『サヨナラ、だい好きな人』



「ハ ハ ハマ…ちゃん、  ちょっと… いいか…な?」
「あん?」
いつもの休み時間、オレが机に伏して惰眠をむさぼっていると、三橋からたのみごとをされた。
「プ プリント  その… お 女の子に わ わたして ほしいん…だ」
「だめだぞ~、みはし~。そうやって自分の嫌なことを人に任せようとするのは。ははは」
いわれると顔を赤くしてキョドキョドする。
「ま、いいよ。逆にありがたいかもね。オレが仲良くなれるチャンスかもしれねー」
口をひし形にして高速に顔を縦に振り続けている三橋からプリントを受け取ると、机で一人、ぽつんとすわっている彼女のところまでいってきた。
「はい。これ。三橋からのラブレターね」
「え?」
「ハ ハマチャン!?」

西村澄緒さん。高校一年生。同級生。オレにはイッコ下になる。美人。
この人が同じクラスの人間としゃべっているところを見たことがない。
飯を食うのも一人、家に帰るのも一人。友達をつくらないのだろうか?
「どーもね、クラスの女子に聞いてみても、誰も知らないらしいんだ」
「知らないって、なんじゃそりゃ?」
泉に西村さんのことをたずねてみても、要領を得ない答えが返ってきた。
「つまり、俺らのころの中学の同期じゃ、あのコはみたことがない、ってことよ」
「ていうことは、県外のひと…」

その日からオレは、授業中に西村さんのことが気になりだしていた。
絹糸のような光沢をもつ長く黒い髪。いつもうつむきがちな顔は、幼さを残していても、目はな立ちがはっきりとしてきている。
カレシは……いないんだろうな。彼女の方から誰にも話しかけないから。

きっかけは偶然だった。でも、これは案外、オレの方が望んでこうなったことかもしれない。
下校時間、自転車に乗り込んで、帰り道をいそいでいた。
坂道を下っていると、あの長髪がみえた。
「西村さん、西村さんってば」
2回ほど名前を呼ぶと、ようやく振り返ってくれた。
「ごめんなさい。…私のことじゃ、ないとおもってた」
「帰る方向、一緒だね」

それからオレと西村さんは、一緒に下校する仲になった。
そう、彼女はひとりでいたかったんじゃない。ただ、仲良くするきっかけがなかっただけだったんだ。
いったん打ち解けた後の彼女は、やはりおしゃべりの大好きな女の子だった。
「ね、浜田くん」
「ハマちゃんでいいよ。みんなそう呼んでるし」
「ふふっ。ハマちゃん!」
「は~い」
笑った横顔はなんともいえず、かわいさであふれていた。

オレがアルバイトをしていることを話すと、スミオはくいついてきた。
「ね、ハマちゃんもやってるバイトって、私もできる?私もアルバイトしたいの」
「あ、ああ…」
つーわけで、店長に頼んで、一緒に働くことを許可してもらった。
オレとしては、スミオと一緒にいれられる時間がさらに増えて、願ったりかなったりだった。

もうここまで読んでくれればわかるはず。
オレはスミオに一目惚れして、なんとか彼女にできないか、とそんなことをずっと思ってきた。
そして、スミオの側にいる男は、誰よりもオレだった。
オレはスミオに恋をしていた。


仕事が終わり、夜遅くなったので、自転車にのせて家まで送っていった。
スミオの家は、古びた木造アパートに一人で住んでいた。
はっきり言って、女の子ひとりで住むような環境じゃない。
「びっくりした?」
「…ああ」
「理由…話さなきゃ、いけないよね」
「いいよ」
「え?」
「なにか事情があるんでしょ?だったら、スミオがいいと思うまで話さないでいいよ」
スミオは意外に思ったらしく、オレの顔を見るままとぼけた表情を続けていた。
「はなし聞いたからといって、オレがスミオとの付きあい止めることなんてありえねーし。聞かなくても別にしこりに残らない。オレは待てるよ」
「ハマちゃん…」
オレははじめてスミオに手を握ってもらえた。ほそくて、小さくて、ひんやりした指だった。
「あがっていって」

