5-6-12 小ネタ
「なーなーお前ら、何フェチ?」
ガヤガヤと煩かった部室が一気に静寂に満たされる。
また始まったと西浦ナインはため息をついた。
「田島、今度は何だよ」
「だからフェチだよ!女のどこにそそられる?って話だよ!」
「またそんな話かよ…まあでもちょっと興味あるな」
「泉ー!だろ?ケンゼンな男子高校生ならこういう話するだろー!ゲンミツにさ!」
「そういうお前はどこなんだよ?」
「オレはぜってえおっぱいだね!男のロマンだよ。でかけりゃいいなー」
「まあそんな所だと思ったけどな」
「なんだよ、花井、おまえもおっぱい星人だろ!」
「なッ…!なんでだよ!」
「モモカンの…「うるせえ!」
花井は懸命に否定するが皆にはバレバレであった。
「巣山とかどーよ?」
「なんか巣山ってこだわりありそう!」
「あーありそうだよね」
「おいおい好き勝手言ってんなよ。ま、俺は手フェチだな」
「手かよー」
「あと爪の形が綺麗な奴っていいよね」
「栄口お前わかってんな」
「いやあ…ん?三橋どうした?」
「お、おれも…手が綺麗な人がす、すきだッ」
「おいおい三橋もかよ!なんで?」
「お、おれ投手だし、手、だいじ…」
『んな理由かよ。だがそこがいい』
ここに奇妙な手フェチ連合が結成された。
無敵の二遊間である。
「泉は?」
「俺?…んー俺はうなじだな。
女子が髪結ぼうとしてる時にあげるのとか結構ドキっとするな。
つい目がいくな」
「あ、俺も好きだな、うなじ。後れ毛とか垂れてると色っぽいっていうか」
「いいよな、ポニーテールっつうの?最近見ないよな、あの髪型」
「泉と沖はうなじかー」
「そういう水谷はどうよ?」
「え、俺?俺は女子のブラが透けてるのが好きだな!あはは」
『それはフェチじゃねえよ』
全員心の中で突っ込みをいれた。
「西広はー?」
「えっ、俺?」
「先生の事だからこだわりありそう!」
「えー俺は…脚かな」
「足か」
「細すぎず太すぎずっていうかスラっと伸びてる足はいいよね」
「ふくらはぎは焼けてるのに太ももだけ白いのとかちょっとドキっとするよな」
「足首とかキュっとしてるのとか!」
「皆結構足好きだな」
「俺も脚フェチだけど」
全員の視線が沈黙を保っていた低音ボイスに向かう。阿部だ。
「へえ、阿部もか。全体的に好きなん?」
「いや、脚と言っても色々あるんだよ」
「へえ…たとえば?」
「俺が好きなのは足の付け根の窪んでる部分だな」
「はあ?」
「ただの窪みじゃないんだよあそこは。足首を上に動かした時にだけ
発生する別名奇跡の湧き水なんだよ。
骨が浮き上がってそれと一緒に窪みが綺麗に浮き上がるのがいいんだよ」
「マニアックだな…」
「あとふくらはぎの下の方が少し段になる部分だな。
痩せ過ぎの女には出来ないからな、痩せりゃいいってもんじゃねえんだよあれは。あと」
「まだあんのかよ!?」
いたたまれなくなり、花井が突っ込んだ。
「なんだよ花井は黙ってろ。
あと太ももの裏の、膝から20cmくらい上方にある血管が浮き出る所だな。
太ももは足を揃えた時に少し隙間が出来るくらいの細さがいいんだよ。
あれを奇跡の逆三角ラインと呼ぶんだ」
『阿部気持ちわりいいいいいい!!!』
ザザーっと全員が壁にまで後退し、逃げ腰になったその時。
ドアのノックする音が聞こえた。
「みんなもう着替えたよね?」
我らが可愛いマネジ篠岡が顔を覗かせた。
何の因果かあの阿部と付き合っているのである。
「お疲れ様ー。阿部君これ今日言ってたデータね」
「おお、サンキュ」
「あれ、篠岡、お前足虫刺されてんぞ?」
花井が篠岡の足を指差しながら言う。
「え?あ、こ、これは、あははっそうだね!」
「何か何箇所も刺されてるみたいだけど…」
「練習中はジャージだったから、気づかなかったのかなっ!あはは…」
「太ももと足首とふくらはぎ…凄いいっぱい刺されて… !!!」
花井がそこまで言うと、全員の頭の中に同じ言葉がよぎった。
『あれって…キスマークじゃないの!?阿部の!?』
「じゃ、じゃあ阿部君帰ろうか!」
「ん?ああそうだな、じゃーな」
二人が部室を出て行くと部室内は時が止まったように静まり返り、誰もが言葉を発せないでいた。
ようやく花井が重い口を開く。
「オレ、阿部の脚フェチの話聞いて、阿部が篠岡の脚にニヤニヤしながら
キスマークつけてるの想像しちった…」
「安心しろ、俺もだ…」
おれも、オレも…と項垂れながら次々と西浦ナインは同意を口にした。
がんばれ西浦ナイン!負けるな西浦ナイン!
おわり。
最終更新:2008年01月06日 20:11