9-358 保守ネタ3
……え? 今あの子ら何て言ってた?
聞き間違いじゃなければ……阿部君と千代ちゃんが一線越えちゃったって!?
一度しかない高校生活、青春する時間も必要だけどそこまで進んでたとはねェ。
それにしても阿部君か。
千代ちゃんはいい子だから惹かれるのはよくわかるよ。
でも千代ちゃんが阿部君を選ぶとは。何かと絡んでた他の子たちじゃなかったか。
まだまだ観察が足らないな! しばらく注意して様子を見とくか!
う~~~~~ん。
練習中はこれといって変わった所もないな。
二人が喋ったのだってこの三日で三回くらいだし、勘違いだったかな。
でも本人が認めてんだよね。
「監督? オレもう戻っていいスか」
「いーよ! っと待った阿部君! さっきのデータ、千代ちゃんに確認とっといて」
「はい」
千代ちゃんの名前を出しても全く反応無し。
部活と恋愛を分けてうまく切り替えてるなら黙って見守るべきか。
ほらあの顔。
完っ全に今は野球のことしか考えてないね。
それはそれで結構なことなんだけど。
阿部君は恋愛したらいい意味で変わると思ってたのにな。残念ながら見込み違いだったか。
おっと、千代ちゃん登場。
「牛乳だよー!」
あー、データに夢中で一人だけ気付いてない。
「おかわりあるからねー! ……、阿部君?」
「……」
「阿部君! 牛乳どうぞー」
「あ? おおサンキュ。
…………あ、そーだ千代、カントクが」
んん?
阿部君、今千代ちゃんのこと下の名前で呼んだ?
あ~無意識だったんだね、二人とも固まっちゃってるよ。
いや、二人だけじゃないか。みんなびっくりしてる。
……けど、トクベツ驚いてない子もいるね。あの子らは知ってたな。
「……お前ら付き合ってんの?」
巣山君がいったか!
「つっ付き合ってないよ! 全然! 付き合ってなんかない!!」
あらあ? 千代ちゃん全力で否定してるよ。
真っ青になっちゃって照れ隠しの演技でもなさそうね。
さて、ここで阿部君はどうでる?
「そこまで力いっぱい否定されると傷つくんだけど。
まーいーや。
で、このデータだけどさ、……千代、聞いてんの」
「はっ、うん、聞いてるよ! どれ?」
開き直った! へー、そんな返しが阿部君にできたとはねえ。
なんだかんだイロイロありそうだけど、余裕が出てくるのはいい傾向だよ。
こうやってあっという間に大人になってくのねェ!
「千代ちゃーん」
オイデオイデ。
「ハイ!」
「ひとつだけ言っておく。───”気をつけて”ね!」
「……、わかりました! 落とさないように気をつけます」
「ん? 何の話?」
「保守ですよね?」
最終更新:2009年10月22日 22:31