3 小ネタ 罰ゲーム


550 :小ネタにしうらーぜ :2007/07/13(金) 21:13:16 ID:U27ArakO

「花井君、これ今日のジャングル氷オニするときの追加メニュー。よろしくね。」
「は、ハイ!なんですか?」
「見てみたらわかるよ。私はこれからバイトがあるからもう帰るけど、怪我に気をつけて。」
「したっ!!」

原チャで去っていくモモカンを見送り、もらったものを見た。
そこには。

『罰ゲーム』とでかでかと書かれた封筒。
中身はきっちり封がされた小さい封筒が3つ・・・と手紙。
「ジャングル氷オニに最下位のコが3つのうち一つ選んで行うこと・・・か。つーことは三日
罰ゲームが続くのか?全部一緒の内容かな・・・?」
モモカンの考えることは相変わらずわからねえ。
いや、理解しようとすることすら、おれには無理か。


「おーし、じゃあ氷オニはじめっぞ。今日は最下位に罰ゲームがあるからな!」
「ええー??なになに罰ゲームって!?」
案の定すぐに食いつくな田島。

「花井、なんで罰ゲーム?」
巣山が食いつくなんて、意外だな。

「よくわかんねえ、モモカンがやれってさ。」
皆に見せたその封筒を田島がすばやく抜き取り、封をあけようとする。
「こらっ!田島!いま見んな!」
今まさに封を切る直前だった田島に、泉がゲンコを食らわし、奪い取る。
さすがだ、泉。
「ほらよ、花井。」
泉が差し出しながら、続ける。
「でもよー、なんか、怪しくねえ?」
「だからー先見ようぜっ!なあ?三橋も見たいだろ!?」
「うっうん!!おれ、も、みたっいよっ」
三橋、オマエは何でそんなカンタンにつられるんだ・・・。
「そーだねー気になるねー」
栄口、お前もか。
「阿部もーそー思うだろー?」
こら栄口、極悪阿部にふるんじゃねえ、答えはわかきってるじゃねえか。
案の定、魔王笑顔でニヤリと笑う阿部。
「カントクはもういないし、シガポもいないし、キャプテンの意見はまあわかるが、
黙ってりゃわかりゃしねえだろ。罰ゲームさえ実行すりゃいいんだ。
今見たって問題ねーよ。」
ああ、やっぱり。阿部は理屈をこねて、こっちの反論を封じるんだ。
「ああ!!もうわかったよ!!じゃあ多数決とっぞ!今罰ゲームの内容知りたい奴ー」

おれ以外、全員手を挙げる。西広先生までも・・・・・。



551 :小ネタにしうらーぜ:2007/07/13(金) 21:13:56 ID:U27ArakO

諦観の笑みを浮かべつつ、最後の抵抗を試みる。

「じゃあ今日の分だけな。3日分あるからよ。あと、今日負けた奴、絶対やれよな!?
明日ちゃんとモモカンに報告するんだからな。」

皆、満面の笑顔でうなずく。その目はどことなく熱い。
今日の氷オニに新たなやる気が生まれたらしい。
はっ!!もしかしてモモカンは最近の俺たちのモチベージョンの低下を心配して・・・?
確かに夏大後、みなの気は抜けてしまって、毎日の練習の質こそ落ちてねえが
密度はうすくなった。それを心配して・・・?
ったく 食えねえカントクだよ。かなわねーな。

「早くあけろよーはないー」
うるさい田島
「わあってるよ。ちょっと待てって!」

ぴりぴりと封を破る。中から二つ折りの紙がでてきた。

そこに書いてあったのは・・・・・。

『最下位の人への罰ゲーム』

『千代ちゃん本人に、おかずにした回数を告白すること。なお、3日以内に実行すること。
実行しなかった場合には、まずい高級プロティン&金剛輪強制プレゼント☆』

今日の氷オニはぜってええええ負けられねええええ!!!




