8-410-417 イズチヨ 遠征

飾り気のない一室のベッドの上。
2人の荒い息遣いと、肌をぶつけ合う音が部屋中に響いていた。

「・・・篠岡。後ろ向いて。ケツこっち。」

結合は解かないまま、ゆっくり体位を変え篠岡を四つん這いにさせる。
そしてもう一度最奥までぐっと挿入を深め、速いリズムで腰を動かす。

「あっ・・・んぁっ・・・はぁっ」


篠岡の声は聞こえるが、四つん這いにさせているため、表情を見れないのが妙にもったいなく感じ、
後ろから手を伸ばし髪を掻きあげてやる。

「やっ・・・」
「篠岡、顔、みせて・・・」
「っん・・・やぁっ」
「やらしー顔・・・」

そう耳元で吐き捨てると、膣内がきゅうっと締まった。

「っは・・・も、イきそ」

泉は篠岡の腰をしっかり掴むといっそう強く揺さぶり、そのまま絶頂へ駆け上がると勢い良く精を吐き出し、篠岡と一緒に柔らかいベッドへ倒れこんだ。







――――頭がぼーっとする。
あれ、篠岡がいねえ。
あぁ、そうだ。もう帰ったんだっけ。
そういや帰る時、何か言ってたな・・・。

まだぼんやりした頭の中で、篠岡との会話を思い出す。


「泉くん、明日練習試合なんだから、ちゃんと早く起きなきゃだめだよ。
電車で行くんだから、遅刻したら待っててあげられないからね。
いい?聞いてる?泉くん」

まるでおふくろだな、と心の中で言い返してやったのを思い出したところで、徐々に眠気が覚めていく。

――――ん?待てよ・・・練習試合?電車?

一気に眠気が吹っ飛び、ばっと時計を見ると、サァーっと血の気が引いていった。
7:23と表示されたデジタル式の数字を見たあと、アラームを設定しておいたはずの携帯を急いで確認する。
カーテンが閉められたままの部屋にぼんやりと浮かぶディスプレイには、着信7件、メール3件と表示されていた。
慌てて留守録を再生すると、やたらデカい花井の声が聞こえた。
「泉!?てめー今どこだよ!?まさかまだ寝てんじゃねーだろうな!?もう電車く」
言いかけたまま、メッセージは切れていた。

「・・・あーあ。やっちまったなぁ」
頭をボリボリかきながらも、すばやくシャワーを浴び着替えをすませ、エナメルバッグを肩に掛けると、家を飛び出し全速力で駅へ向かった。


「ぅわっ、人、多っ」
心の中でつぶやき、人と人の間を縫って走り抜けていく。
駅はサラリーマンや学生でごった返していた。
いつもチャリ通の部員たちにとって、「通勤ラッシュ」という罠に免疫がない。
人の多さに面食らいつつも、やっと駅のホームまでたどり着くと、自販機の前で携帯で誰かとしゃべりながらこちらに手を振ってくる人影が見えた。

「監督!泉くん来ました!今からそっちに向かいます」


周りの騒音に負けないぐらい大きな声で、そう電話の相手に伝えた篠岡は、電話を切ったあとキッとこちらを睨んだ。

「泉くん!?昨日あれほど言ったのに、何堂々と遅刻してんの!?」
「わり、寝坊した。つーか、何で篠岡だけなの?」
「みんな先に行ったよ。監督が残るわけにもいかないから、私が残って泉くんと一緒に来いって。」
「そっか。じゃあ登校デート・・・とは違うか。遠征デートだな。」

そう言って笑うと、篠岡も怒ったような困ったような顔で微笑んだ。

「でも、何で寝坊したの?目覚ましかけてなかったの?」
「あぁ、俺いつも携帯のアラーム目覚まし代わりにしてんだけど、昨日マナーモードにしたまま寝ちゃったからさ。
だって、ヤってる最中に携帯鳴ったらやだもんな?」

こんな人ごみの中で朝っぱらから何を言い出すんだと言わんばかりに、篠岡は泉の二の腕をつねった。

「いってぇ。」
それほど痛くもなかったが、つねられたところを大げさに手でさする。

「・・・だから昨日はやめようって言ったのに・・」
小声で独り言のように呟く。

「まぁ、俺、ヤった次の日は決まって寝坊するかギリギリかだったもんな。
でも篠岡ってよく寝坊しねーよな。あんな激し」
言い終わらないうちに、篠岡に背中をグーで殴られ言いかけて終わった。
同時にホームに電車が滑り込み、ドアから大量の人を吐き出すと、今度は吸い込まれるように人が入っていく。
やはり朝の通勤ラッシュはひどいもので、車内に入ると人口密度と熱気が一気に上がった。
泉と篠岡はちょうど車内の隅っこを確保できたが、篠岡の後ろに泉がぴったりくっついている状態になってしまった。

