8-27-40 ハナモモ(420氏) ◆/3cEp/K.uQ :2008/03/10(月) 01:06:43 ID:K+mOjQK6


西浦高校硬式野球部第一期生の夏が終わった。
何もかもが初めてだらけだった2年半を過ごしてきたグラウンドともしばし別れを告げ、
進学という新たな舞台に向かっていく。

その一方で、1、2年生を率いる監督、百枝まりあは今日もグラウンドに立ち球児たちを指導していた。
「はいミーティングしまーす。花井くん、始めて」
言ってからはっと口を押さえる。
花井梓は初代主将の名だ。つまりもう引退しており、ここにいるはずもない。
「カントク、またですかー。オレもうこの際坊主にしてこようかなー」
「いいんじゃねさっぱりして。ボウズ!ボウズ!」
「ボ・ウ・ズ!ボ・ウ・ズ!」
ここ1週間で数回名前を呼び間違えられている新主将がぼやくと、
周りで坊主コールが起こりだす。仲の良さと少々の悪乗りは先輩譲りのようだ。
「はいそこまで」
百枝が両手を挙げ自力金剛輪の構えをすると、コールはピタッと止んだ。
「呼び間違いは謝るわ。ごめんなさい。ミーティング始めてちょうだい」

百枝は腕を組んでやれやれ、と苦笑した。
なにせ花井の代の選手たちは2年半ずっと面倒を見てきたのだ。
主将と言えば花井、というのも2年半続いてきたもので、
人の名前を覚えるのが特に苦手というわけでもない百枝であっても
習慣はなかなか切り替えられないものだった。
(私がしゃんとしないと新主将が腐るわね。この子も一生懸命やってるだけに、
 私のつまらないミスで関係が取れなくなるのはチーム運営上困るわ)
百枝は軽く唇を噛んで、2年のマネージャーが持ってきてくれた秋大会初戦の対戦相手データに目を通し始めた。


それから半年後、強風が梅の花を散らす3月のある日、西浦高校で卒業式が行われた。
卒業式には学校首脳陣の好意により百枝も招待され、
来賓席に座って一人一人が壇上に上り卒業証書を受け取るのを見ていた。
(ついこの間、あの子たちをグラウンドで出迎えたような気がしてたんだけどなー)
選手たちも逞しくなった。ある者は背が伸び、ある者は薄かった胸板に筋肉がつき、
そして全員に言えることとして、幼さの残る少年の顔から大人びた青年の顔へと変わっていた。
(こういうのも監督業の醍醐味ってやつなのかしらね)
生徒たちと一緒に小声で校歌を口ずさむ。7年前に歌ったっきりなのに結構覚えてるもんだわ、と
百枝は少々嬉しい気持ちになった。

謝恩会で一通りの挨拶を済ませ、一足先に抜けてバイトへ向かうべく
スクーターを止めた駐輪場を目の前にした百枝を追いかける影があった。
「か、カントク!」
振り向くと花井が走ってきたところだった。
相変わらずの坊主頭ではあるが練習の時にはかけない眼鏡と見慣れないスーツ姿は
ユニフォーム姿を見慣れた百枝にとっては若干の違和感があった。
そう、違和感。
(花井君って確かに元々背は高かったけど、こんなに大人っぽい子だったかな?)
同期の他の9人と比べて子供だったわけではない。
むしろ同期と下級生をまとめ上げる点において相対的に大人であったはずだ。
ならばこの違和感はなんだろう。
今はそれを考える時ではないと百枝は判断し、花井に向かってにこっと微笑みかけた。


