2-364-370 カノルリ

最後の夏が終わった。
あの廉がいる西浦高校に、甲子園で戦って負けた2回戦。
心の底からおめでとうと言いたかったのに悔しくて、顔を上げられなかった。
こんな女々しいはずじゃあなかったのに。
俺って情けねー。
そんな悶々とした気分でグダグダと過ごしていた時、ふとあいつの顔が思い浮かんだ。
三橋瑠里。廉の従姉妹で俺の幼馴染。
あいつ、今頃何してんだろう…。

気が付いたら辺りは夜になっていた。いつのまにか昼寝してしまったらしい。
今日は両親も弟もいないんだ…傷心の息子を一人残していくなんて
冷たい家族だよなー。まあ、今日は独りになりたかったからいいんだけどさ。
腹減ったなァ。飯どうするか…と考えていた時にチャイムが鳴った。

「はい」
「…こんばんわ」
「三橋?」
「今日おじさん達いないって聞いたから。叶ご飯食べてないと思ってさ。
 これ、晩御飯の差し入れ」
「あーサンキュ。あがれば?」
「え?…うん、じゃあそうさせてもらう」


三橋はまるで自分の家のように迷いなく、うちの廊下を通って台所に辿り着いた。
当たり前だけど、こいつって俺の幼馴染なんだよな。
「うわー美味そう。これ三橋が作ったんじゃねーよな?」
「何よ。私が作ったらいけないの?文句があるなら食べなくて良いわよ」
「いやいや、ご苦労さん、いただきます」
「調子いいなあ、もう!」
あーこうやって顔を合わせるのも久しぶりだ。
ずっと野球漬けの生活だったし、俺は寮に入ってたし、うちは男女校舎違うからな。
幼馴染で、ずっと一緒で時が経ってもこいつとはずっと一緒にいると思ってた。
理由なんかなくて。でも時間は経過していくんだな。
目の前に座って黙々と飯を口にするこいつを見て、ずいぶん変わったと思う。
小さくて、華奢で。まあそれは昔から変わんねえか。雰囲気が大人っぽくなったな。
てかこいつってこんなに可愛かったっけ?うわ、俺何考えてるんだ!
急に恥ずかしくなって三橋から目を逸らす。
「あー美味いな、三橋って意外と料理上手かったんだな」
「意外とは余計!そうよ、あんたに食べさせる機会なかったけどさ」
「そか、ごちそうさん」


その後俺は何も言わずにソファーに移動して、テレビの電源を入れた。
ちょっとして三橋も隣に座って、あーお腹いっぱいなどと呟く。
数分して何か話題が無いかと考えていた時に、野球のニュースが流れてきた。
タイミングが良いのか悪いのか、アナウンサーが嬉々とした声で
西浦高校がまた1つ勝ってコマを進めたと伝えてきた。
俺は自分の夏が終わってしまった事をまた思い出して気分が暗くなり、
心の澱が重くなっていくのを感じていた。
そういやこいつ、何も言ってこないな。
いつもならドンマイドンマイ!とか背中の一つでもぶったたいてくるくせに。
「こいつらいいよなー。まだ試合やれるんだもんな。羨ましいよ」
「…」
「俺も終わりたくなかったな。しかも廉のチームに負けたんだからな…」
「…」
「情けねえよ、ホント」
「…」
「おい、何とか言えよ…俺これでも結構落ち込んでるんだぜ?」
「…」
何も言わない三橋の態度と俺の中にある焦燥感がぐちゃまぜになって苛立ってくる。
「…なんだよ、そうか、お前は廉の事応援してんだもんな。
 良かったなあ、大事な従兄弟が勝って」
「そんなんじゃないわよ」
「じゃあなんで黙ってんだよ!」
「だって!…だって叶さっきから空元気のような気がしたから!
 …無理やり元気になって、欲しくなかった…から」
「…っ」
「ごめん」
そうぽつりと言って三橋は心底悪かったとでも言うように俯いてしまった。
あー情けない自分。女にこんな顔させてバカだ。
自分のイライラをこいつにぶつけてしまった。何で俺ってこうなんだ。
「…わりい」ぽつりと聞こえるか聞こえないか程度の声が出た。
「俺、本当に悔しくてさ。あのちっちゃかった廉が、俺についてきてばかりだった廉が
 ああやってすごい投手になって成長して、俺のチームに勝ったんだからなあ…
 信じられないくらい悔しくてさ…」
それからは声にならなかった。
「叶」
「わりい、俺お前の前でこんな無様な姿さらしたくないんだけど」
そう言って三橋から背を向けたその瞬間、背中に暖かい感触を感じた。
それが震えながら抱きついてきた三橋だと理解するのに時間はかからなかった。
「…三橋?」
「ありきたりな慰めの言葉なんてかけたくないから…でも叶は格好良かった。
 私が保証するよ。誰にも、廉にだって負けてない位の投球してた!
 …私が好きな、大好きな叶だったよ」
ギュっと俺のTシャツにしがみ付いて、震えながら一言一言欲しい言葉をくれる三橋の事を、
俺は心から愛しいと思い、思わず振り返ってその華奢な体を抱きしめ返した。
言いたい事を言える幼馴染だとずっと思っていた。
でも本当は自分の気持ちを誤魔化していた。
好きだったんだ、三橋の事。こんな時に気が付くなんて。
「逃げないでくれ、三橋」
「かの」
反論の言葉を聞くまいと、三橋の唇を塞いだ。



