2-598-633 ハナモモ

好きな人がいる。

意志の強さを表して、いつもハッキリと開かれている睫毛の長い印象的な眼。
俺たちを叱咤激励し、時に驚くほど優しく柔らかく伸びやかな声。
まっすぐに伸ばされ、手入れの行き届いたツヤツヤの長い黒髪。
身体能力の高さの割に、信じられないほど女性的な造形の肢体。
襟首から覗く、華奢な鎖骨。しなやかな腰のライン。
肌理の細かい肌。負けん気の強そうな鼻。
柔らかそうな唇。長く細く美しい指。
すれ違いざま、ほのかに鼻腔を掠める甘い香り。

俺には、好きな人が、いる。




「お前らまっすぐ帰れよ〜。お疲れー」
「花井はまだ帰んないのー?」
「部誌書いてから、な。俺だって腹減ったしもう帰りてェよ」
「はは、キャプテンは大変ですねー!じゃ、お先ー」
いつものように部活が終わり、ぞろぞろと皆帰宅の途につく。
最後になった田島と水谷と言葉を交わした。時間は20時半を回っていた。
連日のハードな練習でクタクタに疲れていたし、早く書いてしまって帰ろうと思っていた。
今日の練習のこととか、考える。俺も田島みたいに思ったところにヒット打てるようになりてえ。

それから。
それから、今日もあんまりあの人と、話せなかったな。はぁ。
タイミングないし。大体、何話したらいいかわかんねえ。でも、大好きなあの人の、声が聞きたい。


そのとき、ガチャリと部室のドアが開いた。
もう皆帰ったと思っていたので、少し驚いて顔を上げる。

「あれーまだ残ってたんだ、花井君」
たった今、思い浮かべてた人の登場に、異常に動揺する、俺。
「ぉあッ、監督!お疲れ様っす。 部誌ッ…書いちゃおうと思って」
「そっかそっか。後でじっくり読ませてもらうわー」




監督はそう言って、俺の向かいのパイプ椅子にぎしりと腰をかける。
俺は既に着替え終わっていたが、監督はまだジャージ姿のままだった。

彼女は、座ったまま上着を脱ぎ、Tシャツ姿になった。そして束ねていた髪を解く。
ハリのある髪が、結っていた跡も残さずにさらさらと肩に流れる。
見惚れてしまう。何度、あの髪に触れたいと思ったことだろう。
ペットボトルのお茶を飲みほし、ぐっと腕だけで伸びをしている。
「んぅ〜ッ!今日も頑張った!」
彼女は…すごくリラックスしている。

それに比べ俺は。思わぬ状況に嬉しいやら緊張やらでじっとりと変な汗をかいていた。
2人っきり…か。初めてだ。くそ、どうしていいかわかんねぇ。
うぅ。嬉しいけどなんか所在無い。話したい、けど。
今だったら、彼女が話す言葉は、俺だけに向けられるのに。
彼女と近い距離にいられるのは、とても嬉しいのに。
色々と考えていて、顔が赤くなっていくのを感じた。
それにしても何で帰らないんだろう?もう夜遅いし、監督だって疲れてるだろう。
あっ、そうか。俺が残っていたんじゃ着替えができないんだ。

着替え…着替え、かぁ。監督の着替え。
頭の中が、モヤモヤとピンク色に染まり始める。
つーかTシャツだと、胸の大きさが余計に強調されてるなァ、、、
細いのに胸大きいからだろうな、胸のあたりの布がぴんと張ってる。
ほんと何カップあんだろう。あんなすごいの見たことねェよ。
う、やべ。下に反応でちまう。落ち着け、落ち着け。





いやいや。何考えてるんだ俺は。危ねー!早く書き上げないと。

あたふたしているのが伝わったのか、クスリと笑われた。うぅ。恥かしい。
「急がなくていいよ、今日は夜のバイトないし。ゆっくり書いて」
「あ、すんません…もう、できるんで」
2人きりという状況にドキドキしてしまってなかなか進まなかったけど、なんとか終わらせた。
それを渡すために立ち上がり、監督の横に行く。

監督の手がスッと伸ばされ、俺の腹のあたりに触れた。体がビクリと跳ねる。
監督の、手が。俺の…!わぁあぁ。
「花井君は、今、何キロ?体重」
唐突な質問に、返事がぎこちなくなる。体重?
「あ、え?…っと、67っすけど」
「う〜ん。長身なんだし、もうちょっと付けたほうがいいかなァ。目指せ70キロ代!」
びしっと人差し指を立て、言った。
「おす。牛乳とプロテインで頑張ります!」
「うんうん。まだまだこれから皆で体つくっていこうね!」
「っす。部のやつらみんな俺より細いですしね。背も小さいし…」
それから最近の部の様子で気づいたこととか、勉強のほうはどうかとか、
そんな他愛のない質問をされる。
部のこととはいえ、いつもより沢山話せて、すげー。ホントに嬉しい。
監督はずっとニコニコとしている。あぁ、幸せだ。
練習中は厳しい表情の彼女が、たまにこうしてフワリと笑うのを見るのが大好きだ。
俺より7つも上なのに、なんていうか。すげぇ可愛いな、とか思う。
好きな人とこうやって2人きりになれるなら、毎日でも残りたい。
てか今日残っててよかった!GJ俺。