一人暮らしの女性の家にあがるのは初めてだった。女の子の部屋に入ったのも初めてだった。
4畳しかない畳の部屋で、窓にあるカーテン以外にこの部屋を特徴付けるものがなかった。
テレビもない。冷蔵庫もない。普通の一人暮らしをする家ならあるはずの家電製品が、この部屋にはなかった。
「ずっと…コンビニで済ましていたから。冷蔵庫、買ってなかったの」
スミオの顔をみると、お茶もだせない環境に恥ずかしがっているようだった。
「いやいやいや!いいって。引っ越してきたばかりなんだろ?なんなら、欲しいものあったら、オレ探してくるよ」

オレが部屋の真ん中で座りだすと、スミオもオレの隣に座ってよりかかってきた。
「ほんとは…夜がさみしかった」
天井にある蛍光灯のあかりで照らされたスミオの顔を見てドキリとした。
上目遣いで、目に涙をためて。

いいのかな。オレ、このまま行っちゃっていいのかな?
チャンスだよな?相手から誘ってもらって家に入れてくれたし。部屋に誰もいないし。
バイト終わった後で汗ふいてないけど、ちょっと臭うかな?
でも、スミオはいいって言ってる気がする。
だから、オレはスミオの肩をそっと抱きしめると、こっちに近づけて、そして、口づけをした。

キスをしたのははじめてだった。
スミオの唇は小さくて柔らかい。してる最中はずっと興奮してて、相手の息遣いまで聞き漏らさなかった。
「んふぅ…」
くちゅっ、ちゅぴ、ちゅる、唇と唇が触れ合っていやらしい音をたてる。お互い、もっと興奮してくると、むさぼるようにキスをせがみあった。
スミオの手がオレの背中へと伸び、体を預けるようになった。
すると、オレの口の中に異物が入ってくる。
オレは自分の口の中で、スミオの舌をいじくってやる。表と裏をなめまわすように。はぎ取るように。

舌と舌が繋がって、オレも我慢の限界を超えてしまった。
オレはスミオの着ている服のボタンに手をかけた。
「まって」
あわてて顔を離すと、スミオは胸をガードしだした。
「…ゴメンナサイ。まだ、心の準備が」
「ああ…、ごめん」
そうだ。オレもつい夢中になっちまって、スミオのことを思いやることを忘れていた。
そうだよな。色々と準備もあるんだろう。
「わたし…おかしいよね。誘っておいて、キス以上はいやなんて」
「スミオって、キス上手だよね」
言われてみるみる顔が真っ赤になっていった。
「バカッ!」

その日はスミオの部屋に泊まっていった。誓って言うがキス以上のやましいことはしていない。
電気消して座ってよりそって、他愛もない話をダラダラとして。そのまま二人とも寝落ちした。
翌日の朝、コンビニに行って朝飯を買うと、部屋で食べて、昼まですごした。
「オレ、今日野球部手伝う約束してるんだ」
「ハマちゃん、野球部に入らないの?」
「オレは応援する専門。はは」
そういって玄関で靴をはくと、じゃぁ、といって別れた。

ここまでは順調なくらいオレたちはうまくいっていた。オレもスミオとつきあえることができて幸せだった。
でも、じつはそうじゃなかったんだ。スミオはオレが知らないところで無理していた。
スミオのためならなんでもする覚悟はあった。オレは男だからと、心構えはしていたつもりだ。
でも、じつは何をどうすることもできない、ただの子供なんだとすぐに思い知らされることになった。

部屋から出ようとノブに手をかけようとすると、ドアをノックする音がした。
スミオが返事をすると、代わりにドアを開けてやった。
扉の前にいた人は、オレよりも背が高い、大学生風な男だった。
「ヒロくん…」
この人を見たときから、オレは不安になっていった。なんだか、ここから一気に転落していくんじゃないかって、そう不安になる。

