1-943-947 イズチヨ
「あああぁ、どうしよう。試合の予定表、どこかに置いてきちゃった」
練習試合の日程が記してある予定表を、あろうことかどこかに忘れてきてしまった。
明日でいいじゃん、一緒に帰ろー?と水谷君に言われたけど、そんなわけにはいかない。
試合の予定だけではなく、相手の弱点、打順、性格なども記してある千代オリジナル予定表。
そのデータを全部記憶して、相手ね弱点を見極めて、できるだけ早くみんなに伝えたい。
どこに置いてきたか。今日一日の行動を振り返ってみた。
ー今日は、確か部室の掃除したっけ。
そのことに気が付き、小走りで部室に向かった。
ガチャッ
「机・・・にはないなぁ。床にも落ちてないし。あ、でも・・・もしかしたら、花井君が持ってるかも」
キョロキョロと辺りを見渡した。
もちろん誰もいない。
ーゴメンね花井君。
そう心の中で呟いて、花井のロッカーを開けた。
ロッカーの中はキチンと整理整頓されていて、どこに何があるか一目瞭然だった。
そして、花井のロッカーの中に予定表は見当たらなかった。
「・・・そうだよね、あったら言ってくれるもんね」
溜息をつきながらロッカーの扉を閉めた。
「あ、このロッカー・・・」
横のロッカーを見る。マジックで”泉”と書いてあるプレートが貼ってあった。
「泉君の、ロッカー・・・か。・・・こんなこと、本当はしちゃダメなんだけど」
罪悪感も多少あったが、それよりも少し気になってる男の子のロッカーが見たいという気持ちの方が強かった。
ガチャ
中は結構整理されていたが、黒のアンダーシャツがクシャッと畳まれてたり、ボールペンが転がってたりと(まぁまぁ)想像通りだった。
「いろんなものが置いてあるのね。これはなんだろう?」
「それは手錠だよ」
誰もいないと思っていた部室から、泉の声がした。
即座に声のする方を向くと、うっすら笑みをこぼしてる泉がいた。
「!!えぇえ、っと!!あ、あの、い、いずみくん・・・」
「しのーかってばさ、人のロッカー見る趣味があったの?」
「いや、あの、ち、違うの!」
「とりあえず落ち着いてしゃべって?」
しかし、こんな状況(本人のロッカーを覗き見してた上に独り言を呟いてた)を見られて落ち着いてしゃべれるわけがない。
「・・・ご、ごめんなさい。えぇと、他校との練習試合の予定表どこかに忘れて置いてきちゃって・・・それで、今日は部室の掃除してたから、ここに忘れてないかな・・・と思って。
少し震えながら一生懸命に説明した。
「花井君なら持ってるかもと思ったけどなくて。で、横見たら泉君のロッカーがあって・・・それで、あのね」
「ふーーん。それで、俺のロッカーの中を見たの?」
「・・・うん」
「・・・そっか。ね、しのーか。この事誰にも言わないから、願い事イッコ聞いてくれない?」
その言葉に、少しホッとした。一生弱み握られて、いい様に使われて高校生活を終わり。という学園ドラマを、先日見たばかりだった。
「何?」
「その手錠使って、ちょっと運動したいんだけど、手伝ってくれる?」
【ここまでです。読んでくれた人、ありがと。エロは無理ですた】
最終更新:2009年11月01日 01:48