4-47-55 ハナモモ 「アズサ」


「お待たせいたしました。アズサさんご指名のお客様、こちらへどうぞ」
ソファーに座っていた青年が立ち上がると、かなり背が高かったことがわかる。
部屋を出て階段の方へ向かうと、そこでキャミソールを着た女性が待ちかまえていた。
「いらっしゃいませ~。ご指名ありがとうございます」
満面の笑みを客に向けると、次第にそのととのった顔が、おどろきに変化していった。
「…あ、あれ?ひょっとして、花井くん?」
「おひさしぶりです。…カントク」
眼鏡をはずすと、花井は一礼した。

西浦高校が甲子園へはじめて出場した年の秋、百枝は突然、野球部を去った。
彼女は臨時だから。当座のしのぐまでだったから。正式に監督に就任してもらう人材が見つかったから。
学校側からの説明では、とうてい納得のできないものばかりだった。
百枝が去ったあと、花井は荒れた。

花井は二十歳になっていた。今は普通の大学生をしている。野球は続けていなかった。
かつての仲間から、野球を続けるように言われたことはあった。
しかし、花井自身に、昔の野球の楽しさを見出せることができなくなっていた。
「野球がつまんねえ……なんでだろ」
そうつぶやいて、相棒であるグローブを物置にしまった。

なにげなくネットにつないでいた時のことだった。
「巨乳」の項目で検索してみて、たどり着いた先が、風俗店のページだった。
「…モモカン?」
たまたま開いた先の風俗嬢の写真が、百枝に良く似ていた。
顔にモザイクがかかっているとはいえ、体格から顔の輪郭までそっくりだった。
花井はじっくりと考えたあと、店に電話をして、「アズサ」という源氏名の女性を指名した。

「何年ぶりかしらね。西浦のあの頃がずいぶん昔のよう」
「はい」
二人は個室に入り、ベッドに並んで座った。部屋の奥ではタイル張りとなっており、浴槽もあった。
「その分だと、私が西浦を去ったときのこと、ずいぶん怒っているみたいね」
「いえ、……そうじゃないんです」
「あの時は……ごめんなさい」
「もう、いいんです。俺は……カントクに、会いたかっただけですから」
百枝に会うまで、花井は何百通りもの文句を、頭の中に用意していた。
しかし、実際に百枝の微笑みをみると、心の中のうっくつした感情が消え去っていった。
「じゃ、あとは仕事しなきゃ、ね」
そう言うと百枝は、立ち上がって服を脱ぎだした。
「あ、あ、あの……、ほホントにやるんですか?」
「え?だって、そのために店にきたんでしょ?」
いいながら百枝は長い髪を頭でまとめた。お団子ができあがると、下着をはずし、タオルを巻いて花井にむいた。
「せっかくだから、遠慮しないで」
花井はぎこちなく百枝に服を脱がされた。
「あ、あ、服は自分で脱げますから!」

イスに座るよううながされると、まず体洗いからはじまった。
洗面器の中にたっぷりと泡を作り出すと、百枝は手で泡をすくって、花井の体にこすりつけた。
「あ…っ、あぅ…」
首筋、胸板、腹筋、そして局部。百枝の手が花井の体のあちこちに触れるたびに、花井は情けない声をあげていった。
「ねぇ、花井くんって、ひょっとして……女の子はじめて」
ギクッと花井はくずれた。
「……はじめてです」
「え~~!?ホント~!あははははっ!」
百枝の笑い声が花井の心をえぐっていく。次第に花井は涙目になった。
「あ~あ~、ゴメンナサイ。そんなつもりじゃないのよ。でもね、意外だったの。てっきり、花井くんて彼女いそうだったから」
「…いません」

機会がなかったわけではなかった。
長身で顔も良く、花井は誰からも注目される存在であった。相手の方から告白をされたことも何度もあった。しかし、花井には付き合えなかった。

