「おっはよーラフェ!よく眠れた?」
「おはよう……眠れた」
「それは良かった!今日は朝ごはん、外で食べよっか。ね?」
「うん」
「よしっ!じゃあさっそく行こうか。はい、手貸して」
「……ん」
「よし、れっつごー!」
私は知ってる。レイラが手をつなごうって言ってくるのはいつものことだけど、嫌なことがあった時とか、悪い夢を見た時は、ほんの少し力が入ってること。
そして、そんな時は、いつも以上に口数が多い。
少し、前の話。
「手が冷たい人は心があったかいなら、私は手があったかいから、心、冷たいんだね」
何の気なしに私が言うと、レイラは笑って、「それは違うよ」と言って、こう続けた。
「手があったかい人は、他の人の手を温めてあげたいって優しい心を持ってる人。ついでに、普通くらいの温かさの人は、温めてもらった手で、手の冷たい人を温めてあげようって思ってる人。だから、みんなあったかい心を持ってるんだよ」
レイラの手は、とても冷たい。氷みたいにひんやりしている。
ただ単に心があったかいから、ではなくて、他の人を温めようと無理をして、熱を全部持ってかれたんじゃ、と思ってる。
それでも、まだなんとかして他の人を温めたいと考えているんじゃないか。そう思えるほど、レイラの心はあったかい。
私はレイラに助けてもらった。冷たい手で一生懸命、心を温めてもらった。
私の手は、あったかい。この手は、レイラの手を温めることができる。
でも私は、レイラの心を温める方法を知らない。
だからせめて、レイラが他の人を温められるように、今日も傍にいようと思う。
作者:銀