-----西浦史に残る、熱い戦いになったという----

小ネタ終

579 :続小ネタにしうらーぜ:2007/07/14(土) 20:12:27 ID:hFS/uXOL

その日の敗者は・・・・ミハシ。

オレはなんとか最下位にならずにすんでほっとしたが
三橋か・・・・。いろんな意味で心配だぜ・・・。
周りを見たら皆あいまいな顔で三橋を見てる。
そりゃ、心配だよなあ・・・・。

「三橋罰ゲームだ!んで、おかず回数は何回なんだ?」

でた。空気を読むことすらしねえ田島。勇者だ。
三橋はびくっと体が跳ね、決して俺らと目をあわさずきょどきょどして。
あいかわらずキモくびくつくよな~と思ってたら
阿部が思いっきり三橋を睨んでやがる。
「おい阿部、睨むな睨むな。」
「あ、おお。」

唐突に、三橋が叫びだす。
「お、お、お、お、かずって・・・?からあげ・・とかだよね?」

こいつおかずの意味わかんねーのか!?
ウソだろ?
そうだ・・こいつ中学時代、友達いなかったんだ・・・・。
そんな知識仕入れることすら、できなかったのか・・・・。不憫すぎる。
うわ、涙がでそうだぜ。皆も目に涙を浮かべてる。

「ちっげーよ。三橋。篠岡を想像して、オナニーしたかってことだ!」
神だ。拝みたいぜ田島。
「おっおっおっ!!」
体中真っ赤になってさらにキョドリ出す三橋。さすがにオナニーはすんのか。
そりゃそうか。



580 :続小ネタにしうらーぜ:2007/07/14(土) 20:13:16 ID:hFS/uXOL

「まあまあ、ここで発表する必要はねえよ。篠岡にいえばいーんだからよ。」
いたたまられない空気の中、締めを試みる。我ながら、鬼だ。

「今日はもう解散すんぞー。三橋3日以内にっていうことらしいから、
まあ、その・・・・がんばれ。」
「あっ・・あ・・・あの・・」
背を向けようとした俺に、泉がこずいてきた。ん?なんかいうぞ、三橋。

「お、おれ・・しのっおかさ・・んで、した・・・ことない、よ。」
「まっまじか!?ウソだろ!?」
いっけね。これじゃあおれはネタにしてるっていってるもんじゃんか。
周りの視線がいてーぜ。人一倍顔赤くしてんのは栄口か。
ああ、惚れてんのかなあ。

「だっだって・・・しのおか、さんムネ、ない、し。」
ひどすぎる三橋。実は巨乳派なのか。じゃあモモカンで抜いてんのか。
見かけによらねえな。

「え~と、じゃあよ。篠岡には0回だっていえよ。とにかく罰ゲームはしないと
さらに恐ろしい罰ゲームがまってるからよ。」
ブンブンと首がすっぽ抜けそうな勢いで同意する三橋。
なんとかなりそうでよかったぜ。


しかし、罰ゲームはあと2日分ある・・・・。
明日明後日の練習は気合入りそうだぜ。


      • 終わる---



621 :小ネ罰ゲーム実行 千代編:2007/07/15(日) 23:37:57 ID:Yo5Q9RMy

今日は、なんだか雰囲気がおかしい。
朝錬のとき皆、なんだか変だった。
練習に集中してるみたいなんだけど、
皆、私の方をちらちら見てたんだよね。なんだったんだろ?
栄口くんは熱っぽそうだったけど、熱測らせてくれなかったしなあ。

私、もしかして、皆に嫌われ・・・。
いやいや、マイナス思考はよくない。午後の練習には皆フツーになってるはず!

休み時間だったので、私はぼんやり窓の外を見ながら
考え込んでたら、いつの間にか目の前に花井くんがいた。

「あ、花井くん。どうしたの?」
「あ、あのよー。篠岡。」

顔を真っ赤にして、決して私と目線を合わせず、
ちょっと挙動不審な花井くん。

「花井くん?どっか調子悪いの?風邪でも引いた?」
マネージャーとして皆の変化には敏感にならなきゃ!
「いや! そーじゃねーんだ!体は元気だ。」
前の席に座りながら、顔を近づけてきた。なんだろう?内緒話かな?

「モモカンから、何か聞いてるか?」
手を口に添えて、そっと小声で話しかけてきた。
「聞いてるって、何を?」
「いや・・・その罰ゲームについて・・・。」
「罰ゲーム?なんのこと?」
「いやっ聞いてねーならいいんだ!」
がたっと音をさせて、花井くんは立ちあがる。
「今日、多分、三橋が篠岡になんかいってくるから、
それをそのままモモカンに伝えてくれるか?」
「三橋くんが何をいってくるの?」
意味わかんないなあ。
「いやっいやいや!あまり深く考えずに、さらっとやってくれ。
たいしたことではないんだ。ホント。とにかく頼むわ。」
花井くんはそういって、自分の席に戻っていった。
その周りには阿部くんと水谷くん。二人ともニヤニヤしてるみたい。
阿部くんは中学のときはクラスで浮いてたけど、高校入って変わったなあ。
それにしても罰ゲーム?三橋くん?何をいってくるっていうんだろう?



