4-160-169 カノルリ


「まだ、痛い…?」
叶の部屋のベッドの上で、裸のルリが小さく首を振る。
「ちょっとだけ…。最初に比べたら、全然痛くないよ。」

初めてセックスしてから2ヶ月。
今日で3回目になるが、依然ルリは体を強張らせていた。
途中まではかなりいい感じだったのに。
叶の愛撫に、花芯はたくさんの蜜を湛えて応えた。
額に浮いた汗や、ピンと張った足先なども、間違いなく快感の証しなのだろうが。
叶に組み敷かれ、いざ挿入となると、どうにもルリが硬く緊張してしまう。

もちろんルリは叶を拒まない。
華奢な体で懸命に痛みに耐え、叶を受け入れる。
叶は気持ち良さの中にも、どうしてもルリを可哀想に思う気持ちと、
身勝手な自分への怒りが湧いてしまう。

「ごめんな。」
頬にキスをすると、ルリが微笑む。
「叶は?気持ちいい?」
「メチャクチャ気持ちいいよ。こんなにお前が痛がってんのに、
それでもやりたくなっちゃうくらい…。ほんと、鬼でごめん。」

「大好き。」
そう言って、ルリは叶の前髪をかきあげる。
「ね、叶の好きなように動いて。私は叶の気持ちいい顔が見たい。」
ゆっくりと動きを再開すると、ルリの表情が一瞬歪む。
やっぱ、痛いんじゃん。オレも、お前の気持ちいい顔が見たいよ。
切なくて、気持ちよくて。複雑な感情を抱えたまま、叶は目を閉じて果てた。

「え、まじすか。」

「そうなの。ルリ熱出ちゃってね。今日はお休みなの。」
朝、玄関を出たところで、ちょうど新聞を取りに来たルリの母に会った。
ルリが昨日から熱を出しているという。
「風邪…とか?」
「うーん。風邪って感じじゃないみたいだけど。」

具合わりぃんだ…。
2階のルリの部屋を見上げる。様子が気になる…、が。
「ほら、修ちゃん、遅刻するよ。行っといで!」
「あ、行ってきます!」
ルリの母に送り出されて、叶は駆け出した。

『お前、熱出して休んだんだって?大丈夫かよ?』
学校からメールをする。返事が来たのは昼休みだった。

『大丈夫だよ。寝てれば治る。』
『練習終わったら寄るよ。なんか買ってってやろうか?』
『わーい。アイスが欲しい。』

なんとなく元気そうな内容にホッとしたが、早く会いたくて仕方ない。
練習が終わると、大急ぎでシャワーを浴び、走り出す。
コンビニでアイスを買って、ルリの家に着いたのは9時半だった。


ルリの母に通され部屋に入ると、ベッドにちょこんと座ったルリがいる。
起きてられるくらいなのか。安心して息をつく。
「ほいお見舞い。どうしたんだよ、大丈夫か?」
「なんだろ。熱出ただけなの。」

ふと、ルリの髪が濡れてることに気づく。
汗…にしちゃ濡れすぎだ。
「お前、風呂入ったろ?寝てなきゃダメじゃんか。」
叶がルリを睨む。
「だってぇ。汗かいて気持ち悪かったんだもん。…叶、来るってゆーしさ。」

叶はドレッサーに置いてあるドライヤーを持って来て、ベッドに腰掛ける。
「ほら、こっち来い。」
そう言うと、ルリを膝の中に抱くように座らせ、髪に温かい風を当てる。
「ふふ。気持ちいーい。美容院みたい。」
ルリは笑う。
のんきなやつ。でも元気そうで良かった。

細くてふわふわの髪はあっという間に乾いた。
ブラシでとかしてやると、部屋の照明が反射して、艶やかな光の輪が映る。
叶がルリの頭にチュッとキスをすると、ルリが驚いて振り向く。
目は熱のせいか潤んでいて、なんだかへんに色っぽい。
後ろから抱きすくめて、唇を奪う。
抱きしめた体も、重なった唇も、いつもより熱かった。