「ほかの部も大体帰ったみたいだね、静かだねー」
「そうっすね、もう遅いですしね」
辺りはしんと静まりかえっている。
その静寂は、部室に2人きり、ということをまた変に意識させてくる。
手を伸ばせば届く距離に彼女がいると思うと、またドキドキと心臓が踊りだす。
睫毛が、頬に影をつくっている。化粧は濃くないけど、きちんと施されたそれに見入る。
変わらず部についての雑談は、続けていたが。本当は。
本当は、休みの日何をしているのかとか。彼女のプライベートについて聞いてみたい。
彼女は驚くほど私生活について話さないので、監督以外の彼女を知らない。

…彼氏はいるのか。とか。

そりゃいる…よな。いない方が変だ。モテるんだろうな。想像しただけで心臓がぎゅっとなる。
俺はずっと好きなのに。言えないけど。言う勇気、ないけど。
それとも、バイトや部で忙しいだろうから、やっぱいないかな?
おっと。待て待て。いなかったとしても。どうするっていうんだよ。いやどうもしない、、つーかできないけどさ。
でも…聞くくらいなら、いいかな?さりげなく。う〜ん。どうやって聞くんだよ。

監督が着替えている間、部室の外でそんなことをぐるぐると考えていた。
程なくして着替え終わった監督が、荷物を持って出てくる。
普段あまり私服を見ることはないので、それはとても新鮮に感じた。
シンプルな白いカットソーと、足のラインがはっきり出るインディゴのスキニーデニム。
きれいなブルーの、少し高めのヒールのパンプス。やっぱ、めちゃくちゃスタイル、いいよな。
同年代の女の子達とは違う、大人の雰囲気にドキリとする。
髪をかきあげる仕草。
匂いたつ色香に眩暈がしそうだった。






一緒に鍵を返しに行く。並んで歩く。返し終わると、また駐輪場まで。
その間も、雑談は続けられていた。
でも本当に聞きたいことは聞けるわけもなく。
「監督、帰りひとりで危なくないっすか?もう遅いし」
「あはは。ありがとう。大丈夫、いっつもなんだかんだでこのくらいの時間になっちゃうし」

あ、今だ。ここで探りを、入れてみるか?頑張れ俺。自然に。自然に…

「彼氏、とかが、迎えにきてくれたりとか。しないんすか」

「彼氏?そんなのいないいない!バイトと野球部で全然それどころじゃないよ!」


……!いないって言った?今、言った、よな。

「あ、そ、そっすか。変な質問してすんません。バイト、お疲れ様です」
声が裏返ってはいなかっただろうか。
「それに、あたし原チャリだし。1人で大丈夫だよ。じゃ、花井君も気をつけて帰るんだよー!
明日も朝早いからゆっくり寝てねー。」
そう言って、監督はあっさりと先に行ってしまった。

俺はそこで叫び声をあげてしまいそうなほど、嬉しくて嬉しくて。1人大きくガッツポーズをした。



自分の部屋に入るなり、俺はベッドに倒れこんだ。
さっきの言葉を思い返す。彼氏、いないのか。そっか…。いないんだ。
うー!やった!別に監督までの距離が縮まったわけじゃないけど。
告白。その2文字が頭をよぎる。
でも、監督と部員なんて。もし、もしも万が一にも、、うまくいったとして。
隠れて付き合ったとして。それがバレたら…?
試合出場停止くらいじゃ済まないだろうな。監督もやめさせられるだろう。皆に迷惑がかかる。
いやいや先走りすぎだろ…
悶々と思いが巡る。
目を瞑る。
とにかく、だ。監督の笑顔がハッキリと浮かぶ。今日の監督、すっげえ可愛かったな。うん。




それから…間近で見た、薄着の彼女の、柔らかそうな体。いい匂い、したよな。
私服姿、キレーだった。服、Vネックだったな。横を歩く監督は、ヒールのせいで背が高くなっているとはいえ、俺の方がやっぱりだいぶでかい。見下ろすような形になって。
俺の好きな、あの華奢な鎖骨。あの骨の窪みに、痛いほどに性的な魅力を感じる。
それから、それから。少しだけ谷間が、見えた。俺の手で掴んでも、なお余るであろう大きな胸。

帰り道、ピンクのモヤモヤはとっくに俺の頭を占領していて。自転車を漕ぎながら、ズボンとパンツの布地はありえないほど自身を刺激していた。ややもすれば勃ちあがろうとするそれと闘いながら、やっとの思いで、たどり着いた。

前に一度、監督に手をぎゅっと握られたことがあった。俺がキャプテンになったばかりの頃だ。
『花井君!もっともっと、いいチームにしていこうね!』そう言って。
思えばあの時から、好きになっていたんだ。手を握られたくらいで。あまりに即物的な自分。
けど、あれからというも毎日毎日、野球のことか、監督のことしか考えられないんだ。
熱病みたいに、そればっかりなんだ。
好きだ。すごく。どうしようもなく。
その時の手の感覚を、必死に思い出す。柔らかくって、少し湿っていて。
その生温かさが、たまらなかった。あの手で、俺の体全部を、触られてみたい。