622 :小ネタ罰ゲーム実行 千代編:2007/07/15(日) 23:39:33 ID:Yo5Q9RMy

放課後、部室に向かう途中で、9組軍団とあった。
「ちーす。篠岡。」「よおっす。」「よっ・・・す」
「皆おつかれ~。」
そのままの流れで、皆で部室に向かうことに。
泉くんが田島くんの頭を急にホールドして、なにやらコソコソ言い合ってる。
なんだろう?
「しのーか。ミハシ!!おれらちょっと用事思い出したから先行っててくれ!」
振り向いた田島くんがそういって、私が返事を言うまもなく、二人でかけていく。

「いっちゃったねえ?用事ってなんだろうえ?」
三橋くんを見ると、まっさおな顔して、プルプルしてる。
花井くんに続いて三橋くんまで調子悪いのかな?
「大丈夫?三橋くん?」
「あ、ああの、しの、おかさん。」
「なあに?」

「お、オレ! ゼロ回・・・だから。」
「へ? ゼロ回? 何が?」
「そ、それだけ!あっお、オレモちょっと用事あるから、先いってて!」
「あっ三橋くーん!?」
効果音がビュッと聞こえそうな勢いで、三橋くんも走り出してしまった。

今日は花井くんといい、三橋くんといい、何があったんだろう?
花井くんがいってたことってこのことかなあ?
じゃあ、カントクに『三橋くんはゼロ回』って伝えればいいのね。
ヘンなの。

今日はやっぱり皆変だ。


    • 終わる--




623 :小ネタ罰ゲーム実行 モモカン感想:2007/07/15(日) 23:40:25 ID:Yo5Q9RMy

ゼロ回っていうのはなんだかウソくさいけど
三橋くんだしねー。ウソである可能性は低いわよね。
三橋くん、篠岡さんをおかずにしないなんて
ピュアなのか、鈍感なのか。
しかし昨日に比べたら、皆多少はやる気が見えるけど
罰ゲームが三橋くんだったからか、やっぱりまだテンション低いわね。
なんとか夏大前のテンションに戻したいんだけどねー。

罰ゲームはあと2日か、今日は誰が負けるかしら。

楽しみね。

634 :続々小ネタ 二日目阿部:2007/07/16(月) 22:57:10 ID:0n5JW4Gt

カントクの考えることは恐ろしいぜ。
ま、だらけた雰囲気を締めるのにはかなりの効果だな。
罰ゲームは今日も入れてあと2回か。
オレは負けねえから関係ないが。

三橋が2連敗なんてことになったらどーすっかな。
しかし、罰ゲームの内容もあまり堪えそうにないからいいのか?
一番いいのは今日と明日と田島が負けることなんだが、
本気出した田島には誰もかなわねえからなあ。
他の奴ら、例えば、栄口なんかは憤死すんじゃねえか?
ムッツリのクセに、純情だからなあ。

「どうだった?」
篠岡と話し終わって戻ってきた花井は赤面したままだ。
そりゃ冷や汗もかくだろうな。
「モモカンから何も聞いてないってさ。三橋が負けてよかったのかな?」
「よくねーよ。もし篠岡で抜きまくりだったらあのウザイ性格がますます
ウザくなってたかもしれねーんだぜ。おっそろしいぜモモカンは。」
「意外だよな~。三橋が篠岡に興味ないなんてさ。」
水谷がのん気にいう。



635 :続々小ネタ 二日目阿部:2007/07/16(月) 22:58:24 ID:0n5JW4Gt

「花井、あの封筒もってんだろ?見せてみろよ。」
「おまえ、何企んでんだよ?」
「今日の分の罰ゲームを見て、誰を最下位に仕向けるか決めようぜ。」
「ええ~?そんなこといいのかよ!?」
うぜーな。水谷。
「水谷、ちょっとあっち行ってろ。首脳会談するからよ。」
「おいおい阿部。」
花井が慌ててとめるも、じとっと水谷を睨んでやったらすごすごと去っていった。
さて、花井を説得するか。
「考えても見ろよ。花井。昨日は三橋が最下位だったが、あれがもし沖や西広だったら?」
目を瞑って首をちょっと天にむけ、しばし考え込む花井。
「最悪・・・・部活登校拒否症になったかもな。」
「だろ?3組ズは気が弱いからな。
カントクの考えには逆らえないんだ。
事前に罰ゲーム内容を見て、被害を最小に抑えるべきだろうが。
それか、お前、モモカンに罰ゲーム取り下げてもらうように
交渉してこいよ。主将。」
「いや!!オレには無理だ!!」
真っ青になってブルブルする。ま、オレだって無理だからな。