「どうしたの花井君、まだ謝恩会は終わってないでしょ?」
「えっと、その」
問いかけられた花井はどぎまぎあたふたした様子で何かを言おうとしたが言葉が出てこず、
口元まで出ている言葉を飲み込むたびに顔が赤くなっていく。
「なーんだ花井君らしくないねー、言うべきことをちゃんと言えるのが元主将のいい所でしょ?」
百枝のからかうような言葉に花井はますます口ごもったが、しばらくして意を決したように口を開いた。
「カントク!3年間、本当にありがとうございました!」
「あららー、さっきも聞いたわよー。何回も言われるとなかなか照れるものね」
「あのっ!……オレは、3年間どうでしたか」
「どうって?」
量りかねる表情の百枝を見て花井は再びあたふたしながら言葉を続ける。
「いや、なんというか、主将としてっつーか、プレイヤーとしてっつーか、
 まあ田島と比べられたら全然お話になってないっつー感じなんですけど、その」
「あっはっは、タイプの違うプレイヤーを比べたってしょうがないわよー。
 田島君には田島君の美点があるように、花井君には花井君の良さがあったわ。
 主将として2年半、よくがんばってくれたわね。すごく助かったわ。こちらこそありがとう」
ますます顔を赤らめる花井に百枝は言葉をかける。
「大学、地元にしたのね。学校の先生になるの?」
「まあ、そういう道もありかなあと思いまして」
「どんな道であれ花井君ならがんばれるよ。応援してるからね」
「……ありがとうございます」
頭を下げる花井越しに校庭の時計を見た百枝が顔色を変えた。
「やっば、そろそろ出ないとバイト遅れちゃう。じゃあ花井君、良かったら都合のいい時にでも
 後輩たちの様子見がてら遊びに来てね。元気でねー」
手を振ってスクーターにまたがる百枝を名残惜しそうに見つめる花井のもとへ
野球部卒業生たちがわらわらと近寄ってきたのが見えた。
「根性なしー」とか「へタレー」とか花井をからかう教え子たちの声をかすかに聞きつつ、
百枝はバイト先へとスクーターを走らせた。


花井は、百枝に恋心を抱いていた。
そしてそれは勘のいい同級生だけでなく想い人である百枝本人にも筒抜けになるくらい真っ直ぐな好意であった。
花井本人は決してその言葉を口にしなかったが、たとえ告白されていたとしても
百枝は100パーセントの確率で断るであろう確信があった。
「『教え子に手出した』なんてつまらないちょっかいで野球部を潰されたくない」
おそらくそれをわかっていたからこそ今までの花井の沈黙があり、
卒業式を以って正式に監督と選手ではなくなったからこそ花井は百枝を呼び止めたはずだった。
「結局、何も言わなかったわね」
くすくす、と笑った数秒後、自分がまるで花井の告白を待ち望んでいたかのように思えて
百枝は唇をキッと真一文字に結んだ。
18歳、4月が来ればじきに19歳になる花井。自分はその7歳年上。
学生時代の同期から昨夜かかってきた不躾な電話を思い出した。

『イェーイ百枝、年下食ってるぅ?』
『人聞きの悪いことを言うんじゃないの。なんか用?』
気心の知れた相手ではあったので、不穏な言葉には構わずさらりと流した。
『25歳記念同窓会に来なかったからさー、まだ忙しいのかなーと思って』
『相変わらず忙しいよ。この分だと次の30歳記念でも無理かもねー』
『はぁ、アンタ30になっても野球のカントクやる気?つか結婚とかどうすんの』
『結婚どころか相手もさーっぱり見つかりませんよーだ。野球してるときが一番楽しいしね』
『寂しいヤツぅ。誰かいないの、顧問とか卒業生とか』
友人の「寂しいヤツ」という言葉に少々ムッとしながらも百枝は冷静に答えた。
『責任教師は2人の子持ち。卒業生も何も、明日卒業してく子たちが私が教えた初めての卒業生よ』
『うわー微妙ー。さすがに卒業したての子とか厳しいよねー』
『無理に野球部から相手でっち上げるつもりはないわよ。今は野球が恋人でございます』
『ちっ、かわいい年下の子でもいれば紹介してもらおうと思ってたのに』
『そういうことか。うちの教え子をアンタの毒牙にはかけません』

