、形だって悪くないと思う。
部活も頑張り日ごろから節制して太らないように注意していたから、ウエストだって細いほうだし、お尻は大きすぎず、
かといって肉付きが薄いってこともないし。
「んっ……」
お風呂に入っているから体温も高くなっているわけで、ちょっとだけ興奮してしまって胸の先端が固くなって
きていた。
身体の奥のほうが少しずつ疼いてくるのを感じる。
つい先ほどまで、大好きな彼が入っていたお風呂。そう思うだけで、心拍数が上がっていく。そのままに
右手を女の子の部分へと這わせようとしたところで、
「……違う。こんなことしにきたわけじゃない。うん、なにがなんでも私へと向かせてみせる」
頭を振って頬を軽く叩き、気合を入れていった。
しっかりと髪と身体を拭いて下着をつける。持っているなかで一番可愛くてセクシーっぽいものを選んできた。
(これなら、きっと……)
続いてパジャマへと袖を通してリビングへと戻っていった。
「あっ、ルリ。遅かったね」
私がお風呂に行く前と変わらずにリビングでテレビを見ていた彼は、戻ってきた私へと声を掛けてくる。
「そう? 女の子だから、ね」
「そ、そう……」
それ以上はなにも言わずにソファへと腰を下ろして、あからさまに密着していく。やや強引に腕を組んで
胸を押し当てる。
「ど、どうしたのさ……。ルリ、変だよ?」
「私は……レンレンが好き」
「……えっ」
「中学のころからレンレンのことが好きだったの。本当はもっと早く告白したかった。だけど、こっちで
楽しそうにしてるレンレンを邪魔しちゃいけないって我慢してた。だけど、もう限界だよ……」
両肩を掴んで力任せに押し倒してキスする。彼は目を白黒させて驚いている様子だった。
私は、レンレンがうちに来たときに何度もキスをしていた。一度眠ったら朝まで目を覚まさないのをいいことに、
彼が泊まっている部屋へと忍び込んで何度も唇を重ね続けた。
慣れていたはずの行為――なのだけど、本音を言えばやっぱり胸が高鳴っていく。
勢いそのままに舌を口の中へと侵入させていく。顔を赤くしながら空気を求めて口を開いたその隙をついて、
口腔内へと深く押し入り舌と舌を絡ませていく。
「んっ、ちゅっ……ふぅ、はぁ……っ」
「……くっ、ちょっと、ルリ。どうしたんだよ!?」
「だから、好きなのっ。レンレンのことが誰よりも……監督さんにも渡したくないの!」
そう宣言して、もう一度キスを敢行。私から口の中にたまった唾液を啜られていかれ、顔色を目まぐるしく
変化させていった。
「……ちゅっ、んっ。私の身体、触っていいよ……。おっぱいもアソコもお尻もたくさん触って。
おっぱいは監督さんには負けちゃうけど……」
赤く染めていた顔を顰めると、私の肩を掴んでぐいっと押し上げてきた。
「あのさ、なんでさっきから監督が出てくるの?」
「だって、さっきお風呂入る前に話したときに監督さんのこと好きだって言ったじゃないっ」
「そりゃあ、好きか嫌いかって話だったら好きに決まってるよ。それに、恋愛対象としての好きじゃなくて、
尊敬しているって意味での好意だっていっただろ」
「え……っ?」
「最後まで話を聞かずに逃げるようにしてお風呂に行ったんで、なんかおかしいと思ってた」
つまり、私が話を聞かないで勝手に暴走していただけってこと……なのかな? なにしてるんだろ、私……。
「きゃっ」
呆けていたところを力強く抱きしめられていた。
「オレも、ルリのことが好きだよ」
「……ホント?」
「本当だよ。こんな大事なことで嘘なんかつけないし、つきたくない」
「んっ……くぅ」
今度はレンレンから口付けられる。たっぷりと舌をまさぐりあって唾も交換しあって。そっと背中に回された
腕が、ただただ心地よかった。
「そろそろ、寝ようか」
「う、うん」
「えーっと、来客用の寝具セットはっと」
「……?」
客間の和室へと荷物を持って来ると、押入れを開けた彼は布団などの寝具一式を出していき、てきぱきと
それらを敷いていく。
(ここで、するのかな……?)