花井が観念して差し出してきた封筒を、開けたのがばれないように
そっとゆっくり糊付けの部分を剥がしていく。

その内容は

『千代ちゃんの本命を聞き出すこと。期限は一週間。守らなかった場合は以下略☆」

「これは・・・・」
「ああ・・・・・」

「「昨日のより、きついじゃねえか。」」

花井とオレの声が、見事にハモった。



636 :続々小ネタ 二日目阿部:2007/07/16(月) 22:59:13 ID:0n5JW4Gt

これは・・・ここまでキツイ罰ゲームだとは・・・・。
最悪、今後の部内の人間関係が崩壊するぜ。
負けた奴が篠岡の本命だったら、即カップル成立じゃねえか。
何考えてんだモモカン。

とすると・・・・
「栄口はやべえな。そのまま告白しちまいそーだ。」
「ええ?やっぱり栄口ってそうなのか?」
「アイツって身近なオンナに惚れるタイプじゃねえ?
マネジに惚れるんであって、篠岡に惚れてるわけじゃなさそうだが。」
「阿部はひどい奴だな。」
「は?なんで。」

この罰ゲームは誰がいいか考える。考える。考える・・・・。
「花井、お前、今日負けろ。」
「ぜっっったい。いやだ!!」
「何だ、お前、篠岡好きなんだ。」
「ちげーよ!!でも、絶対いやだ。そんなこというなら、阿部、お前がやれよ。」
「いやだ。」

「テメーなあ!」
オレの当然の返答に、花井はがっくり頭をたれて、深くため息をついた。
「真面目にやればいいんだよ。ヘンなこと企むなって。そんなことするからややこしくなるんだ。
このまま見なかったことにして、練習にきちんと取り組めばいいんだよ。」
「いや、だけど。」
花井はオレの鼻先にいきなりびしっと指を突きつけた。
「あんまり、こんなこといいたくないけど、コレはキャプテン命令だ。
俺らは何も見なかった。いいな!?」
オレの反論を封じる唯一の武器だな。そりゃ。
「わかったよ。誰にもいわねーよ。」


            • その日の大縄跳びは実に白熱したという-----

終わり。


671 :続々小ネタ 二日目最下位:2007/07/17(火) 22:28:37 ID:67SCg5rh

ううううううそだろ~!???

オレはなんっつう日に負けちゃったんだ・・・・・。
今日も、今日とて、恐怖の罰ゲームが・・・あるのに・・・。
力が抜けて立ってられなくなり、地面にがっくり膝と手をつき、うなだれる。

「おーし、じゃあ今日の罰ゲーム発表すんぞ。」
無常な花井の声がする。
恐怖のあまり頭をあげることすらできねえぜ。
「なーなー。今日のはなんだろな?」
「いやーほんと負けなくてよかった~。」
「うんうん、全くだ。」
「自分が負けなかったらこれほど面白いことはないよな。」
「同意。」
「楽しみだね~。」
「最下位は大変だな~。」


「「「「水谷、がんばれ!!」」」」」




672 :続々小ネタ 二日目最下位クソレ:2007/07/17(火) 22:29:58 ID:67SCg5rh

「うるさい!お前ら人の気も知らねえで!」
顔を上げて皆を非難するも、みなのニヤニヤ笑顔が目に刺さる。
ちっくしょ~!すっかり楽しんでやがる!

花井がオレに、超さわやかな笑顔を向ける。歯が光ってるぜ。

「罰ゲームは 『篠岡の本命を一週間以内に聞き出すこと』だ。
健闘を祈るぜ、水谷。」

なっっ!!???