彼女の手の感覚を思い出すと、我慢できずに忙しなくベルトのバックルを外す。






体つきが…いやらしすぎる。あのムチムチとした肉感的な体。


童貞には刺激が強いんだ。
部員皆が〔そういう〕目で見てる。
よく話題にもあがる。
まだ部の中のほとんど(っていうかたぶん全員?)が、セックスなんてしたことがないだろう。
皆、野球野球と中高を過ごしてきたせいで、女の子と付き合ってみたりしても、可愛らしいもので。

前、田島が、「モモカンって超イイ体してるよなぁ。ばっちりオカズにしてる!」
と堂々と皆の前で言い放ったことがある。
三橋も栄口も顔を赤らめていた。水谷も泉も、あのクールな阿部や巣山だって。男同士特有の、下品な話題。
「乳すげぇよな!?あれなんでもできっぜ!」「経験豊富そうだよなァ、俺もお願いしてェー」
「夜のバイトって何かな?やっぱアッチ系?」「頼んだらやらせてくれっかな」
「みんなで輪姦すトコとか想像したら燃える!」そして、笑い声。
やめろ、やめてくれ!彼女に、そんな。冗談とはわかっていても、たまらない。
そんな時俺は、「部のためにバイトまでしてくれてる監督だろうが!いい加減にしろ」
とか何とか言って周りをしらけさせる。早くその話題が終わらないか、じりじりしている。
嫌だった。
俺にそんなことを言う権利もなにもないが、好きな人が、他の男の性欲の対象にされていること。
そのことを考えると、どす黒い気持ちで一杯になる。

皆が、〔そういう〕、汚い、欲にまみれた目で、彼女を。

くそっ!





あの綺麗な鎖骨の窪みに舌を這わせて。白いデコルテに赤い痕を散らせてみたい。
まだ見たことのないその太ももや、その付け根に続くところ。恥かしさに歪んだ表情を。

思い浮かべて、手の動きを早くする。

監督、一体、どんなセックスをする?
どんな声で、感じる?
今まで、一体何人に、その体を見せてきた?ねえ。
全部、欲しい。心も、体も。俺のものにしてみたい。
でも、俺は、俺は。
それだけじゃない。そんなんじゃないんだ。あいつらとは違うんだ。この気持ちは。
こんなに好きだ。一度でいい、全部を、俺に。俺に、くれよ!

…結局、俺も、他の奴らと同じなのか。やらしい想像して、こんな風に。
ちくしょう、ちくしょう。

伝えられない想いがもどかしくて、持て余してモヤモヤだけが積もってく。どうしたらいいんだ?
どこに向ければ。苦しい。苦しい。気持ちは涙になって溢れる。止まらない。たまらないんだ。
枕元の箱から白く薄い紙を何枚も引き抜く。
「はぁ…ッ 監督、かんと…く。…好き、だ」
好きだと、言葉にすると、それはどんどんこぼれ落ちて、涙と一緒に枕に吸い込まれ、滲みる。
「好き、…ぅっ、ぐ、好きだッ、好き…だ!……ま、りあ、」
16歳の若い俺の欲望は、毎日限界まで張り詰める。どうしようもないんだ。こうするしかないんだ。

俺は、思いが伝わるはずのない相手を、いつもの様に頭の中でめちゃくちゃに弄んで、果てた。


もう、何ヶ月も、何ヶ月も。こんなことを。
吐き出しきった後、見つめるこの手には、プライドさえ残らない。俺は耐えられず嗚咽を漏らす。







それからというもの、いつも以上に監督に目を奪われる。

告白、しようか。
してみようか。
想いを、伝えてみようか。
…いや。そんなことをしたら、どちらにせよ周りに迷惑がかかる。

最近の俺は、監督の姿が目に入っただけで、体が熱くなり、目頭が熱くなる。
正直野球どころではない。気持ちを押えつけて、平然と振舞うのに必死だ。

そして前のように、俺が部誌を書いていると、監督が遅れて部室に着て、一緒に帰るということが
何度もあった。俺はそのひと時のために、学校へ行き、部活をしていた。
俺の体を気遣ってくれたり、時にマッサージをしてくれたり。
いつ、暴走してしまうかわからなかった。
俺の気持ちは日に日に腫れ上がっていく。
大きく熱く成長したそれは、少し突付いただけでもトロリとした膿が溢れ出しそうだ。


監督も、もしかしたら。俺を。
そんな淡い期待すら覚えだした。

そこまでいかなくても、少なくとも、普通の部員よりは、気に入られている、と確信している。
なんて想っていたそんなある日のこと。


全てを変える事件が怒った。






部活が始まる直前、部室で皆いそいそと着替えをしているときだった。
同じクラスの水谷が、ちょんちょんと突付いてきた。

「?んだよ」
「ねェねェ。最近なんか部活後付き合い悪くない?残って何やってんのぉー?」
間延びした、人をなめたような喋り方に、イラッとした。
「何って、部誌書いたりとか…色々」
なるべく感情を出さないように、淡々と話す。
「フーン。色々、ね〜?」
なんなんだコイツは。