「篠岡、バックおろして持ってかれないように足の間に挟んどけ。」
「う、うん・・・」

篠岡は言われたとおり、前に抱え込んでいたリュックを足元に置き、自分の足首で転がらないようにしっかりと挟み込んだ。
するとバックが陣取っていた空間があき、多少身動きできる状態になり、壁に前のめりに寄りかかることができた。

慌しい駅員の声がすると、プシューッとドアが閉まり車体がゆっくりと揺れた。

「泉くん、きつくない?位置変わろうか?」
あくまで、これから試合を控えている選手を少しでも楽にしてあげようとマネジとしての気遣いの声をかける。


412 名前:イズチヨ 遠征[sage] 投稿日:2008/07/22(火) 21:37:48 ID:zDshfg6n
「平気だって。女に守られてちゃ情けねえしな。ぅおっと・・・」
車体が揺れ、泉の右腕が篠岡の顔のすぐ横に伸び、壁に手を付く。
その腕越しに篠岡は自分の右側にいる男を見た。
――――大学生だろうか。身長は泉よりも高く、こちらに背を向けているため表情は見えないが、
キャップをかぶり、その上からヘッドフォンをしている。
顔をやや下に向けているので、携帯でもいじっているのだろう。
ヘッドフォンからは、音漏れとまではいかないが、耳をすますと微かに洋楽が聞こえてきた。

ずっと横に立っている男を見上げている篠岡を不審に思い、泉は声をかけた。
「篠岡?」
名前を呼ばれると篠岡はハッとなり慌てて前を向いた。
それと同時に車体が傾き、篠岡はバランスを崩し背中を泉に預ける形になった。

「あっ、ごめんなさ・・・」

元の位置に戻ろうとする篠岡の肩をぐっと掴んで引き寄せる。
「・・・いいから。このままで。こっちのほうが楽だろ?」
そう耳元で呟いてやると、篠岡は肩をすぼめながらコクンと頷いた。


篠岡が体重を預けているおかげで、泉の鼻の先にはすぐに篠岡の頭があった。
自分に嗅ぐ気がなくても、自然とシャンプーの匂いが鼻腔をくすぐる。
いつも野郎どもと過ごしているため、汗臭いのはもう慣れてしまっている泉にとって、
不意に漂う女の清潔感のある柔らかな匂いは新鮮で、妙に気持ちが高ぶった。

「・・・篠岡。」
「ん?」
篠岡が振り向いた瞬間に、泉は自分の唇を篠岡の唇に重ねた。
一瞬のことで何が起きたのか理解できない篠岡は、大きな目をパチクリさせたあと一気に顔を赤くした。
「いっ、いっ、泉くん!?」
ボリュームは抑えていたが、興奮気味に声をあげる。

「なんだよ。別に初めてなわけじゃねえんだから、そんな慌てんなよ。」
「ちっ・・・ここ、電車の中!」
「分かってるよ。でも俺のすぐ後ろのおっさんが迷惑極まりなく新聞広げてるおかげで見えないし、
そっちのニーチャンは音楽聴いてるし、そうそうバレないって。」
確かに泉のすぐ後ろには新聞が広がっており、泉より後ろに立っている人間と目が合う事はなかった。
すぐ横に立っている大学生は、相変わらずこちらに背を向け音楽に入り浸っていた。

「な?」
と言いながら笑っている泉の顔を見て、つられて自分も笑ってしまった。

「それよりさ、篠岡。今日試合やるとこって県外なんだよな?」
「うん、神奈川だよ。これ快速だし、しばらくは止まらないね。」
「そっか。良かった。」
「え?なにが?」
「・・・しようぜ。ここで。」
一瞬何のことか分からず、きょとんとしてしまった。

「なにを?」
「なかなかないシチュエーションだし、活用しなきゃな。」
「はい?」
横を向いていた顔をゆっくり泉のほうへ向けると、泉がニヤっと口角をあげた。
「バレねえようにすっから。」
あくまで「お前の匂いに興奮した」なんて言わない。





