ある日の一コマ2

 「…お前を呼んだつもりはねェが…まァいいや。
  集まってもらったのは他でもねェ…お前らと今から…

  大富豪をやろうと思ったからでーす! イェーイ! ヒューヒュー!」

 真剣な顔をしたかと思えばなんともトンチンカンなことを言い出し挙げ句一人で盛り上がり始めたハギを横目に、おがみはドアノブに手を掛けた。

 「……部屋で寝る…」

 「オイコラ待ておがみ、今日の夕飯ハンバーグにしてやるからさ。…頼むよ、やろうぜ大富豪。いいだろ? な? な?」

 「やろうよおがみちゃん! わたし、みんなでダイフゴウやりたい!」

 アラサー女の懇願におがみは苦笑いを浮かべていたが、いちごの言葉を聞き、…じゃあ、やります…と頷いた。
 ろっとちゃんは勿論、なぜか笑子も参加するようで、期待に満ち溢れた視線をハギに向けている。

 「んじゃー始め、」

 「あ…すいませんハギさん、一ついいですか?」

 またも遮られてしまい、眉間に皺を寄せながら発言者基おがみを見る。
 当の本人はハギの表情など気にしていないかのように、言葉を続けた。

 「ダイフゴウって、なんですか?」

 「え」

 「あ、わたしもわかんない!」

 「えっ」

 おがみに続き手を上げたいちごを見て、ハギは驚きに目を見開く。今時の子は大富豪を知らないのか…と項垂れたが気を取り直して何時の間にかソファで寛いでいる笑子に視線を移す。
 アイマスクで目元は見えないが、口元だけで笑子は困った笑顔を浮かべてみせた。

 「ごめん、私もわかんない」

 「……ろ、ろっとちゃんは知ってるよな?」

 期待を込めてテーブルの近くに座っているろっとちゃんを見る。彼女は右耳のピアスを弄りながら、頷いた。

 「金持ちのことでしょ?」

 なぜか少し自慢気に言い放ったろっとちゃんに、ハギは無言でトランプをリビングの隅へと投げた。
 バキャンというケースが割れる音が聞こえたが何事も無かったかのようにテレビへ近付き、Wiiの電源を入れる。

 「トランプとか今時古いよな。マリカーしようマリカー。やっぱ現代っ子はマリカーだもんな」

 空笑いしながらベビィピーチを選ぶハギの背中を見て、一同は苦笑いを浮かべたとか…。

 

作者:在原

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最終更新:2014年05月19日 12:37