9-103-108 チヨ→アベ2
「わーすごいね、阿部くん! 懐かしいな、これ持ってたよ」
椅子に座り勉強机に頬杖を付いて、自室に女子がいるという不思議を感じながらオレは
野球関係の本棚の前から動かない篠岡の背中を眺めた。
「あー、あの選手の引退特集な。いいこと言ってんだよな」
「ショートの神様と言われた人だもんね」
どういう話の流れか、気付いたら篠岡とヤッてた次の日も
あいつはいつもと変わらない態度でオレに接してきた。
した事は夢だったのかと思うくらい、ただの一選手とマネジだった。
気まずくなっても恋人面されても困るところだったから
オレも黙ってそれに乗った。
三橋とは相変わらずで、夏に比べればずいぶん話せるようになったが
篠岡に告白するつもりはあるのかといった類の話なんてできるはずもない。
ただ、部活以外でのキョドりにイライラすることは減って来たらしい。
どういう心境の変化だと栄口に聞かれた。
知るか。チッ。
とにかく。
この1ヶ月は何の動きもなかったのに、昨日いきなり用があると言ってきたので
練習休みの今日、オレはこいつを自分の家へ連れてきた。
外で会ってるところを誰かに見られても困るしな。
「どれでも持ってっていーから。
何か相談があったんじゃねェの」
「あっ、そうだった!」
やっと振り向いた篠岡は肩にかけていた鞄をおろし、中をごそごそと漁った。
「あった。ほら、これ!」
買ったばかりのCDでも見せびらかすような気安さで差し出したそれは
所謂 ゴム というヤツだった。
オレの顔は蒼白になっていたに違いない。
「なんでンなモン持ってんだよ!!」
「この間はね、たぶん大丈夫だと思ってたんだけど
やっぱり生理が来るまでは心配で仕方なくて。
野球じゃないことで試合に出られなくなっちゃダメでしょう?」
「ぐ……」
「着けてみていい?」
「はァ!?」
「お願い! 練習させて?」
いつもなら明るい太陽が似合う彼女の笑顔が小悪魔の微笑に見えた……
返事がないのを肯定と受け取って、篠岡は椅子に座るオレの前に跪き
ベルトを外しジッパーを下ろしていく。
前は余裕がなかったけど改めて見るとスゲー光景だな。
あーもうちょっと待て、オレ。
なんとか引っ張りだしたモノを顔を赤くして見つめる篠岡。
「これ……」
「まだ、無理」
「…………」
篠岡は柔らかさの残るそれを軽く握ってそろそろと顔を近づけた。
ちゅ、と音がするのと「う」と声が漏れるのとが同時だった。
先端部分を味わうようにじっくり舐めた後、少しずつ頬張っていく。
背筋をにじり寄る波から気をそらすように
篠岡の頭をそっと撫でると髪留めがあったので外してみた。
さらけ出された腹に落ちる柔らかい栗色の髪が気持ちいい。
伏せられていた睫がわずかに持ち上がり
頬に掛かった髪を気怠げにかきあげる。
普段の彼女なら決して見せない匂いたつ仕種にドキリとする。
「……く」
「ふふ」
「?」
「阿部君、かわいい」
「か!!」
なんなんだこの女は!
クソッ。負けてられるか!
「んーっ」
ブラウスの上から乱暴に胸をまさぐり先端を揉み潰すと
抗議の(声にならない)声があがるが手と口を離されることはなかった。
それに気をよくしてスカートを捲り下着の奥まで手を這わす。
湿り気を帯びたそこにいきなり指を突っ込み中をかき回した。
「ひゃ、あぁっ!?」
奥は熱く、誘い込もうとするかのように締め付けられる。
「や、あ、あぁん」
「おまえ……」
「へ……?」
「何でもねー。出すぞ」
「えっ、んむっ」
頭を押さえつけた篠岡の口に無理矢理ねじ込み
数回扱くだけで呆気なく果てた。
「んぅ……ん、んんっ」
口を手で押さえしばらく俯いていた篠岡はパッと顔をあげると
眉間にしわを寄せ「ヘンな味ー」と舌を出して笑った。
「味わうんじゃねェ!」
「あはは、
あ。出ちゃったら……」
二人の視線が股間に集中する。
「もうできない?」
「なワケねー。立って」
オレが左手を出すと篠岡は素直にそれを取った。
無造作に肩にかかる髪、曲がったリボン、だらしなく裾の出されたブラウス。
羞恥に背ける赤い頬。白い鎖骨。
どれもが今までグラウンドや教室で見てきたマネジとは別人だった。
「ジャージ持ってねェの?」
「……今日は持ってないよ。
…………阿部君のえっち」
「はー? 篠岡ほどじゃねェよ」
「えぇ!?」
「……」
「……」
二人でしばし見つめ合い、同時に吹き出した。
手を軽く引っ張ると篠岡は簡単によろけてきた。
篠岡が椅子に座ってるオレの頭をお腹で抱く格好。
女子特有の細い腰を抱え、深呼吸すると甘い匂いに包まれる。
優しく頭をナデナデされて心地良いが何か違う。
ブラウスのボタンをひとつづつ下から外していった。
ブラジャーのホックも何とか外し、小振りな胸を手中に収める。
「ぁ……」
そーそー、これこれ。
もう片方の胸に口付けし、空いた手は背中から腰、お尻へ。
まだそこにあった下着を忌々しく抜き去ると最奥を探り、
溢れそうな液体を掬い突起の周辺に撫で付ける。
「ふぁ……」
芯を囲うようにゆっくりじっくり円を描くと身悶えし
オレの手を封じるように太腿が閉じられた。
「や、めて」
「離してほしいのか?」
本気で嫌がってるわけじゃねェよな?