「微妙、か」
3月とは言えまだ冷たい夜風に、いつもより足元の冷えるスーツ姿でスクーターに乗ったことを百枝は少々後悔した。
職場に着いたらすぐ着替えよう。そして今日もいつも通り深夜までバリバリ働こう。
あれこれ悩むくらいなら忙しくして悩む暇などなくしてしまえ、というのが百枝の持論である。
きっと花井は、主将と監督という関係から変な風に刷り込みを起こして恋愛感情だと勘違いしているだけなのだ。
新しい環境に身を置けば、新しい出会いもあるし自分への好意も忘れるだろう。
百枝はそう考えて一抹の寂しさを覚えた。
しかしその寂しさは感傷から来るものだと自ら断じ、これ以上考えないことにしたあたりで
ちょうどバイト先の駐輪場に到着した。
ヘルメットを外した時に思いのほか頬が火照っていることに気がついて、
寒さのせいかと首をひねりつつも両手でパンパンと頬をはたいてから百枝は職場に入っていった。



それから1年10か月後。
西浦高校第2グラウンドでは、硬式野球部第1期生の成人式に合わせるように
OB戦が行われていた。在校生チームとOBチームの戦いは接戦だった。
OBチームは野球を続けているのは半分強くらいではあったものの
野球部創設メンバーは百枝のコーチングや攻撃パターンを知り尽くしており、
7回裏にサヨナラヒットが出てOBチームの勝利で試合を終えた。

その晩はバイトに休みを入れて家で休養していた百枝のケータイに着信があった。
「花井梓」
現役時代に連絡網として番号を交換したとは言え実際にかけることは少なかったし、
まだ同じ番号を使っているか疑わしくはあったが
アドレス帳から消去もせずに残していなければ相手が花井だとはわからなかったろう。
サブディスプレイに浮かぶその名前にどきりとしながらも、通話ボタンを押して電話に出た。

「もしもし」
『あ、えーと、百枝まりあさんのケータイでしょうか』
「そうよ、花井君?」
『あ、はい』
「どうしたの、電話してくるなんて急用?」
『カントク、もし今都合つくなら会えませんか』
電話の向こうの花井の声は、妙にくっきりと耳に入ってきた。
「ん、いいけど、花井君は大丈夫なの?同窓会とかお友達とかは」
『全部終わりました。オレどこまで出ればいいですか』
少々考えてから百枝は告げた。
「昼間行ったばかりだけど、西浦のグラウンドにしましょ。あそこなら私の家と君の家の中間くらいでしょ」
『わかりました』
電話を切った百枝は、部屋着から着替える際にふと鏡台の抽斗からコロンの瓶を取り出した。
常用の香水より小さなそのコロンは、いつも試合の大一番で気合を入れる時につけていたものだったが
百枝は無意識のうちに迷うことなくその瓶を取り、ごく少量だけつけるとたちまちのうちに身支度を終えて
ダウンジャケットを羽織りスクーターにまたがった。



冬の夜はしんと冷える。
スクーターを停めて施錠し、グラウンドに入るとベンチの柱に花井がもたれているのが見えた。
街灯の仄白い光が眼鏡に反射しているせいか表情までは読み取れない。
「ごめんね、寒い中待たせちゃって」
百枝の姿を認めると花井は姿勢を正し、近寄って軽く一礼した。
「オレも今来たばっかですし、そんな待ってないっすから」
とは言え吐く息は白い。街灯に照らされる花井の顔は少々赤かったが、
酒が入っているからなのか寒さのせいなのかは今ひとつ判別がつかなかった。
「で、どうかした?」
自分の問いかけにおそらく花井は少々口ごもるだろうと思い、なるべく普通の声音で話そうと百枝は努めた。
「カントクは」
「ん?」
「カントクは、今付き合ってる彼氏とかいるんですか」
口ごもらずに花井が答えた意外さと、その直後の質問とに百枝は少々面食らった。
だがその反面、頭の片隅でつぶやく声も聞こえた。
(やっと来たね)
百枝は軽く深呼吸した後、いつもの口調で答えた。
「いないわよ、そんなの考えてる暇ないない」
その台詞を聞いた花井がやや視線を落とし、こぶしを軽く握ってから百枝の目を真っ直ぐ見て切り出した。

