1-384-387 モモチヨ マリリスト ◆xQ7Due/8lc
「で、そろそろ本命決まったんじゃないの?」
夏の大会で中学時代の先輩から言われたとき、篠岡はなにも答えられなかった。
「みんな、かっこいいですし……」
お茶を濁してしまった。それは嘘ではなかった。
みんな輝いてみえる。汗が弾けるだとかそういう意味ではなく、等身大よりも選手の誰もが大きくみえるのだ。
あの三橋だってそうだった。西浦メンバー全員が魅力的で、誰も勇ましく、かっこいい。
マネージャーのフィルターがかかっているせいでもあろうが、やはり誰にも替えがたい魅力がある。
(うん……みんなかっこいい)
篠岡は恋心を抱いていた。無論、西浦の人間だ。しかし、それを先輩の前で口にすることなど、とてもできなかった。
いいこちゃんを演じているわけではない。この恋心を悟られたら、誰も自分をいいこなどと言えなくなるだろう。
(今ごろ保護者の人達とおしゃべりしてるのかな……)
こんな恋心など言えるはずもない。自分が恋焦がれているのは選手ではなく、監督である。
しかもその監督は、あろうことに女性なのだ。
女性の監督というのもあるという話は、よく聞く。
だが少なくとも、自分とは縁のない場所での話だと思った。
百枝マリア監督——モモカンを見たときの衝撃は大きかった。まず、両手で甘夏を潰していた。
入学したての高校、中学からずっと親しみ続けていた野球にふれたくて、たまたま覗いただけのグラウンドで、
およそ野球とは縁のない場面とのファーストコンタクトだった。しかも潰しているのは女である。
監督が女だというだけでも驚いたのに、その上甘夏である。
それほど勇ましくもない篠岡には、強烈なインパクトだった。それ以来、モモカンの存在は篠岡の心に引っかかり続けた。
野球部に入ることに混乱を招いたのもモモカンではあるが、入るための後押しもまた、あのときのモモカンである。
「マネージャー希望?」
「は、はい!」
モモカンとの初接触は、とって食われるような危険も感じていた……というのは言い過ぎだった。
「嬉しいわぁ、やっぱりサポートしてくれる人って正直、かなり必要だったのよ。
マネージャーの存在は、チームのメンタリティにも大きく関わるからね」
「は、はい」
男と話しているかのような感覚だった。男勝りでもないと、野球部の監督などとは務まらないであろうが……。
「で、野球は好きなの?」
「は、はい!」
「よし……入部を認めよう! その気持ちがあれば大丈夫だね。あなた真面目そうだし」
「あ、ありがとうございます!」
「ただし、結構ハードだからね。篠岡ちゃんか……監督の百枝です。これからヨロシク」
そんな出会いだった。
西浦メンバーで初めての合宿先、男達の中心に立ちながら、男以上の張り切りを見せていたモモカン。
自分には到底出来ない芸当だった。あの活発なまでのエネルギーは、自分には持ちえないと思う。
きっと自分のような小さい身体ではパンクするようなパワーが、モモカンの中に入っているに違いない、と。
それは風呂場でも明らかだった。胸がでかいでかいとはユニフォームの上からでもわかっていたが、
いざ更衣室でモモカンのブラジャーを目撃したとき、きっとあのパワーは豊満な胸に蓄えられているとも思った。
羨ましいと思った。胸ではなく、あのパワーである。パワーと言っても甘夏を潰す怪力ではない。
あのパワーがマネージャーの自分にあれば、西浦ナインに大きな貢献が出来るに違いないと思ったのだ。
ソフトの経験があるとはいえ、自分にそれほど体力があるとは思わない。マネージャーの仕事もハードであるとは知っている。
合宿以来、自分の中でモモカンは羨望の存在になっていた。自分に無い物を持っている、それだけで価値がある。
だが、羨望が次第に恋心に変わっていくのもそう遅くは無かった。
