5-155-167 サカチヨ


「え、栄口くんと、まだやってないの?」
「しー!バカ、声大きいよ!」

友人の驚いたような声に、千代はあたりを見回す。
野球部員達は少し離れた席で、昼食をとっていた。
誰もこっちを気にしている者はいないようだ。
千代は小さく息をついて、友人に向き直る。
「…まだ、だよ。おかしい?」
「おかしいっつーか…。だってあんた達、もう4ヶ月くらい経ったよね、
つきあい始めてさ。」

千代は無言でこくりと頷いた。
「なんもなし?おっぱい触られた、とか。あ、キスくらいはしてるよね?」
「キ、キスは、してる…、けど。」
「だけ?」
「う…。」
千代は口篭もった。

「はぁ~、キスだけ?高校生なのに?なんだ、栄口くんて、奥手なのかな。」
ほんとは、1回だけ服の上から胸を触られた。
驚いた千代が思わず拒んでしまってから、彼は千代にキス以上のことはして来なくなった。
「それとも、インポだったりして?あはは。」
「違うもん!」
机をドンと叩い千代に、クラス中の視線が注目した。

「うわわ、千代、ごめん、冗談だってば。」
涙目になった千代に、周りを気にして友人が慌てて謝る。
「ううん、私もごめん。おっきい声出して…。
でも、栄口くんのこと、変なふうに思われたらやだ…。」
「お、思わないよ~、栄口くん、真面目っぽいもんね。
きっと、千代のこと大事にしてくれてんだよ。ねっ?」
「うん…。」

大切にしてくれてる、とは思う。
優しいし、絶対に千代が嫌がることはしない。
だから、あれきりもう千代の体に、性的な接触はしてこない…。
でも、それはもしかして、自分に興味を失ってしまったからじゃないだろうか?
そんなことをぐるぐると考え、千代は不安で仕方なくなっていた。

同じ中学出身の千代は知っていた。
栄口には、中学を卒業するまでつきあってた相手がいたことを。
クラスは違ったので、詳しくは知らない。
でも、仲良く手を繋いで帰るのを何度か目撃していた。
あの子とは、したのかな?やっぱり向こうの方がいいって、思ってるかも。
そう考えると、手も足も出ない過去のこととわかっていながら、嫉妬と不安で心が揺れる。

「そんなに不安になってるなら、さっさとやっちゃえばいーのに。」
「で、でも…。」
友人の言葉は直球すぎたけれど、不安なのは確かだ。
原因は自分にある…。


「紅茶でいい?」
「うん。」
何度目かに訪れた栄口の部屋で、千代はひとりずっと緊張していた。
ちらっと見ると、ベッドは朝のままなのか、乱れている。
今日は覚悟を決めてきた。いつまでも何もないから不安になるんだ。

来る途中で借りてきた、甘ったるいラブストーリーのDVDを並んで見る。
千代の頭に、ストーリーは全く入ってこない。栄口は早くも眠そうだ。
自分達の微妙な距離に気づき、千代は少し体を動かして栄口に寄り添う。
栄口はパッと千代を見たが、そのまままた画面に目を戻した。

「あんま、おもしろくなかったね。」
映画が終わり、栄口がぐっと伸びをしながら言う。
「うん…。」
千代の頭には、映画の内容は何ひとつ残っていなかった。
ずっと喋らない千代を変に思いながらも、栄口は明るく声をかける。
「ゲームでもする?こないだオレ負けたから、リベンジ…。」

ふと、千代が栄口の腕に触れた。指先は冷たく、微妙に震えている。
「…どうした?」
やっぱりなんか様子が変だ。栄口が聞くと、千代は小さな声で呟いた。
「キスして。」

普段と違うテンションに面食らいながらも、栄口は千代の肩に手を置き、そっと唇を重ねた。
「なんかあったの?」
離れた唇から、栄口の囁く声が聞こえる。
千代は栄口のシャツの襟元をぎゅっと掴んで、もう一度キスをした。
「しの…。」
勢いに押された栄口が、座っていたベッドに倒れ込んだ。