この水谷という男は、部の中でも一番チャラけていて、それがたまに本気でイライラするんだ。
いかにも女たらし、という風体で。茶髪の髪を伸ばし、服装にも人一倍気を遣っている。
そんなヒマがあったら、もっと練習しろ、と言いたい。

「なーんかー。俺気づいちゃったんだケド、花井が残るときってェ
大抵モモカンも残ってるよね〜?」
「そらたまたま一緒になる時もあっけど…」

嘘だ。俺がわざと狙って。2人の時間を過ごしたくて。
野球野球、生活のほとんどを部活動に費やしている高校生。色恋沙汰の話に飢えているのはわかる。
しかしこの気持ち悪い笑いをたたえた水谷は、俺の神経をざりざりと逆撫でていく。
まただ。大体言わんとしていることはわかっている。どうせまた、いつもの。下ネタ…

「なァー、それってさぁ?も・し・か・し・て」
「んだよ。何が言いてえんだ? うぜえ」
ニヤニヤしている水谷に、怒りが込み上げる。
握った拳に、ぎり、と力が篭る。

「エー。だってーあの体と2人きりってー ヤバくね?健全な男子高校性としてはぁ
 俺なら!絶対ぇ無理やり〜写真とかで脅してェ 笑」
胃がムカムカする。何ヘラヘラ笑ってんだ。気持ち悪い。
監督を、そんな風に言うなって、何度も言ってるじゃねえか。なのに。
食いしばり過ぎて奥歯が痛い。怒りで顔に血が集まってくるのがわかる。吐き気すら覚える。
痛い程に握り込んだ拳。爪が刺さる。痛い。





水谷は可笑しくてたまらない、といった様子で続ける。

「ぶっちゃけさァ、モモカンってー、監督よりィ、俺らの性欲処理に貢献しろよ!って感じしねぇ?」

やめろ。

「監督より前に、女ってて時点でさぁ。あの乳、マジで襲ってくれって言ってるようなもんじゃん 笑」

やめろ!やめてくれ!!

「そのクセ意外とガード固ぇとかな。マジしけるんだけど 笑」

カラカラと笑う。

監督。性欲。処理。
脳に強い閃光が走る感覚。
プツンと、頭の中で何かが切れる音がした。

「あ、てかさァ〜花井、もしヤリ飽きたらァ、俺らにまわし………ッ!」



バキッ。





言い終わるか終わらないかの瞬間、彼の頬は怒り心頭の拳に捕まり、酷く嫌な音をたてた。

見事にパンチを喰らった水谷は一気に壁際まで吹っ飛び、ドスッと叩きつけられる。

頭の中が真っ白になった。生まれてからこれまで、怒りにまかせて人を殴りつけたのは初めてだ。
ツカツカと近づき胸倉を掴む。水谷は恐怖で瞬時に頭を抱える。
が、力一杯、その腕ごと再度殴る。
「てめえ、」

その一瞬の出来事に、空気が凍る。それでも熱く怒りがたぎっている俺は、更に水谷の髪を掴む。
他のチームメイトがハッとして血相を変え、俺を後ろからガシッと拘束する。俺たちの会話は皆には聞こえていなかったようだ。
「花井!!」
巣山に羽交い絞めにされ、拳が水谷へ届かない。じゃあ蹴り上げてやる、と足を出すも、阿部が飛び出てきて足も押えつけられる。

「ちょッ…!何やってんだ!!」

「どいてろ!!離せッ!!!」

水谷は何が起こったのかわからない、という風に、呆然と頬を押さえて壁際に尻餅をついている。
派手に鼻血が出ており、一言も発せない。血はボタボタと遠慮なく落ち、
水谷の着たばかりの練習着の白が、真っ赤な鮮血の染みをじわじわと増やしていく。

「ど、したんだよ、何してんだよ!お前!?」
「キャプテンだろうが!こんな、!!」





我に返る。
キャプテン。

俺は。キャプテンだ。西浦高校の。
10人しかいない野球部の。

1人を、殴った。暴力事件を。起こしてしまった。



部室のドアが、勢いよく開かれる。

水を打ったように、シィン…とする室内。
入ってきたのは、俺の大声を聞きつけた監督、だった。






水谷は、
「普通に話してたら、花井が!いきなり!!」
と涙ながらに言い残し、
西広が自分と彼の分の荷物を抱え、保健室へ行った。

俺は、壁際で水谷が畳の上に溢した血を、ただ呆然と眺めていた。
俺は。何を。

あわあわと、三橋が声にならない声を出し慌てているのが見える。
阿部や巣山や栄口は、ケダモノでも見るような冷ややかな目で俺を見つめている。

田島が、何の熱も篭っていない声で言い放った。
「…花井。お前、見損なったよ。何があっても、殴るのは最低だ」
「三橋、帰るぞ」
すごい速さで練習着を脱ぎ、三橋を引き摺りながら部室を出て行った。

「何も知らない。特にでかい口論とかもなかった。気づいたらいきなり、花井が殴ってました」
そう言い残し、阿部たちもすぐに部室を出て行く。



俺と。監督。2人だけになった。
ドアに背を向けているため、監督の表情はわからない。ピンと張り詰めた空気だけが、ある。
俺は相変わらず畳みに染み込みつつある血から目を離せず、
フワフワとした思考の中で立ち尽くしていた。