ハァと軽く息をつき唇を離すと、二人の間に出来た隙間に糸を引いた唾液がぷつと切れて
三橋の顎に落ちていくのが見えた。三橋は苦しげに、だけどぼーっと上気した顔で俺を見つめている。
俺と三橋のどちらか分からない唾液に濡れた唇が艶っぽく光って
俺は理性の壁が崩壊していくのを感じながらもう一度深く口付けた。
右手で三橋の後頭部を押さえて、左手で彼女の顎から耳の付け根を押さえる。
息苦しさで僅かに開いた唇に舌を強引に捻じ込み、絡ませ、柔らかな舌の感触を味わった。
最初は戸惑い気味だったその舌もだんだんと官能の波に飲み込まれたかのように大胆になり
俺の舌に絡ませてくる。
まるでキスというよりもお互いを食べてしまうような錯覚に陥るような口付けだった。
舌は感覚器だとどこかで見たような気がするが本当にその通りだと思う。
俺はもう我慢が出来ないと後頭部を押さえていた右手を彼女の体に落としていく。
背中、わき腹、鎖骨にそして昔より膨らんだ胸に手を這わせるとびくっと体が震えた。
女の体ってこんなにやわらけーんだな。乱暴にしたら壊れちまいそうだ。
でも今の俺には優しくしようという気持ちよりも、三橋の全てが知りたいという気持ちの方が
勝っていた。
三橋の着ているキャミソールをたくし上げるとピンク色のブラジャーが現れて
その下に白い胸元が見えた。ブラジャーも無理矢理たくし上げようとしたら三橋が初めて声を上げた。
「わ、私がはずすから…」
「あ、ごめん」
我ながらマヌケな返答だ。
俯きながら後ろに手を向けてホックを外す三橋を凝視していた。
細い体だ。でも昔よりもずっと女らしい体つきでそそる。
「…叶も、脱いでよ。私だけじゃ恥ずかしいよ…」
「あ、うん、わりい」
何か俺さっきから謝ってばかりじゃねえ?



上も下も脱いでお互いに下だけ下着姿になる。俺はソファーに座りながら三橋の腕を引っ張って
向かい合わせになるように俺の膝に座らせた。
「や、こんな格好恥ずかしいよ…」
「俺しか見てないだろ」
肩甲骨に沿ってねっとりと舌を這わせ最後にきつく吸うと、鮮やかな朱の華が残った。
咲いたばかりの華をいとおしむように舌先で舐めまわし
柔らかな胸をまさぐれば、硬く立ち上がった頂点が指先に触れる。
ピンク色のソレを捏ね繰り回して、口に含むと三橋の体がしなった。
「はっ…ああ…」
まるで赤ん坊のように胸にむしゃぶりつき、先端を舌で弄って歯で軽く噛む。
その度に艶かしいけどか細い三橋の喘ぎ声が耳をくすぐって更に欲しくなる。
指が食い込むほどに強く胸をつかみ、わざと三橋から見えるように舌を出して乳首を舐る。
上目使いで三橋を見ると自分の胸を弄られる所を見ながら喘いでいる。
「や、かのう見ないでよ…!」
「見られてる方が興奮するんだろ?もうこっち濡れてるし…」
言いながら三橋の秘部に手を伸ばすと、下着の中心はもう蜜に濡れていた。
中心を何度か指で往復するとぐちゅぐちゅっと音がして膝立ちになっていた三橋は前のめりに倒れそうになる。
その両手を俺が座っているソファーの背中に置かせ、俺は無防備になった三橋の下着を
そろそろと下ろしていく。
三橋の快楽を表すように下着の中心と秘部の間に透明な糸が出来ていて、
ソレを見ただけで俺は自分でも抑えられないほどに興奮していた。
くるくると指を回して花芽を探り出しその一点を執拗になぶる一方で、三橋の口内を犯す。
しとどに濡れている蜜口に1本指をつぷっと挿入し指を曲げ、
指の腹全体ですりあげるように抽挿をくりかえせば三橋の声が上がる。
「ぁぁん!や、いや…」
「すっげー濡れてる…気持ちイイ?」
「ん…ぁあ…き、きもちいいよ叶…」
指の腹で三橋の中を這い回り、また抜き差しする。
イキそうになったら浅いところまで戻って蜜口の輪郭をなぞり、呼吸が落ち着いてきたらまた奥を滅茶苦茶にかき回す。
こぽっと音をたてて三橋の秘部から愛液がとろりと零れ、俺の掌全体に愛液がべったりと付いていやらしく光っている。
目の前で恍惚の表情を浮かべて目尻を潤ませる三橋に俺は我慢出来なくなり
俺は熱く猛った自分自身を取り出し、三橋の蜜口にすりつけた。
「いいか?痛いと思うけど、我慢してくれ」
「ん…だい、じょうぶ」
「三橋」
「ん…?どうしたの」
「…俺、お前が好きだったよ。ずっと。だからお前に最初の痛みを与える名誉を俺にくれ、瑠里」



