9-669 アベチヨ(篠岡誕生日ネタ)
宿舎での朝食に向かう廊下で、篠岡に後ろから挨拶の声があった。
「あっおはよう阿部君! よく眠れた?」
「あー」
「そう、よかったー」
並んで歩く阿部にかけたい言葉はいくつもあったが
どれも喉から出てこない。
短い沈黙の後、阿部が正面を向いたまま言った。
「今日誕生日だろ? おめでとう」
篠岡は少し驚いて阿部の横顔を盗み見た。
「ありがとー。
よく覚えてたね」
「試合の日なんだから覚えやすいだろ」
「余裕あるねー」
「だろ?」
阿部はニヤッといつもの笑みを浮かべている。
大舞台を前にしてもリラックスしてるようで頼もしい。
「今日の試合に勝ったら、話がある」
「……勝ったら?」
「そう」
「わかった。待ってる。
絶対勝ってね!!」
「おう」
前を歩く阿部の背中を見つめながら篠岡は
今日が忘れられない日になることを予感していた。
最終更新:2010年04月29日 16:05