重い重い沈黙。
1歩も動くことができず、ぐるぐると回る頭の中。


「…花井君」
どのくらい時間が経ったか。
監督が口を開いた。
体がビクリと震える。


「花井君!」

「…は、い」

口の中がカラカラに乾いていて、やっと押し出したその声は、ひどく掠れている。

「これがどういうことになるか、わかるよね?」
「は…ッ」

試合出場停止。恐れていた言葉が頭をよぎる。

俺は、ただ。
あんたが、ひどく言われてるのが耐えられなかったんだ。
こんなに野球が好きで、精一杯頑張ってくれているあんたが。あんなふうに辱められるのが。

監督がそんなやりとりがあったことなど、知る由もなく。

「何があったか、わからないけど。腕力に訴えた方が。絶対に、悪い」
「あ…あ。違……オレ、」

うまく、言葉に、できない。

俺はあんたが好きで、あんたが部員から馬鹿にされていたから、我慢できなくて殴った。

言えるかよ。
言えるかよそんなこと。こんな形で、伝えたいんじゃないんだ。

「理由が何にせよ!キャプテンが、部員を殴ったってことは事実だわ」
ぴしりと言い放たれる。

そうだ。
いくら水谷が悪かったとしても。殴りゃあ俺が全部悪いんだ。
いくら、好きな人のために、やったことでも。そんなの、通用するはずがない。






「…花井君が、簡単にこんなことする子だとは、どうしても思えない。何が、あったの?
聞いたところで、時間が戻るわけじゃ、ないけど」

そう、だ。俺は。大変なことをしてしまった。
水谷を殴った右手が、今更ジンジンと痛い。
しかし、どう説明しよう。正直に、話すと。結果、俺の気持ちが伝わってしまうとになる。
それに、監督には、部員たちが考えてるようなことを、知られたくなかった。
精一杯指導してくれていても、信頼をよせていても。女性というだけで、性の対象にされていること。
屈辱的な妄想にまみれた、男の目に晒されているということ。

…言えない。
水谷だって、冗談で言ったのだ。俺がそれに、過剰に反応しただけ。


精一杯の声を、喉の奥から、絞り出した。

「お…、れが。ムシャクシャしてて。なんとなく、水谷がムカついて。それで」

俺さえ黙っていればいい。監督に本当のことを、どうしても言えない。
明日、皆に謝ろう。水谷は。
顔も見たくないけど…同じクラスだし。

「嘘でしょう」

監督はハッキリとした声で、俺を真っ直ぐに見つめながら言った。

「そんな嘘に、あたしが騙されると思ってるの?馬鹿にしないでよ」
その目には明らかに怒りの色が浮かび、俺を捕らえて離さなかった。
ドアは閉められており、夕方のオレンジ色の光が窓から射している。





熱いのか、寒いのか、分からない。
汗は流れ続けているが、体の中が、ざわざわと騒ぐ。

監督が、じり、じりと近づいてくる。
怒りをたたえた眼は、俺を射抜いたまま、外れない。
俺は、部室の畳の上を、だんだん後ろに追いやられて行く。
やがて壁にトス、と当たった。監督はどんどん近づいてくる。

目の前に立ちはだかられ、その迫力に、おれはズルズルと尻をつく。

情けない。何でだ。こんなことに。
でもこうするしかなかったじゃないか。
監督の目を、見ることができない。

これから、全てが崩れてしまう。
部員からの、信頼も。
監督からの信頼も。
ずっと溜めていた、この思いも。

俺が一番大事にしていた、部活後のあのひとときも。
なくなってしまうだろう。

俺は監督に、失望されたのだ。
もう、俺の思いを伝える道は。絶たれてしまった。

どうしようもない絶望感に、涙が溢れてきた。
どうして、こんなことになってしまうのだろう。
俺は、ただ。好きな人を、傷つけられるのが嫌だっただけなんだ。
でも結局、監督は深い悲しみの中に、放り込まれてしまった。
だったら俺はどうすればよかった?
こんなに好きなのに。好きだ。どうしようもないんだ。







監督は無言で、俺の右手を、自分の両手で包み込む。
ぎゅっと、握った。

膝立ちになった状態で。
眼からは怒りの色は消えている。ゾッとするほど悲しみをたたえ、
潤んでいる。今にも零れ落ちそうな涙の膜が、ゆらゆらと揺れている。

水谷を殴った右手は、尚も痛んでいた。








ああ。
何度も反芻しては、俺の欲望を満たし続けていた、
あの手の温かさ。


俺は、馬鹿だ。
こんな時にまで。
最低だ、俺は。最低だ。
何もかも関係なく、このままずっと監督の体温を感じていたい。


甘い感情が堰を切ったように体の真ん中に流れ込んでくる。

夢にまで見たこの人の感触を味わいつくそうと、
肌が粟立つ。


顔が近い。
吐息がかかる。
前髪が俺の鼻をくすぐる。

グツグツと脳がたぎる感覚。





今、手を伸ばせば。
欲しいんだ。あんたの全部。

体の、真ン中。







俺の頭は、それまでのこと一切を吹き飛ばして、
ただ前にいるこの女性にだけ集中される。

監督は、俺と真剣に向き合い、話そうとしているのに。


でも、もう、いい。
関係ない。




俺はグッと監督を引き寄せた。
ぎゅうと握られた手を、自分側に強く倒す。

「!」
バランスを崩し、どさりと俺に倒れ込む監督。
一瞬の出来事に、何が起こったのか、というように俺を見上げる。

「はな…!」

俺は、束ねられていない長い髪に顔をもぐらせ、すう、と息を吸い込む。
いつも薄く香っていたその匂いと、体温の匂いに体中が満たされていく。
頭が、おかしくなりそうだ。
火照った手で、細いしなやかな腰を折れる程抱きしめる。