「あぶねっ…。」
バサッと音をたてて、2人は柔らかいふとんの中に沈み込む。
抜けた羽毛がふわふわと舞って、千代の髪に止まった。
「…?」
自分の上に馬乗りになった千代を見上げ、栄口は彼女の髪に付いた羽毛を取る。
「どうしたんだよ。大丈夫?」
頬っぺたを撫でると、千代が顔を上げた。
「栄口くん、好き。」
そう言うと千代は、栄口にしがみついた。

「篠岡…?」
なんか様子がおかしい。ていうか、体勢も微妙だ。
栄口の胸には千代の胸が押し付けられ、捲れたスカートから太腿が露出している。
腹には千代の下半身が密着して…。
ヤバイ。これじゃ変なスイッチが入ってしまう。
栄口は千代を引き剥がそうとした。
「おーい、篠岡?どうしたんだぁ?ゲームしようぜ、ほら、な…。」

しがみついた腕は簡単に解け、栄口の両手で支えられた肩は、力なく押し返される。
俯いた千代の目からこぼれた涙が、栄口のシャツの胸に染み込んだ。
「なんで…、泣くの?オレ、なんかした?」
栄口は慌てて飛び起きて、千代の涙を拭う。
「私のこと、嫌いになっちゃった?だから、もうしたくないの?」
「なに…。なに言ってんの?どうしたんだ?」

栄口は訳もわからず、ただオロオロしている。
「だって…。エッチ、とか、しようとしないじゃない。
わ、私が…、触られるのいやがった、から。嫌いになっちゃったの?」
栄口は驚いて、俯く千代の顔に両手を添えると、自分の方に向けた。
「違うよ、篠岡。嫌いになんかなるわけないだろ?
そんなこと気にしなくていいんだよ。やだったらやで構わないんだ。」
「で、でも。」

栄口が、膝の上の千代をぎゅっと抱きしめる。
「オレ、ホントに篠岡に嫌われたくないんだよ…。ずっと一緒にいたい。
したくないことないけど、篠岡がやだっつーなら、そんなのしなくたっていいんだ。
いやなこと無理にさせたいわけじゃない。だから気にしないで?な?」
千代の頭を撫でて、栄口はにこっと笑った。

「あ、紅茶、入れ直してくるよ。ちょっと待ってて。すぐ戻るからさ。」
千代を膝から降ろし、立ち上がろうとすると、栄口のシャツがぐっと引っ張られる。
「篠岡…。」

「私だって、栄口くん好きだもん。ずっと一緒にいたいよ。
栄口くんが私のこと好きで、し、したいって思うなら…。」
千代は深呼吸して、栄口を見る。
「私だって、そう思ってるって…、どうして思わないの?」

「篠岡…。」
呆然とする栄口に、千代はまた不安になる。
やっぱり自分は、変なことを言ったんだろうか…。
「なんか、言って…。栄口くん。」
緊張で体が震える。心臓がドキドキしすぎて苦しい。

「マジで…?マジで言ってんの?どうしよう、嬉しい…。」
「ほ、ほんと…?」
栄口は、千代を抱きしめると、深くキスをした。
「んぅ…。」
激しいくちづけに、声が漏れる。唇が離れると、千代ははぁっ、と息をついた。

「ほんとにいいの?オレ、もうヤダって言われても、やめらんないよ?」
「いいの。私は、栄口くんが欲しいし、栄口くんのものになりたい。」
千代の肩は小さく震えていたが、恐れはなかった。

ボタンを外してシャツを開くと、薄いピンクのブラジャーに包まれた、
小さな白い膨らみが現れた。
栄口の手が、遠慮がちに千代の胸に触れる。
「すげ、柔らかい…。」

背中に手を回してホックを外し、ストラップに指を掛けするりとずらす。
自分のささやかな胸に、栄口の視線が突き刺さるように感じ、千代は顔を赤らめた。
「ごめんね、ちっちゃくて…。つ、つまんないでしょ。」
「全然…。メチャクチャ興奮する。」
そう言って、栄口は千代の淡い色の乳首に吸い付く。