私がなにも手伝わないことも気にせずに、全てを終えるとこちらへと向いてくる。
「お父さんたち遅いみたいだから、先に寝ておこう。戸締りと火の元を確認してくるから」
「う、うん」
襖を開けて部屋を出て行く彼をそのままに見送る。どうしたものかと困ってしまっていたのだけど、
とりあえず布団の上に正座して待つことにする。
「歯はお風呂のときにもう磨いておいた……。身体はいつも以上に念入りに洗って磨いた……。トイレは
大丈夫かな。あとは、これを」
バッグのなかに突っ込んでおいた、おばさんからもらったコンドームを出しておく。
これで準備は万端、のはずだ。
「まだかな……」
緊張とそれを上回る期待を胸に抱きながら、彼が戻ってくるそのときを静かに待っていた。
和室の柱に掛けられた時計を眺める。時刻は十時半前――。レンレンがこの部屋を出ていってから
三十分あまりが経過していた。なにもせずに待っていたのだけど、戸締りと火の確認にこんなに時間が
かかるとは思えない。
「どうしたんだろ……」
痺れを切らしてしまい、部屋から出て様子を見に行くことにした。
私がいた和室は一階にある。部屋から出てみたところ、辺りは真っ暗だった。一階の照明は全部消されたらしい。
首を捻りつつ、レンレンの部屋がある二階へと行くために階段を上っていった。
ドアの隙間から明かりが漏れている。部屋にいるみたいだ。やや躊躇いがちにそっとドアをノックする。
ほんの少しだけ間を置いて扉が開かれた。私に気付いたレンレンは不思議そうな顔をしていた。
「ルリ、どうしたの? 眠れないの?」
「あっ、ううん……そういうことじゃなくって」
「それじゃあ、なに?」
「…………」
皆まで言わないといけないのか。というよりも、こういうことって普通は男の子がリードしてくれる
ものじゃないのだろうか。ちょっと腹が立ってくる。
「だから、その……えっ……しないのかなって」
「? なに? なにをするの?」
「いや、だ、だから……」
「……?」
「え、えっちなことしないのかって聞いてるのよ……っ!」
とうとう感情が爆発。パジャマの襟元をぐいっと掴んで引き寄せてすごむ。
(私、女の子なのに……。でもこうでもして煽らないといつまでも埒が明かないと思うし……)
「えっ、ええぇぇ……!?」
驚くレンレンの顔は真っ赤か。
「私のこと好きなんでしょ、それなら彼女にしてくれるんでしょ? 私たち付き合うんでしょ?
だったらえっちなこともしたいんでしょ!?」
矢継ぎ早に言葉を並べ立てていく。もちろん、頬を赤く染めながら。
「そ、そりゃ好きだよ……。か、か彼女にもしたいよ、付き合えるなら付き合いたいよ、でも……」
「でもってなによ!? あんた、私の唇奪っておいて責任取らずになにもしないで、群馬に返す
気なの……!?」
先に唇を奪って押し倒していやらしいことを仕掛けたのは私が先――ということは、この際無視する。
「ご、ごめん。オレと付き合ってください……」
「う、うん。か、彼女になってあげるわよ……」
そのままズカズカと部屋に上がりこんで、ベッドに腰掛ける。ちょっと躊躇いつつ、レンレンも隣へと
腰を下ろす。
「あの、ルリ。こういうのって、付き合い始めて時間がしばらく経ってからするもんじゃないの?」
「却下よ。お互いをよく知ってからとか言いたいんでしょ?」
「う、うん。まあ、そんなとこっていうか……」
「あのね、私たちって小学生のころからの付き合いでしょ。そんなことって今更じゃない」
「……まあ」
これだけお膳立てをしてあげているのに、据え膳食わぬは男の恥っていうのに。それにしても火のつき方が
本当に遅い。イライラしてくる。
(しょうがない。ジョーカー切っちゃえ)
「レンレンはさ、本物の女の子よりも下着が好きなの……?」
「……っ!」
下着というところを強調しておく。私たちが中学生のときに、レンレンが私の下着を使ってオナニーして
いたことを知っていると暴露したわけだ。
「あれ、もしかして私が気付いてないとか思ってたの?」
「…………」
室内は少し肌寒ささえ感じるほどだけど、びっしりと脂汗をかいている。
――まあ、そのオナニー済みの下着を使ってオナニーに耽ってた私はもっとヘンタイ、だよね
もちろん、このことはおくびにも出さない。
「これからは下着だけじゃなくて、私のことを自由にしていいんだよ……?」
「……ルリっ」
「きゃっ」
ようやく火がついてくれた様子の彼に、やっと一安心だった。
「――あっ、ごめん! 言わなきゃいけないことがあったの」
そう言って押し止めて、困惑の表情を浮かべる彼にあのことを告げる。
「えっと、その、中学生のころに意地悪しちゃってて、ごめんね」
「……えっ、意地悪……それってなんのこと?」
私の言葉の意味がわからないというように、より困惑の度を深めていく。
「いや、だから、虐めたりとか泣かしちゃったりとか……」
「ルリって昔から変わっていない気がするけど。ほら、小学生のころもあんな感じだったよね」
「……そうだっけ?」
「むしろ、嬉しかった。オレ、学校に行っても修ちゃん以外に友達いなかったから……。あれで
ルリにまで冷たく他人行儀みたいにされてたら、中学の三年間も耐えられなかったと思うからさ……」
レンレンの顔を見詰めつつ、心のなかで言葉を反芻する。
(私ってそんなに怒りっぽいって思われていたのかな……。ってことは、なにも問題なかったって
ことなの?)