「やッ…!!」
彼女の顔は怒りとか恐怖とかで歪み、必死に俺の腕の中で暴れる。
見たことのない、表情だった。

「嫌!離しなさい!!はなっ…」
あんたが悪いんだ。
俺が、こんな風になったのは。








俺の中を、残酷で暗い、でも燃え滾ったどうしようもなく熱い感情が、どんどん広がっていく。
彼女は俺の拘束を振り切ろうと、力いっぱいもがいている。

さすがに男の力には敵わないとはいえ、
普通の女のそれよりも強いそれは、押えつけておくのが大変だ。
隙をつかれたりする可能性だってある。


これから、俺のモンにするんだ。
邪魔なんか、させるかよ。


チッ、と舌打ちをし、両手を離し、解放する。
と、安堵の表情がチラリと見えた。

馬鹿、逃がすかよ。

俺は、自分の腰からしゅるりと、それを抜き取った。
間髪入れず、それを左手首に巻きつける。
その端を、素早くバックルに通して固定し、右にも巻きつける。
左右同時に2度巻くと、間を通してぎりぎりと締め上げた。
驚きと恐怖で声も出ない彼女を、どさりと畳に転がす。

「ぃ…や!はな、いく」
「大人しくして下さい。怪我、しますよ」
「あ、あ…」
「俺、あんたに何するかわからない」

「や…なんで」
手をベルトで縛られた状態のまま。泳ぐ目からは涙が零れた。
俺はゆっくりと立ち上がり、ドアまで歩く。

鍵を、かける。
カーテンを閉める。

「ほら、もう誰も来ない。水谷も、荷物、持ってったし」
嫌な笑いが、浮かんでくる。
きっと今の俺は、酷い顔をしているだろう。
でも、もう止まらないんだ。

監督は、口をぱくぱくと動かしていたが、声はない。
ただ部室の隅で、言葉もなく小さくなっている。
顔は青ざめて、ガタガタと震えていた。

目の前に座り、またその体を抱きすくめる。

「好きだ」

彼女の動きが停止する。


「な…何、言って!こんなこと、許さないからっ…」
グッと、体を床に押し付ける。

「大人しくしててください。これ以上こんなことが続いたら、俺だって耐えられない」
呆気にとられた様子で、俺を見上げる。






黒い気持ちがどんどん頭をもたげる。

「こんな…こんな風に人を想うのなんか 初めてなんだから!俺、」


「…ッ、だってあたしは監督で、花井君はキャプ…」



「知るか!」

俺の出した大声に、ビクリと体が揺れる。


「———好き、好きなんです、好きです!好き…」

「やめッ…!」

あれほど告白するのに躊躇われていた言葉は、
一度言葉にしてしまうと、ポロポロと簡単に零れる。






彼女のジャージの前のジッパーを、一気に下げる。
勢いにまかせ、その下のTシャツも思い切りたくしあげる。
シンプルなデザインのブルーのブラジャーが、白い肌に映えて眩しい。
ブラの外し方なんてわからない。
背中に手を回して、ホックを外そうと試みるが、うまくいかない。
焦れた俺は、背中側の細い布を、思い切り左右に引張る。

ブチ、ブチッ!と音がして、呆気なくホック部が壊れた。

ぶるん、と窮屈に押し込められていた乳房がこぼれる。


初めてみるそれに、俺は些か感動してしまう。
もちもちと吸い付きそうな肌理。
緊張のためか、プクリとふくらんだ乳輪の真ん中で、乳首はきつくたちあがっている。

たまらず、乳房全体を力いっぱい掴むと、それは自在に形を変えた。
「い、た…!!、あっ」

そんな声も、全て今の俺には甘い響きをもってジンジンと鼓膜を震わせる。
覆いかぶさり、プルプルと震える耳に舌を這わす。
ゾクゾクと体を震わせ、彼女から熱い息が漏れる。
「ふ、ゥっ…ん」
熱い唾液を耳に流し込み、ぬるぬるとゆっくり舐め上げる。
首筋をツツ、と舌先で擽ると、肌の表面が粟立つ。






俺の、好きな、綺麗な鎖骨。
身を捩るたびに、美しく窪みができる。

そこに強く吸い付き、思い切り吸い上げる。

「い、や!!痛ッ!あ、ああ、やめて!」

今まで割りと大人しくしていたかと思うと、急に大声をあげはじめた。

「あーッ!嫌ァっ!!」


こんな状況になってもまだ、逃げようとする彼女に苛立つ。

…んで、だよッ!!
このッ…!