「ちょっ、何言って、だめだよ」
制止の言葉が見つからず、慌てふためいている篠岡をよそに、泉は篠岡の首筋に顔を埋める。
ちゅ、と柔らかいキスを落としたあと、篠岡の左側から手を滑り込ませワイシャツの第2、第3ボタンを器用に外した。
そして、ワイシャツをずらし最も死角になっている篠岡の左肩を露出させると、首筋と肩の中間地点ぐらいのところをきつく吸った。

「・・・ぁ」
ピリッとした痛みに、蚊のなくような小さな声を上げる。
自分では見えないが、きっと小さな赤い点が付いているだろう。

泉は何も言わずに、スカートからワイシャツの裾を引っぱり出すと、
すばやくワイシャツの中に手を滑り込ませ、ブラジャーの上から手の平で胸を優しく包む。
篠岡の胸は泉の手にすっぽりと納まってしまうが、柔らかい感触は正しく女のものだった。
円を描くように揉みしだいたあと、ホックをプチッと外し、今度は直に胸をわし掴み、キュッと両方の乳首を指で挟む。

「んっ・・・だ、だめだってば、い・・・いず・・・」

篠岡は小さく震え、しゃべるのと同時に喘ぎ声が出ないように必死に我慢する。
その様子を見た泉は、自身に血が集まっていくのを感じた。


414 名前:イズチヨ 遠征[sage] 投稿日:2008/07/22(火) 21:39:14 ID:zDshfg6n
しばらく胸を弄んだあと、手をゆっくりと下のほうへさげ、今度は内腿に下から上へと指を滑らす。
篠岡は足を閉じようとするが、足の間にあるリュックが邪魔をしてうまく閉じれず、
膝を震わせ与えられる快感に必死に耐えるしかなかった。
内腿を何往復かした指はどんどん篠岡の中心に近づく。

「っひ・・・」

布越しに割れ目を擦られ、思わず引きつったような声が漏れた。
相変わらず泉は黙ったままで、今どんな表情をしているのかも分からなかった。





割れ目を執拗になぞっていると、だんだん湿ってきているのが指先の感覚で分かった。
それでも焦らすように、布越しにゆっくりと擦り続けてやる。
そのうちに、篠岡の腰が指に合わせて揺れ始めた。
――――こいつ、さっきまで嫌がってたのに。・・・へぇ。

泉は心の内から溢れ出てくる加虐心を抑えられず、口角を上げたまま、篠岡の耳元へ唇を持っていった。

「篠岡。腰動いてるけど、気持ちいいの?」
低い声で吐息を耳の穴に吹きかけるように呟いてやるのと同時に、布の上から先端の粒を押しつぶす。

「っ・・・」

膝をがくがく震わせながらも頭を横に振る篠岡に、ますます追い討ちをかけたくなる。

「うそつけ。ここ、こんな濡れてんじゃねぇか。さっきまで嫌がってたのにさ。
ここ、電車ん中だぜ?」
さっき自分が言われた言葉をそのまま言い返してやる。

「電車ん中で、こんな人いっぱいいんのに、何感じちゃってんの?
見られたらどうすんの?」


篠岡を責め立てるような言葉とは裏腹に、右手では篠岡の中心を優しく愛撫し続け、
左手で器用にズボンのチャックを下ろし、熱く張り詰めた自身を取り出す。

「・・・気持ちいいんだろ?こんな場所で、こんなとこ、こんな濡らしちゃって。
お前ってほんとやらしー・・・っな。」
最後の言葉と共に、自身を一気に篠岡の最奥へとねじ込んだ。

「んぁっ・・・」

ずっと声が出るのを我慢していた篠岡は、急に押し寄せた強い快感の波に全身を痙攣させ、1トーン高い声で喘いだ。
慌てた泉はバッと篠岡の口をふさぐ。

「しー・・・。いくら何でも声出したらバレるって・・・」
と言いつつ、自身を先端ギリギリまで抜いたあと、もう一度勢い良く突き上げた。

「・・っ・・!!」
篠岡は口を押さえていても一言も発しなかったが、全身を駆け抜ける衝動に耐えられず、
今にも膝がかくんと折れてしまいそうになっていた。

「はー・・・。やべえ。興奮する。」

いつ誰に見つかってしまうかもしれないというスリルと、めったにない場所でヤっているという自覚が、
性的興奮に拍車をかけていた。




しばらく、電車のゆったりした揺れに合わせて腰を揺らす。
篠岡はじれったく感じていたが、自分から腰を振るわけにもいかず、泉の動きに合わせてゆっくりと中をかき混ぜられていた。
しかし、絶頂への階段を登っていることに変わりはなく、突かれるたびに、ぶるぶると全身を震わせ、喘がないように唇をかみ締めていた。