「うっそだあああああ!!!」



「いや、コレは現実だ。」
「逃避すんなよ。水谷。」
「ほら、初代罰ゲーム王の三橋も応援してっぞ。」
「みずたにく、ん。だいじょう、ぶだよ。できる、よ。」
「お前、篠岡と仲いいじゃん。聞きだせる!」
「帰り道、よく篠岡と一緒になるだろ?がんばれよ。」
「いや~、でもこの罰ゲーム、きつくない?オレじゃなくてよかった~。」
「栄口だったら、トイレから出てこれなくなるんじゃねえ?」
「阿部、それはひどいぞ。」
「阿部はひどい奴だよ。」
「あべくんっは、いいひとっっだよ!」
「いーから、三橋、かばわなくて。こっちが恥ずかしくなる。」

「オレをほっといて話し弾むなあああああ!!」
ちっくしょ~、皆楽しみやがって!オレのこの辛さは
誰もわかってくんないんだああああ!!

「でもよ・・・篠岡の本命が、水谷だったらどうなるよ。」


「「「「うっ!!」」」」」




673 :続々小ネタ 二日目最下位クソレ:2007/07/17(火) 22:31:10 ID:67SCg5rh


場の雰囲気が一気に暗くなる。皆頭をがっくりたれて、縦線が見せそうだぜ。

「水谷と篠岡が、付き合う!?」
「いたたまれねーぜ、そんなの。」
「つーか、想像もできねえぜ。」
「部内で、交際とかはちょっとやだね。」
くそー。沖も巣山も西広も、顔青くしてやがる。
なんで栄口あんなに顔赤くしてんだ?

ま、篠岡の本命がおれっていうのは、ないな。
一気に気が抜けて、なんだか笑いが出てくるぜ。
「いや~・・・ははは。篠岡の本命が俺っていうのは、ないだろ。」
「水谷、お前篠岡の好きな奴知ってんのか?」
「いや、知らないけどさ。自分のこと好きな女って
目ぇみりゃわかるだろ? 篠岡にはそれねーもん。」

皆の目が極限に見開き、無言でオレを凝視する。なんだ?
「どうしよう、なんか水谷がオトナに見える。」
「やべ~。水谷がかっこいい。」
「水谷すっげーな!ヨユーだな!」
「クソレのクセに・・。」
今のは聞き捨てならねえ。
「なんか言ったか?阿部。」
「いや、なんでもねえよ。」

花井がいきなり手をパンっとさせた。
「ホラ、着替えて帰るぞ。水谷、まあ期限は一週間あるんだ。
お前は別に篠岡本命じゃないんだろ?
二人が付き合う可能性はなさそうなんだし、
罰ゲーム遂行に専念しろよな。戻るぞ、ホラ急げ!動け!
水谷もさっさと立て!」


篠岡の本命ね~?
オレにそんなの聞き出せんのかなあ?
いや、しかし聞き出せなければ、あのプロティンが待ってるもんなああ。

逃げ場はねえ。


          • 終わったれ----

732 :小ネタ罰ゲーム 二日目実行作戦参謀 阿部:2007/07/18(水) 21:53:38 ID:BODXnkQm

「おい、水谷、お前のケータイってどこのやつ?」

オレがそう問いかけると、着替え中の水谷はビクッとして振り向いた。
「なんだよ。阿部~。後ろから急に話しかけたらびっくりするだろ~?」
「いいから、ケータイどこの?」
オレは若干いらっとしながら再び聞いた。

「え~?○フトバンクだけど?」
「ソ○フトバンクか・・・。なあ、皆それぞれどこのケータイ?」

今日の最下位が無事水谷に決まって、
部室に戻ってだらだらと着替えていた皆が
不思議そうにオレを見てくる。

「三橋は?」
「オレっは、ドコ○だよ。」
「オレ!○ィルコム!」
「あ~、おれもウィ○コムだ。」
「オレジュニアケータイ。妹とお揃いなんだ。」
「うわっ!それなんかちょっとあれだね~。」
「GPSで監視され中かよ。」


○ィルコムが4人、ド○モが1人、オレ含む○Uが3人。○フトバンク2人か。
あ、でも西広はジュニアだから除外だな。
ウ○ルコムが4人もいるのか。いいぞ。



733 :小ネタ罰ゲーム 二日目実行作戦参謀 阿部:2007/07/18(水) 21:55:02 ID:BODXnkQm

「それが一体どうしたんだ?阿部。」
「この罰ゲーム、実行するなら明後日だろ?ミーティングの日だしよ。」
水谷が真っ青になる。忘れてやがったな。コイツ。お気楽な野郎だぜ。
「なあ、水谷。この罰ゲーム実行するのに、ちょっと手助けしてやるよ。」
なるべく優しい笑顔で話しかけてやる。
何か察するものでもあったのか、真っ青な顔でじりじりと後さずり、
首をフリフリしてやがる。三橋みてえな行動取りやがって。うぜえな。

