砂絵の魔女

砂絵の魔女

その性質は自壊。
少女はあまりにも無知だった。
己の願いが何を意味するのか理解しておらず、理解した時には手遅れだった。
彼女の魔法は最小の単位を操ること。最小故に、最多の数字を操ること。
そのような途方もない制御など、神ならざる少女にできるはずなどなかったのに。
最初に、少女は右手を失った。
魔法は確かに発動し、使い魔を素粒子にまで分解した。少女の一部もろともに。
次に、少女は両足を失った。
逃亡の為に重力を操ろうとした瞬間、彼女の膝より下は潰れてしまった。
次に、少女は全身を失った。
抵抗すらできず、その身は生きたまま無数の使い魔にむしゃぶり尽くされた。
最後に、少女はその魂を失った。
己の願いの意味を知った魔法少女は、成長して大人になった。
この魔女は常に自身のどこか一部を分解しては別の形に作り直している。
自傷の痛みに悶えながら、しかし大好きだった最小の粒になれることを喜んでいる。
いつの日かその痛みから解放されるまで、彼女は己の姿を変え続けるだろう。


魔法少女時代 柔頭 莉乃(にゅうと りの)

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最終更新:2012年11月13日 03:19