「オレ、ずっとカントクのこと好きでした。でしたっつか今でも好きです。
 迷惑じゃなければオレと付き合ってください」


ついにこの言葉が来た。
私はこの言葉を待っていたのだろうか、と百枝は目をつぶり、再び静かに息を大きく吸い、そして吐いた。
「迷惑だって私が言ったら、花井君は諦めるの?」
「もしカントクがいやだって言うんだったら、諦めるように努力します。
 すごく難しいですけど、好きな人困らせるくらいならオレが引けば済むことですし。
 ……カントクの返事をまだ聞いてません。教えてください。どんな返事でもオレは」
言い終わるその前に、花井の鼻先をふわりといい匂いが掠めた。
大会の時、ベンチの汗と砂埃に紛れて嗅いだことのある香り。
百枝が花井の胸に頬を寄せていた。その体勢のまま花井に問いかける。
「花井君は、私の歳知ってるわよね?」
「知ってます」
「同じくらいの年齢でかわいいオンナノコいっぱいいるわよ?それでもいいのね?」
「オレが好きなのはカントクです」
花井の両手が百枝の背中に伸び、そっと彼女を包むように抱きしめた。
百枝は花井のコートに染み付いた飲み屋特有の揚げ物とアルコールの臭いを感じながら続けた。
「後になってから酒の勢いです、なんて後悔しないようにね」
「ほとんど抜けてますから。それに、ずっと言いたくても言えなかったんで
 酒飲んだ勢い借りるくらいしてもいいと思うんすよ」
(本当に、この子は私のことずっと好きだったのね)
百枝は顔を上げ、花井の目を見てようやく返事を口にした。
「迷惑じゃないわ。これからもよろしくね」
返事を聞いた直後、百枝を抱きしめる両腕の力を強めた花井は身を屈め、百枝に口づけた。
数回、唇が触れるだけの軽いキスをして体を離した花井は、再び百枝の目をじっと見据えた。
「よろしくお願いします!」

酒の勢いとは言ったものの、その夜百枝と花井が一線を越えることはなかった。
「なし崩しにってのもアリはアリなのかもしれないっすけど、オレは好きじゃないです」
という花井の言葉で、その夜はそのまま二人とも各々自宅へと帰っていった。
(花井君ったら、こういう時には本当、慎重派だこと)
百枝は帰宅後湯船につかりながらくすくすと笑い、花井のますます大人びた様子と
しっかり筋肉のついた胸と腕の感触を思い出してほんのり顔を赤らめた。

1、2年生の期末試験で部活が休みになる週の土日に、二人は予定を合わせて旅行に出た。
百枝は部活とバイトに明け暮れ、花井もレポートその他で1月はほとんど会えていなかったため
今日が付き合い始めてから最初のデートらしいデートということになる。
電車を新宿から乗り換え、指定席で流れる景色を見ながらとりとめもない話をした。
「来年になっちゃうとまた忙しくなっちゃうもんねー。花井君の大学は3年から教育実習だっけ?」
「ええ、今年は小学校行って、来年は中学校行くつもりっす」
「えー、高校はー?」
「中学と高校の免許は一緒ですから。それに、下手に高校行って西浦の敵に回るよりは
 中学で指導したやつらを西浦に送り込む方がいいかなー、なんて思ったりして」
「試験、受かるといいわね」
「まだ実習も始まってないすよ?」
「それもそうね」