「あ、阿部っ!お前!もしかして!?」
花井以下、田島と三橋以外はぎょっとしてオレを見つめる。
察しがいいな。みんな。

「水谷を皆で助けてやろうじゃないか。」
ニヤっとしながらケータイを水谷の前でフリフリさせてやる。

「い!!いやだああああああ!」

水谷の絶叫がこだました。


「なーなーどういうことだ?わっかんねーんだけど?」

田島、野球以外はホントにバカだな。
「罰ゲーム実行中の水谷に、通話状態にしたままのケータイを持たせる。
するとつながってるケータイには、二人の会話が聞こえるだろう?」
田島の目が尊敬に輝いてやがる。ま、悪い気はしねえな。
「でもよ~?それ、通話料金すっげぇかかんねえ?」
いいところに気がついたな。田島。
「確かに他社同士は通話料高い。だが、幸いウ○ルコムが何人かいる。
田島、お前もウ○ルコムだろ?ウ○ルコム同士は通話料かからねえだろうが。」
「おー!そうだそうだ!阿部ってあったまいいー!」
いつの間にか田島の隣に三橋もいて、
二人でオレを尊敬のまなざしで見てやがる。
もっと尊敬しろ。



734 :小ネタ罰ゲーム 二日目実行作戦参謀 阿部:2007/07/18(水) 21:55:55 ID:BODXnkQm

「さらに念のためにこれも使おう。」
水谷のカバンの脇ポケットに刺さってた○podを遠慮なく抜き取り、
皆に見せる。

「そ、それに音声を録音すんの・・か?」
「ああ、そうだ。そのつもりだ。」

花井の指摘に、さっくり答えると、皆一斉にオレを非難し始めやがった。

「阿部、ヒデー!!」
「そ、それはマズイよ!阿部!」
「なんでそんなこと思いつけるんだ!?」
「悪魔だ、悪魔がいるぞ。」
「阿部って敵に回すと恐ろしいぜ・・・・。」
「ありえねえ、発想だ。」
「高校生が考えることじゃないよ。犯罪の域だよ。」
「阿部は性格が悪いな~。」
「なんかそんなにまずいのか~?わかるか三橋?」
「よ、よく・・わからない・・。」

「そ、それはさすがに、篠岡がかわいそうだよ。」

おずおずと沖が指摘すると皆ブンブンと首を立て振りする。
「それに、それ、オレもかわいそうだろ・・・・。」
水谷が力なく非難する。



735 :小ネタ罰ゲーム 二日目実行作戦参謀 阿部:2007/07/18(水) 21:56:43 ID:BODXnkQm

そうか?そんなにひどいか?

「なんだよ。じゃあ実況もやめるか?」

「え~オレききてー!な?三橋もだろ?」
「うっうん!」
二人以外はあいまいな顔でお互い視線を見合わせてる。

なんだよ、みんな興味あるんじゃねえか。人を悪者扱いしやがって。

「じゃあ、実況は実行でいいな?花井。」
「う~・・ああ・・まあ・・・いいんじゃねえか?」

「とうわけだ。水谷。健闘を祈る。実行は明後日だかんな。
フライングすんなよ?」

「いっ!!いやだあああああ!!」

水谷の懲りない絶叫がこだました。


      •  一旦終われ ---



756 :小ネタ罰ゲーム 実行編:2007/07/19(木) 00:39:26 ID:ty/vWGKY


篠岡が帰ろうと、自転車置き場で自分の自転車に鍵を差そうとした時、
水谷が一人でやってきた。
「篠岡、途中まで一緒に帰らねえ?」
「あれ~?水谷くん。どうしたの?みんなでコンビニいかないの?」
「いや、今日は早く帰って来いって、親に言われてんだ。
途中まで一緒に帰ろうぜ。」
「うん。」


一方その頃。部室では。

窓を施錠し、カーテンもひき、室内灯すらつけず。
『誰もいない状態』に見せかけた暗い部室の中で
9人の人影が身じろぎすらせず、ただ一点を見つめていた。
その先には一つのケータイ。
狭い上に締め切っているため、秋だというのに室温はかなり高く
皆汗をかいていたが、それでも誰も言葉を発せず、ただ待っていた。