「あんっ…。」
千代の体がピクリと震え、小さく声が漏れる。
「可愛い声…。もっと聞かせて?」
「え、や、そんな。ぁ…。」
小さな乳首を摘んで捏ね、音を立てて舐めると、きゅっと硬く勃ち上がった。

くすぐったいような快感に、少しずつ逃げる千代の体を、押さえ込んでベッドに倒す。
捲れあがったスカートから、ブラとお揃いのピンクのショーツが見えた。
布の上から割れ目に指を這わす。ぷよぷよして、柔らかい。
「ふぅ…っ、あ、あ…。」
ゆっくりと擦ると、千代が足をもぞもぞと動かす。
「どんな感じ?」
「へっ、へんな感じ、ああっ。」

栄口の指が下着の横から侵入する。粘液が指に纏わりついた。
「や、あっ!」
小さく存在を主張するクリトリスに、蜜液を塗りつけて撫でると、千代の腰が跳ね上がる。
「ぬるぬるしてる…。気持ちいい?」
「そういうこと、聞かないで、よぉ…。」
千代は赤い顔を手で隠しながら喘いだ。

栄口がショーツに手をかけて、脱がしにかかる。
ピンクの布は、透明の糸を引いて肌から離れた。
「篠岡、すげー濡れてる…。」
千代はもう何も答えられず、ただ顔を隠してはぁはぁと息をするだけだ。
膝を掴んだ栄口の手に、ほんの少し力が入って、閉じられた足が広げられてゆく。
あ、見られちゃう…。咄嗟に手でそこを隠す。

「隠しちゃダメ。全部見せて。」
栄口が千代の手を剥がして、片手で押さえ付けた。
「やぁ…。あんまり見たら、ヤダ…。恥ずかしいよ…。」
泣きそうな声で千代が言っても、栄口は掴んだ千代の手を離さなかった。
もう片方の手で秘唇に触れ、指で割り開くと、くちゅ、と音がする。
「可愛い。」
そう言うと、開いたその部分に舌を寄せた。


温かくて柔らかい舌の刺激に、千代は身を捩った。
「さ、かえぐちく…。そんなとこ、き、汚いよぉ。」
「汚くないよ。」
逃げようとする千代の足を抱え込む。
「やっ、ダメぇ、栄口くん!あ、んっ!」
嫌がって、逃げようとしてるのに、奥からは次々とぬるぬるの液体が溢れてくる。
羞恥に戸惑い、泣き声をあげながらも、気持ちよくなってしまう千代が、
可愛くて、いやらしくて。

もっと、泣かせたい…。
トロトロの蜜が溢れるそこに、中指を挿入する。
きゅっと指を締め付ける、温かな粘膜の感触。
ゆるゆると指を動かすと、千代の反応がより大きくなってゆく。

「さ、さかえぐち、くん…、もう、や…、やだ、やだぁ…。」
栄口は、自分の頭を力なく押し返そうとする千代の手を、ぎゅっと押さえ付け、
舌と指とで執拗に愛撫を続けた。
千代の体がぶるぶると震えてくるのに気づく。
あ、もしかして…。イク、のかな?

指を2本に増やして膣壁を擦る。奥まで押し込むと、蜜液が溢れ出した。
優しく舐めていたクリトリスを強く吸うと、千代が悲鳴をあげる。
「そこ、そんなにしたら…っ、」
したら…?
「あ、あっ…!やあああああ!」
千代は大きな声をあげ、体を仰け反らせた。


「大丈夫?」
ぐったりした千代の肌に触れると、少し汗ばんでいた。
「うん…。」
焦点が合わないような、とろんとした千代の目に、股間がズキズキと疼く。
この熱い体を早くどうにかしたい。

もどかしいような気持ちで服を脱いでいくと、ふと視線に気づく。
千代が体を起こして、あの潤んだ目で栄口を見つめていた。
「気になる?」
栄口の問いかけに、ハッとして千代は目を逸らした。
「あ、あ、ごめんなさい…。」