などと、内心落ち込んで悩んでいるところを抱きしめられていく。
「きゃっ。ちょっ、そんながっつかなくても……」
そのままベッドに押し倒されて口付けられる。ぴちゃぴちゃといやらしい音が響いていき、
唾を吸われたかと思えば彼からも唾液を流し込まれていく。
「んぐっ、くちゅ……ちゅるっ、や、やだ。そんなとこ舐めちゃダメっ」
パジャマ越しに胸を揉まれながら、今度は耳たぶを唇で弄ばれてた。舐めしゃぶられていくうちに
気持ち悪い気がしていたはずなのに、ぞくぞくとしてきて嬌声を抑え切れなかった。
「いやじゃない、よね? こんなエッチな声出してるんだから」
「くっ、ひぃっ、そんなこと……ないっ、ダメぇ!」
「ほら、こんなに喜んでる」
「ダメぇ……なんで、どうして? はぁあ、耳の穴舐められるの、ふぁあ気持ちいいっ」
パジャマのボタンを開けられてブラをぷちっと外された。
(ああっ、乳首たってる……恥ずかしいよ)
「うわっ、柔らかくてすべすべしてて、可愛い……」
自分で慰めるときと違って遠慮なしに揉み込まれているので少し痛みを感じる。そうだったはずだけど、
乳首を摘まれたり舐められて舌で転がされていくうちに快感が勝ってきた。
「はふっ、ヤだ……そんなにもみもみしちゃイヤぁ……」
「ちゅっ……ルリのおっぱい、可愛い。そんなこと言ってても気持ちいいんだよね?」
悔しいけど、否定できない。撫でられているだけで気持ちよくて、身体がもっともっとってより強い
刺激を求めているのを自覚しているから。
「あっ、ちょっと……そこ触るの!?」
あっさりと下も脱がされてショーツの上からまさぐられていく。
「濡れてる……。オマ○コって本当に濡れるんだ」
咎める台詞はまったく無視されて下着から割れ目に沿って指を這わされていく。くちゅくちゅと粘り気
の強い水音が立てられ、私はだらしない声を上げ続けていった。
(自分でじゃなくて人のされるのが、こんなに気持ちいいだなんて……。パンツ、べとべとで私の
いやらしい愛液でぐっしょりになってる……)
「脱がす、よ……」
「……うん」
ちょっとだけ腰を浮かせてショーツを楽に脱がせられるようにした。するすると下りていき、
小さく丸くなったそれはベッドの脇へと追いやられた。
着ているものはパジャマの上着だけとなった私。熱い眼差しを全身へと感じて身じろぐ。
「その、さ」
「う、うん。なに?」
「レンレンも脱いでよ。私だけ裸なんてずるいよ……」
「わ、わかった」
私へと圧し掛かっていた彼は、上半身を起こして着ているものをさっと脱いで肌を露にしていく。
よく引き締まった体だった。しげしげとそのまま見詰めていき、最後の一枚となった下着も脱いで
男の子の部分が勢いよく現れた。
「……あのときより、おっきくなってる……?」
「えっ?」
「ううん、なんでもないからっ」
中学のとき、うちの脱衣所にて彼が私の下着でオナニーする姿を目撃していた。記憶にあるあのときの
それよりも、一回り、ううん。二回りぐらい大きくなっているような気がする。
「ルリ……」
「う、うん……なに?」
「オレ、ルリのオマ○コみたい」
「お、おま○こって、そんなえっちなこと言わないでよっ。でも、うん……いいよ」
また恥ずかしがってはいけない。たぶん、私がレンレンの体に興味があるのと同じように、彼も私の
身体に興味があるのだろうし。
両膝に手を置かれてぐいっと開かれる。割り開かれた股の間に入り込んできて、私の大事なところを
両手の指で左右に広げられた。
「…………」
(なになに、なんなの? どうして黙ってるの? 形がおかしいとか、もしかして、グロいとかって
思われちゃったりとかしてるの……?)