右頬を平手で力強く打った。
バチン、と派手な音が響く。

「うるせえ」

恐怖に口元がわななき、

そしてぐたりと、彼女の全身の力が抜けた。






俺はキョロキョロと周りを見渡すと、
部室にある備品のガムテープを持ってきた。
安い紙のものではなく、布でできたそれ。


「あ、や…こないで、ぅ、む、ぐ」

適当な長さにビッ!と裂き、
形のいい唇にベタリと貼り付ける。

打たれた頬はじわりと赤くなっていく。
両手は俺のベルトに拘束されているし、腹の上には俺が覆いかぶさっている。
もうどう抗ったとしても、無駄なのだ。

キスを、したかったけど。大声を出されてはかなわない。

しょうがないんだ。もう引き返せない。

俺は、優しくしてやりたいんだ。なのに。






羞恥のためか、恐怖のためか、
きつく立ち上がった乳首を、キリ、と前歯で噛む。

「ーっ!うぅーッ!う」

声さえも自由を奪われ、涙を流し続ける目で、それでも俺を強く睨みつける。

引き締まった腹をやわやわと撫でる。腰のあたりを、産毛にしか触れないような
繊細な手つきで滑らせていると、また肌がプツプツと粟立ち始める。

下腹に手が進むと、一層大きく体が震えた。
「むーっ!うーッ!!うゥーー!」
顔を見ると、必死に首を振っている。
止め処なく流れる涙が、腫れた右頬をつたう。

ハッ。
ここまできて、やめるわけ、ねぇだろうが。


引き攣れながら、下着のゴムが太腿を滑る。
ジャージのズボンごと、一気に引き降ろした。
堅く膝同士を合わせ、いまだ俺の侵入を防ごうと足に力をいれている。
「力、抜いてください、、よっ」
男の俺の力に敵うはずもなく、思い切りガバリと開脚させられる、細い足。





抵抗したせいで汗をかき、蒸れたそこは、
ひっそりと息づいているように感じた。

毛のあまり濃くないそこを指で開くと、
トロリとした白濁の液体が溢れている。

初めて見るそこは、ピンクとも赤ともとれない色でヒクヒクと蠢いていた。

これが、監督…の。すっ、げぇ……
こんな風に、なってんのか…!

いやらしく光るソコを食い入るように見つめる。
あまりの卑猥さに、頭がクラクラとする。

たまらず、ピクピクとしているそこに口をつける。
「うぅ〜…ッ、う、ん!ふぅーッ、うー!」
ブルブルと体を震わせ、大きく身を捩る。






言葉にできない味がした。
生暖かく、独特の香り。すごく、やらしい。

ねっとりと、舌に絡みつく粘性をもったそれを、夢中で舐め上げ、啜った。
ズルズル、と脳がとろけそうな淫靡な音がひびく。
舌をぬるりと抜く。

最早抵抗をやめ、無防備に晒されたそこに、今度は指を這わせる。
「ふー、ふー、うぅ〜!…………ん!!むぅーッ」
中指を、一気に中に突き立てる。
ヌプリ、ヌプリと出し入れする。マメで堅くなった俺の、
高一にしては節くれだった中指を往復させる。

にゅるっ、にゅるっ、と、溢れた液体で聞いたこともないような音がする。
「うううっ…ぐ、う……ッッ」
指を2本に増やして、ゆっくりと捏ね回すように中を抉る。

時折ビクリと体が揺れる場所を見つけた。
手前のほう、と、最奥の。

「うーっ!う、う、う、ふぐ…ッ」
「ココですか」
フルフルと、首が横に触れる。

「気持ちいいんでしょう。やめませんよ。」
「うううぅ、ううう!んんん!」
しつこくその一点ばかりを責めていると、彼女はまた啜り泣いた。









かなり時間をかけて解したので、ソコはもうトロトロになっていた。
つぷつぷと指を出し入れしながら彼女を見下ろした。
「うっ!!うーっ」
口をガムテープで塞がれ、両手を縛り上げられている監督は、
意味のない呻き声しか発すことはできないし、
俺が両足の間にかんでいるせいで、自分の意思で足を閉じることも出来ない。

何一つ隠すことの出来ないみっともない姿で俺の前に足を開いている。

「気持ちイイですか」
グチュグチュと指を出し入れする。
指を3本に増やす。
刺激すると身体が跳ねるナカの部分を容赦なくかき回す。
段々と、中がピチピチと、狭くなってきた。
目はトロリと半開きになり、涙が蒸気した頬を滑る。

あ、あ。これか。
イくっていうこと。
「イきそうですか?」
首は嫌々をするように振られる。
それに本来の意味がないことは、もうとっくにわかっていた。

「いいですよ、イッても」
「ううーっ…!!」

中が今までとは違う蠢き方を繰り返し、指にぴっちりとはりついてきた。
彼女は、俺の手で。
確かに、昇りつめた。






俺はとっくに堅く育っていた自身を取り出す。


あぁ。
何ヶ月も何ヶ月も、このときを思って、1人で。

今、やっと、繋がれる…!