細く白い体にいきなり突き入れる。わかってはいたけれどキツイ。
「んあああぁッ!いた…っい…」
三橋は俺の首に腕を回しながら耳の横に顔を埋めている。
痛いよな。どの位痛いかなんてわかりっこねーけど処女には辛いってのは知ってる。
ゆっくりと自身が飲み込まれていく感覚に理性を手放しそうになるけど
時折聞こえる辛さを我慢する声に、俺は自分の欲望よりもこいつの痛みに同調して
三橋の呼吸が落ち着くまでずっと背中を擦ってやりながら抱きしめた。
俺の首元に埋めていた顔がもぞもぞと動き、三橋が俺の顔を覗いてきた。
「か、のう」
「大丈夫、か?」
「ん、ちょっと辛いけど、へーき」
「それは良かった。動いても、平気か?」
「うん、あのね、叶、さっき…」
俯き加減で息を吐きながら一言一言確かめるように三橋がもらした。
「さっき名前で呼んでくれたよね…?初めて、だよね、名前で呼んでくれたの。
 私嬉しくて、痛くて辛いけど、そんな事どうでもよくって。嬉しい…修悟、好き…」
そう言ってぽろりと零れた涙は壮絶に綺麗で俺はなけなしの理性が瓦解するのを頭の隅で感じた。
考えるよりも先に三橋の腰をしっかり掴み、自身を奥まで突き入れた。
「んあ…あっ!修、悟」
「クッ…」
気持ちよさに全てを持っていかれそうになる。
俺は半開きになっている三橋の唇を強引に塞ぎ、舌で唇をこじ開け、口内を舐る。
対面座位の格好で腰を動かしながら、お互いの口周りがべちゃべちゃになるほどに唾液を交換する。
ぎりぎりまで引き抜きまた強く一気に突く。
その度に肌がぶつかり合う音と、三橋の喘ぎが耳を打つ。
自身の限界が近づいて来ると同時に、三橋の熱い蜜壷が激しく締めつけてきた。
「修悟、好き、だよ…!あ、ぁん!」
「俺も…ッ好きだ、瑠、里…!」
生まれてから呼ぶ事が無かった彼女の名前。
俺は目の前が真っ白になりながら今日で二度目になるその愛しい名前を叫び、爆ぜた。


ぐったりとした体を清めて、体をソファーに横たえる。
三橋がとろんとした目でこちらを伺いながら、俺の手をとり引っ張る。
うわ、と横になっている三橋の隣に倒れ転んだ。
寝そべりながら二人顔を見合わせて、気恥ずかしさに笑いあう。
「叶、さっきの言葉本当?」
「さっきのって?」
三橋は頬をぷうっと膨らませて顔を近づけてきた。
「私のこと、す、好きってアレよ、アレ!」
あまりに間近でんな恥ずかしい事言うなっつの!
「あーまあいきおいで…」
顔が赤くなるのを自覚しながら照れ隠しで言ってしまった。
「いきおいィィ!?」
「あ、いや嘘だって!叩くなよ!」
ああ髪の毛ひっぱるなよ、ハゲるだろ。
「わりいって。…好きだよ。何度も言わせんなよ、恥ずかしいんだから」
「しちゃった後に言うなんてもう、叶、言うの遅いよ!順番、逆だよ…」
目元を潤ませて見上げてくる三橋が可愛くて、俺はごめんと言いながらその唇にそっと触れた。
何度もおでこや目尻、頬に唇と顔中にキスをする。
本当はこのまま家に帰したくないけれど、そんなわけに行かないから抱きしめた体を放して開放した。
「もう遅いから、玄関まで送るから帰れよ」
「ん…」
二人でのろのろと廊下を歩く。当たり前だけど玄関なんてすぐに到着してしまう。
何か言わなければと思えば思うほど頭が混乱して。
「ね、叶」
「え?」
「叶の夏は終わっちゃったけど、私達はまだ始まったばっかりだよね?
 野球と同じくらい、大切にしていこうね」
そう言ってにっこりと微笑むから、言葉よりも先に抱きしめてた。
背中で手を組んで、離すもんかってきつく。
「あったりめーだろ。幼馴染はもう終わりだ。覚悟しとけよ」
「ん、覚悟、しとく」
そうして俺達はまた唇を重ねた。
苦しかった心の澱がするすると溶けていく。
俺の野球は終わってしまったけど、同じくらい大切にしたい事がスタートするんだ。
俺は野球と同じくらいこいつを大事にするって、心の中で誓った。


最終更新:2009年11月07日 14:39