1-97 レンルリ2
落ち着かなきゃって思うけど、ここにはサードランナーは、いないし。落ち着くのは、ムリ…だよね。
どうしようって思いながら目を閉じて、なるべくゆっくり深呼吸、する。
ぎゅって握り返してきたルリちゃんの手とか、背中に押しつけられた柔らかな体から、ルリちゃんの心臓のトクトク早い音が聞こえて、ルリちゃんも緊張してるんだなってわかる。
オレ、どうしよう?
「ヤじゃ、なくって」
なるべくそっと、ルリちゃんの肩を掴んで、背中から離す。だって背中にくっついたままじゃ、どうにもできない、よ。
ルリちゃんはビクって震えて、オレの顔をじっと見てから、体の力を抜いた。
大きな目に半分くらい涙がにじんでて、長くてくるんてカールした睫毛をこんなにそばで見たのは初めてだって思いながら、体の向きを変えて、ルリちゃんと向かい合う。
ルリちゃんは、オレとつないでいるのとは反対の手を迷うみたいにふわふわ動かして、胸を隠した。
オレはなるべく見ないように、ルリちゃんの顔ばっか見るようにしてたのに、ルリちゃんが手を動かしたからついそっちを見てしまった。
首とかは日焼けしているのに、びっくりするくらい、真っ白な胸元。
ルリちゃんの小さな手と細い腕で全部隠せるわけなくて、胸の谷間とかがばっちり見えちゃって、なんだかわめき出したくなるくらいだった。
オレは、ルリちゃんの肩に手を回して引き寄せた。
どーしたらいいのかわかんないって、頭は混乱してるのに、体は勝手に動く。これって、ほ、本能っていうのかな。
抱きしめると、ルリちゃんは小さな震える声で、レンってオレの名前を何度も呼んだ。
なんかすごい、嬉しい。今日はいつもみたく、レンレンって呼ぶんじゃないんだ。
「ルリちゃん」
嬉しくって、ぎゅって抱きしめると、ルリちゃんは苦しいよって言った。力を入れ過ぎちゃったんだ。
慌てて手を離すと、抱きしめていた時は見えなかったルリちゃんの体が、はっきり見えてしまった。
今度は、手で隠したり、されてない、から。
うわ。
「ご、ごめん」
目をそらしたオレの両手を、ルリちゃんがそっと握った。
それから、レンってささやきながら、その手をちょっと持ち上げる。
少しだけ離れて向かい合ってるんだから、手を持ち上げたら、ルリちゃんの体に、触っちゃうよ。
あたふた、どっちを見たらいいのかもわかんなくて目をうろうろさせちゃったオレの名前をもう一回呼んで、返事が上手く出来なかったから、何度も呼んで、ルリちゃんはオレの目をまた、じっと見た。
「レン、あたしのこと、好き?」
最終更新:2009年10月31日 18:11