「あの…、高校のお友達。ハマちゃん」
「は、浜田っす」
「いとこの芹生弘隆です」
「どうしてここが…」
聞いちゃいけない話だったようで、オレは二人にあいさつをすると早足で立ち去った。
なんだろう、この焦燥感。はやく逃げ去りたいんだけど、行ったら失ってしまうこの矛盾。
もう一度いとこの人を振り返ってみる。その人は、少し憂いを抱えているような目をしていた。

翌日、スミオの方から事情を話してくれた。
ふたりきりで話を聞くため、スミオの部屋にお邪魔して聞いた。
「私ね、ヒロくんを追いかけてこっちに来たんだ」
スミオは思ったとおり、埼玉の人じゃなかった。ずっと遠いところからやって来た。
「西浦を選んだのも、ヒロくんの大学が近かったし。私が高校卒業して、大人になったら会いに行こうっておもっていたの。でも、できるわけなかった。ヒロくんには好きな人がいるし。私なんか眼中なかった」
否定も肯定もできないまま話は続いた。
「ヒロくんにね、家に帰れっていわれたの」

「どうしてここが…」
「お母さんから連絡が来たよ。住まいは近くだからよろしく頼むって」
「そう…」
「気まずかったからオレに知らせなかった?」
「……うん。言いだせにくかった」
「学校は地元に行くとばかり思っていた」
「…ごめんなさい」
「ここにはひとり?」
「……はい」
「澄緒ちゃんは帰ったほうがいい」


地元を飛び出して、あてもなく一人で生きる。それも自分の好きな男のために。
会いにいくのではなく、ただ近くにいたいだけ。
そんな気持ちを思いはかるには、どうすればいいんだろう?
「ワタシ、ハマちゃんにヒドイことしているよね…」
オレは本気でスミオのことを好きになっていた。でも、スミオの本当に好きな人というのは、あの弘隆さん。
「悪い女だよね…。嫌いになるよね…」
「スミオは地元に帰るつもりなの?」
質問に答えるのに、ずいぶんと時間がかかった。
「まだわからない」
「そっか…」
「ワタシ、向こうにもワタシの居場所がないの」

その日の夜は、ずっと考え事をしていた。
スミオのためになること。どうやったらスミオの問題をといてやれるのか。
わからん。わかんねぇ。
オレがスミオにしてあげられることなんて、はっきり言ってまったくなかった。
「一緒に住んでみたら?」
そう考えてもみた。だけど、許されるわけなかった。見つかったら不純異性行為で退学。
くやしい。本気で自分に腹が立つのははじめてだ。
何がつきあってるだよ。何が一緒にいられて幸せだよ。
今までのオレは、あいつのために何かしているつもりでも、何もできてなかったじゃねぇか。
ムカついて何度も枕に八つ当たりした。

翌日、考えて続けても結論が出ない。オレには打つ手が尽きていた。
だが、昨日の段階である考えを浮かんでいたことを思い出した。
それは完全に人任せをすることになり、オレがスミオのためにしてあげられることは、もう、できなくなるだろう。
あらためてスミオの後姿をながめる。
最近はだいぶクラスにうちとけることができたようで、自分の方から積極的に友だちをつくるようになっていった。
そうだよ。やっぱりスミオも西浦に居たいんだよ。自分の居たい場所をつくりたいんだよ。
オレの腹は決まった。

昼休みになると、学校を抜け出した。
「おい!?午後の授業は!?」
「泉!オレは突然、風邪と赤痢と腸チフスにかかったから、病院に行ってくるって先生に伝えといてくれ」
「……風邪で十分だろ」