気がつけばモモカンを目で追っている自分に気付く。モモカンは粗忽なようで気配りがよく、
自分よりもよほどマネージャーに向いているとさえ思った。とにかく人がいいのだ。
西浦ナインの練習を眺めながら、時折ちらりとモモカンの姿を横目で見つめる。
(監督、すごいな……私、監督みたいになりたい。もっと監督に近づきたい)
憧れが恋心に変わるのはこの年頃にはよくあることだ。しかし篠岡の場合、相手は女性である。
男みたいなものだからいいよね、と失礼な考えをしたこともあった。
それは、大事な練習試合を備えた前日だった。
「ありがとうね、篠岡ちゃん」
「……へ?」
「ありがとうねって言ったの。私に付き合わせちゃうと、イヤでも仕事がハードになっちゃうでしょ?」
「そんな……楽しんでやってますし、大丈夫ですよ。監督の方がよっぽど頑張ってますし……」
「楽しんでやってるか……泣かせる事をいうね。マネジがいるから、みんなも私も安心して練習ができるんだよ」
モモカンが篠岡の元へ、歩み寄ってくる。二、三度、篠岡の頭を触ると、にこりと笑った。
「ありがとう」
篠岡の心は弾んだ。野球部の『マネジ』になって以来、こんなに嬉しいことは無かった。
自分が認められている、必要とされている、憧れの監督に————。あの人はきっと、お世辞など言わないはずだ。
篠岡はその日、嬉しさで眠れなくなり、久しぶりに自慰に耽った。
自慰の経験は昔から多少あったが、誰かのことを考えながらと言うのは一度も無かった。
ただ、気持ちがいいからということだけで指を動かしていた。
いつか自分に好きな人が出来たら、その人を思い浮かべながらするのだろうか……そんなことを考えたこともあった。
しかし、相手が女性で現実になるとは……。
生まれて初めて、人生で一番淫らなことを考えた。コトを済ませると罪悪感よりも悦びの方が大きくなった。
監督も今夜、少しでいいから自分のことを考えてほしいと思った。
その日はモモカンから、対決校である桐青に関するレポートを、少しでもいいから作ってほしいと頼まれた。
俄然張り切った。マネージャーになって一番、大きな仕事を任せられたと思った。
ますます西浦野球部における自分のポジションに、自信を持つことが出来る。
(みんなのためにも、頑張るしかない! それに、ここでいい仕事をみせれば、また監督にほめてもらえるかな?)
少しくらいは不純な動機があっても、バチは当たらないだろうと思った篠岡だった。
夜中の3時。桐青の試合のビデオを延々と繰り返し見ているが、自然と眠くならない。
それよりも、レポートとしての情報を抽出するのに頭を悩ませていた。
「肩こっちゃったな……休憩入れよう」
ある程度完成したところで、休憩を入れたが、眠気覚ましにコーヒーを飲んだせいか、妙にギンギンとしている。
それなのに眠気のせいでいやにテンションが高い。
(これ何とかしたらみんなも……監督も喜んでくれる。出来るだけ正確に、早く仕上げれば、それだけ誉めてくれる。
ここで頑張らなきゃ、監督みたいな立派な人になれない。こんなところで疲れている暇はないんだから……)
疲れてくると、妙な気持ちになってきた。そういえばここ数日、自慰をしていない。
(……監督、今ごろ何やってるのかな)
財布から隠していた写真を取り出した。合宿の際、二人で取った唯一の写真だった。
(監督……あたしのこと、認めてくれるかな? できればただのマネージャーとしてじゃなくて……)
右手をそおっと、ジャージのズボンの中に差しこんだ。
下着の上から秘裂のラインをなぞると、湿った感触がする。
「……監督」
ジャージのジッパーを下げ、Tシャツの中に手をいれる。
ブラの下から、けして大きいとは言えないその小ぶりな胸に手を当てる。こねるように撫でまわした。
もう片方の手は、秘裂のラインを擦り続ける。じわりとした感触が、ショーツに染みこんできた。
「んっ……ふあっ……」