「痛くないですよね、こんな、濡らしてんだから」

入れますよ、と言った瞬間。
恐怖で彼女の目が見開かれた。


極力痛みを感じないようにゆるゆると挿入する。

あぁ・・・
押し返すようにソコ全体で拒否されるのを、じっとその場で待ち、
身体が慣れてきたらまた少しだけ進む、というのを繰り返しながら、
徐々に徐々に奥に入っていった。

熱くて、ぬるぬるしている。
奥が締まって、強く腰を打ちつけたい衝動にかられる。

「う!…う、…う…、う…!」

監督は涙を零しながら、俺のが少しずつ少しずつ自分のなかに納められていくのを見ていた。

「や、ば…!すっげ気持ちイイ。…監督のココ、すっげぇキツくて熱い…!」
少しずつ挿入していくだけで、初めて味わう強烈な快感が、背中までゾクゾクとかけあがる。
監督のナカが、俺を拒否しつつも、離さないように締め付けているように思えて嬉しかった。
ゆっくりと奥に進めながら、快感を余すところなく覚え込もうとする。

彼女自身も刺激した。ずっぷりと俺のを咥えこんだソコの、少し上にある、
ぽっちりと存在を主張するクリトリス。
ぬるりと縦に辿ったら、ナカもきゅうと締まって気持ちいい。

あああ、気持ち良過ぎる。すごい、すごい。
挿入して数分もたたずに、俺は追い上げられていく。

「はっ…は、う、一回出します」
俺の言葉に、サアッ…と監督の顔から血の気が退いていく。

「ううーっ!ううーっ!むぅー!!!!」
首をぶんぶん振って拒否するのに構わず、
たっぷりナカに出した。





ビュルビュルと、すごい勢いで濃い精液が出続けている。
「あァ…!う、まだ……出っ、ぅ、」

監督は、体を痙攣させながら、それを全部受け止めた。


「はぁ…はァッ……くそっ、気持ちよすぎ…!全然収まんねぇ」

出し終わったはずなのに、俺自身はまったく堅さを損なわないまま、
監督に突き立てられたままだった。



そのまま、動きを再開させる。
感じるところを狙うように突いていたら、
監督の足が、ブルブルと大きく震え始める。

「…気持ちイイ、ですか?」

もうイキますか?そう言って揺さぶられるたびに時間差で揺れる乳房の、
堅くしこった乳首に歯をたてる。
監督は首を振って拒絶していたが、すぐに身体を逸らして痙攣して、
そのままあっけなく、
イッた。

ふーっ、ふーっ、と鼻で息をしている。

何度も無理矢理イカされて涙でぐちゃぐちゃの顔は、
既に鼻水でもドロドロになっていた。

それでもそんな顔もかわいいと思う。たまらない。
「まだまだ…、気持ちよく、ぅっ…してあげます、よ。 ハァ、あ…」
またゆるゆるとわざと感じるように動きを再開したら、
彼女の目がまたも恐怖に見開かれた。


限界を超えて感じさせられ続けるのはどんなに恐ろしいことだろう。

でも俺は構わず腰をパンッ、パンッと激しく打ちつけ始める。
力の入らない身体を揺らされるだけ揺らされている監督は、
それでもしばらくすると、ヌルヌルの液がとまらないソコを、
きゅ、きゅうと締める。
俺は素直な身体の反応に感動する。

7つも年下の男にぶたれて、無理やり犯されて、
それでも気持ちよくてイッちゃうんだ、この人は。

目を閉じて涙と鼻水を流しっぱなしで嗚咽をあげながら、
それでも強制的に感じさせられている監督が愛しい。


キモチイイですか。
キモチイイですか。
監督。
監督。

まり、あ。





「…っ好きです、好きです、好きです、好きです…!」


繰り返しながら、
激しく出し入れする。

グチョグチョと、粘性の高い液体が溢れていて、もう、わけわかんない。
白く、泡立つそこを見つめていうると、腰にジンジンとした快感が集まる。
さすがに俺のほうもなかなかイけなくなっていたけど、そのほうがありがたかった。
少しでも長く繋がっていたい。

涙を流しながらぐったりと揺らされていた監督の身体が、
ヒクヒクとわなないたと思ったら、
声もなくチョロチョロと、小便を漏らし始めた。
なかなか終わらない勢いのない放尿は、
俺の征服欲をじくじくと満たしていく。

呻き声ひとつあげられないで身体痙攣させながら、畳に水溜りをつくる。
そして、そのままくたりと意識を失った。


俺はそれでも彼女を離すことができず、
完全に力の抜けた腰を持ち上げながら、欲望の出し入れを続けた。
いくらやっても満足できなかった。
気持ちよかった。

途方もなく監督がが好きで、どうしたらいいのかわからない。

ただひたすら「好きです」と繰り返しながら、腰を押し付け続けた。

限界が近くなった。
射精したくない。
まだ終わりたくない。
終わりたくない。
終わりたくない。

人形のように思うさま揺らされている身体に、
激しく腰を叩きつけながらそう思った。







そうして何回目かの射精の後、
俺はいつの間にか自分が涙を流しているのに気付いた。




好きです好きです好きです




声とか眼の動き。
唇とか喋り方。


体の真ン中。


あんたの全て。




あいしてます





終わり。
最終更新:2009年11月07日 17:21