自転車に乗り、帰る方向と逆に向きをかえて飛ばした。目的地は、弘隆さんのいる大学。
「君は…ともだちの」
「浜田っス。あの、お話があります」

大学の近くのファミレスに連れて行ってもらうと、窓際の席に向かい合って座った。
「スミオ…ちゃん、あの、弘隆さんと一緒に住まわせてあげられませんか?」
オレの突拍子もない言葉に面を食らったようで、弘隆さんはしばらく無言でいた。
「スミオちゃんは春までずっと教室で一人ぼっちだったんです。でも、ようやく最近になって、女の友だちもできたようで。今、スミオを西浦から去らすのは可哀想なんです。だから…、隆弘さん、スミオの面倒をみて欲しいんです」
オレは腹の中にたまっていたモノを、勢いよく吐き出した。
頼んでくれたコーヒーが口をつけずにそのまま冷めていく。

「できない」
「なぜです?従兄妹なんで…」
「あの子はオレの部屋に来たとき、体を求めてきたことがあった」
聞こえないふりをしたかった。だけど、体に力が入らなくなる。今度はオレがしゃべらなくなる番だった。
「そのときは断ったよ。俺には澄緒ちゃんを受け入れることはしない」
それはイトコだからだろうか。目で質問してみた。
「いろいろと理由はあるんだが、……やはり、俺自身が受け入れられる余裕がないからかな」

「それに、君がいる」
「は?」
「俺なんかよりも、ずっとたのもしいよ」
「オレは…ダメなんです。まだ子供だし、力にもなってあげられない」
「実家にかえるよう勧めたけど、最後に決めるのは澄緒ちゃんだよ。君はできるかぎりのことをしてきたんじゃない?」

コーヒーのお礼をいったあと、弘隆さんの彼女のことが気になったのでたずねてみた。
「あの人は……まるで翼を持っている人で。高く飛びたがっているんだけど、地面に体をうちつけているばかり。俺は飛べなくてもいいって伝えるんだ。でも、本人は翼をはばたかせることしか頭になくて……そんな人だった」
よく意味がわからなかったけれど、この人も好きな人と離ればなれになっているのはわかった。
窓の外をながめている目が、いっそう憂いを濃くしていた。

弘隆さんと別れると、足はスミオのアパートへと向いていた。
スミオが帰ってくるまで、玄関の前で待つことにした。
「ハマちゃん…」
スミオが帰ってくると、部屋に入れてもらった。扉を閉めて靴を脱ぐと、背中から抱きしめた。
「…ワタシ、どうすればいい?ハマちゃんに何をしたら許してもらえるの?」
「そうじゃないんだ。スミオ。これはオレのわがままなんだ」

そのままスミオの耳に、首筋に、うなじに、ほほに、したあごに愛撫をつくした。
スミオは本当に初めてのようで、まだ気持ちいいとくすぐったいの差がよくわかっていないようだった。
耳とか攻められると嫌がる。しかし、続けても拒絶をしない。
口でスミオを感じている最中、俺の手は、スミオの着ている服をとりはずしにかかった。
「ひっ」
ブラウスのボタンをはずしていくと、硬い声がもれる。だが、今回はスミオの方から拒否の言葉がなかった。
緊張のせいだろう、肩に力が入っていて、手も震えている。
「いくよ」
「う…ん」
相手の覚悟をうながし、背中のブラジャーのホックをはずし、一気に下着をはがした。
小ぶりでまだ発育していない乳房が、先っぽだけツンとしていた。
オレはそこめがけて餓鬼のようにむしゃぶりだした。

オレも着ている服をすべて脱ぎだす。その間に、スミオは押入れにしまった布団をとりだすと、畳の上にひいた。
男の体は未知だったようで、少し引いていたかもしれない。
だけど、オレはもう後に退かない。スミオを布団に寝かすと、下の下着まではがした。

「ぐすっ」
きっと恥ずかしさが極まって泣いてしまったんだろう。でも、オレは止めたくなかった。
舌で女陰を濡らしていき、皮にうもれた突起に触れる。そうすると、電気が流れたように体をビクッとさせた。
その部分だけ他とは違う反応を示したので、舌を使って重点的にせめてやった。
「あっ……あぅ……くはっ……はあん!」

