9-222 ホシュネタ2
「阿部ー、篠岡とヤッたってホントなのか?」
「……。」
「なーなー、どーなんだよ」
「チ。……あー」
「えーいーなー! オレもヤりてーっ!」
「……お前なら頼めばやらせてくれんじゃねーの」
「ホントに!?」
「……って田島と阿部が言ってたよ」
と教えた時の篠岡ときたら、がっくりとくずおれて気の毒だった。
「まー阿部は阿部だからさ、もう仕方ないよ。
それよりも田島がが何か言ってくるかもしれないから気をつけなよー」
「ありがとう、水谷君……
わかってたことだけどちょっと辛いね。
誰とでもあんなことすると思われてるんだなぁ……」
そのアンナコトとやらの現場にニアミスした時は気まずかったけど
今じゃ気の置けない相談相手って感じで前より仲良くなったくらいだ。
その証拠にほら、練習のない放課後にこうやって教室で喋ってる。もちろん二人きり。
それって喜ぶこと? 悲しむこと? どっちでもいーよ。
こんなにフツーの女の子してる篠岡なんてアイツも知らないだろ。
オレだけのささやかな特権だよ。なんてね。
しばらく凹んでいた篠岡がパッと顔をあげた。
「決めた。ちゃんと、言うよ」
「何を?」
「田島君はないって。いくら田島君や花井君が───」
拳を握りしめ決意表明する篠岡の言葉を遮るように
大きな音をたてて教室の戸が引かれた。
オレの姿を認め、いつもより更に不機嫌そうな眉をして阿部が入ってきた。
「篠岡、この前の試合データまとめ終わった?」
「うん、今終わったとこ。どうぞ」
さっと差し出されたノートを受け取り小さな声でサンキュ、とだけ言い踵を返した。
ガタッと椅子を揺らし篠岡が立ち上がる。
「あの、……阿部君!」
「……なに」
足を止めた阿部は半身だけ振り返った。
オレのことは睨んだクセに篠岡のことは見ようともしない。
なんなんだこの二人は。
妙な沈黙が流れる。
もしかしてオレ、邪魔?
いやいや、たぶんオレの存在なんてもう忘れてるって。
「……私、誰でもよかったわけじゃないから!」
「何の話だよ」
「田島君じゃ、ダメなの」
「チ。……キャッチなら誰でもよかったんじゃねーの」
「そんなことない! 私が好きなのは……
私が好きなのは」
オレとアイツの視線が篠岡に集まった。
「保守!」
最終更新:2009年10月22日 22:16