「ねぇ、どうしたのよ」
努めて声は冷静なふうに装う。
「うん……エロいなって。だけど、綺麗なピンク色をしてて可愛いなって思ったり」
「…………」
怒るべきか、それともなにも言わないべきか。エロいって褒め言葉には聞こえないし、でも、可愛い
っていってもらえたし……。
逡巡している私に新しい刺激が襲ってきた。
「きゃっ、えっ、ちょっと……なに? ああぅ」
私の股間にレンレンが顔を埋めて舐めまわしてきていた。舌をもぞもぞと這わせて私の恥ずかしい
ところを嬲ってくる。
振りほどいてやめさせたいのだけど、丁寧に丹念に愛撫されるうちにどうでもよくなってきた。
むしろ、もっと強い快楽が欲しくなって、下腹部が甘く疼いていく。
「これがオマ○コの穴で、こっちがクリトリス、ってやつかな……」
舌だけでなく今度は指も加わって蹂躙されていく。
「だ、んんんっ、そこは敏感、だか、……ふぅあぁああぁっ!」
執拗な責めを受けて、身体はとうとう限界に達してしまった。
私は軽くイカされてしまって放心状態へと陥ってしまった。気付いたときには、レンレンが手を握って
抱いてくれていた。
「ごめん、ちょっとやりすぎたかもしれないよね。ルリがきつかったら、今夜はもういいから」
「……はい」
照れくさいので、言葉少なにぶっきらぼうにして隠し持ってきていたスキンを手渡して握らせる。
「最後まで、しよ? でも、今度は優しくしてね」
「う、うん。わかった」
スキンを装着する姿をあまり凝視するのはマナー違反な気がして、なるべく見ないようにした。
とはいっても結局、わいてくる好奇心には勝てなくてちらちらと覗いていた。
「さっき触ってたとこでいいはずだから……ここ、だよな?」
右手を添えて私の大事なところに宛がってくる。くちゅっと湿った音が聞こえてきた。少しだけ
私のなかに埋まってきている。ゆっくりとしたスピードながらも徐々に着実に押し広げられていく。
「んっ……くぅっ」
「ごめん、痛いよね。だったら……んっ」
オチ○チンを一気に押し込められたことにより、鈍い痛みを感じて思わず目を閉じてしまっていた。
「……っぅ!」
「は、入ったよ……」
「……ホント?」
「うん……」
恐る恐る目を開けて、私たちが繋がっているところへと視線を向ける。僅かだけど、赤い筋が見える。
「やっぱり、血が出ちゃうものなんだ……」
ぽつりと胸に浮かんだ感想をそのままに口に出す。
「ごめん、女の子は初めてって痛いんだよね?」
「うん。でもさっきはすごく痛かったけど、今は落ち着いてきた……それに……」
「? なに?」
「初めてを、ずっと大好きだった人にあげられて嬉しい……って、や、な、なに?」
ぎゅっと身体を抱きしめられていた。
「ルリ、可愛い……。オレ、我慢できなくなってきたんだけど、動いていい?」
「うん、でも、優しくね?」
私が許可したことで、ゆるゆると探るようにして前後に動いてきた。膣内をゆっくりと気遣うように
擦られることによって、さきほどの痛みとは異なる感覚がわいてきていた。
本当ならもっと激しく乱暴に動いて自分が気持ちよくなりたいはずなのに、懸命になって耐えているレンレンを
とても愛おしく思う。
「ああっ、アアっああぁあっ、だ、ダメぇ……」
「……っ、ルリのオマ○コ、すごい気持ちいいよ、熱くてめちゃくちゃいいっ」
両腕は彼の首筋に、両足は彼の腰へと回して抱きしめる。そんな私に応えてくれたのか、レンレンも同じようにして
私のことを力強く抱きしめてくれた。
「ルリ」
「んっ、ちゅ、っふっうぅん」
唇を奪われて舌を絡められる。
(だめっ、上の口も下の口も犯されて……わたし、もうだめぇ)
「んっ……ルリ、好きだよ、オレ、ルリのこと、大好きだからっ!」
「わたしも、好き……レンレンのこと、これからもずっとだいすき、だよっ!」
何度も何度もアソコを抉られ、とっくに痛みは過ぎ去って、ただ与えられる気持ちよさが