愛液が指に絡み、ショーツの染みがどんどん広がっていく。歯と歯の間から、たまらず熱い息が漏れる。
モモカンは思わないだろう、自分の野球部の『マネジ』が、まさか自分のことを考えて自慰に耽るなど。
「はあっ……かん……とくっ……!」
頭の中に、モモカンの姿が映し出される。長い髪、怒声、豊満な胸、それは篠岡の官能をますます高めていった。
「んっ……くふぅ…………」
額から汗の粒が浮かぶ。小さめの乳首を指でこねる。すでに固く張り詰めていたそれを、指で弄ぶ。
ショーツの中に指を侵入させた。そこはすでに、少女のものとは思えないほど淫らに、熱く濡れそぼっていた。
「あっ、ふあっ、ん……あん……」
膣内に少しだけ指を挿入させる。秘部をなぞりながら、やがて小さな肉芽へと辿りつく。
その部分を強く押すと、甘美な痺れが全身に走る。脳髄まで届くと、篠岡の小さな身体は大きく跳ねる。
「ひあっ……! はあっ、監督っ……!」
合宿のとき風呂場でみた、モモカンの肢体を思い出す。あの胸に包まれたらどれだけ気持ちいいだろうか。
篠岡の、汚れを知らない幼き秘部からは、快感を享受するたび、愛液が溢れ出してきた。
「あっ、あっ、かんとくぅ……気持ちいいよぉ……」
身をよじり、快感の波に身を任せる篠岡。こんな痴態をモモカンが知ったら、どんな顔をするだろうか。
愛液のくちゅくちゅという淫靡な音が、真夜中の篠岡の部屋に響く。
小さいながらも篠岡の肉芽は、しっかりと硬度をまして充血していた。
身体中に広がる快感の波。篠岡は頭を激しく振り、脚の先まで力を込めていた。
「あんっ、ひあっ、くぅっ……監督、監督……!」
すでに愛液は下着だけではなく、ジャージそのものをよごすほどに溢れていた。
テクニックなどはなく、乱暴に胸と秘部を弄ぶ篠岡の指。
「あっ、もう、ふあっ、ひあっ……」
篠岡の身体に絶頂が近づいていた。訪れる大きな快感に備える。
頭の中に、モモカンの笑顔が焼き付いていた。
「ひあっ、あんっ、あっ、くぅ、ひあぁぁんっ!!」
両足をぴんと伸ばし、小刻みに震えながら背中を大きく仰け反らせて、篠岡は達した。
愛液がいつもよりも多めに溢れてきた。しばらく快感の余韻に浸る。
「かんとくぅ……」
モモカンの事を想って達した自分を、少しだけみじめだと思ってしまった。
身体の熱が冷めると、急に現実へと引きもどされた。
「あ……レポート……その前に片付けないと……シャワー浴びよう……」
シャワーを浴びた後、レポートを済ませ、早朝のグラウンドへと向かった。
そのころには疲労困憊になっていたが、眠りの中でモモカンの誉める声が聞こえた。
それだけで幸せだった、気がしないでもない。
「いよいよ夏の大会が近くなりましたね」
ベンチで二人、並んで腰掛けている。モモカンはいつもの真剣な眼差しで、練習に励む部員を見つめている。
「そうだね……やるべきことは、半分もできたかわからないけど、みんなよく頑張っていると思う」
「はい……私もみんなのこと、すごいなって思う。あんなに輝いてみえるんですから」
もちろんモモカンの姿も。それは心に秘めておいた。
「でもね、やっぱり誰か一人でも欠けてたら成立しなかった輝きだよ。もちろん、マネジもね」
「へっ?」
「私にはわかるの。あなたの思っていることが」
心臓が大きく鳴った。自分の気持ちが、悟られていたと言うのだろうか。
「心配しなくていい、あなたが思っている以上に、あなたはみんなから頼りにされている。
もちろん私だって、あなたには感謝と期待を寄せているわ。これからもよろしくね、マネジ」
それだけ言い残すと、モモカンは部員達の元へ走っていった。
少し残念だった気もするが、今はこれでいい、これが分相応だと思えた。
そうすると、不思議に勇気が湧いてきた。モモカンのエネルギーが少しでも、自分に渡ったかなと思った。
最終更新:2009年10月31日 21:58