第二次世界大戦の最中、ドイツ、ソ連の両方からの弾圧により、ウクライナ民族主義者組織 (OUN) がウクライナの独立の為に戦っていた。
ウクライナにいる数百万の人々は劣等人種扱いされ、「東方労働者」としてドイツへ送られて強制労働に従事させられた。
土地も、穀物や材木などは次々と刈り取られ、両軍の激戦区であったウクライナはどんどん荒廃して行った。
ミーラ(リュドミーラの愛称)は戦いが激化する前に母方の故郷であるソ連の方に移り住んでいたが、
度重なる戦いで荒れ果てて行く故郷に悲しみを感じ、何より何も出来ない自分に不満と苛立ちが募る毎日を送っていた。
そしてある日、ソ連兵として戦っていた父が戦線中で行方不明となった事を知り、ドイツ軍に、戦争全てに大きな憎悪を抱く。
その感情を感じ取ったキュウベぇに「戦いに必要な全てが欲しい」と願い、彼女は同年代はもちろん、
歴戦の兵達と並ぶ程の戦闘能力を身につける。自身の手で戦いを行う全てに断罪を下す為に、魔法少女としての能力を使いながら、
ソ連兵の部隊に入り込み、最前線で激しい戦いを繰り返していた。しかし彼女の願いは戦いに必要な全てを手に入れても、
差し出した物が少なかった事が災いした。戦争に必要な精神は持っていても、戦争に不必要とも言えるまともな神経も併せ持った彼女は、
戦いの度に鋼の精神で耐えていても、その内面は人の命を奪う事に対して全くと言っていい程無防備なままだった。結果戦争の全てを憎んだ彼女は、
戦争の全てに蝕まれて行くこととなり、ドイツ側に渡ったウクライナ人を集めて作られた武装親衛隊(SS)である「ガリツィエン」や、
ウクライナ蜂起軍として攻撃して来る故郷の人間達とも戦い、故郷の人間の多くを殺して行った。しかし彼女に止めを刺したのは仲間達であった。
「戦争がどれほど上手でも、お前は兵士に向いていない」
「もう戦うのはやめてほしい。あんたのような奴が苦しんで欲しくない」
その言葉は優しさに満ちあふれ、同じだけ残酷であった。
1953年、スターリンの死後ウクライナの名誉は回復し、冷戦と言う苦難、チェルノブイリ原発事故と言う大きな災厄を抜けたウクライナは、
長きに渡る年月を経て、1991年についに独立を果たす。その大いなる道の中途にいた一人の少女を覚えている人間は、ほとんどいない。
最終更新:2012年11月23日 16:24