4-576- 小ネタ 浴衣篠岡× ◆VYxLrFLZyg


地元の夏祭りに、出かけることになった。

自分の部屋の姿見の前で一生懸命着付けに挑戦するが
どうもうまくできない。

裾をあわせてくるっと中帯で止めても、
いつの間にかずれてしまって。

ため息をついて、もう一度、襟を合わせるところからはじめた。
首もとの襟を両手でつまみ、するすると手を滑らせる。
腰の位置から少し過ぎたところでまっすぐ高さをあわせて引っ張り、
足元の裾の位置をぴったりにあわせる。
踝ぐらい、少しだけ上にする。
皺にならないように右側をまず引っ張りながら身体に巻き込む。
ずれない様にしっかり抑えて、今度は左側を巻き込む。
ここまでは、うまくいった。
しかし、そっと手を離して中帯を持った瞬間、ずれてしまった。

篠岡は、泣きたくなって、手を止めた。

待ち合わせまでもう時間がない。
母親は出かけてしまっていて、手伝ってもらえない。

もうそろそろ家を出ないと、間に合わないかもしれない。

でも、
どうしても。
浴衣を着たかった。

577 名前:小ネタ 浴衣篠岡× ◆VYxLrFLZyg [sage] 投稿日:2007/08/06(月) 18:31:33 ID:KR/Jri+d
学校は私服だけど、いつも制服を着ているし、
部活ではジャージだ。
普段着ですら、見せたことはほとんどない。

今日の誘ってもらえた夏祭りで、
このお気に入りの浴衣を着て
いつもと違う自分を見せたかった。

赤い朝顔が施された紺地の浴衣に、黄色の帯を締める。
皆に、可愛いといってもらえた格好だ。
そうして、意識してもらいたかった。

仲間からもう一歩進んだ関係になりたかった。

しかし、もう、家を出ないと間に合わない。
せっかく誘ってもらえたのに、遅刻なんて出来ない。

悲しくって一人涙を浮かべていたら、
母親が帰ってきた音がした。

弾けたように、涙を拭く。

「おかあさーん!浴衣着るの手伝って!今すぐ!」


待ち合わせ場所まで、早足で向かう。
走ってしまったら、せっかくの着付けがずれてしまう。
しかし、待ち合わせ時間はもうとっくに過ぎていて。

怒っているだろうか。

篠岡はそんな不安に襲われる。


やっと、待ち合わせ場所の神社が見えた時。

手を振りながら自分に向かって微笑む彼がいた。


      • 終わり---


578 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/06(月) 18:34:44 ID:BIjIUxBl
577
かわいい。
イイヨイイヨー

579 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/06(月) 19:59:53 ID:oDcRw2V+
566
不安がることはなし。
この板はエロこそ秩序なので続き待ってますw


580 名前:小ネタ 浴衣篠岡×西広の場合 ◆VYxLrFLZyg [sage] 投稿日:2007/08/06(月) 20:24:26 ID:KR/Jri+d
西広も浴衣姿で。
駆け寄る篠岡に優しく微笑んでいた。

「ご、ごめんね。お、遅れちゃった。」
篠岡の謝罪に。
「ううん。オレも今来たとこ。全然待ってないよ。」
おそらく時間どおりに来ていただろうに、
篠岡を気遣って優しい嘘をつく。
その優しさに篠岡は胸があったかくなる。
「浴衣、すごく似合ってる。可愛いね。」
さらりと褒める西広に篠岡は真っ赤になった。
「西広くんも…よく似合ってる。…かっこいいよ。」
「ありがとう。じゃあ、行こっか。」
少しはにかみながら西広は微笑んで、篠岡を促した。

神社の参道は夜店であふれかえっていて。
二人でヨーヨーすくいや、金魚すくい。
たこ焼きを食べたり綿菓子を買ったり。
ひと時の時間を楽しむ。

581 名前:小ネタ 浴衣篠岡×西広の場合 ◆VYxLrFLZyg [sage] 投稿日:2007/08/06(月) 20:25:10 ID:KR/Jri+d
「あ、あれ、皆がいるよ。」
西広の言葉に、篠岡が目を向けると、西浦野球部の面々がいた。
幸い、まだ向こうはこっちに気づいていない。
「合流する?今日の篠岡可愛いから、皆にも見せてやろうか?」
ゴク自然に褒める西広に、篠岡は顔を赤らめるが
慌てて西広を引き止める。
「あ・・あの・・・。今日は、その・・・ふ、二人でまわりたいんだけ・・ど。」
精一杯の勇気を込めて、西広に訴える。
西広も言葉の意味を理解した途端、顔を赤らめた。
「そ、そう?じゃ、見つからないようにあっちいこうか。」
そっと、その場を離れようとした時に、
西広は手を篠岡に向けた。
きょとんとする篠岡に。
「はぐれちゃうと困るから。手、つながない?」
顔を真っ赤にしながらそう続けた西広に。
「うん。」
篠岡も顔を赤くして、そっと手を差し出す。