「それはなんで?」
百枝の顔がさらに接近する。
「あの、笑わないでください」
花井はつばを飲み込むと、腹に力をいれて、思いを口にした。
「オレ、初めてはモモカンって、決めてたんです」
百枝の目が大きく開いた。
「…それは、それは。ふ~ん」
花井は言い終わると、真っ赤になってうつむいてしまった。
百枝は身に着けているバスタオルを取り外した。目の前には一糸も身につけていない百枝の体だけがあった。
「花井くんて、けっこうロマンチストなんだね」

百枝は自分の胸と股に石鹸をつけると、イスに座っている花井のひざの上にまたがった。
「じゃぁ、今日は花井君にとって特別な日なんだね」
花井の肩を抱くと、百枝の腰はひざの上で動きはじめた。
自身の女陰を使って洗う「壷洗い」という技だった。

「花井くん、このイスって気にならない?」
花井が座っているのは、すね位の高さしかない桶のようなイスである。奇妙なことに、ちょうど真ん中だけ縦に大きな隙間があいていた。
百枝は背中の方にまわった。
「これはこう使うんだ」
尻の下から手が伸びてきて、いきなり花井のペニスをつかまれた。
「うわっ!……うわぁ……む」
百枝の右腕が花井の股の下で何度も動く。アナルとふくろが同時に刺激された。
「んふっふっふ。花井くんは、おしりが弱いようねぇ」
獲物をみつけたメスライオンのように、百枝は指でふくろをもてあそびながらニヤけた。

「準備があるから、ゆっくりお風呂に入ってて」
言われたとおり、湯船につかった。なんだかようやく開放された心地だった。
湯の外では、百枝が裸のまま、エアーマットを床にしく支度をしていた。
花井はあらためて百枝の体を視る。
服の上からでも圧倒される巨大なバスト。そのわりにキチンとくびれもできている引き締まった腰。女を感じさせる細い首。
見れば見るほどモモカンはいい女である。
花井は風呂につかりながら、今のモモカンを心配していた。
どうしてこんなところに居るんだろう?
風俗で働く人間が、一筋縄ではいかないことは聞いたことがある。
借金を返すために、自分の性欲を満たすために。理由は様々だが、やはりヤクザな仕事であることには変わりない。
「はい、できたよ。温まったら出ていいからね」
百枝の合図が聞こえたので、花井は思考を中断して湯船を出た。

風呂場の床一面に敷かれたエアーマットは、大きさといい、凹凸の形から、一人用のイカダにみえた。
それでも畳一畳より広いし、手で押し込めば、それなりに弾力がありそうだった。
「まず、うつ伏せになって寝てて」
言われたとおりにしてみる。すると、先ほど石鹸が入っていた洗面器を使って、今度は違う液体を注入しだした。
「これはね、ローション。これ使うとね、スッゴイいいことがあるよ」
ウヒウヒといたずらっぽく百枝は笑った。
洗面器にお湯を入れると、ローションを手でかき混ぜはじめた。
その液体は、粘りととろみがあって、透明な色彩からさながら水あめのように見えた。
いきなり背中に熱さを感じた。モモカンがローションをすくって体中にぬりつけている。
今度は残ったローションを、自分の体に、胸や腹、そして股に、ぬりつけた。
ただでさえメリハリの効いた危険な体が、ローションの光沢によってさらに妖しくみえる。

「いくよ」
モモカンが背中に覆いかぶさってきた。
背中に大きくて、柔らかくて、少しだけとび出ているものがあたっているのがハッキリとわかる。
花井の背中の上で胸を使って滑っているようにも見えなくもない。
今度は筆のような柔らかいものが背中一面に走り回っている。
百枝は、舌を使ってローションの塗られている部分を舐めとっていた。