心地よかった。激しくなってきた腰の動きに翻弄されていくばかりだった。
「出る……ルリ、もう出ちゃうよ!」
「いいよ、レンレンの好きにして……っ」
「くうっ、出る、よ!」
お腹の一番奥で私に突き刺さっている彼のモノが大きく震える。
「ふあぁぁっ、すごい、すごいよぉ……っ!」
疲れからか私へと圧し掛かって体が預けられてきた。行為後の余韻に浸りながら、私はその背中を
抱きしめ続けていた。
「ごめん、どくね」
「うん……」
お互いになんだか照れくさくて、どうしても口数が減ってしまう。そのため、オチ○チンも私の
膣内から離れていく。ちょっと名残惜しい気がしたのは気のせいだろうか。
「そ、「あ
二人とも喋ろうとして見事にかぶってしまった。
「ルリから言っていいよ……」
「ううん、レンレンからでいいよ……」
「じゃあ、一緒に言おっか?」
「うん」
呼吸を整える。そして、一言。
「気持ちよかったよ」「気持ちよかった」
私も彼も顔を見合わせて目を丸くして驚き、耐え切れなくて吹き出してしまっていた。
初めてでこんなに気持ちよくていいのかって戸惑っていたところがあった。でも、お互いに気持ちよかった
のなら、そんなことを気にしているのがバカらしくなって、思いっきり笑っていた。
ちらちらとこちらの顔色を窺ってきているのに気付いた。それも顔を真っ赤にして――というか、
目が血走っているって表現のほうが正しいかも。
(……なるほど)
「ねえ、レンレン」
「う、うん。なに……?」
「もう一回、エッチしよっか?」
「いいの!?」
やっぱりだ。考えていたとおりの返事を受けて、ちょっとだけ笑ってしまう。
「うん。私を、また気持ちよくして……」
レンレンへと飛びついて押し倒し、勢いそのままに唇を重ねていった。
二人ともシャワーを浴びて部屋へと戻ってくると、もう深夜といっていい時間帯だった。
エッチはもちろんだけど、時間も忘れていちゃいちゃしてたらこんな時間となっていた。
「――あっ、ほらここに書いてある。『コンドームは一個につき一回限りです。その都度、新しい
コンドームをご使用ください』だって」
「ごめん……」
なにぶん、お互いに初めて同士だったのでこの注意事項を知らなかった。何度も肌を重ねているうちに
気付かないうちにスキンは破れてしまって、手遅れに……という感じだった。
私としては特に気にしていなかった。一応、大丈夫な日ということはちゃんと調べていたからだ。
だけど、ちょっと青くなっているレンレンが可愛くって、さっきから虐めている。
「今日は、安全日ってやつだから大丈夫だよ」
「そうなんだ、よかった……」
「でもね、絶対に大丈夫ってわけじゃないんだよ。知ってた?」
「えっ、そうなの!?」
「だから、もしものときは……よろしくね」
にまっと笑顔を浮かべて更に顔色を悪くしたレンレンに抱きつく。
さてと、聞いておきたいことがあるので、虐め続けてあまり時間を無駄にするわけにもいかない。
「ちょっと聞きたいんだけど、レンレンってどこの大学にいくの?」
「……えっ、どうしたの?」
「せっかく恋人同士になれたんだよ。高校は無理だったけど、大学は一緒の学校にいきたいから」
「そうだね。でも、大丈夫かな……」
ちょっとムッときた。私は進学コースに所属していて成績もそれなりに良い方だ。よっぽどの
高望みをしなければ、たいていの学校なら入れる実力はもっている。
「失礼ねー、言ってみなさいよ。絶対に入ってみせるからっ」
「うん、早應大学だよ」
「はっ? 早應って……あの早應義塾?」
「うん、そうだよ」
思わず耳を疑ってしまう。彼の口から出てきた学校の名前のせいだ。
国内の私立大学でも屈指の名門校で、偏差値も当然ながら相応に高い。確か、一度だけ冗談で模試で
志望校欄に書いていたことがあったけど、そのときの評定はC判定。
