7-758-760 小ネタ in桐青 1
どうやら利央に彼女がいるらしい。
という情報が真柴よりもたらされたある日、食い付かずにはいられない先輩方は当然のように、昼休み、利央を屋上へ連れだした。
「利央、お前が西浦のマネージャーと付き合っていると、情報が流れているんだが」
真顔で利央に詰め寄る島崎。山ノ井は笑顔で、河合は苦笑いでそれを見守っている。
「準さ~ん、このお兄さん怖いっす~」
と高瀬に助けを求めたが、
「利央、素直に吐いた方が身の為だ」
高瀬は救いの手を差し延べてはくれず、それどころかそう言うと同時に大爆笑した。
「ひっでえ!だいたい、付き合うつっても週1会うのがやっとなのに、何かあるわけないっしょ!?」
半ばヤケになった利央が叫んだ。
島崎はゆっくりと後退り、仲間とボソボソ喋る。
「聞いたか?」
「うわぁ、純愛」
山ノ井が心を込めずに呟く。
「まあまだ学生だし」
河合がとりなす。
「手ぐらい握れよな」
島崎がしみじみと言った。
「仕方ないっすよ、利央の奴はヘタレだから」
「って準さん聞こえてますから!ばっちし聞こえてるから!ヘタレってなんすか!」
利央の声を一切無視し、
「あー、ヘタレだねえ」
「ま、利央だしな」
「ヘタレだったっけか、そう言えば」
「有名っすよね、利央のヘタレ振りは」
「そうか、とうとう他高にまでヘタレ振りが広まったか」
先輩方は『利央はヘタレ』と結論付けた。
「だから何でヘタレなの!?」
「だってさあ、利央の場合」
山ノ井が利央を指差し、
「『私を抱きしめて』って言われたら、ずーっとそのままで、次に繋がる行為はしなさそうだから」
淡々と宣告した。
「…………はああ!?」
「山ちゃんよ、それは、そんな美味しい状況でキスすら出来ねえって事か?」
島崎が笑いながら問うた。
「性行為まで持ち込めないんじゃない?」
結構直球だね、山サン…。
利央の目に涙が浮かんだ。
高瀬が「つまり」と呟いた。
「据え膳食えねえ、と」
「『食えない』んじゃなくて、『食わない』んじゃないか?いろいろ考えすぎて」
河合の発言に一堂は一瞬声をあげたが、よくよく考えればフォローになってない事に気付いた。
『いろいろ考えすぎて何も出来なきゃヘタレだろ』と心の中で突っ込む。
「…利央が彼女にフェラさせるって、想像出来るか?」
島崎が皆に問う。
「利央が女を押し倒す事自体想像出来ねえ」
高瀬が口許を手で覆った。
「入れる前に暴発してそうだね」
何故か楽しそうに山ノ井が呟く。
「…あんたら、俺の彼女の話、聞きに来たんじゃ…」
「「「利央イジると面白いから」」」
三人にそう言われて、更に落ち込む利央の肩を、河合は万感の思いを込めて優しく叩いたのだった。
終
最終更新:2008年01月14日 12:30