757 :小ネタ罰ゲーム 実行編:2007/07/19(木) 00:40:19 ID:ty/vWGKY

--ドラマチックチックモウトメラレハシーナイ--

着メロとともにケータイが震えだした。
阿部がそれを取り上げ、通話ボタンを押し、スピーカーに接続する。
ザッザッザッザと足音がスピーカーから聞こえる。

「篠岡、途中まで一緒に帰らねえ?」
「あれ~?水谷くん。どうしたの?」

ゴクッと生唾を飲む音が、合計9回、暗い部室に響いた。

(いいぞ、感度は良好だ。)
(阿部っ!静かにしろよ!)


自転車を押しながら歩く二人。
「篠岡ってさ、栄口と阿部と同じ中学だったんだろ? 
あの二人って中学ではどんなだったんだ?」

水谷は花井にアドバイスされたとおり、同中だった二人のことから聞き始めた。

「栄口くんと阿部くん?そーだねー。実は阿部くんとは中1の時
同じクラスだったんだけど、一回も話したことないの。」
「ええ?なんで?」
「それが阿部くんってね。最初はちょっとクラスで浮いてたんだよね。
ほら、友達作る時期に一人シニアに入っちゃって、部活同じ子もいないわけだから。」

部室では噴き出した栄口に、阿部が無言でゲンコツを落としていた。

「阿部、浮いてたんだ~。あれ?でも栄口は?アイツもシニアだろ?」
「栄口くんは同じクラスになったことなくて、あまり知らなかったんだよね。」

今度は阿部がぷっと栄口を見るが、栄口は顔を赤くして、無言だった。
これ、聞いてるほうも結構拷問だ。と思ったとか思わなかったとか。



758 :小ネタ罰ゲーム 実行編:2007/07/19(木) 00:41:06 ID:ty/vWGKY

「え~と、じゃあ、篠岡が西浦に来たのはどっちかが好きだったってことでは・・ない?」
「えええ?何ソレ?やだ、そんな、ないよないよ。」
「高校の試合を見に行くとね、なぜかよく阿部くんを見かけたの。だから高校野球がしたくて
シニアなんだとは思ってたけどね。だから高校受験の時、なんで阿部くんいるの!?って思った。
栄口くんもいてびっくりしたんだけど、あの二人は野球部できること知ってたんだね。」

部室では二人は顔の表情に心底困った様子で赤くなったり青くなったり周りの目にさらされて
いたたまれないのか居住まいを正す。

「篠岡ってちゃんと見てんだな~感心する。でっでさあ、じゃあマネジとして
花井とかはどう思う?」
「花井くん?キャプテンらしいよね。3年間しっかり皆を引っ張ってってくれると思う。
委員長体質だよね。長男っぽいっていうか。」

電話から流れ出る自分に対してのコメントに花井は顔を赤くしていた。
茶化すように皆がつつくが、(うるせっ)と一言だけ小声で反論した。

「じゃあ田島は?」

(お、おれだー!)
(シッ!田島!)


花井が授けた作戦とは
一人ずつマネジとしての見解を聞いて、本命を語るときには反応が変わるだろうから
それを水谷の実力で読み取って来い。というものだった。

「田島くんはすっごいよね。西浦の4番は田島くんだよ。あと、麦わら帽子くれたり
いい人だよ。花井くんがチームの中心なら、田島くんは要だね。」

(ニシシシシ)
(うれしそうだな田島、でも本命脱落だぞ。これ)
田島の顔が驚愕におののき、がっくりうなだれる。

「三橋は?」
「三橋くんはすごいよ。自分の力、全部だすもん。普段は気弱だけど、マウンドでは
なんかきりっとしてるよね。そうそう、実は結構人気あるんだよ。
よく聞かれるもん。三橋くんって彼女いるの~?ってさ。女の子から。」

(おおおおおおおおおお)
(三橋人気あるんだー)

8人からの羨望のまなざしに、三橋はよりいっそうキョドキョドする。



759 :小ネタ罰ゲーム 実行編:2007/07/19(木) 00:42:03 ID:ty/vWGKY

「さっきからなんか質問ばっかりだね~?なんで?」
水谷はあからさまにビクっと動揺したが、慌てて弁解を試みる。
「いやっ!別にっ!いつもマネジの仕事一生懸命してくれてありがたいな~と。
でもそんなに一生懸命なのは実は部内に好きな奴でもいるのかっと!!」

(クソレフトなにダイレクトに聞いてやがる!)
(これじゃあ篠岡答えねーだろ!)

