7-596-500 アベチヨ(420氏) バレンタイン当日 ◆/3cEp/K.uQ
2月14日。
世間的には愛を伝える日ということになっているが、
実際には男子女子共に水面下で腹の探り合いをする決戦の日でもある。
その日の放課後、西浦高校野球部では。
「チョコ何個もらったかみんなで言い合いっこしようぜー!」
田島の提案に部員たちも乗っかる。
「クラスの女子と委員会一緒の子とで、3つくらいかな」
「オレも」
栄口と巣山の1組勢は誇るでも嘆くでもなく普通の様子。
「オレもそのくらいだけど、西広は10個くらいあるよね」
「いやあ、テスト前のノートコピーのお返しだし、家帰れば妹にも分けなきゃいけないし」
沖・西広の3組勢も特に変わった様子はないようだ。
「オレも10個ー。冬って甘いもの多くていい季節だよねー」
「5個くらいか?でもオレも義理ばっかだよ」
「あー、バッグん中テキトーに入れたし覚えてねーや何個だ?2、3個か?」
水谷・花井・阿部の7組勢は各々結果がばらついているが対応もそれなりの様子。
「まあ、5、6個くらいかな。半分は田島のおこぼれだけどな」
「オ、オレ、オレも、たじまくんの、おかげ、で、チョコ、うれしい!」
クールな泉と食べ物が増えて喜ぶ三橋をよそに、
田島がコンビニのビニール袋いっぱいに入ったチョコを一つ一つ数えていた。
「……いつ、むー、なな、やの、ここ、さーんじゅー!イェーイ、オレトップ!」
ガッツポーズで喜ぶ田島に拍手が起こる。
「え、なになに?田島くんがおめでとうなの?」
「あ、しのーか!チョコくれ!」
現れたマネージャーに向かって田島が右手を突き出す。
「あはは、全員の分あるよー。大きさは同じだけど一人一人の好みに合わせてあるからね。
今数学準備室に置いてあるから、おにぎりタイムの後で持ってくるねー」
「そして私からのチョコは練習終わってからあげるから。さー始めるよー」
「ウス!」
モモカンの号令で部員達は周辺視野パネルを持って各々散っていった。
バレンタインが終わった直後の週末、私は阿部くんの家にいた。
もうすぐ期末試験があるから苦手な数学を教わるつもりだったんだけど、
勉強してちょっと休憩、と思ったら座ったまま阿部くんの腕の中に抱きすくめられて。
「あー久しぶり、この感触」
阿部くんと私は付き合っているけど他のみんなには内緒。
『部の中でイチャイチャされるのも他のヤツらがヤだろうし。少なくともオレはやだ』
って阿部くんが付き合い始めのとき言ったし、
言ってることは間違ってないと思うから私もうなずいた。
もともと阿部くんは野球以外は興味なさそうな顔をしてるし、みんなそう思ってる。
だからこその、秘密。
「ねえ阿部くん、私があげたチョコ、おいしかった?」
「ん、ああ、うまかったよ」
「よかったぁ。『普通に既製品買っとけ!』とか言われたらどうしようかと」
「うまかったっつの」
問答無用、みたいに唇を塞がれた。
「篠岡、チョコ食ってきた?なんかチョコっぽいにおいがする」
「あ、リップがチョコの香りするの。カカオバターが入ってるとか書いてあった」
「ふーん」
興味なさそうに返事をしながらも、阿部くんは今度は舌を絡めてきた。
「ん……」
舌を絡めながら、気持ち良さで頭の裏側が痺れるような感じになる。
セーターの裾から阿部くんの右手が入ってきて、するすると背中をなぞったかと思うと
一発でブラのホックを外した。
右手はそのまま私の左胸を触り、左手が背中を触れるか触れないかくらいに軽くなぞる。
ピアノを弾くみたいに指が一本ずつ背中に触れて、
もともと背中が弱い私は身震いしてしまう。
「んんんっ……んぁっ」
「もっと声出していいぞ、篠岡」
阿部くんの低い声が、私の耳に更に甘やかな痺れを送る。
同時に胸の先端を摘まれて、身体全体がビクンと震えた。
「はあぁっ」
つい大きい声が出ちゃって恥ずかしくなったけど、
阿部くんは予想通りみたいにニヤリと笑って私を裸にした後ベッドに横たえた。
阿部くんの唇は首筋と鎖骨を食むようにしながら胸に降り、
右手は浮かせた背中を、左手は胸とおなかをごく軽く撫で回す。
そのもどかしいほど軽くて、でもすごく丁寧な愛撫に私は身体を捩らせるしかなくて。
「んはっ、あ、あべく、ん」
かすれそうな声で阿部くんを呼び二の腕を掴むと、こちらを覗き込む二つの黒い瞳。
「も、っと、つよく、触って」
再び阿部くんがニヤリと笑い、次の瞬間私の真ん中に阿部くんの右手が触れた。
「ふあぁっ」
するりと指が入るのがわかる。そのくらい濡れていたという事実と、
そこから聞こえる恥ずかしい水音でもっと中から溢れてくるのが自分でもわかった。
ただ阿部くんの首にしがみついて指の動きに耐えようとしたけれど、
ベッドから落ちた左足は刺激に反応して跳ね、腰が動いて新たな刺激が加わる。
恥ずかしい、って思ってるのに私の声も身体ももっと刺激を求めるようにしか動かない。
「入れるぞ」
いつの間にかゴムをつけていた阿部くんが私の中を埋めていく。
「あ、あぁぁ、あっ、あ」
頭のてっぺんまで突き抜ける快感に首を反らすと
首筋に噛み付くみたいに荒々しいキスが届いて、
私は必死に阿部くんにしがみつく。
そんな私を見ながら阿部くんは、「しょうがないなあ」とでも言うような、
すごく優しい笑顔を浮かべると私の唇を貪る。
この笑顔を向けられるのは、この世で私だけ。
大好き、阿部くん、だいすき。
頭の中が真っ白になって意識が弾けるまで、私はずっと繰り返した。
あべくん、だいすき。
試験の勉強を見てやるなんて言ってみたはいいものの、
正直オレだって健康な16歳の男だ。
目の前に彼女がいて家には誰もいなくて二人きり、なんて状況で
指一本も触れないなんて生殺しだ。
だからオレが篠岡を抱きしめるのは当然の結果だろう。
「あー久しぶり、この感触」
オンナって何で出来てるんだろうって、たまに思う。
そりゃ人間だから細胞の組成も何も同じってのはわかってる。
でもなんでこんなに細っけえのに柔らかいんだ?
