9-625-627 アベチヨ(合宿所)


2巻までしか読んでない自分が投下してみる。
合宿所シチュな。


パシャっと水の跳ねる音が浴室に響く。
このままじゃのぼせちゃう。もうそろそろ出ようかな・・・。
浴室のドアを開けて、篠岡は脱衣所に出た。
ほてった肌に扇風機がほんのり涼しくて気持ちがいい。
「あー、涼しい・・・ストレッチでもやろうかなぁ・・・」
独り言を漏らしながらタオルを身体に巻いたその瞬間。

ガチャ

「「え」」

ありえない音がした。
ガチャ? 何、ガチャって。
篠岡は、おそるおそる背後にあるドアの方へと視線を向けた。
「・・・・・・あ、阿部くん・・・!?」
「・・・・・・ワリ。まさかいるとは思わなかった」
「・・・い、いえ。出てってくれればそれで・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
阿部は無表情に篠岡をじっと見つめて微動だにしない。
「あの、どうしたの・・・・・・じゃないっ、早く出てってーー!」
阿部に背を向けてしゃがみこんだ。
何、何なのこの展開。最悪!!
「ごめん」
謝罪の言葉と同時に、ドアがパタンと閉まる音がした。きっと帰ったのだろう。
途端に安堵感が湧き出てきて、ふぅ、と息をついた。
「あー、びっくりした、もう・・・・・・って何でいるの!!!」
「・・・いや・・・」
改めてドアのほうに視線を向けると、そこには帰ったはずの阿部がいた。


あろうことか、こちらへヒタヒタと近づいてくる。
じりじりと追い詰められて、気がつくと私の背中は壁にあたっていた。
「・・・いえ・・・じゃないよ!な、何?す、すすすすぐ着替えるから、だから・・・」
身の危険を感じて、せいいっぱい縮こまる。
が、阿部はもう目の前。相変わらずの無表情で、何を考えているのかまったく読めない。
「・・・篠岡」
「・・・な、なんでしょう」
「我慢できなくなった」
私の髪の毛から水滴がポタポタと床に落ちていく。
湯気が部屋に立ち込めてる。異様な熱気に身体がフラつく。
「・・・ッ、出てって、ください」
「無理」
「即答しないでよ。ちょ・・・ッ、阿部くん・・・っ!」
首筋をペロリと舐められる。
耳たぶを甘噛みされて、体からスゥっと力が抜けていった。
ぺたりと床に座り込むと、彼も私の視線に合わせようと膝をつく。
壁に腕をつき、身体に巻いていたタオルに、阿部が手をかけた。
「わっちょっ・・・!ほ、本当に!?」
「篠岡、そろそろ黙ろうか」
「う、だ、だって・・・・んんっ」
唇を阿部のそれで塞がれる。
最初はついばむようなキスの繰り返しだったが、次第にソレは濃厚なものへと変わっていった。
やっと解放された口で大きく息を吸って、呼吸を整えようとするがうまくいかない。
必死に取り込んだ空気は、熱い。
もう、抵抗する気力なんて残ってない。
「・・・あ、べくん・・・」
完全にほてってしまった身体を、もう自分じゃどうにもできない。
阿部くんなら、いいや。
阿部くんじゃなきゃ、嫌。
 ・・・もう、止まんない。


が。

「ふ、ふえぇぇ〜・・・」

いきなり襲ってきたソレは、さっきまでの甘いムードを完全にぶち壊した。
私の発した言葉のせいで、もうこの空間には緊迫感のカケラも残っていない。
「・・・篠岡?まさか」
「・・・あ、頭がフラフラして、きもちわる・・・・・・」
少しの間をおいて、阿部が残念そうな顔でつぶいた。
「・・・・・・のぼせたのか」
「ろ、ろめん、にゃれくん・・・」
「何言ってんのかわかんねーよ。・・・チッ、仕方ねーな。
部屋に連れてってやるからさっさと着替えろ」
阿部が手を差し伸べた。
ヘロヘロになった手を必死に伸ばして、私はその手を握った。
「俺も手伝ってやるから」
「うんー・・・ありがと・・・って、人の下着を勝手に触るなあぁ〜・・・!!」
「篠岡こんなのはいてんのか、意外だな」
「変態みたいなこと言わないで!ひ、一人でできるから!!」
だが、言葉とは裏腹に、一度は立ち上がったものの再び地面へと尻をついてしまった。
「・・・う・・・力が出ない・・・」
「ホラ貸せって。俺が着替えさせて部屋まで連れてってやるから。お姫サマだっこで」
「・・・ふ、ふぇ〜・・・」
たぶん、そんなことされたら気絶してしまうだろう。
だけど阿部くんにいろいろしてもらうのも悪くないかなぁ、なんて思ってしまったり。
「・・・阿部くん」
「何」
「ごめんね、その」
「気にするな。機会なんて作ろうと思えば作れるから」
「・・・まさか、今回のって」
「さぁ、何のことだろうな」
と、阿部はニヤッと笑って言いのけた。
こいつ、絶対わざと入ってきたな!!!!!
「篠岡」
「うんー?」
「おまえもオンナノコらしい身体してんのな。正直意外だった」
「なっ・・・!阿部くんの馬鹿ーーー!!!」
ほてった身体は、しばらく冷めそうにない。
最終更新:2010年03月06日 09:41