カナデ「ねえ燈香」
トウカ「なんです?」
カナデ「私たち死ぬわね」
トウカ「そうですね」
奏と燈香は廃墟の陰に隠れながら、そんなピンチな状況とは程遠いテンションで話す。
情報収集のため赴いた廃れた町。数ヶ月間敵を確認していない土地で、上から情報収集の命令が下されたのだ。敵の罠ではないかと警戒し探索に反対する兵もいたが、命令が取り消されることはなかった。
皆、何事もなく探索が終わることを望んでいたが、嫌な予感は的中した。そこに待ち受けて居たのは戦闘に特化したエイリアン五匹。対して、こちらは十名ほどの兵に、超能力者が二名。紅は別任務で駆り出され、ここには来ていない。応援を要請しても来るには相当な時間がかかってしまうだろう。
エイリアンは一匹で戦車一台ほどの丈夫さと攻撃力がある。たった十二人の生身の人間が勝てるわけがなく、その内の二人の超能力者も、五匹ものエイリアンの前では無力に等しかった。
獣のような咆哮をあげるエイリアン達。兵はなすすべもなく引き裂かれ、ボロ布のように地面に捨てられる。
人間とエイリアンの圧倒的な力の差を見せられ絶望し、開き直りのようなよくわからない虚無感で二人はとても冷静になっていた。
カナデ「これなんて言うんだっけ?賢者モードかしら?」
トウカ「まあそんな感じですね」
カナデ「紅に悪いことしたわね」
トウカ「ええ、あの娘はきっと自分を責めるでしょう」
カナデ「全然、悪くないんだけどね。でも絶対気にしちゃうわ、紅だもの」
トウカ「優しい娘ですからね、紅は」
カナデ「作戦を押し通したあのクソ老害共、きっとぶち殺してやるわ」
トウカ「行けるものなら、今すぐぶち殺しに行きたいところですが…」
そう話している内に、急に辺りが静かになる。どうやら兵はみな殺されてしまったようだ。
作者:R