4-118-133 タジチヨ


全く集中力のない田島に、思わずため息が出る。
「いくら推薦で大学行けたって、卒業できなきゃ意味ないんだよ?」

田島と千代は、中間テストに向けて、田島の家で一緒に勉強をしていた。
しかし、どうにも田島が真面目にやらない。
試合に出さないって言われたら、あっさり赤点クリアしたのに、
将来がかかった今はダメなんて、いかにも田島らしいというか…。

「だぁってさー。」
田島は頭の後ろで手を組んで、寄りかかっていたベッドに倒れる。
しばらく何か考えてたかと思うと、パッと起き上がって笑顔で千代を見た。
「じゃあさ、オレが問題1個解けるたびに、篠岡服脱いでよ!
そしたらオレ、超やる気出る!」
「はぁ?なに、バカなこと言って…。」
…本気だ。目が野球してる時と一緒だ。

「なーなー。いいじゃんよー!そしたらオレ頑張れるから!」
「いーや!」
千代はぷいっと横を向く。
困るのは自分なのに、いったい何を考えてるのか…。

田島の激しいお願いも、千代は断固として受け入れない。
しばらくそんなやりとりをしたかと思うと、田島は急にしゅんとなる。
「だってオレ、ほんとに集中力ねんだもん…。
自分の為だってわかってても、好きじゃないことってどうしても集中できない。
でも、好きな物の為ならオレ、頑張れるんだ。
今オレが1番好きなのは、篠岡だしさぁ…。」

不覚にもときめいて、千代は言葉に詰まった。
上手いこと言われても、ダメ、乗せられちゃダメ。
心で何度も繰り返す。
ちらっと田島を見ると、すがるような目で千代を見つめていた。
あぁ、もう…。その目で見られたら、どうしても言うこと聞きたくなる。

目を伏せて、無視を決め込んだ千代だが、
まだ自分を見つめてるだろう田島を想像して、ついに折れる。
「間違えたら、その倍服着るからね!」
結局田島の思うツボだ。
千代はため息をついたが、田島は両手を上げて喜んだ。

1時間ほど勉強を教えると、田島はものすごい勢いで吸収していく。
千代は半ば呆れながら感心した。
集中力さえあれば、この人できないことないんじゃ…。
「おっしゃー、いつでも来い!全裸にしてやるぜ!」
ほんとにそうなりそうだなぁ…。
千代は早くも自分の発言を後悔した。

「…正解。」
「イエー!」
あっという間に1問目をクリア。
なんであんなこと言っちゃったんだろう。今さら悔やんでも、もう遅い。
田島が期待いっぱいの目で千代を見る。
「うぅ…。」
千代は靴下を片方脱いだ。

「エー、片っぽずつ?」
「文句言うならやめるよ。」
「言わない言わない。逆に燃えて来たぜ!」

続く問題も正解され、もう片方の靴下を脱ぐ。
今着てるのは夏服だ。シャツとスカートの下は、下着のみ。
負けられない…。勝負ではないが。
千代はパラパラと問題集をめくり、難度の高い問題を出した。

「できたぁ!」
テーブルに叩きつけられたノートを見て唖然とする。正解だ。
なんなの?この人。千代は驚愕した。
「さ、上と下、どっちから行く?」
田島はにしし、と笑う。
エロガキめ!
千代は田島を睨んで、スカートのファスナーを下げた。

白いシャツでギリギリ下着が隠れる。
裸になるより、よほど恥ずかしい気がするのはなんでだろうか。
千代は、裾を出来る限り引っ張って正座した。
「さ、次来い!」
戦いはいよいよ白熱してきた。絶対解けないようなの出してやる!
完全に方向性を見失った勉強会は続く。

千代は真剣な目で問題を探す。田島もそれを真剣に見守る。
傍目に見たら完全にアホだが、2人は大真面目だ。
「よし、じゃあ次これ!」
ちょっとずるいかも知れないが、千代は自分も解けなかった問題を出した。
さすがに田島も唸って考え込む。
これで、服が2枚着られる。千代はホッと息をついた。

初めて優位に立って、千代は笑いながら秒読みをする。
「3、2、1、はい、終了~!」
ぱっとノートを取り上げ、答えを見る。
田島は頭を抱えたまま千代を見ていた。
笑っていた千代が顔色を失う。ほんとに、この人って何なの!?

「せ、正解…。」
「うしゃー!!」
千代が呟くように言うと、田島は膝立ちでガッツポーズをした。
ま、負けた…。がっくりとうなだれた千代の顔を、田島が覗き込む。
「さ、今度は?」
鬼!

服の上からブラジャーを外し、袖から抜き取る。田島がおお、と声を上げた。
「よーし、次の問題は?」
千代は、泣きそうな顔で田島を見る。
「もう無理。これ以上は恥ずかしいよぅ。」
泣きを入れると、田島がうーんと唸る。なぜ千代がお願いする立場なのか…。

「じゃあさ。」
千代は、声のする方に顔を向ける。
「次、正解したらさ、篠岡からキスして。」
うってかわって真面目な表情の田島に、千代はどきっとした。
「う、うん…。」
頷くと、いつもの顔で田島が笑う。
「約束な!よし来い!」

次の問題もあっけなく正解して、テーブルの向こうから田島が手招きをする。
千代は畳をゆっくりと膝で這って移動した。
「ん。」
田島が千代に向き直り、目を閉じる。
うわぁ、これは…。もしかして1番恥ずかしいかも…?