「んん…。」
舌を入れると、小さく開いたルリの唇から、甘い声が漏れる。
その声は、叶の下半身を刺激した。
「あ…。」
ルリが目を見開く。
やべ…。勃っちゃった…。
ルリの小さくて丸い尻に、大きくなったペニスが押し付けられた。

「ごめん…。」
叶が気まずそうに下を向く。
「お前、熱あってたいへんなのに、オレやらしいことばっか…。
まじでヤんなる…。ごめん。」
ルリの大きな目にじっと見られてることに気づき、叶は目を伏せた。

「叶は…。」
ルリの声に叶が目線を戻すと、相変わらず大きな目が見つめている。

「叶は私が好きだから、こうなるんだよね?
好きだから、私を欲しいって思ってくれてるんでしょう?
私も叶が好き。
だから、私を求めてくれるのは、嬉しいし、私だって叶と抱き合いたい、よ。」
熱で赤い頬を、さらに赤く染め、ルリは呟く。
叶はルリを思い切り抱きしめた。


後ろからパジャマの裾に手を入れて胸に触れる。
どこもかしこも熱い。
「お前、けっこう熱ありそうだよ。やめる?」
叶は優しく肌を撫でながら言う。

ちょっとずるい言い方だな、と思う。
ルリが拒まないのをわかった上で、相手思いやったふりをしてる。
オレって、ヤナヤツだな…。少しだけ、自己嫌悪に陥る。
服から手を抜こうとした時、ルリが小さく呟いた。

「やめちゃ、や…。」
ルリは振り返り、肩越しに叶を見つめた。
叶は目を見開いてルリを見返す。

いつものルリなら言わないだろう言葉は、熱に浮かされたためかもしれない。
それでも、その甘い響きは、叶の心と体を強く揺さぶった。
「じゃ、やめない。途中でヤダって言っても、絶対やめてやんないから。」
「言わないもん。」
ルリは目を閉じた。

乳首を摘み、指で擦りながら、耳に唇を押し当て囁く。
「気持ちいい…?」
叶の腕に添えられた、ルリの指に力が入る。
「なぁ、言えよ。」
重ねて言うと、聞き取れないくらいの声で答える。
「きもちぃ…。」

右手をそっと下ろし、下着の中に手を入れる。
「濡れてる。」
「もう、そういうこと言わないでって…。」
割れ目を撫でると、トロトロの粘液が溢れ出した。
「うっわ、すげ…。」
指を動かすと、布越しにもはっきりとわかるほど水音がする。

「やらしーなぁ…。」
濡れた指が小さな突起に触れると、ルリの体がピクッと跳ねる。
押しつぶすように撫でると、カタく膨らんできた。
「…あっ。」
今まで抑えていた声が漏れる。
「コレ、気持ちいいんだ?」
「う、ん…。」
素直に答えるルリが、可愛くて仕方ない。

クリトリスを執拗に擦り続けると、ルリの体がぶるぶると震え出した。
ぎゅっと閉じた太腿が汗で湿ってくる。
「や、なん、か…。」
ルリの全身に力が入り、叶の腕を掴んだ指が食い込む。
「イキそう…?」
ルリは首を横に振る。
「わかんない…。あ、わかんな、いっ。」
叶の腕の中で、ルリの体がビクビクと痙攣する。
熱い体はより熱くなり、ルリはくたっと力を失った。


横たえたルリのパジャマのズボンと下着を一緒に脱がす。
秘裂を探ると、ぱっくりと口を開け、叶の指を簡単に飲み込んでいく。
「はぁ…っ。」
ルリが身をよじる。
視界に飛び込むダイレクトな刺激に、張り詰めた股間が痛くなった。
叶は服を脱ごうとしてはたと気づく。
あ、コンドームがない…。

どうしようかと考えていると、半裸のルリが起き上がる。
「どうしたの…?」
はだけたパジャマのシャツから、小さな胸の膨らみが覗く。
下は裸で、今まで散々弄ったところから、透明の雫が垂れている。
扇情的な眺めだった。

