小小ネタ田島 篠岡からはじまるABC


梅雨はまだ去りきっていないのに、もう初夏のような日差しが
西浦高校の第二グラウンドも降り注いでいた。

一番気温が上がる頃の昼休み、篠岡がグラウンドで草むしりをしていると、
急にフェンスがガチャンと鳴った。
その音に振り向くと、田島がやたらでかい麦藁帽子をもって
篠岡に向かってかけてくるところだった。

「しのーか、帽子かぶらないと熱射病になっちゃうぞ。
あれ、けっこうきちーんだ。だから、これやるよ。」

通常の何倍もありそうな麦藁帽子。
ためしに被ってみるとつばがかなり広く、
座って草むしりをすると、小さな篠岡の体はすっぽり隠れそうだ。

「わぁ、ありがとう。田島くん。使わせてもらうよ。」
「にしし、おう。」

篠岡がまた草むしりをはじめると、田島はなぜかその後姿をじっと見つめている。
広いつばの麦藁帽子は、きつい日差しから完璧に篠岡を守っている。
そのつばからみえる篠岡の背中にくっきりと下着の線が浮かび上がっている。
透けてはいないが、屈んで作業しているため、より強調されてしまっていた。
そのラインを田島は一心不乱に眺めていた。



「なあ、篠岡ってブラ何カップ?」
「え??なっ!?なに!?」

ぎょっと篠岡は田島を振り返ろうとして、しりもちをついてしまい、田島を見上げた。
「え?なっなんていった!? 田島くん?」

「あ~、もしかしてしのーかならモモカンのサイズ知ってる?
あれってIかな?Hかな?それともGとか?」
篠岡は赤くなってあわあわしているが田島の発言にふと違和感を覚えた。
「田島くん。それ、小さくなってってるよ?」
「ええ?そうか?」
「うん。エ~ビ~シ~ディー、イ~エフジ~、エッチアイ~でしょ?」
中学の頃にならったABCソングを篠岡は歌いだした。
「おおお、んで、モモカンってどれ?」
「し、知らないよ~そんなこと。話さないし下着まじまじみないよ~?」
両手を顔の前でふりふりして、田島の追及を逃れようとするも、
田島はさらに食いついてきた。
「なんでだよ?合宿で一緒に風呂入っただろ?見てないの?」
再び篠岡の顔が赤くなる。なんとか誤魔化そうと思案したようだったが
あきらめたように、ため息をついた。
「ちょっとだけ・・みたけど。かなりおっきかったよ。ふぃに下着も見ちゃったんだけどね。
私の顔よりでかいんじゃゃないかと思っちゃった。」
「お~!しのーかの顔が入りそうなぐらいでかいブラ!?」
田島の目はきらきらして、想像したのか幸せそうな顔になる。
その田島の表情に可愛さを感じて、しばらく篠岡は見とれてしまっていたが、
不意に田島がきりっと篠岡を見つめる。
その変わりように嫌な予感を感じ、篠岡は身構えた。
「じゃあ、しのーかはAカップか?」
あまりのストレートな侮辱に、篠岡の顔が一気に紅潮し、理性を吹き飛ばす。

「Bはあるもん!!田島くんのばか!」



「と、ゆーわけで、モモカンのムネはしのーかの顔ふたつぶんで、
しのーかはBカップだ。」

着替え中だった野球部に、恐しい静寂が広がる。

「田島、お前、ちゃんと篠岡に謝ったのか?」
花井が、おずおずと静寂を破る。
「いや?だってその後、しのーか走ってどっかいっちゃったんだもん。」
「田島、それ、いつの出来事だ?」
阿部が事実確認を試みる。
「え~と、どれくらいだ。先週だったかな?」

「バカ野郎!!すぐに篠岡に謝って来い!!今すぐだ!!」


キャプテン花井の怒号が部室に響き渡った。


      • 終わる---
最終更新:2008年01月06日 19:41