ジッパーを下げ、パンツからガチガチに勃起したペニスを出す。
「いいよ、見てて。ね、触って。」
「え。」
促され、千代はおずおずと手を伸ばし、そっと熱いそれを握る。
「うぁ…っ。」
栄口の声に驚いて、千代は手を引っ込めた。
「ご、ごめんね?なんか、変なことしちゃった?」
「いや、気持ちよくて。もっかい、触って。」
「ど、どうすれば…。」

再びペニスを握る千代の手に、栄口は自分の手を添えた。
「こうやって、擦って。」
ゆっくりと上下に擦りだすと、先端にじわりと透明な液が湧き出す。
それに触ってみたくて、千代はもう片方の指で先端を撫でる。
ぬるりと液で指が滑る。感触が気になって、何度もそこを撫でた。

「し、篠岡ぁ…。それヤバイ、気持ちいい…。」
見上げると、目を閉じて眉間に皺を寄せた、栄口の顔が見える。
苦しそうに見えるこの表情は、快感から来るものなのか…。
もっと、気持ちよくさせたい。
「ね、どうしたら、もっと気持ちいい?」
「え、も、もう充分気持ちいいけど…。舐めてくれたらもっと気持ちいい、かも。」
舐める…?

ドキドキしながら亀頭に舌を這わせると、栄口がピクッと反応する。
先端の透明な雫を舐め取ると、しょっぱいような、舌に絡みつくような味がする。
思い切って先っぽを口に含むと、栄口が小さく声を上げた。
「気持ちいいよ、篠岡…。」
嬉しい。もっともっと気持ちよくしてあげたい。
ぎこちない動きで、懸命にペニスを咥える千代を見ていると、じわじわと
快感が迫ってくる。

「篠岡、もういいよ。」
急に頭を掴んで止められて、千代は不安そうに栄口を見上げた。
「ごめんね、ヘ、ヘタで…。痛かった?」
「違う。このままじゃ、篠岡に入れる前にイッちゃいそうだから…。
ね、入れていい?」
千代はパッと頬を染めると、黙ってこくんと頷いた。

ベッドの上に組み敷かれ、千代は目の前の栄口を見つめる。
不思議なほど怖さはなかった。
「幸せすぎて、泣いちゃいそう。」
栄口の言葉に、小さく笑って千代が答える。
「私も。」
ちゅ、とキスをすると、栄口はじっと千代の目を見た。

「篠岡、大好きだよ。ホントに大好きだ。
オレ、お前に痛い思いさせちゃうかも知んないけど、許してくれる?」
「痛みでも何でも、栄口くんがくれるなら、私は全部嬉しいと思うよ。」
千代の笑顔に、栄口は思わず泣きそうになる。

「篠岡ぁ…。」
もうひとつ、優しいキスをして、栄口が千代に入り込んでくる。
「うわ、篠岡の中、すげーあったかい…。」
「栄口くん…も、すごい熱いよ。ん…っ。」

引き裂かれるような強い痛みと、栄口の温度を感じながら、
千代はぎゅっと目を閉じた。

シーツに点々と付いた血の跡を見て、栄口は千代を抱きしめた。
「血、出ちゃった…。ごめんな。」
「私こそ、おふとん、汚しちゃって…。」
栄口の裸の胸に顔を寄せると、少し汗をかいていて、早い鼓動が聞こえる。
痩せていると思ってた体は、思いのほか筋肉が付いていて、逞しかった。
抱き合わなければわからないことが、たくさんあるんだな、と今初めて気づく。

「痛かった?」
「うん。すごい痛かった。」
「う~、マジごめん…。」
「謝んないで。私は、嬉しかったんだから…。」
痛かったけど、その何倍も幸せを感じた。これは本心だ。
栄口くんとなら、幸せと共に、気持ちよさも覚えていけるんじゃないかと思う。
「2人で、ゆっくり気持ちよくなってこ。」

栄口は、腕の中で自分を見つめる千代を見た。
オレはもう気持ちいいけど…。
そうだな、篠岡の気持ちいい顔見たら、もっとずっと気持ちよくなれるよ。

「努力します。」
栄口の言葉に、千代はふふっ、と声をたてて笑う。
「期待してるね。」

お互いの頬に手を沿えてキスをすると、おでこをくっつけて2人は笑った。





最終更新:2008年01月06日 20:14