ーーとあるアパートの一室にて
アリス「私が……二人……?」
散歩から帰ってきたアリスは、自室に自分と全く同じ姿をした少女がいる事に驚いていた。
アリス(?)「ふふ。初めまして…ではないかな。だって毎日見てる顔だもんね」
アリス「あなたは……誰?」
アリス(鏡)「みれば分かるでしょ。私はアリス。鏡の国のアリスよ」
アリス「うええ? か、鏡? でもどうやって……」
アリス(鏡)「こう言えば分かるよね。『アリス・イン・ワンダーランド』」
アリス「!!」
少女の発した言葉は、アリスの聞き覚えのある呪文だった。
アリス(鏡)「異世界から生き物を呼び出す召喚魔法。知ってるでしょ?だって"私"が編み出した魔法なんだもん」
アリス(鏡)「その魔法をちょっと応用して、鏡の国からこの世界に私を召喚した。それだけのことだよ」
アリス「……あなたの目的は何なの?」
アリスは静かに問いかけた。
アリス(鏡)「……鏡の国ってね、暗いし狭いし、案外居心地が悪いんだ。私達が動けるのは、貴女達が鏡の前にいるときだけだし」
アリス(鏡)「それも自由自在に動ける訳じゃないの。ただ貴女達の真似して動くだけ」
アリス(鏡)「もうそんな生活にはウンザリ。だからこっちの世界の住民と入れ替わっちゃおうと思った訳よ」
アリス「そっ、そんなこと許す訳ないじゃない!」
語気を荒げるアリスに、少女は淡々と応える。
アリス(鏡)「だろうね。普通そう言うと思ってた。だから、みんなで、力づくで自由を奪いに来た」
アリス「みんな、って……? まさか!」
アリス(鏡)「ご明察。召喚したのは私自身だけじゃないの。今頃、この世界のあらゆる鏡からあなた達の分身が飛び出してるところだと思うよ」
アリス(鏡)「この世界を乗っ取るために、ね……」
作者:パラソル