敷布団のシーツが濡れている。オレのよだれじゃない。スミオが感じてくれている証だった。
オレは姿勢を直して硬くなったナニをスミオの中に挿入れようとした。
「そこ……じゃないよ」
「あれ…?」
オレが戸惑っていると、スミオの手がオレ自身をつかんで、自分で穴に挿入した。
「おねがい……ゆっくり」
「うん。大切にする」
正常位の体制で腰をゆっくりとおろしていった。

ナニの先っぽでぶつかるものを感じると、体重をかけながら膜に穴をあけた。
「いい……痛っ」
悲鳴が上がって体が硬直する。ナニが体の中に深々と刺さると、スミオの緊張が解けるまで待つことにした。

顔の表情を確認する。眉間のしわがなくなり、口のひきつりもなく、おだやかになっていった。
オレはスミオの膣内で小刻みに動いていった。
「ハ…マ…チャン……」
腰を動かすたびに、スミオの口からあえぎ声がもれ出し始めた。
オレは動くのをやめない。動くのをやめない。
スミオもオレの首にしがみついてくる。涙もずっと流れっぱなしだ。
限界がくるまで夢中になって腰を動かし、最後には腹の上に向かって射精していた。

全身が熱い。汗だらけでくたくただ。
けど、心の中の虚無感。ぬくもりにふれているけど、頭の中は冷静でがらんどうだった。
さびしかった。終わりにしたくなかった。
「ハマちゃん…おねがい聞いてもらってもいいかな?」
「ああ。何でも言ってよ」
「腕まくら、して欲しい」
「ちょっと待ってて」
オレはわざわざ立ち上がると、スミオの反対側へと移り、左腕を下にして枕をつくってあげた。
「右ひじだと、長くできそうにないんだ。こっちなら大丈夫」
「腕、ケガしているの?」
「うん。大したことじゃないけど、野球でヒジやっちゃってね」
そういうと、スミオはオレの右腕を手にとって、ヒジの内側に口づけをしてくれた。

「本当はね、こっちに来る理由なんてなんでも良かったの」
腕まくらをしたまま寝屋話をつづける。
「お母さんのところから離れたかった。本当は親を愛したいのに、どうやって表現していいのかわからなかったから」
泣くのを堪えているように、目をしきりにパチパチさせている。
「ワタシって人に好かれる自信がなくて。嫌われたくないって思うほど、わからなくなる」
「スミオ。好きだよ」
「…っ!!」
「また泣く」
「だって、だって、ワタシって、好きって思われること、慣れてないんだもん」
「……帰るつもり?」
「わかんないよう……」
「オレは、ここに残って欲しい」
「えっ?」
「スミオが居なくなるなんて嫌だ」
自分の好きな人と離れてしまうなんて、本当に辛いことだ。だから、オレは今、精一杯スミオの体を抱きしめて離さなかった。

結論を言うと、スミオは西浦に残ってくれた。
「お母さんにもお願いした。ヒロくんにも改めてここに居たいって伝えたの。それならそれでいいって言ってくれた。だから、ワタシもハマちゃんの側にいたい」

この日、オレとスミオは野球部のグランドに一緒にむかった。
西浦野球部に新しい仲間を紹介するためだった。
「あ、あ…あの……、今日から一緒にチアガール…をやらせていただきます、西村澄緒です。よろしくおねがいします」
スミオは長い髪をポニーテールにして、深々とみんなにむかってお辞儀をした。
ここにいる全員から、大歓迎の意味の拍手で受け入れられた。

練習が終わると、自転車にスミオを乗せて走り出した。
「ねぇ、大学まで行こう」
例の大学の校門までとばしてこぐ。すっかり暗くなっているので、あたりに人影はない。
「昼間じゃなくてよかったの?」
「うん、いいの。挨拶に来ただけだから」
そういうと、スミオの右手は、オレの左手をにぎってつぶやいた。

「さよなら……」








最終更新:2008年01月06日 02:18