西広は篠岡の手をぎゅっと繋いで。

皆に見つからないように、そっと逆の方向へ向かった。


      • 終わり---


593 名前:小ネタ 浴衣篠岡×巣山の場合 ◆VYxLrFLZyg [sage] 投稿日:2007/08/06(月) 23:19:52 ID:KR/Jri+d
「ご、ごめん。待った?巣山くん。」
「ん?いや。」
駆け寄ってきて、俯いて息を整えながら謝る篠岡をまじまじと見て、
少しだけ頬を染めて巣山は目をそらした。

「じゃ、いくか。」
その声に篠岡は顔を上げると、
巣山はもう進行方向を向いていて。
浴衣姿になんの反応も示さない巣山に
篠岡は少し残念に思う。

せっかく着てきたのにな。

頭を振って楽しむことに専念しようとする。
「どうした?篠岡。」
「ううん。なんでもない。何か食べる?」
「そうだな。ちょっと腹減ってるから食っていいか?」
参道に並ぶ出店を片っ端から制覇する勢いで
焼きそば、たこ焼き、焼き鳥と攻めていく。
「す、巣山くん。まだ食べるの?」
「え?ダ、ダメか?」
今まさにイカ焼きを購入しようとしてた巣山は
ちょっと焦ったように戸惑った。
そんな巣山をみて、篠岡は思わず笑った。
「ははは。いいよ。私は今日ちょっとキツイから
それは巣山くん、全部食べてね。」
「お、おう。」
イカ焼きを頬張りながら、巣山は篠岡をじっと見つめる。
「な、何?」
「いや、浴衣って、キツイのか?篠岡いつももっと食べるだろ?」
篠岡は思わずため息をついた。
せっかくの浴衣攻撃は、巣山には全く通じない。
一体どうすればいいんだろう。

594 名前:小ネタ 浴衣篠岡×巣山の場合 ◆VYxLrFLZyg [sage] 投稿日:2007/08/06(月) 23:20:55 ID:KR/Jri+d
その時、巣山が急に後ろを振り向いて、様子を伺った後、
おもむろに篠岡の腕を引いて身を隠すように参道から外れた。
「ど、どうしたの!?」
「し、静かに。」
そっと、木の陰から参道の様子を伺うと、西浦野球部員たちが歩いてきた。
「あ、みんなだ。」
「し、黙って。」
皆が過ぎていくのを待った後、巣山はほうっとため息をついた。
みんなに、私といるとこ、見られたくないのかな。
篠岡は少し悲しくなって、目に涙が浮かびそうになる。
「ええ?し、篠岡、どうした?」
様子が変わってしまった篠岡に、巣山は焦った。
「皆に、私といるとこ見られるの・・・いや?」
巣山は思わず顔を赤らめて、慌てて否定する。
「い、いや。違うぞ!む、むしろ逆で。」
巣山は顔を真っ赤なのを隠すように、手で口を覆う。
「・・・・浴衣の篠岡、見せるのもったいなくて・・・。」
搾り出すように、巣山は答えた。
その言葉に、篠岡は顔を赤くする。
「・・・・・。」
「・・・・・。」
そのまま、沈黙が続いて。
「い、いくか。」
気を取り直して続けた巣山に。
「うん。ね、シャツの裾、掴んでてもいい?はぐれたら、困るし。」
篠岡が精一杯の希望を伝えると。
「普通、こっちだろ。」
巣山がニコっと笑って手を差し出した。

そのまま手を繋いで、
あたりを伺いながら、夜店めぐりに戻った。

      • 終わり---

610 名前:小ネタ 浴衣篠岡×沖 ◆VYxLrFLZyg [sage] 投稿日:2007/08/07(火) 18:43:11 ID:1P2NCXSc
沖は振っていた手を止めて、篠岡をぽかんと見ていた。
「お、遅れちゃってゴメンね。あ、甚平。似合うね。」
涼しげな甚平の格好で篠岡を待っていた沖は
篠岡の浴衣姿を見て、顔を赤くする。
「い、いや、待ってないよ。全然。」
「ほんとに?よかった。」
笑顔で沖を見上げる篠岡を見て、沖はよりいっそう顔を赤くする。
「し、篠岡も・・・・浴衣似合ってる・・・。」
篠岡は満面の笑みになった。
「ありがとう。」

「はい、コレあげる。」
沖は射的でぬいぐるみを取り、篠岡にプレゼントする。
「わあ。ありがとう。」
その笑顔にまた顔が赤くなって、慌てて目をそらす。
そらした視線の先に、野球部員たちの姿を見つけて。
「う、うわ!みんなも来てる!」
「え!?どこどこ!?」
「い、いや、ちょっと、逃げよう!」
恥ずかしさから沖は無意識に篠岡の手を取って、逆方向へ進んでいった。
歩きながら自分が篠岡の手を握っている事実に気づいてびっくりするが
がんばって離さずにいよう、とひそかに誓った。

      • 終わり---






最終更新:2008年01月06日 20:04