海の近くにある水族館でたくさんの魚を眺めた後近くのレストランで食事をとり、
近くのブティックホテルに入った二人はようやく抱き合った。


「カントク、いいすか」
「だーめ」
予想外の返事に花井が悲しそうな目をすると、その鼻先を人差し指でとんとんと叩きながら百枝が告げた。
「もう付き合ってるんでしょ、私たち。カントクじゃなくて名前で呼んでよ」
うっと言葉に詰まった花井が、何回か口をパクパクさせながらようやく愛しい人の名前を声に出した。
「まりあ、さん」
「よろしい!」
にっこり笑った百枝に花井が口づける。告白の時のように唇同士が触れるだけのキスから始まり、
触れる時間がだんだん長くなり、やがて唇を割り舌を絡め合って互いを求めた。
「んー、ふっ」
花井がぎこちなく百枝の胸を揉むと、合わせた唇の隙間からうめきが漏れる。
百枝がセーターを脱ぐと、ブラに包み込まれた百枝の豊かな胸はそれでも溢れんばかりだ。
「初めてだと難しいだろうから、自分で脱ぐね」
そう言って百枝は自らブラのホックを外し、拘束を解かれた胸は零れ落ちそうな程たわわに揺れている。
ベッドに横たわる百枝の裸の胸を花井は見つめ、谷間に顔を埋めると右手で左胸を弄りだし、
左胸の先端を口に含んだ。
その快感に百枝がぴくりと体を動かしたのを合図のように花井の愛撫が始まった。
(花井君確か初めてって言ってたわよね……まあ今時この手のハウツーなんかそこら辺にあるし)
そう思いながらも花井の愛撫が確実に自分を喜ばせていることに百枝は戸惑いを感じていた。
処女を失ってからは大分経つ。体を重ねた相手も1人2人ではない。
そのはずなのに花井の唇や指が触れたところから熱や痺れが体中に広がる様は初恋の頃のようで、
しかしそれを女の本能は刺激として受け取り、百枝は声をあげ、その身を快感で震わせた。

「私ばっかり気持ち良くなってちゃ不公平ね」
百枝はすっかり怒張した花井自身に触れる。うっ、とうめく花井をよそに百枝は優しくそこに触れ、
しばらく触った後で今度は口に含み舐めあげ始めた。
「うっ、カント……まりあさん、そんなにされるとオレ、出る……」
「いいよ、出しても」
唇と舌との愛撫は花井にとってまさに刺激的で、程なくして百枝の口の中で果てた。
出てきたものを百枝は吐き出すことなく全て飲み込み、花井自身に付着した分さえきれいに舐め取った。

今度は自分の番だとばかりに花井は再び百枝の胸を触り、もう片方の手が秘所へと伸びていく。
百枝のそこは先ほど花井自身を愛撫した刺激もあり既に濡れていて、
最初は恐る恐る秘裂を擦り、やがて溢れてきたものを突起や窪みへと擦り付けていった。
胸と秘所を同時に弄られる百枝の歓喜の声が段々抑えきれなくなってくる。
頭の裏が白くなりそうになるに至ってやっと百枝は花井が「止め時を知らない」のだということに気づく。
女を抱くのが始めての相手に雰囲気で察しろというのも酷だろうし、
先ほど一度放出しているからこれから気持ちが乗ってくるとしても無理はないかもしれない。
しかし、百枝自身がもう我慢できなくなっていた。
「花井君、もう、ちょうだい?」
その言葉にはっとした花井はベッドの枕元からゴムを取り出して装着しようと四苦八苦した。
百枝の手助けもありようやく装着し終わると、花井は顔を百枝の耳元に近づけ、囁くように告げた。
「いきます……」

花井を中に迎え入れ、久しぶりの感覚に百枝は身震いした。
漏れる声に促されるように花井は腰を百枝に打ち付け、その都度百枝の唇からは悦びが零れた。
「はないく、んあぁっ、いい、いいよぉっ」
百枝の喜びの声に促されるように花井はがむしゃらに腰を動かす。
やがて花井がぴたりと腰の動きを止め、深く挿したまま押し付けるように数回動かすと自らを抜いて
2.5ccの欲望が溜まったゴムをごみ箱に捨てた。

「すいません、なんかオレひとりで突っ走っちゃって……」
「謝ることないのに。気持ちよかったよ」
腕枕も久しぶりだな、と思いながら百枝は花井の頬に口づけた。
「あーあ、なんだか久しぶりにいつも動かさないとこ動かしたらなんだかだるくなっちゃった。寝てもいいかな」
「あ、はい、どうぞ」
「眠るまででいいから、そばにいてくれる?」
「……ずっと、そばにいます」
照れながら答えた花井にもう一度軽く口づけて、百枝は眠りに落ちていった。

<了>
最終更新:2008年03月15日 23:54