この体勢じゃどんな表情をしているのか伺えない。
「……っ」
篠岡の腹に頭を預け、囁く。
「どうしてほしい?」
「……阿部君の意地悪……」
「褒め言葉どーも」
「~~~~っ!」
「しのおか?」
「…………さ、わって」
言っている顔を見られなかったのが非常に惜しいが
小声でもちゃんと言ったのでヨシとするか。
片膝に座らせるとやっと目が合ったのにすぐ逸らされた。
逃がすか。
片手で顎を掴んで強引にこちらを向かせ唇を重ねる。
今日初めてだな、なんて頭の片隅で考えながら。
「はぁっ、あ、あっ、あ……」
遠慮なしに一番反応のいい所を執拗に責め立て続けると
背中に回された両腕に痛いくらい力が込められる。
イっちまえ!
「──────っ!」
ふるふるふると痙攣した後全身のこわばりがすうっと消えていった。
支えていないと崩れていってしまいそうだった。
篠岡の重みを全身で受け止めていた。
「阿部、君……」
「気持ち良かったか?」
「~~~~もうっ。そんなこと聞いちゃダメ!」
「……ハイ、すんません」
「ねえ、もう大丈夫かな!?」
復活早ぇなぁ……
篠岡は細い指で小袋をピッと裂いてゴム製品を取り出した。
「い、行きます……」
その手にあるものを見詰めるにはそぐわない真面目な表情に思わず笑ってしまう。
フツーこーゆーのって男が用意するモンだよな?
でもオレが買っといて待ってるってのもおかしな話だ。
わっかんねーなー。
「なんでそこまでするワケ?」
「私の身体だもん、私が気をつけるのは当たり前だよー」
「ふーん。自分で買ったの」
「ナイショ。あげないよー?」
「いらねェよ!!」
「あはははっ。
できた!よね?」
ゴムを装着できたことを誇らしげに報告する女なんてヘンだ。
理解できねー。
「はい、おつかれー」
膝立ちの篠岡をそのまま後ろ向きにして上半身をとさっとベッドに押し倒した。
辛うじて引っかかっているスカートを捲れば
普段は隠されているそこがゆらゆらと濡れているのが丸見えになる。
「え、す、るの?」
「ちゃんと着けれてるかどうか確認しなきゃわかんねーだろ」
「そういうもの……?」
「んー、まーな」
ここまで来てやめれるかっつーの。
篠岡のお尻に手をかけ狙いを定めると一気に突き挿した。
十分に潤うそこは何の抵抗もなくオレを受け入れた。
「あ……っ」
肌のぶつかる音と水音、荒い息が静かな部屋を支配する。
「声、出せよ」
「……だっ、て」
「いーから」
手を前へと滑らせ、両胸を大きく掴むと堰を切ったように吐息が流れだす。
「……は、あ、あぁ、あ……あべくん……」
何故だか篠岡が泣いているような気がしたので
上半身を起こして振り向かせたが泣いてはいなかった。
一度抜いてベッドを背に胡座をかいた上に座らせる。
「あ、ぁん……」
すぐ近くにとろんと目を潤ませた篠岡がいる。
キスももうずいぶん慣れた。
ずっと抱いていたい。
でもどこかがチリチリと焼け付いている。
駄目だ。
何が駄目なんだ?
「……阿部、君」
「あ?」
「んっ、阿部く、んも……声、出して」
「はー!? 出すかよ!」
「え、ぇ、声、好きなん、だけどな」
「ウルセーもー喋んなっ」
「んっ、あっ、あ、や、ぁんっ」
こいつは~~~~黙ってりゃ結構かわいいのに
なんでこうどっかおかしーんだ。
それに好きなの声だけかよ!
……アレ?
何ならいーんだ?
「あっ、あ、べく、ん……?」
チ、余計なことばっかり考えてたら終わらねェぞ。
何も考えるな! 今はこっちに集中!
目の前の篠岡に……
篠岡の手がオレの両頬を抱え柔らかく微笑みながらキスをしてきた。
おまえ、いつの間にそんな顔するようになったんだ。
ヤベェ。
…………だから何がってんだよ!!!
最後はもう無茶苦茶に篠岡を突き上げていた。
案外胸あるじゃんとか思ってたことは口が裂けても言えない。
「はーーーー」
疲れた、という言葉をすんでのところで飲み込んだ。
「疲れた?」
「はっ、これくれー何でもねーよ」
「ちゃんとストレッチしてね」
「今日休養日だっつうのに……クソ」
器用に髪をまとめ身支度を整えた篠岡はうーんと大きく伸びをした。
ひとり清々しい表情をしている。
「もうしねーからな」
「阿部君」
篠岡はしゃがんでじっとオレを見ていた。
ぴたりと照準を合わせ、放そうとしない瞳に吸い込まれそうになる。
「甲子園、行こうね!」
「お、おう」
あまりにも真剣に言われたのでつい普通に返してしまった。
にこぉ、といつものマネジの笑顔になる。
ちょっとホッとしたのも束の間。
「今日はありがと! じゃあまたね」
チュッと唇にキスを落として篠岡は帰っていった。
……理解しようとしても無理だ。
篠岡のことは深く考えない事にしよう。
そーする他ない。
最終更新:2009年01月13日 22:30