1-588-589 アベチヨ1
「ねーねー、千代…」
「ん?」
「阿部くんてさぁ…彼女とかいるのかなぁ…?」
いつもの昼休み、窓際の机で眠る阿部くんを見ながらふと友達が話しかけてきた。
「さぁ?いないんじゃないかなあ?」
「そうかなぁ…」
「あ、もしかして好きなの?阿部くんのコト」
「え、やっ、そっ、そんなじゃなくてっ…!」
「あー、好きなんだぁ。よし、分かった!あたしが今日聞いてあげるよ」
「やめて!ほんとお願いだから、それだけは!」
「えー、本当にいいの?」
「う…うん。てゆーか千代、よく阿部くんにそんなこと聞けるね」
「どーゆーこと?」
「いや、なんか話しかけずらいオーラ出してるじゃん、阿部くんって…」
「えー、そうかなぁ?」
「そうだよぉ…」
「うーん…」
なんてことない会話だったけれど、この会話のせいで今日の部活は妙に阿部くんを気にするようになってしまった。
友達は聞かなくていいって言ったけど、自分の方が興味湧いてきちゃった。阿部くんに彼女がいるのかどうか。
これまではこんなこと気にならなかったんだけどなぁ…。
部活が終わり、片付けの最中に阿部くんに聞くチャンスを伺ってると、なかなかスキがない。
それに言われてみると、確かに話しかけずらいオーラみたいのも感じる。
言われるまで気づかなかったなぁ…。
「どーかした?篠岡?」
「あ、水谷くん…や、なんでもないよっ」
「?あ、そぅ」
水谷くんは逆によく話しかけてくれるんだけどなぁ。
「あ、水谷くんちょっと待って!」
「え、なに?!」
「阿部くんってさ、彼女とか…いる?」
「阿部ぇ?いや、それどこじゃないでしょ〜」
「そうだよね…」
「阿部、好きなの?」
「ううん、違うの。ありがとね!」
「??」
結局その日は聞くことが出来なかった…。
最終更新:2009年10月31日 22:35