4-664-668 小ネタ マネジ
「なんと、マネジ希望者が10人を超えた。」
2年生に進級した春。
新入生を迎えるためのミーティングの最中、
花井は大ニュースを発表した。
ちなみに、部員だけの闇ミーティングである。
「すっげ~な!オレら大人気じゃんか!」
心底うれしそうな田島の反応に、
「なんか、ミーハーっぽくてヤな感じだな。」
泉が水を差す。
「確かに。ソイツら真剣にマネジやりたいのか?
オトコ漁りが目的なんじゃねーの?」
阿部が同意する。
「なんで、お前らそんなに冷たいんだよ!?
素直な心で受け入れてやろーぜ!?」
水谷の優しい心根に。
「いや、でもマネジは10人もいらないよね。」
西広が冷静に諭す。
「選手より多いマネジ軍団なんてしゃれにならないな。」
巣山が率直な感想を漏らし。
「でもさ~。どうやって絞る?」
栄口が核心をついた。
「選ぶ基準はどうすんのさ?」
沖が疑問を口にした。
「そ~だな・・・。公平にいくんなら抽選か?」
花井の正義感溢れる提案に。
「却下。」「やめとけ。」
阿部と泉が反対する。
「オレと花井で面接すりゃいいんじゃね?」
阿部がさらりと提案すると
「う!!、あっ!・・・・く・・・め。」
三橋が意味不明な声を上げた。
「おお、なんだよ。三橋。」
久しぶりに三橋が自己主張を始めたので、阿部はびっくりして。
三橋は声を上げたものの、すでに泣いていて、それ以上は言葉にならないようだ。
「なんか、阿部が面接したら、胸の小さい子だけになっちゃうっていってるぞ。」
田島のすばらしい翻訳機能に。
一同はブッと噴き出した。
ゆらりと立ち上がった阿部は怒りのオーラが立ち上っていて。
一同は心の中で南無阿弥陀仏を唱え続ける。
「お前なあ!巨乳派のお前とはとことん意見が合わないだろうがな!
この際だから言っておく!おれは微乳派じゃねえ!
美乳派だ!!
色と、形が重要なんだ!」
「「「「「切れるポイントそこかよ!?」」」」」
全員の突っ込みが入るがお構いナシだ。
「なんか、阿部って一歩間違えるとこれ、ロリコンじゃね?」
水谷の命知らずのツッコミに。
突然、西広が飲んでいたコーヒー缶を握りつぶした。
部室に響く異音に皆がぎょっとする。
潰した缶もそのままに、滴り落ちるコーヒーもそのままに
西広はゆっくりと微笑んだまま阿部を見る。
「ロリコンってこの世から消えて欲しいんだよね。
阿部ってロリコンなの・・・?」
西広スマイルで話しているが、目の奥の光は冷たい。
阿部が慌てて弁明する。
「あほか!水谷!何言ってんだ!洗濯板に興味はねえよ!
ピンクなのがいいんだよ!」
さらに墓穴を掘った。
泉がニヤニヤ笑いながら悪乗りする。
「チクビがピンクなオンナなんて、いねーぜ。アニキが言ってた。」
リアルな発言に、阿部はぎょっとなって。
「おお!兄ちゃんがいってたけど、オンナって妊娠するとチクビ黒くなるんだって!」
さらに田島が追い討ちをかけた。
そのときの阿部は、この世の終わりを見たような表情で。
それは絶望という表現しかあり得なかった。
「うわああああああ!!」
「お、おい!どこいくんだよ!阿部!」
泣きながら部室を飛び出していった阿部を
花井は引きとめようとするが、かなわず。
「お前らなぁ、ちょっとは真面目にやれ。」
深くため息をついてみんなの反省を促した。
「野球好きな子がいいんじゃない?」
栄口が軌道修正に協力したが。
「でも、やっぱり可愛い子がいい。」
水谷が控えめに水を差す。
「どんな子がきてんだ!?写真とかないのか!?」
田島が目をきらきらさせて質問するが
「あほ。あるかんなもん。」
花井がジト目で睨みつける。
「お!おにぎり!!」
三橋の突然の発言に。
「そうだな、おにぎりうまい奴がいいよな!三橋!」
田島が翻訳機能つきで同調する。
「そうだな~・・・。問題は優先順位だよな。」
花井のうめきに。
「優先順位?」
沖が当然の反応を示す。
「いや、だからさ。マネジとしての力を優先すんのか。
野球の知識を優先すんのか。顔と性格を優先すんのか。」
「公私混同しない性格っつうのが優先じゃねえ?」
泉がもっともな事をいう。
「そ~だね。知識や実力はなんとでもなるけど、性格は無理だもんね。」
栄口の常識的な発言に。
「でも!やっぱり可愛い子がいいよ~!」
水谷が最後の足掻きを見せる。
「で、誰が面接官になるよ?」
泉の提案で、一触即発の空気に変わった。
なんだかんだいいながらも、
みな、自分好みの可愛い子がいいに決まっている。
花井が面接官になるのは当然としても
阿部はすでに脱落。
副主将の栄口が参加できるとなっても
あと、一人ぐらいならいいだろう。
その一人に滑り込み、自分好みの可愛いマネジを獲得できるか!?
三橋なら胸のでかさだけで選ぶだろうし。
巣山はデカ尻、泉は小尻。
沖、水谷、田島は顔だけで選んで性格マズイの掴みそう。
西広は読めない。
「公平に・・・・じゃんけんするか?」
ゴクっと生唾を飲み込む音が静かな部室に響き渡り、
図ったように同時に皆、腕を振り上げた。
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「マネジ希望者?ああそんなの、私と千代ちゃんでもう
面接して、決めたよ。」
さらりと伝えたモモカンに、
敗者はほっと胸をなでおろし、
勝者は滂沱の涙を流したという・・・・・。
終わり
最終更新:2008年01月06日 20:05