「ええええ?好きな人!?いないよそんなの!!」

(ほれみろ、警戒された)

「いるんじゃ、ないの?なんなら協力するしさ?篠岡だって年頃なんだから
部内の人間関係のこと考えて、誤魔化してるんだったらそんなの
気にする必要ないんだぜ?自分の気持ちには素直になったほうがいいよ?」

(なんだこの水谷の高等テクニック)
(やっべ~水谷かっこいい!)
(惚れるぜ。)
(オレならぽろっと本命ばらしちゃうぜ・・・)

「ええ~?何それ?ホントにいないよ?だって皆かっこいいもん。」

「ホントに?」
水谷が遠慮がちに確認する。
「ホントだよ。皆かっこよかったよ。一年の夏大で、一回戦負けしたっておかしくないのに、
結構勝ち進んで。一つでも多く勝ち残れるように一生懸命祈ってた。
甲子園はさすがに無理だったけど、でも、この調子だったら次は!って期待しちゃう。
皆、すごいよ。私、西浦入ってよかった。皆のマネジやれてほんとラッキーって思ってるよ。」

水谷はしばらく無言だった。

部室もしばらく無言だった。



760 :小ネタ罰ゲーム 実行編:2007/07/19(木) 00:42:51 ID:ty/vWGKY

「そっか。ほんとありがとうな、篠岡。いつもがんばってくれて。
好きな奴できたら、すぐに言えよ、協力するからさ。」
「うん、ありがと。水谷くん。」

そのまま、なんとなく無言で二人で自転車を押していく。

暗い部室で、スピーカーから二人の足音だけが響き渡る。
(絶対、甲子園に行こうぜ)
(うん。)
(おお)
(そうだな。)
(う、うん。ぜったい、だ)


やがて、二人が別れる場所に近づいてきた。
ふいに罰ゲームのことを思い出した水谷は最後の足掻きをみせる。

「じゃ、例えばで聞くけどさ。」
「何?」
「バレンタインにチョコやるとしたら、誰にやる?」
「え~?そりゃ皆にあげるよ?もちろん水谷くんにも。」
「え~と、じゃあ、今まで出会ったオトコで、一番かっこいいって思ったの・・だれ?」
「え~と・・・・・・。誰だろ・・・・・。」

暗い部室には、再びゴクっと生唾を飲み込む音が合計9つ、響く。

「あっ!!あの人!!」
「だ、だれ!?」

(誰だ?)
(誰?)

皆いっせいにスピーカーににじり寄る。

「桐青高校の、仲沢くん!すっごいかわいかった!」
「な!?桐青!?」
「うん!あんなにかわいい男の人、初めて見た!」

(とうせいのナカザワ!?)
(だれ!?)
(あ~おれのメル友だよ)

「あ~、そうか。桐青にかっこいいやついたんだ?」
「ううん!かわいいの!?試合のメンバー表で名前知ったんだけどね。
なんかこう、目がくりっとしてて、不思議な色でね~」

スピーカーから篠岡の仲沢トークが続く中、花井はおもむろに
水谷にもたせたケータイにかけた。



761 :小ネタ罰ゲーム 実行編:2007/07/19(木) 00:43:45 ID:ty/vWGKY


      • ドンナフウニイキレバ シアワセニナレルンダロウ---

水谷のポケットから着メロが響き渡る。
「あ、電話だよ。」
「あ、ゴメン。もしもし?」
『あ、おれ、もういいから戻って来い。』
プチッ ツーツーツー
「だれ?」
「いや、俺、忘れ物してるらしい。わりい、俺取りに戻ってくるわ。
篠岡じゃあまた明日な!気をつけて帰れよ!」

水谷はそういうなり自転車の方向を変えて、ダッシュで漕ぎ出した。
「うん。また明日~。」


暗い部室で、暗い雰囲気で、暗い表情が9つ並ぶ中

「せめて、俺らの中から本命を選んでもらえるように、がんばろうぜ・・・・・。」

「おう・・・・・。」


      • 終わる---
最終更新:2008年01月06日 19:45