『もしかしたら通るかも。でも、落ちる可能性のほうが高いよ』
って評価のC判定だ。
「な、なんで? どうして!? なんでレンレンがそんな頭がいいとこに入れるのよ……っ!?」
首元をつかんで揺すり続ける。めちゃくちゃ失礼なことを言っているのだけど、そのことを
気に留める余裕は一切なかった。
「お、落ち着いてっ。ほら、オレはスポーツ推薦だから、成績はあまり関係ないんだってば!」
「スポーツ推薦……野球」
私につかまれていた喉元を擦りつつ、経緯を説明してくる。
「推薦の話がいくつかきてたんだけど、そのなかでもそこの野球部の監督さんが一番熱心に誘ってくれたんだよ。
入学金や授業料とかその他諸々全部が無料でいいって条件をもらって……」
「はっ、はははっはは……」
まだなにか続けていたようだけど、半ば放心状態だった私は力なく笑うことしかできなかった。
翌年、三月下旬――。
あれから寝る間も惜しんで、とにかく必死に勉強をして、私はなんとか合格を果たすことができた。
四月からは経済学部へと進み、経営学を学ぶことになっている。
そして、埼玉の三橋家――レンレンの家を訪れていた。
『東京って物価が高かったりするでしょ。危ないなところもあるし、一人暮らしも心配だからね。
うちから電車通学できることだし、それに、うちは部屋余っているし。ルリちゃん、うちにいらっしゃい』
という、尚江おばさんの一声により、今日からお世話になることになったのだ。
実家から発送しておいた荷物は、すでに私が使わせてもらう部屋へと運び込まれているそうで、
出迎えてくれたおじさんとおばさんに挨拶する。
続いてきょろきょろと見渡す。再会を待ち望んでいた人物は見当たらなかった。
内心、ため息をつきつつ、おばさんにそのことを聞いてみることにする。
「あの、おばさん……」
「ルリちゃんが来てくれて、本当に良かったわ。お父さんと二人だけじゃ寂しいからね」
「あっ、いいえ……って、二人?」
玄関へと歩いていくなかで、聞き逃せない言葉が耳に入ってきた。
「ほら、廉は野球部の合宿所に入っちゃったから。ルリちゃんが来てくれて本当によかったわー」
「が、合宿所……?」
なんだろう。ものすごく嫌な予感がする。それも、とっておきの最悪なことが。
「うん。野球部員は原則的に合宿所に入らなきゃいけないらしくてね。まあ、これも無料だし、
それにうちから神奈川にある専用グラウンドまで通わせるのも鬼みたいでしょ?」
「かっ、かか神奈川……っ!?」
私が足を止めて驚いている姿を見て、おばさんも立ち止まった。しげしげと私の顔を覗き込んでくると、
ちょっとだけ考える素振りをして首を捻る。
「あれ、うちの子から聞いてない?」
ぶんぶんと首を何度も縦に振る。にまっと笑顔を浮かべた尚江おばさんは、私の肩にポンと
手を載せてくる。
「やーねー、さすがに同棲みたいなことはさせられないわよー」
ばんばんと肩を叩かれていく。ちょっと先に行っていたおじさんは、こっちを見ると苦笑いを
浮かべていた。
「廉とルリちゃんの仲は、三橋の実家でも公認されたようなものだけど、学生で同棲は無理よ。
さて、荷解き手伝うから落ち着いたら家に入ってきてね」
「…………」
すたすたと先に家に入っていくおばさんの姿は目に見えているが、私の頭のなかはまったく別のことで
埋め尽くされていた。
(一緒にいられるんだって思ってたのに……。今度こそ一緒にいるために勉強も必死に頑張ったのに……っ)
キッと神奈川県がある方角へと目を向ける。力いっぱいに拳を握りこんでいく。
そして――、
「レンレンの……レンレンの……レンレンのバカァーーーーーーーーーーーーっ!!!!!」
お腹の底から声を張り上げるのだった。
終焉を迎えたはずだと思っていた遠距離恋愛。しかし、以前よりも更に距離を広げて続行することに
なってしまった。
(終わり)
最終更新:2008年01月30日 23:17