「ごめん、今ゴムがない。」
おあずけかぁ。叶はふっと小さく息を吐く。
「ないと、ダメ?」
「いや、ダメって…、ダメだろ?」
予想外の返事に、叶は驚いてルリを見た。
「でも、私、叶としたい…。
私はいつも叶となら、赤ちゃんできてもいいと思ってしてるけど…、叶はいや?」
「え。」

普段ならこんなこと言うわけない。これも熱のせいなんだろうか。
ルリの気持ちの強さに少しだけ怖さを感じる。
でもそれ以上に嬉しくてたまらなかった。
「いやなわけないだろ?オレだってそうだよ。」
叶はルリを強く抱きしめてキスをした。

ゆっくりと挿入すると、いつもと全く違った感触に包まれる。
「うわ、やべ、メチャクチャ気持ちいい…。」
「ほんと?うれし…。」
気を抜くと、一瞬でイッてしまいそうなほどの気持ちよさ。
色々とどうでもいいことを考えて、気を紛らわすが、効果なんてあるわけない。
ルリの小さな喘ぎが、耳をくすぐる。

「修悟ぉ…。」
不意打ちで呼ばれた名前に、意識は一気にルリに集中する。
熱のためか、やたらと熱いルリの膣内。
やわやわと優しく締め付けてくるそれに、射精感はぐっと高まった。
「ルリ、ごめん。オレ、早くもイキそう…。」
叶の顔を伝った汗が、ルリの胸に落ちる。
「ヤダぁ…。まだ、イッちゃ、ダメ…。」

「えっ…。」
ルリは泣きそうな顔で叶を見る。
「まだ、イッちゃ、や…。もっとして…。」
初めての言葉に、叶は背筋がゾクゾクと痺れた。
激しく腰を打ち付けると、ルリの唇から蕩けそうな甘い声が漏れる。
「修、悟。あっ…。きもち、ぃ…。」
「オレ、も、気持ちいいよ…。」

耳に響くルリの声が徐々に大きくなっていく。
もっと聞いていたいが、いくら大きいこの家でもこれじゃ誰かに聞こえてしまう。
深くキスをすると、ルリから舌を絡めてきた。
腰を突き上げると、くぐもった喘ぎが漏れる。

「も、限界。イクよ。」
叶は乱れた息で、ルリの耳元に囁いた。

「…中に。」
ルリは上気した顔で言う。
「中に、出して…。」
「ルリ…。」

蕩けそうな快感に、叶は目を瞑る。
「あっ…。」
「う、イク…。」
一番奥まで突き上げて、そのまま思い切り放出する。
熱い精液が、ルリの子宮口を激しく叩いた。

「あ、生理きた。」
拭ったティッシュに精液と血が滲む。
「なんだ、だから熱出たのかな。残念、これじゃ赤ちゃん出来ないね。」

ちょっとだけ安心して、叶の肩の力が抜けたのを、ルリは見逃さなかった。
「あ、ホッとしてるぅ。」
ルリが叶の顔を覗き込んで笑う。
「そんなことねーよ。」

まぁ、ホッとしたのはほんとかも知れないけど、でも。
子供なんか出来てなくたって、オレはお前とずっと一緒にいたいよ。
そう言おうとして振り向くと、ナプキンをカサカサと取り出すルリと目が合う。
「あっち向いててよぅ。」
叶は怒られて、慌ててくるりと背を向けた。

疲れたのか、薬が効いて来たのか。
着替えを終えてベッドに横になると、ルリはすぐに寝息をたて始めた。
熱が上がってしまっただろうか?
叶は汗で額に張り付いたルリの前髪を拭う。

子供みてぇ。叶は笑った。
ふと見ると、ガラスのテーブルの上には、来た時のままのコンビニのビニール袋がある。
夢中になっている間に、アイスは溶けてしまった。

あーあ…。
叶は苦笑いをすると、ルリの額にキスをして、立ち上がる。
もう1回、コンビニ行って来っかな。

眠るルリの顔を見つめたあと、叶は静かにドアを閉めた。





最終更新:2008年01月06日 19:51