いつもは自分が先に目を瞑ってしまうから、あまりこういう顔は見たことがない。
低い鼻にはそばかす、意外と長い睫毛…。
田島の肩に手を乗せ、おずおずと顔を寄せる。
ちゅ、と唇が重なった時、急に田島に抱きすくめられた。

「あっ、あの…?」
「つかまえた。」
田島はにっと笑うと、千代の唇を強く奪った。
「ん…。」
「今日はずっとテーブル挟んで、篠岡に触れなかったから、すっげー触りたかったんだ。」
「た、じまくん、勉強は…?」
話す間にもキスをされて、言葉が途切れ途切れになる。

「オレ、篠岡がご褒美くれたら、なんでもできると思うな。」
「えぇ…?」
「だから残りの問題の分、前払いでちょーだい!」
そう言うと、シャツの上から千代の胸に触れた。

「乳首透けて見える。超エロイ。」
服の上から擦られ、すぐに乳首がプクンと勃ち上がる。
「触っていいなんて、言ってないよぉ。」
「でもダメとも言われてねーもん。」
田島が器用に左手でボタンを外しながら言う。

「エッチなんだから…。」
「ダメ?」
乳首をペロっと舐めながら、上目で千代の顔を見る。
「ダメじゃない、けど、ん…。」
田島は、わざとよく見えるように、舌を出す。
恥ずかしさと妙な興奮で、田島から目が離せない。

「すっげーやらしい顔してる。」
「やだ、もう…。」
千代が右手で顔を隠すと、その手を掴んで田島は言う。
「やらしい顔した篠岡も、大好き。」

千代をベッドに押し倒して、下着を脱がす。
シャツを1枚だけ羽織った姿が、裸よりいやらしく見える。
脚を開いた千代の隣に、田島が膝をついた。
手を伸ばして秘唇に触れると、ぬるりと指が滑る。
千代の腰が小さく跳ねた。

「ねぇ、篠岡もオナニーすんの?」
「え!?」
ふいに聞かれて、千代は思わず大きな声が出る。
「隠さなくてもいいじゃん。オレ、しょっちゅうしてるよ。」
「し、知ってるけど。」
突然の質問の意味がわからない。
いや、わかっているけど、わかってしまうわけにいかない。

「ねぇ、して見せてよ。どうすれば篠岡が気持ちいいのか知りたい。
そしたらオレ、もっと篠岡を気持ちよくしてあげられるよ。」
一気に顔が熱くなり、耳まで赤くなっているのが自分でもわかる。
「え、う。」
じっと目を見つめられると、何も考えられなくなる。
いつも言うなりになってしまう。
田島くんの目には、不思議な力があるんだ…。

視線を逸らすことが出来ず、唇からはぽろりと言葉がこぼれ落ちていく。
「やらしい奴だって、思わない…?」
赤い頬に田島の手が触れる。
「可愛い奴だって思う。」
そう言って田島は千代の頬にキスをした。

千代はおずおずと下に手を伸ばす。
田島が凝視しているのを感じて、恥ずかしさで体が熱くなる。
割れ目をなぞると、指にぬるぬるの粘液がまとわりついた。
もうこんなに濡れてたなんて…。

「田島くん、やっぱり恥ずかしいよ…。」
そう言うと、田島の手が、千代に目隠しをした。
「オレのことが見えるから恥ずかしんだよ。
ほら、目ぇ瞑って。いつも1人でする時みたいにしてみ?」

そんなわけないと思いながらも、視界を失うと不思議と恥ずかしさは薄れていく。
暗闇では逆に、見られているということがほんの少しの安心に繋がって、
たどたどしい指の動きは、徐々に大胆になっていった。
くちゅくちゅと小さな水音と、千代の息遣いだけが部屋に響く。

「田島くん…?」
千代の集中を妨げない為なのか。田島は答えない。
目を覆っている手は温かく、確かにそこに存在している。
「田島、くん。」
それなのに、返事がなくて不安になる。
「田島くん…。」

「いるよ。」
ふいに聞こえた声に、全ての感覚が反応した。
「篠岡のこと、ずっと見てるよ。」

ざわざわと体中の神経が騒ぎ出す。
千代は田島の声に追いたてられるように、指の動きを早めて行く。
「見てる、の?」
「見てるよ。」

見てる。見てる…。

「はぁ…っ。」
全身に電気が流れたように、千代は体を痙攣させた。
肌は粟立ち、うっすらと汗ばんでいる。
「…イッちゃった?」

田島が手をどけると、頬を染め、大きく息をしている千代の顔が現れた。
千代の瞳に、透明な涙の膜が張り、ゆらゆらと揺れて光る。
「恥ずかしい…。私、田島くんの前で、こんな。」
田島が千代の瞼にキスをすると、涙は小さな粒になってこぼれ落ちる。
「なんでさ?」
「だって、私、変態っぽい。」