泉は健気に声を我慢している篠岡の様子を後ろからじっと見つめていた。
立ちながら入れているので、篠岡の身長に合わせて曲げている足がそろそろ疲れてきた。
意識を他に向けようと、篠岡に抱きつき、胸をまさぐった。
抱きつくのと同時に2人の距離はなくなり、ずっと中途半端に膣内を刺激していた泉の自身が、ぐっと篠岡の最奥へ埋め込まれた。


「ぁっ・・・」
「篠岡。声、出したい?」
篠岡はふるふると頭を振る。

「意地になったら、気持ちよく感じられなくなっちゃうぜ?
      • 俺も、篠岡の声、聞きたい。」
甘えるような低い声に、篠岡はますます敏感になり、自分の胸を揉みしだいている泉の腕を掴む。

「・・・篠岡、しー、な。」
そう言って泉は篠岡の胸から手を離し下へ滑らせ、篠岡の赤く腫れた粒を撫でてやった。

「んんっ・・・」
「ここ、好きなんだろ?」
篠岡は観念したように小さくこくんと頷いた。
その様子に満足した泉は、篠岡の中の自身に意識を向ける。
――――そろそろ、限界だな。

一旦、体勢を立て直そうと、篠岡の中から自身を抜き始めた瞬間、車体が大きく揺れ今まで以上に深く泉の自身がねじ込まれた。

「やぁっ・・・!」
「うぁっ」
篠岡は勢いよく突かれた拍子に、一気に絶頂に達してしまい、泉は急に自身を締め付けられ思わず精を篠岡の中に放出してしまった。



――――やっと目的地の駅に到着し、すでにまばらになっていた人々が固まりになって駅のホームへ降り立った。
泉は近くのベンチに篠岡を座らせ、俯いている篠岡の顔を覗き込む。

「なぁ、篠岡?その・・・大丈夫か?」
「・・・声、聞かれちゃったかも。」
「うん。」
「・・・顔、見られちゃったかも。」
「うん。」
「泉くん、最低。」
「・・・わりー。」

2人の間に、沈黙が流れる。
その重い空気を破ったのは、泉でも篠岡でもなく、携帯の着信音だった。
泉は携帯のディスプレイを見て相手を確認し、受話器ボタンを押す。

「泉!?テメー何回も電話したのにかけ直しもしねーで!今どこなんだよ!?」
いつも冷静な花井がここまでとはなー。と他人事のように思った。
「おう、わりー。もう駅着いたから、今からダッシュで行くわ。
相手チームの学校ってここから近いんだろ?」
後半は目の前にいる篠岡にあてた言葉だった。
篠岡はこくんと頷き、泉と電話の向こうの相手との会話をじっと聞いていた。
「それならいいけどさ・・・。とりあえず急いで来いよ!あ、そういや監督歯軋りしてたから、
多分あとで甘夏つぶし頭バージョンくらうかもしんねーけど、がんばれよ。」
「は?甘な・・・?」
泉の返答を待たずに、電話は切られた。
ため息をつき、パチンと携帯を閉じると篠岡が不安そうにこちらを見ていた。

「大丈夫だった?なんかすっごく怒ってる声したけど・・・」
「あぁ、キャプテンがな。まぁかけ直しもしなかったし、怒って当然だよな。」
「監督は?」
「歯軋りしてたって。そんで、あとで甘夏つぶし頭バージョンだって。」
「甘夏つぶし?って・・・あぁ、あの入部初日の。」
篠岡と泉は入部初日の2度にわたる甘夏みかんつぶしの光景を思い出していた。

「・・・あたしも、つぶされるのかな。」
「ははっ、何だそりゃ。篠岡は悪くねんだから、やられねーだろ。
それより、元気でたか?」
泉が微笑みながら篠岡に負けないぐらいの大きな目で、篠岡の顔を覗き込む。

「うん、もう大丈夫。そんなことより早く行かなきゃ!マネジだって仕事いっぱいあるんだからね!」
と立ち上がり、スカートをぱんぱんと払うと泉を見上げ、スネたような顔をして言った。
「でも、もうあんなこと絶対なしだよ。」
「おう。次は教室ん中でヤろうぜ」
と言って笑う泉のほっぺたを、篠岡は思い切りつねってやった。
最終更新:2008年07月27日 14:33