何回も身体を重ねて、まさに腕の中に抱きしめている今でさえそう思う。
「阿部くん、チョコおいしかった?」
ああおいしかったさ。他のチョコはシュンにやっちまったけどあれだけは譲らなかった。
篠岡にキスするとふわりと甘いにおいがした。
チョコレート味のリップなんて、女にはいろいろな武器があるもんだ。
でも今のオレにはチョコよりももっと食っちまいたいものが目の前にある。
舌を絡めるとそれに応えようと篠岡の舌も動き、鼻にかかった声が漏れる。
「ん……」
チンコに来るってのはこういう声のことなんだろうな。
ブラのホックを外しながら、オレはなぜか何ヶ月前かの選択芸術の授業を思い出した。
『音楽ってねえ、実はなかなか官能的なもんだよ』
30前後の男性教諭がいきなりこう言い出して、音楽室がざわめいていた。
『女子もいるところでこういうことを言うとセクハラ呼ばわりされそうだけど、
楽器を弾く時には恋人を抱くように、ってのは当たり前に言われることでね。
例えばこのテューバ。ユーフォニウムとも言うね』
ラッパみたいな大きな金管楽器を抱えて椅子に座ると更に続けた。
『ほらこうやって、レディを抱っこするようにして演奏するわけだ。
丁寧に扱えば、ちゃんとそれに応えてくれる』
なんでこんなこと思い出したんだか、と思いつつ篠岡の背中を軽く撫でてみる。
触れるか触れないかくらいの位置でゆっくりと。
こらえきれず甘く呻く篠岡にオレは耳元で囁いた。
「もっと声出していいぞ、篠岡」
身をくねらせながら喘ぐ様子を見てつい微笑が漏れる。
篠岡をベッドに横たえて、じらすように軽くゆっくり、
しかし丁寧に唇と手で愛撫を繰り返す。
啼けよ、篠岡。オレの手で楽器みたいに、その可愛い声でさ。
オレの声が聞こえてるみたいに篠岡は快感に打ち震え、嬌声をあげる。
そしてオレの腕を掴むと、涙を溜めてるみたいに潤んだ目でねだってきた。
「も、っと、つよく、触って」
思い通りの反応に思わずまた笑みが漏れてしまう。
下を触ると、予想以上にそこはすっかり濡れていて、
すんなりと埋まった指で内壁を擦ると派手な水音が響く。
篠岡がオレにしがみついてきてちょっと動きが制限されたが、
ベッドからずり落ちた篠岡の左膝がビクンビクンと上下するのが横目で見え、
耳元からの甘さを含んだ喘ぎ声とうねる膣内の感触は
オレをギリギリまで張り詰めさせるのに十分だった。
用意していたゴムを手早くつけ、
「入れるぞ」
とだけ言って篠岡の中に入り込んだ。
根元まで埋めると、篠岡が首筋を反らし、白くオレを誘うかのように見えた。
腰を動かしながら痕を残さない程度に首筋を軽く噛むと、
再び篠岡がしがみついてきて大きく動けなくなる。
仕方ないなあと思いながらもそれすらも幸福感の一部のようで、
篠岡の唇を貪りながらゆっくり膣壁を擦ると甘い息がかかる。
「大好き、阿部くん、だいすき」
いつもみんなのために動く篠岡だけど、この言葉だけはオレにしか向けないもので。
「あべくん、だいすき」
繰り返す篠岡の声が段々切れ切れになっていく。
やがて膣内がヒクヒクと痙攣し、オレも篠岡の中で果てた。
腰を強く打ちつけながら痺れる頭の中で思う。
オマエはオレのもんだ、篠岡。
最終更新:2008年02月16日 17:30