2-141-145 アベ←チヨ

「次はキャッチャー河合君…。直球、外角高め…。また流し打ち…ライト前ヒ

ット…っと」
監督に借りたビデオを見ながら細かいスコアをつけていく。
一時停止ボタンと再生ボタンをもう何度往復しただろう。
「ふぅ…」
時計は既に深夜の1時を回っている。
お風呂を上がってから4時間近く座りっぱなし。
さすがにちょっと腰が痛い…。
「ん〜…っ」
疲れた体を大きく伸ばす。
ごろん、とフローリングに身体を投げ出した。
「みんなもうぐっすり寝てるんだろうなぁ…」
夏の大会を間近に控え、練習にもより一層気合が入っている。
チームのみんなは朝の5時集合だから…4時頃には起きてるのかな。
「みんなのために頑張らないと…」
みんなのために、という言葉に間違いはない。
でも…。


一つでも多く勝ってほしい。
一つでも多く…あの人の笑顔を見たい。
「阿部くん…」
気がつけば好きになっていた。
三橋君をリードする真剣な表情も、ちょっとキツい言葉も、時折見せる笑顔も


全てが恋しくて、全てが愛しい。
着替えの時に見てしまった、ところどころアザのある身体。
あの大きな手で、腕で、抱きしめられたら…。
「んっ…」
とくん、と胸が鳴った。
ぞくりと震えた自分の身体をぎゅっと抱きしめる。
顔が火照る。身体が熱い。
「やだ…忙しいのに…っ」
身じろぎした時に擦れた肌着の感覚にさえ鳥肌がたつ。
「ぅ…ちょっと、休憩しよ…」
ノロノロとした動作で電気を消す。
口から出た言葉は自分に言い聞かせるための言い訳。
火照った身体を静めたくて、私はベッドに倒れ込んだ。


「ん…」
わき腹から、胸のラインを指でなぞる。
パジャマははだけ、薄い肌着に軽く汗ばんだ身体が月明かりに透けた。
高校に入ってから少しだけ大きくなった胸を優しく撫でる。
「ふ…ぅ…」
口から漏れる吐息が変に艶っぽくて、恥ずかしさに顔が赤くなった。
それでも指は止まらずに、優しく胸を撫で続ける。
もどかしい快感が少しずつ少しずつその頂点へと近づく。
「ぁ…だめぇ…」
何に対しての拒絶なのかは自分でもわからない。
焦らされて敏感になった突起を、不意に布が擦った。
「んぁあっ!」
びくんと身体が跳ね、それによって肌着はさらにそこを刺激し続ける。
「あっ!ゃ…ん…っ!」
胸の先端から波のように何度も襲ってくる快感が、脳をビリビリと痺れさせる


ゾクゾクと鳥肌がたち、言う事をきかない身体を必死に抱きしめる。
ようやく自由を取り戻した時、パジャマのボタンは全て外れ、キャミソールは

めくれ上がり、二つの胸は露わになっていた。


身体が切なくて、心が切なくて。
手はいつの間にか秘所へと向かっていた。
「ゃだ…汚れちゃぅ…」
もそもそと下着ごとパジャマを脱ぐ。
その一枚の布は既にじっとりと湿り、愛する人を迎え入れることを望んでいる

のを嫌と言うほど表していた。
「んっ…あっ…」
指は秘唇を優しくなぞり、クチュクチュといやらしい音を立てる。
軽く指を曲げて中を擦ると、切なさが一瞬だけ満たされた。
しかしそれは次の瞬間一層大きくなって再び身体を襲う。
「やぁあぁっ!」
濡れた指が悩ましく蠢く身体の最も敏感な突起に触れた時、全身を快感が駆け

巡った。
びくびくと数回身体を震わせ、また指は動き始める。
「あん…ふぁ…」
身体の奥から熱いものが溢れ出してくるのを感じながら、何度も何度も敏感な

部分を指で擦る。
切なさを満たしたくて、もっと気持ちよくなりたくて、自分を慰め続ける。
「阿部くん…っ!」
口をついて出たのは、大好きな人の名前。
全身が気持ちよさに支配され、何も考えられない。
「ぁ…あ…たかや…くんっ…!」
指の動きは激しさを増し、身体を快感の頂点へといざなう。
足をピンと伸ばし、手を必死に動かし、一点に集中していった快感が、
「イク…イっちゃう…!たかや、くんっ、大好き…っ!ぁああああっ!!」
全てを飲み込んで、爆ぜた。


眠気でふらつく身体をひきずり、フェンスの扉を開ける。
「監督…でっ…できました…!」
「桐青のデータね!?」
フェンスにしがみつくことすら辛くなり、支えきれなくなった身体を監督に預

けた。
「打者別のリード、リードに対する投球、投球に対する打球の方向…」
(こんなことしかできないけど…)
「桐青の各打者の打席に立ち位置、見送った球、手を出したボールカウントと

手を出した球のコース、実際に打った球のコースと方向……」
(阿部くんの笑顔が見たいから…)
「スミマセン…ホームビデオだとストライクゾーン4つに区切るのがせーいっ

ぱいで…」
「十分だよ!ありがとお!ありがとお!!」
監督が抱きしめてくれた。
これが阿部くんだったらもっと幸せなのにな、なんて…
「花井君!阿部君!さっそくデータ解析するよ!田島君今日はブルペンね!」
「はいっ!!」
(頑張ってね…誰よりも、応援してるよ)
最終更新:2009年11月07日 13:25