元々
ルベルムリリーは花人達が住まう三つの小さな国であったとされる。遺された文献や遺跡などを見ると、もしかしたらもっと小さな集まりであったのかもしれない。
一つは豊かな草原を移動しながら住まい、草花と音楽と織物を愛し、春と花の女神『リリウム』を神とする『リリウムの者』
一つは広い土地を持つ山岳地帯を拠点とし、グランシャリオの文化をまるっと無視して豊穣と愛の女神『ヴェリア』を敬愛しながら農耕や狩猟に勤しむ『ヴェリアの者』
そしてもう一つは密林の奥深くに住まい、退廃と禁断の女神『フルーク』を讃えながら製薬や呪術を生業に生きる『フルークの者』が、現在のルベルムリリーの領土を、他の種族からの影響を受けず、多少他の部族の花人といがみ合い、時に協力しながらも暮らしていた。
少なくとも、1000年ほど前までは大きな争いが起こる事も無く、平穏に暮らしていたようだ。
1000年前
其れが統合された切っ掛けは1000年前に起きた『ヴェリアの者』による『リリウムの者』への侵略である。其れまで温厚なものが多かった『ヴェリアの者』の長である若い男が、彼らの持つ肥大な土地と『リリウムの者』の長の妻である美しい花人を欲したのである。
997年前
武力は有るものの戦闘部族ではない『リリウムの者』は『ヴェリアの者』に苦しく長い戦いを強いられる事となり、敗戦を覚悟した『リリウムの者』の長は血族の安寧のため、己の妻子を逃す事を決意する。
美しい妻は戦乱の最中出奔するそぶりを見せるが、幼い男女の双子を侍女とその伴侶に預け、夫と共に最後まで抵抗し、最期は自らの身に火を放ったと言われている。
985年前頃
『リリウムの者』たちが自らの領土を削ってゆく中、争いを憂いながらも草原の東端に有る花園で身を潜めていた長の娘が争いを鎮圧する決意を固める。復讐のために刃を振るう己の兄である花の騎士を説得し、自らを『リリウムの乙女』と名乗る。和解と共存のために隣国であるラステロイの精霊王に謁見を行い風の王の双子の妹である大地の精霊と、更にその下の妹であり『リリウムの乙女』の親友となった水の精霊の少女を初めとした妖精や精霊の力を借りて『ヴェリアの者』の兵達に対抗したのである。
妹に説得を受けた兄は感銘を受け、妹に全てを捧げ忠誠を誓ったとされている。
980年前頃
花の騎士を始めとした精鋭の猛攻や精霊の力を借り、『ヴェリアの者』達の制圧に成功。『リリウムの乙女』は争いに傷ついた者を敵味方分け隔てなく癒し、全てを労わったとされる。彼女の人柄に触れた『ヴェリアの者』達は投降。
花の騎士との一騎打ちに敗れた『ヴェリアの者』の長また、憑きモノが落ちたように考えを改め、彼女のために剣を振るう事を誓う。
その弱体化した『ヴェリアの者』と『リリウム&妖精連合』を潰すべく、『フルークの化身』を名乗る幼い少女を頭とした『フルーク』の術者達が強襲を開始。
その中で『フルークの化身』は『ヴェリアの者』の長の洗脳と長年の争いを裏で操って来ていた事をほのめかしており、花人と精霊達の間にフルークの考えを広め退廃へと誘う目的のために襲撃を掛けたとされる。
975年前頃
精霊に続き『ヴェリアの者』とも同盟を結んだ『リリウムの者』は『フルークの者』と長い戦いを続け、少しずつ優位に立つ。
最後に行われた戦いは密林と草原の中間地点であり、リリウムの乙女は『ヴェリアの者』の長を始めとした戦いに長けた花人や妖精、そして自らの兄の犠牲を払いながらも『フルークの化身』に勝利した。
『フルークの化身』は捕えられ、その罪の重大さにより火あぶりの刑に処されたとされている。
『フルークの者』はこの後衰退し、殆どは『リリウムの者』に下ったと言われている。
これ以降『リリウムの乙女』が花人の生息地域を纏め、現在のルベルムリリーの基盤を作成。
花人達の共存を目指し独立を始める。
970年前頃
ヴォーレン・フロイライズ・ルベルムリリーの建国。初代女王として『リリウムの乙女』が即位。
ラステロイとの同盟をより強固なものとするために親友であり先の戦いの仲間でもある水の精霊の娘を妃として迎える。
870年前頃
彼らの長子が二代目の女王に即位。通例に従い騎士団の娘を娶る。
現在の『根・花・蕾』の制度に近いものへと強化を図る
750年前頃
三代目の女王が即位、従妹の姫を伴侶としている。
領地を四つに分け、4人の領主を即位させる。
630年前頃
四代目の女王が即位。
短命の王であり、病死した事が記されている。
600年前
五代目の女王が即位。
極めて長命な花人の例に上がっており、彼女の治世は300年近く続いたとされる。
290年前
六代目の女王が即位。
特に記述は無い。
150年前
七代目の女王が即位。
アガテスタや
クレスティンなどの近隣国の商人の出入りを赦すようになる。
80年前
八代目女王、ミラベーラが即位。
今に至る。
こぼれ話
- 初代女王として即位した『リリウムの乙女』、あるいは『初代ルベルムリリー』は様々な肖像画が出回っているが、一枚だけ樹角が飾られた絵が遺されている。亡き兄の遺した角であると言われているが、一部では彼女が男性、あるいは両性であった、などとという否定的且つ危険な見方をしているらしい。
- 肖像画に描かれている歴代女王は四代目までは青い瞳である。五代目以降からはラズベリー色の瞳をしている。
- 五代目の女王は第二王女であったらしいが、彼女の身の回りでは先代女王と双子の姉である第一王女の病死、姉の婚約者の事故死など不審な点が多く見られている。
最終更新:2015年04月21日 23:03