花井にも、時間が経つにしたがって、自分自身が変調を来たしているのがわかっていった。
鼓動が速まり、どんどん興奮して息もあがってくる。
オレ、ただ肌に触れられているだけなのに、なんでこんなにカンジているんだろ。
「すごいでしょ?ローションって、感度をあげてくれる働きもあるんだよ」
そう言いながら百枝は、花井の足の親指を口にくわえた。
「ひっ」
百枝の口の中で親指をなめられ続けると、花井はとうとう悲鳴をあげた。
「うっ…あ、ああ、あ…」

百枝の左腕が花井の右手を腹の下でつかんだ。
そして、おもいきり百枝がひっぱると、独楽のように体が回転した。
気がついたら、花井は仰向けにされていた。
一瞬、二人は目と目があう。
百枝はまるで、ここからが本番だよ、と訴えてるようにもみえた。

胸に顔を近づけて、花井の乳首を吸い始めた。
「あっ!あうあ!うはぁ」
「感じるでしょ?男の子も乳首は弱いんだよねぇ」
「んがあ!」
乳首を攻められたあと、首筋、両わきの下、へそ、と進んでいき、そして股間までたどりついた。

「かたい……」
熱くさせた自分のペニスの感想をいわれると、恥ずかしさでこそばゆくなった。
先端から舌で愛撫をされた。裏スジは楊枝を使うように細かいところまで攻められた。

固いモノをつかまれると、百枝の胸の谷間に置かれた。そして、両側から乳房で挟まれる。
あまりの巨大なバストのせいで、自身のモノがすっかりうまってしまった。
「花井くんって、おっぱいすき?」
モノを胸でしごきながら、百枝は花井をみつめた。
「モモカン、ゼッテェわざとでしょ…?」
言われて百枝は図星という顔をした。
「……すきです」
花井は穴があったら隠れたいくらい恥ずかしかった。次々と心のベールをはぎ取られていく。
完全に百枝のペースだった。

花井は百枝に指示されて、両股を大きくひらいた。完全に自分の肛門が百枝に見られている格好になる。
百枝は、その肛門に指をつっこんだ。
「んがっ」
鈍い痛みが突き刺さる。
「うんがああああああああ!」
花井は我慢できずに、悲鳴をあげ続けた。前立腺マッサージを行われているのだが、痛みが突き抜けた後には、得体の知れない脱力感が体にきた。
「痛かった?今度はやさしくしてあげるから」
百枝が指を抜くときが、一番きもちよかった。

「うはあああ!あーーーーーーーーー!」
今度は舌で肛門を攻められ始めた。指のときは痛みがあったのだが、この場合は、電撃が走るみたいな快感が花井をおそった。
「アーーーーーーーーーーーーーー!!」
花井はのけ反る。花井は悲鳴をあげ続ける。
しかし、自分から逃げようとは思うことができなかった。いや、もっと味わいたい、とまで思っていた。

花井は声をあげ過ぎたせいで、のどがカラカラになっていた。
百枝の顔が真直までせまった。上にある百枝の首をつかむと、そのままキスをせがんだ。
百枝は口の中でだ液をため、口うつしで花井へとおくりこんだ。
花井は飲みこむと、舌を百枝の口の中へと入れ、さらにむさぼりはじめた。
「お尻なめちゃったんだけど、汚くなかった?」
百枝は申し訳なさそうに言った。
「いい。モモカンの体に汚いところなんてない」
そういっていやらしいキスをつづけた。
唇と唇、舌と舌、舌と歯、お互いがせめ、お互いがせめられる。愛しあうようなくちづけ。
花井が百枝の舌を味わうたびに、百枝から吐息まじりのあわい声が聞こえてくるようになった。
「ああう…」
モモカンって、なんてエロイんだろう。

花井がモモカンの唇に夢中になっている間、自分のペニスを握られていた。
そして、女の秘部へと導かれた。
「えっ?ひ、避妊は?」
侵入は入口でいったん止まった。
「薬を飲んでるから大丈夫。それに、今日は花井くんの特別な日だから」
百枝がいうと、再び挿入をはじめた。
「はう…」
刀の鞘におさまるように花井のペニスが根元まで入り込む。
騎乗位の体勢になった。