田島が千代の手を取り、自らの硬くなった股間へ導く。
「それならオレも変態だよ。
篠岡のことが、可愛くて可愛くて、大好き過ぎてこうなるんだ。」
こぼれた涙を舌ですくい上げて「しょっぱい」と田島が笑うと、千代もつられて笑う。
「入れてもいい?」
千代は田島の肩に手を掛けると、来て、と小さく囁いた。

「はぁん…。」
待ち焦がれていたむず痒いような刺激に、思わず大きな声が出る。
自分の声に驚いて、千代が手で口を覆うと、田島がその手をベッドの上に抑え付けた。
「篠岡のやらしい声好き。もっと聞かせてよ。」
「だ、だって。あ、んっ。」

田島の動きに合わせて、押し出されるように声が止まらない。
「やだ、やだ。恥ずかし、いっ…。」
ベッドの軋む音と、粘膜の擦れ合う音。
それを打ち消すかのように、千代の甘い声が響く。

「あっ。田、島、くんっ…。」
「うん…?」
ゆっくりと出し入れを繰り返す、田島の腰の動きがもどかしくて、千代は田島にしがみつく。
「どうして欲しい?」
田島は相変わらずゆっくりと動き続ける。

「意地悪…。」
「意地悪なんかしないよ。篠岡のして欲しい通りにする。
言って?どうして欲しいのか。」
また田島はじっと千代を見ている。
千代のおねだりを引き出そうとしているのか、ゆっくり、ゆっくり、焦らすように動く。

「は…。う、ぅ。」
じれったさに耐え切れず、千代は手で顔を隠して囁いた。
「奥まで、入れて。もっと擦って…。」
その言葉を受けて、田島は一気に動きを早めた。
奥まで思い切り突き入れると、千代の声が一際大きく、甘くなる。
「あっ。あん!たじ、まくん、きもちぃ…!」
「オレも…。きもち、いっ。」

腰を打つ音が大きくなると、千代の声は逆に小さく掠れていった。
2人の触れ合った肌が、汗で滑り出す。
「篠岡、ごめん。オレ、イキそうだ。」
田島がしぼり出すような声で言った。
「う、んっ、来て。あっ、私、」

ベッドがガタガタと揺れて、千代の体も激しく揺さぶられる。
「わ、わたし、も、イッちゃう、よぉ…!」
「ダメだ!ごめん、イク!」

引き抜いたペニスから、精液が勢いよく飛び散った。
腹に、胸に、顔に、髪の毛に。
未だ痺れるような快感を残して、収縮する膣内。
その動きに合わせて、千代の体がピクンと震える。
千代は、肌に押し当てられたまま、律動を続ける田島の分身が、
大人しくなっていくのをじっと感じていた。

胸の上で、はぁはぁと息をつく田島の頭を撫でる。
汗で濡れた体の重みまで愛しく思う。
窓の外は、いつの間にか暗くなっていた。

「結局またこんなことしちゃって…。テスト勉強って言ったのに。」
「え?」
顔を上げた田島の頬っぺたを、ぎゅっと引っ張る。
「痛ーい。何すんだよぉ。」
田島は抗議の目を向けた。全く、大人なのか子供なのか。
ため息をつく千代の頬を、今度は田島がムニ、と引っ張った。

「なーなー、いい点取ったら、またご褒美くれる?」
田島は目を輝かせて千代を見た。
キラキラの瞳に、思わず笑いがこみ上げる。

ほんとにもう、この人って…。
「バカ…。」

可愛いんだから!






        • 後日談----



テストが返却された日、田島と千代は、昇降口で花井、水谷、栄口に会った。
腹減ったから、マック行こうぜ!
田島の案で、5人は駅前のマクドナルドへ向かう。
人数は少ないが、久々に部員達と集まって話すのは楽しい。
話はもちろんテストのことに。

「え、田島、赤点ないの?」
「ないよ!それどころか。」
田島がバッグの中から、答案を出す。
「げっ!」
3人は息を飲んだ。
「ナニコレ…。」
「94点、88点て…。あ、これも。」
「お前、いったいどんな手を。」
「篠岡に教えてもらったー!」

3人がいっせいに千代を見る。
「すげーな、篠岡。お前、教師とか向いてんじゃないの?」
「あは、いや…。」
どんな方法を使ったかは、決して言えない…。

「オレさー、篠岡が教えてくれれば、いっくらでもいい点取れそうだよ!
今から期末が楽しみだもんね!
とりあえず今日は、ご褒美にチンコ舐めてもらうんだ!」
言い終わらないうちに、千代が悲鳴をあげて、田島に飛び掛った。

…そりゃ、頑張れるはずだよな~。
花井達はそれぞれに、心の中で呟いた。






最終更新:2008年01月06日 19:51