百枝はまだ動こうとしなかった。何かを待っているように。
不思議に思ったので花井は聞いてみた。
「モモカン、あの…?」
「もうちょっと待ってて。もう少し感じさせて」
百枝の胎内は熱く、愛液で湿っていた。

「んくっ」
百枝の胎内にある特定の部位をみつけると、百枝は小刻みに腰を動かし始めた。
「あっ…、あっ…、ふう、ん…」
花井はなにも動いていなかった。だが、自分のペニスを使われて、モモカンがあえいでいるのはわかる。
「モモカン、感じてる?」
「うん…、かんじ…る」
花井も百枝のためにもっと何かをしてあげたいと思った。

両手を伸ばした。手の先には、横に揺れるモモカンの乳房。
花井は乱暴にわしづかみしたあと、親指と人さし指で乳首をいじくりだした。
「アンっ!」
あまりにも大きすぎて、手のひらの指の間から肉がこぼれてしまう。ローションのせいでうまく揉めない。しかし、かえってその方が百枝をもっと感じさせることができた。
「はン…、おねがい…、ずっとおっぱいから…手をはなさないで」
百枝は左胸をいじくる花井の手を自分の手に重ねた。
「ああ」

百枝は少しずつテンポをあげていった。
胎内で花井がつっつくたびに、卑猥な声がもれる。
「あうっ、んん…、アン、ハッ」
花井の頭は、目をつぶるとモモカンのことで一杯になっていた。

「でそう…」
「うん。いいよ!なかに出してイイよ!」
「あう!でるっ、うう、あああああああああああああっ!!!」
風船が内側から膨らんで破裂する感覚に似ていた。

百枝は汗まみれになって、花井にしがみついた。
花井も射精のあと、急に心がさびしくなって、モモカンの体にしがみつきたいと思った。
二人は抱擁をつづけたまま、無言の空間をすごした。
「どうだった?初めての感想は」
「……頭が真っ白です」
「ウフフ。うれしいなぁ」
チュッ、と軽いキス。

「なぜ、ここで働いているんですか?」
意識もはっきりし、花井はわだかまりをぬぐうため、モモカンにたずねてみた。
「お金、なんですか?ひょっとして、デカイ借金があるとか?」
マットに横たわりながら、二人は見つめあう。
「…ねぇ、なんで私の源氏名が“アズサ”だとおもう?」
「……わかりません」
「梓って聞いたときね、素敵な名前だとおもったんだ。花言葉は『夢見心地』」
「モモカン、それって……」
ウフッと百枝は微笑んだ。
「私、いまね、リトルリーグの監督やってるんだ。みんなかわいいんだよ。田島くんが何人もいるみたい」
どうやら百枝は、小学生を集めてチームを作ったようだった。花井はうれしかった。西浦にいたときとまったくかわっていなかった。
「今度、全国大会にでるんだけど、場所が九州だから。みんなと親御さんの分を勘定すると、オカネが足りなかったんだよね。で、友人に紹介されてココで働いているわけ」
野球に関してなら自腹も辞さない。あいかわらずのモモカンだった。
「それにさ、ソープって見た目以上にハードなんだよ。体力だってつくし」
「あの……、オレにも手伝わせてもらえませんか?」
花井は自然と口にできた。自分から野球をやりたいと思えるのは久々なことだった。
そうだ。オレの野球には、モモカンが必要なんだ。
いや、俺のこれからは、モモカンとずっと一緒だ。
花井はすぐに、しまったグローブのおき場所はどこか、全力で思い出していた。


「ところで、モモカン。ネットみたときおもったんだけど」
「ん、なに?」
「モモカンの年齢が“二十歳”になってたんだけど、これってずいぶんムリがあるんじゃ…」
言い終わる前に、モモカンの鉄の爪が花井の顔をおそった。
「口封じ!」
「ぎゃあああああ!」








最終更新:2008年01月06日 20:03